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世界の首脳が“列を成した訪中ラッシュ”。

世界の首脳が“列を成した訪中ラッシュ”。
墨面さんからの「中国をめぐる幾つかの情報(№2)」をご紹介します。 (伊関)

中国をめぐる幾つかの情報(№2)

 日本のマスコミではほとんど報じられないか、または断片的な報道に限られていますが、3月13日、中国の全国人民大会の閉幕後、僅か一か月(!)の間に、中国の外交活動は驚異的な活況を呈しはじめています。
 重要な外交日程(公式訪問)を上げるだけで、シンガポールのリー・シェンロン首相、マレーシアのアンワル首相、スペインのサンチェス首相、フランスのマクロン大統領、サウジアラビアのファイサル外相とイランのアブドラヒアン外相、ブラジルのルラ大統領など(*順不同)があります。文字通り“列を成した訪中ラッシュ”と言えます。
 それぞれが世界の戦略地域(=アジア、ラテンアメリカ、中東、ヨーロッパ等)を代表するそうそうたる顔ぶれと言えます。
 これ以外にも、フォンデアライエン欧州委員会委員長、日本の林芳正外相、ドイツ外相の訪中があり、習近平氏のロシア訪問、昨年末のドイツ首相の訪中などがあります。
 また、忘れてはならないのが、この間、ウクライナ戦争に対する和平提案があり、中国主導によるサウジとイランと和解合意があります。

 日本が米国の覇権=一極支配に追随し、相も変わらず「反中嫌中」を煽ることに汲々として、「軍事一辺倒」で琉球弧の軍事要塞化を押し進め、各地域で軍事演習をくり返し、経済面では「半導体戦争」を繰りひろげています。そんな中、私たちは世界が「平和と発展」と「多極化」に向かって大きく動き出している現状に目を向ける必要があるのでないでしょうか?!
 中東地域の「和平機運」については、もはや言うまでもないことですが、ラテンアメリカの地域大国=ブラジル大統領がヨーロッパ共同体(EU)に似たラテンアメリカにおける経済共同体=自由貿易圏構想と中国が提唱する「一帯一路」への参加を引っさげての訪中であり、シンガポールやマレーシア首相もアジア共同市場構想をより具体化する意図を持っての訪中です(*具体的に、中国の昆明からマレーシアを繋ぐ、東南アジアを貫通する高速鉄道網の提案など)。

 興味深いのはヨーロッパです。ヨーロッパを代表する二大国(フランスとドイツ)とスペイン首相(*次期EUの議長国)の相次ぐ訪中と、“満々たる成果”は実に目を見張るものがあります。
 その実、アメリカが火に油を注ぎ続ける「ウクライナ戦争」において、当事者である「ウクライナ」と「ロシア」以外で、最大の“被害”を被っているのは紛れもなく「ヨーロッパ」です(*自業自得とも言えますが・・・)。ロシアからの安価なエネルギー源を断たれうえに、アメリカから価格が4倍以上もの代替エネルギーを買わされ、それによる「コスト増加」に経済衰退と国内優良企業のアメリカへの流出・・・ヨーロッパ各国での極端なインフレに対し、各地で数十万人、数百万人に及ぶ抗議デモやストライキが頻発するのも当然と言えば当然といえるでしょう。
 ドイツとフランス首脳の訪中は、正にこうした状況の中で、“経済の立て直し”という一面ばかりではなく、根本的に「アメリカ追随」からの脱却を意図したものと言えるでしょう。マクロン大統領に至っては、「ヨーロッパはアメリカの付随にはならない」と公言して憚らないほどです。つい一年前なら、決してあり得なかったことでしょう。歴史の“大潮流”を感じます!

 無論、こうした歴史の“大潮流”がスムーズに進むはずはありません。「サ・イ和解」と中東各地・各勢力の和解趨勢に対し、アメリカは早速CIA長官をサウジに派遣したかと思うと、シリア空爆を再開し、イスラエルが挑発的軍事行動をくり返しはじめました。
 帰国後のマクロン大統領に対し、親米勢力が一斉に非難と攻撃を繰りひろげているのもまた“予想通り”と言えるでしょう。とは言え、“紆余曲折”は当然としても、この“大潮流”を止めることはもはや不可能でしょう。
 こうした“大潮流”の中、ほとんど“蚊帳の外”に置かれたアメリカの焦りは相当なものでしょう。何しろ“唯一の覇権”を自負し、世界を牛耳って当然と思っているアメリカです。いつもならいち早く強烈は“反撃”に出たであろうアメリカも、今やその余裕さえ失われているようです。
 「民主・共和対立」の激化は言うに及ばず、無能な「コロナ対策」をはじめ、「ウクライナ支援」を名目に、軍需産業に膨大な利益をもたら為に、ドルを無制限に印刷し続けた反動による国内のインフレを抑えきれず、債務の膨張と債券の発行限度額が6月頃には限界値に達します。また、新規発行債券の“買い手”を見つけられないばかりか、(ロシアは言うに及ばず)中国をはじめ、同盟国であるはずの日本や中東各国、ヨーロッパ各国までが「ドル債券」の売却、準備資金の多様化という、「ドル支配」からの脱却をはじめています。因みに、先に述べた各国首脳の訪中では、ほとんどの場合、「ドル」からの離脱と「自国貨幣」での交易決済が謳われています。
 ウクライナ戦争を通じて、「世界通貨」であるドルを無責任に“武器化”し、その“信用”を失墜させた報いとも言えます。世界中の経済に打撃を与える無謀な利上げとその反動で“資産の含み損”を抱えるアメリカの銀行破綻が相次いだ例に挙げるまでもなく、アメリカ経済は今や瀕死の状態と言えるでしょう。

 アメリカは、こうした苦境脱却を中国に頼るしかありません。2008年のリーマンショックに際しても、中国が大量のアメリカ債券を引き受けて、アメリカはようやく大不況から脱しています。
 今回の危機に際しても、バイデンやブリンケン国務長官は何度となく面談と訪中の意向を示し、今年に入ってはイエレン財務長官およびレモンド商務長官が数々の場面で訪中を熱望しています。加えて軍事面でも、オースティン国防長官も何度となく「対話」を求める意向を示しています。
 しかし、中国側は外交礼儀を保ちつつ、実際的にはかなり“冷たい反応”に終始いているように思えます。これも当然と言えば当然で、最近中国はアメリカに対し、まったく“信を置いていない”ようです。私個人の感想ですが、いわゆる「気球事件」をきっかけに、中国はアメリカ政府にはもはや「交渉誠意も、外交能力も」無いと見限ったように感じます。
 貿易交渉に「合意」した途端、舌の根も乾かない内に、「貿易戦争」を仕掛ける・・・、首脳会談で「一つの中国」原則を確認しながら、翌日には台湾に「武器の売却」を行い、要人の訪台を企てる・・・、中国との「サプライチェーンからの離脱は意図しない」と明言しつつ、その一方で「半導体」等の中国締め出しを図る(*「チップフォー」)・・・、軍トップの会談で軍事緊張を高めないと合意しながら、すかさず“航行の自由作戦”とやらの軍事挑発を行う・・・。
 「別れた途端、反故にされるような合意は無意味」「高圧的に要求するだけの会談は時間の無駄」「会いたければ、誠意を示してから」「“請う”ているのはそちらですよ」・・・・こんなところでしょうか。
 案の定、レモンド商務長官に至っては、公然と「中国がボーイングを買わなければ、“制裁”を加える!」と言い出す始末です。“お願いする”時は、お願いする態度が必要でしょう・・・。あるコメンテーターのひと言:「“物乞い”がみすぼらしいお椀を出して、もしこの中に最高級の肉や海鮮を入れなければ、お前の玄関にゴミや糞尿をまき散らしてやる!」
 「覇権」が染みついたアメリカの「政治屋」どもを相手にしたくない気持ちも分かろうというものです。

 以下、まったくの個人的な感想ですが、アメリカがこれまでの「一極覇権」を維持する為に、西太平洋で軍事的な小さな“枠組”=「オーカス」、「クワッド」などで中国を封じ込めようと画策している間に、中国はより大きな“枠組”で、アメリカの「覇権主義」を揺るがし、「多極化」の世界を作ろうとしているように思えます。
 「アフリカ」は言うに及ばず、いわゆる第三世界(発展途上国)のアジア、ラテンアメリカ、中東などで確実に地殻変動が起こり始めています。加えて「ヨーロッパ」を味方にできないまでも、せめて「敵対勢力」にしないという、中国の言うところの「敵は最小に、友は最大に」という大戦略でしょう。
 世界中を見渡しても、“無条件”にアメリカの覇権に追随する国、地域はもはやイギリスとカナダ、韓国、台湾、それに日本くらいでしょう。ウクライナ戦争を通じて、アジアに対中国「アジア版NATO」を作ろうとするアメリカの試みは大きく頓挫しています。
 イギリスとカナダはさて置き、見苦しいほどに米日に媚びながら追随する韓国の尹錫悦を、輝かしい闘いの伝統を有する韓国民衆が許し続けるはずがありません。台湾においても、最近の世論調査で、民進党政権の対米一辺倒の姿勢に反発する声が半数を超えるほどになっています。つい先日の前総統・馬英九の訪中に対しも、民進党による醜悪な攻撃キャンペーンにも関わらず、「両岸平和に寄与する」という評価が70%以上に達しています。
 「日本」については、おそらくこれをお読み頂いている皆さんの方がよほど詳しいと思うのでここでは略させて頂きます。
 以上、ささやかな情報ですが、ご参考までに・・・
  
                 2023/4/15  墨面記

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