りこうな子ども/アジアの昔話/松岡享子:編・訳 下田昌克・絵/こぐま社/2016年
十になるかならないかの男の子が人さらいにさらわれ、どこかに売られ奴隷にされそうになり、人さらいと対決します。
腹が痛いとわめき、男におんぶされた男の子が、腹の痛みを忘れるようにお話をしてくれるようにいいます。
人さらいの話というのは?
世界中の木という木を全部あわせたよりまだ大きい木の話。
東にあったお天道様から西のお天道様の沈むところまで長い斧の話。
世界中の全部あわせたよりも大きい水牛の話。
七つの島と七つの海を、ぐるっとひとまきできる籐の蔓の話。
屋根の上からたまごを落としたら、途中で、それがかえって ヒヨコになって それが地面につくころにはメンドリになってしまうほど大きな家の話。
これだけのほら話がでてくると、それ以上のほら話になるのが多いのですが、この話では男の子が人さらいの話を逆手に取ります。
昔おおきな太鼓があって、だれかがそいつをたたいたら、世界中の人間、天の神さまの耳にも音が聞こえたといいます。
人さらいがそんな大きな太鼓があるわけがないだろうというと、男の子は人さらいのいう世界中の木をぜんぶあわせた木をつかったという。
大きな木をどうやって切り倒したか問われると、人さらいがいった斧をつかったという。
太鼓の皮は水牛、皮は籐の蔓でぐるぐるまき、さらにどこにつるすんだといわれ、人さらいが話した大きな家につるしたと答えます。
人さらいは、知恵にかけては、この子のほうが上手だとさとり、この子をつれていっては、どんな難題をふきかけられるかもわからない、子は親にかえすにかぎると家まで連れ帰り、森へ逃げていきます。
どれだけうそっぽいほら話でも、いやあ!などとうなずきながら楽しめるのも昔話でしょうか。