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日中友好と社会主義市場経済

日中友好と社会主義市場経済

中華人民共和国建国60周年記念日中友好のつどい盛会のうちに成功
始動!社会主義市場経済を知り知らせ日中友好をすすめる会
2009年10月11日西成区民センターにて、中国駐大阪総領事館から韓斌副領事を講師にお招きし「日中友好と社会主義市場経済」をテーマに講演をいただき、講師を囲んでの座談会がおこなわれた。40名余の参加のもと冒頭、中華人民共和国建国60周年を祝し韓斌副領事に花束贈呈がおこなわれ、10名の中国の友人の参加者に新中国成立60周年のお祝の拍手がおくられた。
つどいは、2009年3月から月1回のペースで行われてきた社会主義市場経済についての学習会の集大成として開催され、社会主義市場経済を知り知らせ日中友好をすすめる会の始動を告げるものとなった。
講演と座談会は、講師の温厚な人柄と素直なお話でたいへん好評であった。例えば「韓斌副領事さんの、農民工が中国の発展に貢献されたとの発言に大変感動しました。日本の官僚で、釜ケ崎労働者が日本の発展に貢献されたと言う者はいないと思います。」や「マスコミの喧伝してきた中国脅威論や共産党一党独裁の中国の強権政治のイメージが、講師の労働者を思いやるお話を聞いて驚いて一変した。」といった感想が寄せられた。
司会者としては、社会主義市場経済をテーマに掲げて行われたつどいに多くの方々が参加されたことで、賛否いずれにしても社会主義市場経済への関心の高さが確認できた。「講師のお話を聞き驚いた中国へのイメージが一変した」との感想を聞き、今まで喧伝されてきた中国脅威論がいかに中国のイメージを傷つけてきたかを思い知った。だからこそ、社会主義市場経済を知り知らせ日中友好をすすめる会の活動をしっかりがんばろうとの決意を新たにした次第です。
報告 伊関 要







               





以下、これまでの社会主義市場経済の学習会の報告を載せました。
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社会主義市場経済-はじめに

はじめに

私達は、2009年3月から中国の社会主義市場経済についての学習会を月一回のペースで行っています。
この学習会をはじめた動機については、その呼びかけ文で次のように述べています。

この世界的な金融危機の中、それぞれの国が対策を講じていますがほとんどの国はまだ出口の見えない暗闇の中にあります。そんな中で、中国は4兆元(52兆円)の危機対策を打ち出し、ヨーロッパの経済学者の中でも「すでに中国は底を脱した」という観測が流れています。建設部門などでは設備投資の拡大の動きも出ています。
 日本のマスコミではほとんど報道されていませんが、中国が今後2年間ほどで投じる52兆円という巨額な投資の大半は、インフラ整備や民生部門です。道路や鉄道網の整備、医療制度の充実、農業、農村、農民への支援、地震被災地への1兆元(13兆円)の復興費用、格安住宅1000万戸の建設等々。
 これらは、日本やアメリカの金融危機対策が金融資本や大企業への資本注入に終始しているのと大きな違いです。
 ここ30年来、「中国は資本主義になった」という風評が西側を覆ってきましたが、ここへ来て「社会主義市場経済」の「社会主義」の意味が明らかになりつつあります。
 これからの日本の進路を考える上でも、「社会主義市場経済」を学習研究することは非常に重要と考え、学習会を行ないます。・・・・・


この呼びかけ文を書いて半年が過ぎました。当時中国政府は、「今年の経済成長率8%」を宣言していましたが、世界の大勢は、「それは無理だろう」というものでした。しかしここへ来て、輸出に関しては世界の景気が好転していないことからまだ低迷するものの、内需の急速な拡大から輸入が拡大しており、モルガン・スタンレーは7.2%を7.8%、さらに8.4%へと上方修正しています。スタンダード・チャータード銀行も7.4%を8.5%へと上方修正しました。来年は9%の成長になるだろうというのはすでに世界の共通認識です。

私達はこれまで、次のテーマについて、中国と日本の制度、政策を比較しながら、中国の「社会主義市場経済」について学習してきました。

第1回 中国の4兆元の金融危機対策についてその中身を学習。「人民中国2月号」を中心に。
第2回 農業問題
第3回 世界の基軸通貨をドルからどう転換するか、中国の提案を検討しました。
第4回 土地制度 
第5回 選挙制度

これらの学習会は、参加者が自分で学習してきたことを発表する自主ゼミ形式でおこなっています。これからも外交防衛問題や少数民族政策など色々なテーマについて学習していきたいと思っています。

次に、各回の発表者のレジュメを要約したものを、各発表者の責任で掲載します。まだ検証不足ですが、今後、中国との実際の交流を通じて、内容を充実させていきたいと考えています。第1回目は「人民中国2月号」がテキストでしたので第2回目からのレジュメです。

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社会主義市場経済-農業問題

農業問題
2009・04・19

私は、日本と中国の農業政策を比較検討し、日本の農業政策の方向を考える目的で、特に日本の農業の現状について発表しました。

最近、日本の食糧の自給率が40%を切ったということが話題になっていますが、これは今の政策からするとむしろ当然の結果です。
GHQは1947年、「地主制が軍国主義の温床になった」として、地主から農地を安価で買い上げ、小作人に売り渡しました。「農地解放」ともよばれるが、これは、当時中国革命の中で中国共産党が地主の土地を農民に解放して、多くの農奴が自作農になっており、この影響をおそれて行なったものです。これによって、当時日本共産党の支持基盤だった農村は、保守の支持基盤になったと言われています。農民は大いに生産意欲を高めましたが、生産高そのものはさほど高まらず、政府は各種の膨大な奨励金を出しました。それでも食料の自給は困難を極めました。
そうしたおり、1954年にアメリカが出してきたのがMSA協定です。これは「日本とアメリカの相互防衛援助協定」というもので、アメリカは日本に余剰食糧を供給するので、日本は食糧を自給しなくてよろしい。食料の増産を打ち切りなさい。そのかわり、日本はそのお金で再軍備をし、自国の防衛は自分でやりなさい、というものです。麻生首相の祖父の吉田茂首相はこれに飛びつき、その数ヵ月後には自衛隊が創設されたのです。いまアメリカが要求してきている農産物の自由化も、このときにすでにレールは敷かれているのです。ちなみにアメリカはこのMSA協定と同じ内容の協定を自分の手下と考える世界中の国と結んでいます。

現在の政府の農業政策の基本は、自給率の向上というより(口先では言っていますが、本気では考えていません)農地の集積化と経営の大規模化です。企業の参入も認めています。農業の自由化に備えて、少しでも国際競争力のある作物を作ろうということです。しかし現状は、それもうまくいっていません。農民は、二束三文で農地を貸すより、いずれ道路でもできるか、市街化調整区域になって宅地として高い値で売れるのを待っていた方がいいというのが正直なところのようです。

日本の耕地面積は1960年に609万haあったものが2008年には463万haにまで減少しました。(政府目標は、2015年までに450万haまでさらに減らすというものです!)農業就業人口は1960年に1454万人いたのが2008年には299万人に。

しかし、農業生産物,食糧というものは、他国で生産されたものを大量の石油を使って運んでくるということ自体が大変なムダであり環境汚染です。またその国の自主と独立のためにも、食糧自給は欠かせないものです。

中国の農業政策については発表者に任せますが、後に発表した「中国の土地制度」を見ても、中国の場合は、「農地を絶対に減らさない」ということが根本政策になっています。農地を工業用地や商業用地に変更する場合は、他の場所で農業用地を開発することが絶対条件です。そこを使用するものに開発ができなければそれを認可した政府が農地を開発しなければなりません。統計的にも、現在、中国の都市部では農地は減少していますが、その周辺部や辺境地区では耕地は拡大しており、全体としては拡大しているのです。

日本の農業をWTOの路線で国際市場に全面開放すれば、日本の農業が壊滅するのは疑いの余地がありません。工業製品と農産物を市場の競争原理で取引することじたいが間違っているのです。解決するには、農業や農民をサポートする新しい社会システムが不可欠でしょう。
わたしは日本農業の復興策としては、中山間地の再生、土地や自然条件の格差に対する補償制度、生産単位の大規模化による土地や機械などの農業資源の最適な利用、ただし農民の土地や自然への愛着を切り捨てず、集団化によるメリットを生かした、農民の自主的自律的な集団化の促進、農民を一定の出来高払いの要素をふくんだ公務員化、にするのがよいと考えていますが、どうでしょう。地域社会に食糧を供給する仕事というのは、極めて公共性の高い職業であり、社会全体で守っていかねばならないものです。

                           (文責 インバ)



中国の三農問題をめぐって

*三農とは―――中国の農業・農村・農民

中国の改革開放の中で中国農村の発展は2つの大きな意義を有していた。

一つは、市場経済の発展と社会主義民主についてであり、いまひとつは中国近代化に当たって各種の基礎を作ったということである。
17期3中総では 三農問題が最重要課題であること、中国の特色を持った農業を発展させることが討論された。それは中国社会の発展にとって、農民の増収が進まないことがネックとなっているからである。たとえば、都市と農村では一人当たりの可処分所得は3倍の差がある。原因としては次のようなものがあると指摘される。
1. 市場経済によるもの 農村の人材や物資が都市へ出てゆくこと
2. 国民収入の再分配問題 農村の需要があまりにも大きすぎ、再分配の調整だけでは不可能
3. 農産品、農民工、土地への補償が低価格である

今後はどのような方向性を持っているのか。

工業が農業を養い、都市による農村の牽引、伝統的農業から都市と農村が一体となった発展。指導方針としては制度建設、近代農業の発展、社会事業を発展させる。戦略的任務として新たな農村建設、中国の特色を持った農業、都市と農村を統一的に発展させる。特に土地請負期限については、「永遠」のニュアンスに近い「長期不変」から「長久不変」へと変わった。また、従来の「支農恵農」という表現から、農民農業の自立強化を意識した「強農恵農」という表現が使われるようになっていることが注目される。

土地の移転については2008年行われた農村調査の中で23%が他人へ譲渡しており特に沿海地域で多いことが指摘されている。土地使用権の移転については3つの禁止事項が決められている。(1.土地の集団所有制の変更2.用地の使用目的の変更3土地使用権の侵害)
また、土地収用にあたって農村での矛盾が突出している(陳情の64%が土地収用について)ことも国務院の調査グループが行った調査で明らかにされている。公共事業のため土地収用がなされる場合には理にかなった農民保障がなされること、さらなる関係法規の整備の必要性が指摘される。
今後はどうなるのか?

個々の農家を中心とする農家請負生産という体制は、食べるのにやっとの解決にはなったが、市場経済とリンクしたときにはあわない形である。農業の専業化、共同化という新たな農業経営システムの創出が必要となる。

                           (文責 野村)




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社会主義市場経済-「SDRを国際準備通貨に」という中国の提案について

「SDRを国際準備通貨に」という中国の提案について
2009・05・17

この発表の参考として、現在の国際基軸通貨であるドルについていくつかの資料を出しました。要約します。

基軸通貨とはどういうものか

現在、ドルが世界の基軸通貨であることは誰もが認めることですが、基軸通貨となる条件というと、
1、通貨価値が安定している。
2、世界経済に占める経済力が大きく、輸出入も大きい。
3、国際金融市場が発展していること。
などがあげられますが、同時に、「基軸通貨は、市場の要因だけではなく、政治軍事力が強大な超大国、覇権国家の存在と密接にむすびついている」ことが特徴です。

さて、ある特定の国の通貨が基軸通貨となっていることは、もともと矛盾をはらんでいます。基軸通貨国には巨大な特権が生じ、その他の国の利害とは異なるからです。

基軸通貨国は、自国通貨建てで国際取引ができるため、為替変動のリスクの心配がほとんどありません。さらに、自国通貨建てで対外支払いができるため、国際収支の制約も受けません。実際、アメリカは、経常収支の赤字の拡大を続け、世界最大の借金国になっても、途上国のように外貨準備が減るとか、IMFに構造調整を強いられることもありません。
 
 1971年にドルが金との交換を停止し、変動相場制に移行。アメリカの赤字の垂れ流しでドル不安がいっそう激化。そこでドルを安定化させる為、各国に国際協調が求められ、米国の利益のために他国に犠牲が強いられる。
典型的なのが、1985年、米日独など5カ国による「プラザ合意」。ドル高を是正するため、アメリカは日本に低金利を要求。その結果、日本は数年間のバブルに。そしてバブル崩壊、長期低迷、現在へとつながる結果に。
 
 たとえば、日本の政府と金融機関は、アメリカ国債を数十兆円持っていますが、それは自分の金庫にしまっているわけではなく、アメリカの金融機関に預けており、それを多角的な国際的決済にあてています。アメリカ国債証券はアメリカ政府の管理下に置かれ彼らが「運用権」を握っています。日本の政府や金融機関は、たとえ所有者であっても自由に処分できません。金融封鎖されれば手も足も出せなくなります。アメリカはイラクへの侵略戦争では、この特権を使ってイラクの外国資産17億4000万ドルを凍結し没収しました。にもかかわらず、今でも日本政府は毎年、アメリカ国債を30兆円以上、多い時には50兆円以上も買わされています。

アメリカはこの上記の特権を使って、たとえ貿易赤字でも借金を続けることができるのです。基軸通貨特権とは、利用金額無制限のクレジットカードです。
しかし、この特権にも限界があるということが、今度のアメリカ発の金融危機は明らかにしました。アメリカの経済力と軍事力への信用だけが売り物のこのサギ商法は、すでに崩壊の危機に瀕しています。中国政府はこのドル基軸通貨に変わる、新しい世界通貨システムを提案しています。以下は発表者に譲ります。

                           (文責 インバ)


 中国人民銀行周小川総裁は、‘09年3/23「国際通貨システム改革についての考察」、3/24「貯蓄率の問題についての考察」をあいついで発表し、4/2のG20では「胡錦濤中国国家主席の重要演説」があった。
 いずれも、今回の世界金融危機の原因は特定の国(名指しは避けているがアメリカであることは自明)の通貨(ドル)が国際準備(基軸)通貨であることの限界性にあり、この現実と如何に向き合いどのように問題を解決していくか、すなわち今回の世界金融危機をいかに克服し今後どのように危機を未然に防ぐかを具体的に示した点で画期的内容を含んでいる。
 結論から言えば、ドルに替わりIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)を国際基軸通貨に据えようというものである。SDRとは国際通貨基金(IMF)の特別引出権(Special Drawing Right)の略称で国際機関取引の決済手段として創出されたものであるが国際通貨としての援用可能性は十分考えられる。SDRは1969年に経済学者R.トリフィン(1911-93年)により提唱創設された。トリフィンは早くから特定の国の通貨が国際基軸通貨であることの限界性を論証(トリフィンのジレンマ)しており、その後の歴史をみれば、1971年ドルショック、‘80年代米経済トリレンマ、今回の金融危機とその論証(トリフィンのジレンマ)の正しさは余すところなく示されている。またトリフィンはJ.Mケインズ(1883-1946年)の流れをくむ経済学者であるが、ケインズは1944年ブレトン・ウッズ体制創設にあたり「ドル基軸通貨体制」に強く反対し人工通貨「Bancon」創設を主張し退けられた経緯がある。しかも、現在のヨーロッパ通貨「ユーロ」はケインズの人工通貨「Bancon」がモデルとなって誕生した歴史をみれば、今回の中国の「SDRを国際基軸通貨に」の提案は実に示唆に富んだ内容を含んでいる。
 周小川総裁論文では、基軸通貨をドルからSDRに今すぐ突然に替えようと言っているのではない。現在、国際機関同士の決済に限定されているSDRの機能を徐々に拡大し、国際貿易や金融取引の決済、価格表示や会計報告のSDR建て、SDR建て資産の創設等を通じ徐々にドルに替わる基軸通貨としての機能と範囲を広げようというものである。ここで大事なことは、SDRの機能と範囲を拡大しかつその価値を担保するのに中国を含めた新興国や発展途上国にその各国通貨建てでのSDRへの出資の門戸を広く開放しようという点である。胡錦濤国家主席G20重要演説における「IMFと世界銀行における発展途上国の代表性と発言権を高める」というくだりの具体的道筋と意義が論証されているといえる。
 今回の周小川総裁論文について、日本のアナリストから「世界金融危機の原因は中国の高貯蓄率による資金ショートだとする中国責任論を回避するためのもので、周小川総裁論文はその目的を既に達した。」とする論評を目にしたが、大きな見当違いであろう。中国社会科学院世界経済研究所・張明氏は「世界通貨(基軸通貨)の、ドル・ユーロ・超国家準備通貨(例SDR)三極鼎立」を予測する研究成果を発表しており、ドルの基軸通貨としての役割と地位の相対的低下を織り込んだ上で、金融危機からの脱却と今後の危機防止の方途を発展途上国の地位向上を通じて成し遂げようとする中国の経済金融政策は刮目すべきものがある。中国の一連の提案は、目先の責任回避を目的としたものでは決してなく、発展途上国も含め世界規模での経済発展を通じ自らの発展と経済危機からの脱却そして世界経済再生を模索する姿勢に貫かれているということだ。
 米国の基軸通貨の地位をよいことに、乱発されたドルの消化(トリフィンのジレンマ)を、サブプライムローンという不良債権を世界中にばら撒き巨万の利益を得ようとする金の亡者に委ねた結果が、バブルの発生と崩壊であり今回の世界金融危機の原因であることはすでに衆知のことである。これに対し中国の提案は、「金融規制・監督の強化が不可避」(G20胡錦濤主席の重要演説)とし自らの利益のためには他人はどうでもよいという金の亡者の自由は規制し、発展途上国を含む世界全体の経済発展を通じ金融危機からの脱却と防止そして自らの発展と世界経済再生を目指す点でその対極にあるといえる。
 以上要するに、「SDRを国際準備通貨にという中国の提案」を学習して理解した点は、中国は自らの発展を無秩序な利潤追求を求めることで達成しようとするのではなく、発展途上国も含んだ世界規模の経済発展と豊かさの実現を通じて自らの経済発展と豊かさを実現しようとしているということである。これは、中国が掲げる社会主義市場経済の本質に通底する特徴であると推察する。中国の社会主義市場経済とは、他人の犠牲の上に自らの利益を図る既存の経済システムの対極を形成し、万人の利益の中に自らの利益を図ろうとする画期的な経済システムで、人類発展史における壮大で積極的なチャレンジだといえる。

                            (文責 伊関)
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社会主義市場経済-中国の社会主義市場経済における土地制度

中国の社会主義市場経済における土地制度
2009・06・21

「中華人民共和国土地管理法」1999年1月1日施行

「中華人民共和国は土地の社会主義公有制、すなわち全人民所有制と労働大衆の集団所有制を実行する。」
「如何なる単位や個人も土地を占拠、売買あるいはその他の方式で不法に譲渡することはできない。」
「土地使用権は法に基づき譲渡できる。」

「土地を充分に大切にし、合理的に利用し、確実に耕地を保護することはわが国の基本国策である。」
「国家は土地用途の統制制度を実行する。国家は土地利用全体計画を作成し、土地の用途を定め、土地を農業用地、建設用地と未利用地に分類する。農業用地の建設用地への転用を厳格に制限し、建設用地の総量を規制し、耕地に対して特殊保護を実行する。」

土地の「所有権」と「使用権」の違い

 日本でも土地の利用計画というものがあって、商業用地とか工業用地とかを策定する。また農業用地を勝手に宅地にしたり、田園の真ん中に工場を作ったりということは許されていない。そういう意味では日本でも行政が土地の開発計画にしたがって土地の使用目的を制限している。
 しかし実際には、先日の「農業」の学習会でも紹介したように、過去40年で日本の耕地面積は三分の二に激減している。食糧自給率は70%から39%に減少した。
 なぜ、そういうことがおきるのか。
それは、まず、政府の計画自体が誰のどういう利益にしたがっているかという問題があり、もともと資本家の利益を優先し日本の食糧自給率を上げようという考えなどないという理由がある。政府は、基本的に工業で金儲けして食糧は輸入したらいいと考えている。
そしてもう一つの理由は、日本は土地に対して「私的所有制」が認められているということがある。
 「私的所有制」とは、基本的に、その使用目的は所有者の自由ということである。土地の使用目的は所有者個人の利益に従属する。農村には広大な耕作放棄地が、都市には住宅を持たない大量の貧困層が出現する。また「金の貸し借りの担保」となるので、景気変動によって土地の値段は極端に上下し、ツボ1億円の土地、その横には何年間も金網で囲われたまま何にも使用されない遊休地が点在したりする。(新今宮北側のあの金網に囲われた広大な市有地は何だ?その金網の外にはブルーシートの列・・・・・)

 中国ではまず、上記にもあるように「農地」を絶対に減らさない、開墾を奨励して増やすという政策を採っている。それは全人民共通の利益だからである。都市やその近郊では各級政府の計画に従って農地を建設用地に転用するということは行われている。しかし建設用地に転用した単位は、それと同じ規模の農地を別の場所で開墾する義務を負う。また各級政府は元の農地の土を、新しく開墾する農地に移動することを要求できる。またそうした工事ができない場合は、工事に必要な金額を各級政府に納入し、納入された政府は開墾目的以外にそのお金を使ってはならない。各級の人民政府は、農地が減った場合は、組織して新たに農地を開墾する義務を負う。(同法31条、32条)
 さらに最近は、「生態環境の保護」という問題にも取り組んでおり、たとえば、農地の開墾が生態環境を破壊する場合は、農地をもとの森林や牧草地に戻す、という政策をとっている。
 これらの政策の厳格な実行は、全人民所有制のもとではじめて可能な政策である。(実際中国では、前の学習会でもやったように、農地は都市近郊では減っているものの、全体としては増えている。)

ではなぜ「土地所有権」と「土地使用権」を分離し、「土地使用権の譲渡」を認める政策に転じたのか。

 この政策をもって中国は「土地の私的所有を認めている」とデマを飛ばしている人々がいるが、それは全くの間違いである。
 この政策は1980年代のころから徐々に採られている。目的は何かを見る場合、どうしても歴史的にみる必要がある。
 解放前は、農地は大地主が占有する封建的な所有制度だった。農民は土地に縛られた半農奴だった。土地革命戦争によって小作農は自作農になった。農民は革命の喜びを実感した。
解放後、農地の分散化による非効率性を解消するため、集団所有制を採用した。人民公社も現れた。(ただ、人民公社は単なる経済単位ではなく、行政単位でもあったため、地元政府と二元的な行政系統になり複雑化→解消)

一方、社会全体の生産力の向上は、当然、人民生活の需要にも変化をもたらす。解放直後は、とにかく自分の土地で働くことができるようになり、最低限、飯をたべることができ、自分の家にすむことができる、それだけで大満足だった。しかし産業が発展してくると、色々な電気製品も欲しくなる。農業機械も欲しくなる。テレビも携帯電話も欲しくなる。そうすると、それらの産業分野のためにも土地が必要になる、労働力も必要になる。そのためには解放直後は全人口の80%は農民だったが、農業経営の効率化を促し、農業人口を減らして工業やサービス業へ就労人口を移動させなければならない。

これは欧米の先進資本主義国では「利潤追求」を原動力として無政府的に行った。その結果は、農村の荒廃、都市の過密化、膨大な都市貧困層の出現、植民政策、侵略戦争へと突き進んで行った。

これに対して中国は、国家計画に従って、産業構造の転換を行おうとしているのである。
まず、これまでのように、土地の使用者の転換ができない土地制度を改め、「土地使用者の流動化」を促す。しかし土地の使用目的の変更はできないから、農村においては農業経営者の大規模化を促すことができ、そこでできた労働力を工業やサービス業へ移動することができる。
 農村を荒廃させるのではなく、農業経営を効率化することによって新たな労働力を生み出す。都市の住宅建設と合わせて都市の就労人口を増やす。大都市への一極集中ではなく、地方都市への分散集中をやる。
景気変動によって都市貧困層を生み出さないために、都市へ移動した農民はいつでも農村へ帰ることができるようにする、そのために、農地の集団経営体の中に自分のメンバーとしての権利を残すことができるようにする。などなど、微に入り細に入った政策を行っている。
「農民戸籍」の問題についても、極端な都市への人口集中をおさえ、計画的に進めるため、徐々に段取りを追って改革しているのが現状である。

住宅問題

中国では、解放直後、日本の侵略によって多くの住民が家を失い、膨大なホームレスをかかえていた。住宅難を解消するため、政府は、住宅の公的所有制、福祉的な住宅分配方式、行政補助型住宅管理体制によって、この問題をすばやく解決した。
70年代末まで都市住宅は100%公的所有だった。(家賃は非常に安い、1970年代末で平均1ヶ月、1へーべ3円弱!50へーべの住宅なら130円!)
中国の公的所有制度は日本と違い、需要者の所属団体(企業、学校など)から分配される。しかし、一度住宅が分配されると、本人が出たくない限り、子孫までも住み続けることができる。ほとんど「住宅の無償分配制度」と言って間違いない。

しかし、70年代に入って、この方式にも限界が露呈してきた。家族の人数の変化、移動等による需要の変化に迅速に対応できる供給体制ではないからである。子供の成長、就職、結婚、などによって新しい住宅が必要になっても、配給が来るまで何年でも待つしかない、そういうことが社会問題として出現してきた。
要するに、極端に安い公的住宅制度によって、住宅供給市場というものが存在しなかったのである。
上記理由で、新たな住宅の需要に対応できるシステムとして、80年代に入ったころから、集合住宅の個人所有が認められるようになった。すなわち家主が合法化され、住宅供給市場、不動産市場が誕生したのである。したがって現在は、公的住宅供給体制と不動産市場が並立する形になっている。

しかし今でも都市住宅の82.9%は公的所有である。

この第一回目の学習会でもやったように、この金融危機で中国政府は、内需を掘り起こす意味もあって、都市低所得層、農民、農業開墾地の労働者のために、13兆5千億円を投入し、3年間で1000万戸の住宅を建設する計画を進めている。すでに200万戸が完成している。供給してもらうには所得証明が必要で、厳格に低所得層を優先する政策をとっている。高額所得層は不動産市場によって好きな住宅を購入しなさい、ということである。

工業用地

中央政府や各級人民政府によって策定された建設プロジエクトに従い、各政府の認可を得て国有地を私用して企業活動を行う場合、その使用料を納めてはじめて建設を始めることができる。また土地管理法施工後、増額する使用料の30%は中央政府、70%は各級政府に上納し、その全額は耕地開発費に当てる。(土地管理法55条、56条)
また、耕地を転用する場合、建設の使用権を得ておきながら一年間遊ばせた場合は、その遊休料を払わねばならず、二年間遊ばせた場合は、政府はその使用権を無償で回収できる。(同法37条)
使用権の期間(30年?50年?)

土地を担保にすることを禁止!

中国では、先にも述べたように、土地の所有はすべて全人民所有と集団所有制であり、日本など資本主義国のように土地を担保にしてお金の貸し借りは禁止されている。(金融資本には使用権を取得する資格がない!)
これは金融資本による土地の占有を防いでおり、全ての土地は人民の利益のために使うという原則を貫いている。

中国政府はなぜこんなにお金を持っているのか

中国の中央政府が今度の金融危機に際して内需拡大のために投じる金額は4兆元、約55兆円である。一連のプロジエクトに各級政府が投じる金額を合わせると、400兆円になると言われている。しかも、日本やアメリカのように赤字国債を出し、借金をして出すかねではない。中央政府は200兆円の外貨準備を持っており、自分の貯金の中からその一部をだすのである。
なぜ、こんなにお金を持っているのか。それはもちろん、最近の目覚しい工業化と貿易黒字によるが、それだけでは説明がつかない。日本やアメリカなど、経済がなんぼ景気のいいときでも、中央政府はいつも巨額の赤字財政をかかえている。
なぜなのか?日本やアメリカは今でも大企業が巨額の内部留保金をかかえている。トヨタなどはグループで17兆円の内部留保金を持っている。金融資本もそうである。中国の場合は、土地の全人民所有制度によって使用権を有償で貸し出すことにより、企業から多額の利益を回収する手段を持っているからである。そしてそれを低所得層に再分配するシステムを構築しているのである。これは、「社会主義市場経済」の決定的優位性によるものである。これは日本の産業資本家にとっても魅力ある制度である。為替の変動におびえることなく、内需の刺激策によって安定した生産を行うことができる。しかし、土地を担保として金を右から左へ動かすだけで利益をえている金融資本にとっては、自分の存在基盤をおびやかされる脅威である。
日本やアメリカが陰に陽に「中国敵視政策」をとり、「社会主義市場経済=資本主義」と宣伝し、「社会主義市場経済」と自国人民との結合を遮断しているのはこのためである。

強制収用の問題

中国では土地の利用は全人民の利益のためである。しかし「全人民の利益」とはどういうものか。それは指導性ある民主的な討議の中でしか生まれてこない。かつては誰かの一言が「全人民の利益」になる傾向があったが、最近はそれも大きく改善している。中国政府は大プロジエクトについては内外の意見を聴取し、何十年もかけて計画を立案し、実行段階においても説得と補償による解決を基本としている。それでもどうしても応じない住民に対しては、強制収用という手段をとる。
三峡ダム建設で百万とか二百万?という住民が移転を余儀なくされたが、もしあの水利建設を行わなければ、12億の食糧問題、防災問題が解決しないとなれば、農民の先祖代々の土地への愛着も、犠牲にせざるを得ないのではないか。かつてNHKで、移転住民に対し、二十年ほどかけて説得と補償交渉、移転先の問題などを解決するために走り回る行政マンを描いた番組を放映していた。
あのときの番組はよかったが、先日のNHKの「クローズアップ現代」はひどかった。中国の地震対策をとりあげていた。四川の大地震でも最も被害の大きかった北川県では、1万5千名ほどの住民のうち5000数百名が死亡または行方不明になり、1万人の被災者が出た。しかも、その場所の被災状況は、地形が変わるほどのもので、政府は復興を断念した。そして、北川県より平地にある、ある一つの村から耕地を徴用し、北川県の被災民も一緒に住める住宅を建設、もとの農民も北川県から移り住む住民もみんなが働くことができる会社をいくつか建設するという方針を出したのである。これに対してNHKは、「耕地を取り上げられる農民の不満」のみに焦点をあて、「独裁国家中国」を宣伝していた。ではNHKは、北川県の一万人の被災民はどうしたらいいと考えているのか?中国政府は、北川県の住民のコミュニティをそのまま維持しながら、生活も保障する道を選択したのである。神戸の震災復興では、コミュニティという考えは全くなく、各地に分散させられた独居老人の孤独が問題となった。そうした問題についてNHKは全くノーコメントである。
「私的所有制」に対置されなければならないのは「全人民所有制」であり、全人民の利益である。「全人民の利益」は「何人かの住民の利益」とは対立することもしょっちゅうある。それを解決するのが政治ではないか。
中国政府は最終手段として強制的な収用権を放棄することはありえないだろう。それは全人民所有制を守る上で絶対に手放すことはできないはずである。
日本の多くの排除には私も反対だが、それは、弱者切捨ての論理であり、「全人民の利益」とはかけ離れたものである。野宿者の排除でも、公的な住宅供給が行われている国と、金がなければ家にも住めない国では、全く意味が違う。

                           (文責 インバ)



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社会主義市場経済-中国の選挙制度と日本の選挙制度の違い

中国の選挙制度と日本の選挙制度の違い
2009・07・19

 中国と日本の選挙制度の最も大きな違いは、国会議員の選挙である。日本では、国会議員の選挙は直接選挙制である。中国では、県以下の人民代表大会の代表を直接選挙で選び、その県以下の人民代表大会の代表の中から省・自治区・直轄市の人民代表大会の代表が選ばれ、またその省・自治区・直轄市の人民代表大会の代表の中から全国人民代表大会(日本の国会にあたる)の代表が選ばれる。つまり、中国の全国人民代表大会の代表の選挙は間接選挙制ということである。中国では、下位の人民代表大会から上位の人民代表大会にあがっていくしくみなので世襲は有り得ない。

また、日本では、国会議員・地方議員などに立候補する場合、供託金を支払わなければならず、得票数が基準に満たない場合、その供託金はかえってこない。(公職選挙法92条・93条)日本ではある程度お金を持っていないと、立候補はできないということである。

日本では、選挙人の名簿は住民票(3ヶ月以上登録)によって作成される。
中国では、有権者の登録は選挙区に基づいて行われる。(戸籍)
 最近、都市で働く農民工に都市での選挙権がないことが問題になっていたが、都市でも選挙できるように改善の方向で動いている。
 
 日本では、地域に分けて議員を選出するが、中国では、居住点と生産点を混合する選挙区制をとっている。中国では、53年選挙法は選挙区を選挙民の居住状況にしたがって区分する方式をとっていたが、79年選挙法以降は、居住点の選挙区と生産単位の選挙区との混合制が採用された。ただ、79年選挙法では、生産単位の選挙区割は居住点の選挙区割より優位であったのに対して、1986年に行われた選挙法の部分修正を経て、居住点の選挙区割の方は逆に生産単位の選挙区割より優位となるようになった。そして、今日、現実的運用の下で、農村では基本的に居住点の選挙区制、都市では、おもに生産単位による選挙区割の方式が採用されている、という。
中国では代表の候補者は選挙区(選挙母体)ごとに決められることになっている。立候補の手続きは各政党・各人民団体による単独推薦か、各政党・各人民団体による共同推薦、あるいは有権者10人以上の連名推薦という3つの方式による候補者推薦から始まる。推薦者は選挙委員会あるいは大会主席団に候補者の状況を紹介すべきであり、全国と地方各クラスの人民代表大会の代表の候補者の定員は、選出すべき代表の定員より多いものであるべきであるとしている。有権者が直接選挙する人民代表大会代表の候補者は、各選挙区の有権者、各政党、各人民団体が指名して推薦する。選挙委員会がとりまとめてから、選挙日の15日間前に公布し、各選挙区の有権者グループが根回し、討論、協議を繰り返し、比較的多数の有権者の意見に基づいて、正式の代表候補者名簿を確定し、選挙日の5日間前に公布する。
 全国人民代表大会代表の選挙は無記名投票の方式をとっている。代表の選挙は一律に差額選挙(候補者数が定数を上回る選挙)であり、代表の候補者の定員は選出すべき代表定員より五分の一ないし二分の一多い。各政党、各人民団体は共同あるいは単独で候補者を推薦することができ10人以上の代表は連名で候補者を推薦することができる。全国人民代表大会代表の定員は3000人を上回らない。定員の分配は全国人民代表大会常務委員会によって状況に基づいて決定される。代表の候補者の名簿は選挙委員会がとりまとめてから選挙前の20日間に公布し、協議、討論、根回しを通じて、選挙前の5日間に正式の候補者の名簿を公布する。選挙する時に、有権者は投票して賛成するか、反対するか、棄権することができる。選挙の中で、代表の候補者は有権者の過半数の得票数を獲得して、当選することになる。もし過半数を獲得した候補者の定員が選出すべき定員を上回るならば、得票数の多少に従って当選するかどうかを順次決定する。もし得票数が等しくて当選者を確定できないならば、得票数が等しい候補者について再び選挙をおこなう。選挙の結果は人民代表大会主席団が有効かどうかを確定するとともに、それを公布する。選挙の経費は国庫によって支出され、選挙は全国人民代表大会主席団によって主宰される。省、自治区、直轄市の選出すべき全国人民代表大会代表の定員は、全国人民代表大会常務委員会が農村の一人の代表の代表する人口数は都市の一人の代表の代表する人口数に比べて4倍にあたるという原則に基づいて分配される。全国の少数民族の選出すべき全国人民代表大会の代表は、全国人民代表大会常務委員会が各少数民族の人口数と分布などの状況を参照して、各省、自治区、直轄市の人民代表大会に分配して選出し、人口が特に少ない民族は、少なくとも一人の代表があるべきである。選挙法はまた全国人民代表大会代表には適当な数の婦人の代表があるべきであり、婦人代表の比率を次第に高めることにしている。帰国した華僑同胞の適当な定員の代表があるべきであると規定している。


村民委員会

中国では農民が9億人と人口の70%を占め、農村部の政治的安定が国家の運営に極めて重要な意義を持っており、このため、農村部の政治制度の民主化が進められてきた。

中国の地方行政は地方人民代表大会(地方議会に相当)制度に特徴付けられる。現在、県以下のレベルの人民代表大会まで住民による直接選挙が行われており、差額選挙、つまり候補者数が定数を上回る選挙が導入され、農村部における民主化が進められた。さらに80年代に入り、郷・鎮以下における改革の動きとして「村民委員会」が登場した。
そもそも村民委員会は、広西壮族自治区のいくつかの村で直接選挙による自治組織が自然発生的に成立したのを受けて、共産党中央が農村政治改革モデルとして注目し、82年の現行憲法に「村民委員会は・・・・・基層大衆の自治組織である。村民委員会の主任、副主任及び委員は、住民がこれを選挙する」と名文で規定された。折から、83年に始まる人民公社の解体と人民公社となっていた郷政府の再建の中で、従来の人民公社の生産大体を中心に数多くの村民委員会が誕生していった。このような中で88年には「村民委員会組織法(試行)」が施行、これにより村民委員会制度が試行されている。

 村民委員会は、基層大衆の自治組織であり、郷・鎮や県のような政府機関ではないが、村民の集団所有の土地や企業の管理、小学校や道路の建設・管理、公益事業の実施、住民間の争いの調停、衛生や治安の維持などといった様々な住民の日常生活に関わる事務やこれらの実施に要する経費の負担金徴収も行っており、日本の町内会等とは異なり、実質的には政府機関のような役割を持っている。

 村民委員会は村民の居住状況、人口の多寡により、大衆自治の原則に基づき設立される。村民委員会の設立等は、郷・鎮人民政府が提案し、村民会議で討論し同意をした後、県級人民政府に報告、批准される。なお、97年末には全国で約73万9447の村民委員会が存在する。(中国統計年鑑98)

                           (文責 高橋)


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社会主義市場経済-7・5事件について

7・5事件について

ウルムチ7・5事件は、政治的意図をもった中国社会にたいする破壊活動である

①本日(7月18日)の中国のニュースによれば5日に暴動のおきた新疆にはカラオケ店も営業を回復したことが報じられ、生産や生活面で安定が戻ってきているようである。
なぜか。それは、7月10日には中国共産党の政治局常務委員会の会議が開かれたことと深く関係している。
人民日報によれば見出しは「中央政治局常務委員会 新疆社会の安定のため検討と配置を行う」となっており、新疆の社会を安定させることが新疆にとって喫緊の任務であり、社会の安定と社会主義の法制、人民大衆の根本的利益を守ること、各民族の大団結の旗印を掲げ各民族がともに団結奮闘することを大切に守りともに繁栄発展するすばらしい局面を大切にし、違法分子の違法犯罪としっかり戦い民族団結と社会の安定を意識的にまもることを強調した、とサブタイトルがつけられている。
(人民日報日本語版はhttp://j.people.com.cn/94474/6697899.html
この人民日報の日本語版をみても社会の安定と生活を守る取り組みが次々と紹介されているので参考されたい)

「日本人の判断を狂わせる報道  日経新聞にみる印象付け
7月10日の日経新聞には新疆暴動「首謀者ら厳罰に」中国共産党常務委会議との見出しで 「中国国営の新華社によると、中国共産党は8日夜、胡錦濤総主宰で」政治局常務委員会会議が開かれ「暴動の首謀者や実行者らに厳罰で臨む方針を決めた」とある。
しかし、同じニュースソースである新華社の記事を何度読み返しても、政治局常務委員会で話されたことは日経のいうような「暴動の首謀者や実行者らに厳罰で臨む方針を決めた」内容ではなく、暴力破壊活動が人民大衆に与えた損害、社会秩序がはなはだしく破壊されたのをいかにして正常にもどすのか、そのことをめぐって党と政府はなにをなすべきか、どういう配置で行うかが話されているのである。
それを日経の記事は暴動の首謀者や実行者に対し厳罰で臨む方針を決めた、と新華社の記事を引用しているふりをして、内容は見てきたようなうそをいっている。
政治局常務委員会が国の法律を超えて「厳罰」に処すると先に決めているかのような書き方ではないか。


②7・5事件は民族宗教問題ではなく中国社会の破壊を狙った事件である 
今年の6月エカテリンブルクで開かれた上海協力機構の拡大首脳会議では対テロ強化が議題の一つとして話され、中ロ合同の反テロ軍事演習が7/22-26の日程でおこなわれることも決まっている。また、今日上海協力機構は声明を発表し、ウイグルで起きた事件は中国の内政問題であること、反「三勢力」(暴力テロ・民族分裂・過激宗教)とは断固戦うことを表明した。
また、このエカテリンブルクの会議ではBRICSの初めての公式の首脳会議が開かれ、G8+5にみられるように後の国際会議の中での新興国、発展途上国の「発言権」が実現してきている。世界秩序は確かに公正合理的方向にまたの一歩を進めた。
さて日本では「ウイグルの母」と一部新聞で紹介されているが世界ウイグル会のラビア・カーデルとは何者か?
日本でもネットでインタビュー記事がでており中国で投獄されていたことを語っており、1998年の逮捕について新疆ウイグル人の人権を守るためであったと特に語っている。
しかし彼女が話していないのは、実は脱税と国家機密漏えいをしていた事実であり、それで逮捕されていたことである。

                           (文責 野村)
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