「小さな政府(小泉構造改革)」=格差社会

格差問題を中心とした考察 ※コメント、トラックバックは受け付けません

ミルトン・フリードマン氏が11月1日に死去

2006年11月24日 | その他経済

マネタリストであるノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマン氏が16日、死去した。

もともと第2次世界大戦後の世界各国の経済政策は、不況期に政府が公共事業などによる積極的な財政政策で景気を浮揚させるケインズ主義が主流であった。

ケインズ主義が全盛だった50~60年代は、ミルトン・フリードマン氏の主張は異端視されていたようである。

しかしながらが、70年代に入り、先進各国が、不況とインフレが同時進行するスタグフレーションに見舞われ、政府の肥大化に伴う財政赤字の拡大や経済活力の低下が問題になると、同氏の理論がクローズアップされるようになった。

その結果、政府の役割として、規制緩和構造改革を進めることの重要性が受け入れられ、近年、欧米の経済政策における理論的支えとなってしまうのである。

ところで私は、先進各国が不況とインフレが同時進行するスタグフレーションに見舞われた要因は、石油ショックや生産性のない軍備拡張(冷戦)にあったと考えている。

ミルトン・フリードマン氏の理論が注目されはじめてから、運良く、米ソの冷戦終結に向けた取り組みが始まり、このことがデフレの到来となり、また軍備より生産性の高い政府支出への転換を引き起こすなど、経済にプラスの要素となったわけである。

運良く経済が好転したため、ミルトン・フリードマン氏の「インフレは常に貨幣的な現象である」とか、「減税や規制緩和による投資の促進が生産力向上と物価安定につながる」という市場原理主義がまかり通るようになってしまったが、これは間違いだったと考える。

「インフレは需要が供給を上回ることによる現象であり」、「減税は需要が見込まれる環境でないと投資に向かわない」し、「規制緩和には投資を促進する面と、他の投資

需要を減少させる面がある」ということが、バブル経済崩壊後の日本で証明されたからである。

また、市場原理主義格差社会を作ってしまった。

■米国では、ブッシュ政権が、レーガン政権の路線を基本的に引き継いだため、貧困層が増大した。

■英国では、サッチャー政権で貧富の差が拡大したため、ブレア政権は「第三の道」を掲げて、市場主義と政府関与のバランスを探った。

日本では「格差社会」が顕在化しており、ミルトン・フリードマン氏の理論はとてもノーベル経済学賞を受賞するようなものではなかったと思うのである。

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税収を4.5兆円増額修正、6年ぶり50兆円を超す

2006年11月24日 | 安倍内閣

財務省は、2006年度の国の一般会計税収見積もりを当初予算より4兆4000億―4兆5000億円増額修正し、50兆3000億―50兆4000億円にする方針を固めたようである。

これによりすぐに議論になるのが来年予算の国債発行額の抑制であろう。
これは、政府が国債発行額(需要)を大きく減らしても、2007年度も税収増が続くという極めて短絡的な考えによるものである。

ところでリチャード・クー氏は、「9/23付け週刊東洋経済」にて次のように主張しているまる。

今、日本の名目GDP成長率は2%くらいだが、税収は7%も伸びている。税法上の損失繰延期間が終わりつつあるからだ。問題は企業の資金が税金の支払いに
回ることを引き換えに、需要がどこかに落ちるリスクがある。

税収の伸びに見合って経済や民間資金需要が拡大していれば問題はないが、ほかが一定で税収だけが増えると、今度は景気にマイナスに働く。

だから、税収が伸びたからといっても、すぐに財政赤字削減に充てるのではなく、場合によっては歳出として使うことも考えなければならない。減税や公共事業をやるべき局面が来るかもしれない。」

このことは、正しい分析だと思われる。
なぜなら、景気は絶好調でもないのに、税収は最終的に予算見積もりの10%以上も伸びているからである。

だとすれば、税法上の損失繰延期間が終わりつつあるという分析は正しく、税収を増額修正した分を財政赤字削減に充てるということの愚かさが見えてくるわけである。

残念なことに、安倍首相は所信表明で、19年度の国債発行額を「18年度以下」とする方針を表明している。

また、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は、可能な限り国債発行額を抑制する(25兆円)旨、諮問する見通しである。

これを実行した場合、2006年度との比較で、10兆円程度の(税収増3~5兆円+国債発行額減5兆円)のマイナス需要となるため、余程の外需効果がない限り、景気は腰折れする可能性大と思われる。

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