妖精の花嫁ポリー/西風のくれた鍵/アリソン・アトリー・作 石井桃子・中川李枝子・訳/岩波少年文庫/1996年初版
絵本は別として、創作はもっぱら語れるかどうかで読んでいます。創作はどうしても長めでなかなかとっつきにくいところがありますが、あるおはなし会のプログラムに「妖精の花嫁ポリー」がありました。文庫本で28ページありますから40分以上はかかるでしょうか。
題名のように妖精の花嫁になったポリーの物語です。
子どもが14人という農家の作男は、暮らしはいつも苦しく、食べるものにも事欠きひもじい思いをすることもたびたび。
一番上の娘ポリーは一日中母親の手伝いをし、幼い弟や妹の面倒をみ、編み物をしていました。
小さい妖精のピクシーが見かけたのは、ポリーが弟や妹を荒れ野でつれだして遊んでいるときです。
ピクシーは、ポリーと結婚させてくれるようやってきます。
一度目はほしいだけの金貨を、二度目には、からっぽになることのないシチュー鍋、三度目は世界中の歌をうたうオルゴールをもって。
貧しい暮らしで、金貨と鍋があれば楽になることはわかっていたのですが、だいじなポリーを嫁にやるなんてと断り続ける両親。
ポリーはパン屋で働く人と結婚するつもりでしたが、パン屋が馬を鞭でたたくことに我慢できませんでした。それにくらべピクシーは馬を鞭でたたくことは一度もなく、みじからピクシーと結婚することをえらびます。
地下の妖精の国は、いつもあたたかく南の国の果物がみのり、花が咲く国でした。
やがて男の子、女の子がうまれ、しあわせな日々。しかし過去のことはいつのまにかおぼえていませんでした。
子どもが九つと十になったとき、突然両親とうまれた家のことを思い出します。子どもが岩の上で人間の赤ん坊の靴の片方をひきずって走ってかえってきたのをみたときでした。
夫を説得して、なんとか生まれ故郷にかえってみると、じつは百年以上もたっていたのです。
胸が張り裂けんばかりに泣いていた女の人というのは母親だったのでしょう。
時間の外で暮らしているというピクシーのところにもどったポリーの悲しみは消え去るのですが・・・。
子どもを思う両親の気持ち、そして永遠の命をもったポリー。
ポリーは幸せだったのでしょう。どこか切ないものが残ります。
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