入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「冬」(8)

2023年11月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  寒い。零下8度。予測はしていたが、実際にここまで下がるとは。ストーブは点けたが、室温はなかなか上がらない。
 
 昨日、小屋とキャンプ場の水回りについては全てを冬対応にした。これで来春まで、水道の蛇口をひねっても水は出てこない。唯一の取水場はキャンプ場Cの近くにあり、水量は心配ないが水汲みという何世代か前の不便な暮らしをこれからはここにいる限り余儀なくされる。

 冬を目前にして、毎年やってきたことだが、やはり牧を閉ざすということについてはそれなりの感慨を覚える。一年が終わるのだという意識は年の瀬よりも強く、その象徴が昨日済ませた小屋の水を落とすことである。
 春でも、夏でも、秋でも、季節の変化は曖昧に始まり、曖昧に終わるが、冬だけは違って、身構えてぬかりのないように準備する。特にこんな人里を離れた山の中では。

 両手に盛った砂が少しづつ落ちていくように、持ち時間が減っていく。しかしもう、あまりすることはない。これからは誰もいなくなったここで、いつもよりか長く感ずる時間を相手に、孤独の甘味とでも言ったものを味わいながら過ごすつもりだ。
 冬の山の孤独感を「歯に沁みるようだ」と言ったのは黒部の開拓に多くを残した冠松次郎である。「地球の回る音が聞こえる」と言った人が誰であったかは忘れたが、これも冬山の深い静寂をよく伝えている。
   
   とふ人も思ひ絶えたる山里は寂しさびしさなくは住み欝からまし

 あの人は寂しさがあってこそ一人暮らしから来る気の塞ぎを紛らわしてくれると言った。しかし、「山里」ならぬ山の中で、心に訪れる人は幾人もいて、それだけで充分だし、ここにいて寂しさとか気の塞ぎもない。もし来るなら雪女だって歓迎するけれど、一人だけであることに不満はないし、むしろ快い。
 
 富士見のゴンドラは昨日から来月の中旬、多分14日まで、点検と修理のため営業を休止した。それに合わせて他の山小屋も休業するらしく、となれば営業している所は当牧場の小屋とキャンプ場だけということになる。ただしここも、今月の19日以降は不定期となる。きょう、富士見側の入笠へ来る道路が、路面凍結の為通行止めになったという連絡を受けた。

 本日はこの辺で。

 
 
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