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「日中友好こそ日本にとっての最も有効な安全保障である」 「良き隣人めざすべき」 国交正常化50周年に向け、日中民間交流対話がオンライン開催

「日中友好こそ日本にとっての最も有効な安全保障である」
「良き隣人めざすべき」 国交正常化50周年に向け、日中民間交流対話がオンライン開催


 9/23、神奈川県日中友好協会と東京都日中友好協会の共催で、「『良き隣人めざすべき』 国交正常化50周年に向け、日中民間交流対話」をテーマに、ZOOM講演会が開催されました。西園寺一晃氏(東日本国際大学客員教授)と汪婉氏(程永華前駐日中国大使夫人・北京大学国際戦略研究院理事)が講師を務められました。

 西園寺氏は「右手で中国をなぐり、左手で握手を求めている」日本の態度を憂慮され「中米間の調停役こそが日本の生き残る道」だと指摘され、「日中友好こそ日本にとっての最も有効な安全保障である」と結論されました。

 汪婉氏の講演は、日本政府の「一帯一路」への対抗から共存へと変化する過程を分析する内容でした。
 それは「インド太平洋戦略」から「インド太平洋構想」への呼称変更に具体化されているというものです。未だに「『一帯一路』への対抗」一辺倒のメディア報道下で、意外にも日本政府は「『一帯一路』との共存」路線に舵を切ろうとしているのです。知りませんでした。驚きでした。日本の将来発展を見据えれば「『一帯一路』との共存」は極めて現実的で妥当な選択だと思います。
 しかし、「右手で中国をなぐり、左手で握手を求めている」と西園寺氏がおっしゃる様に、一方で与野党、メディアを挙げて対中国ネガティブキャンペーンを展開しながら、他方で経済的果実のみを追及してもうまく行かないのではないかと憂慮されます。今こそ日中友好を、声を大に訴えるべき時だと思います。

 最後の質疑応答のコナーでも白熱した議論が交わされました。西園寺氏から「中国が世界一の強国になったとき、中国は覇権主義にならないか?毛沢東や周恩来の時代は愛国主義と国際主義は一対のものとして論じられたが、今は愛国主義だけが語られているようで中国が覇権主義にならないか心配だ?」との質問がありました。これに対して汪婉氏は「中国は覇権主義にはならない」として次のように答えられました。「2000年の歴史を振り返れば、中国が日本に戦争を仕掛けたことはありません」「漢民族は何度も異民族支配を受けたが融和しました」「欧米はアヘン戦争やペリー来航で中国や日本にいろいろと押し付けましたが、中国は他国に押しつけたり排除したりしません」「世界中に米軍基地がありますが、世界中に(中国軍の基地は無く)中華街があります」「中国は押しつけたり排除したりせず『人類運命共同体』を目指します」と。
 毛沢東や周恩来の時代の「愛国主義と国際主義の統一」は、現在「人類運命共同体」という形で具現化されているのだと、汪婉氏のお答えに私は感慨深く納得しました。 (報告:伊関)


 汪婉氏の講演の基礎となった論文を講演資料として事前に頂いております。以下、汪婉氏の論文を貼付けますので是非ご覧ください。

また、中国国際放送局のホームページに詳しい取材記事が掲載されています。下記URLをクリックしてご覧ください。

「良き隣人めざすべき」 国交正常化50周年に向け、日中民間交流対話がオンライン開催_中国国際放送局 (cri.cn) ☚クリックしてご覧ください。


安倍政権後期の「インド太平洋構想」と中日の第三国市場協力 汪婉
北京大学国際戦略研究院/中国社会科学院近代史研究所研究員
(2020-10-07)

原文は王緝思氏が編集長を務める世界知識出版社2020年9月に出版した『中国国際戦略評論2020(上)』に掲載されている。

講演の概要
「一帯一路」イニシアチブが提起されてから6年余りが経ち、すでに「概念的な構想」から「細密性に富む」実践的な新たな段階へと踏み出している。
中国は一貫して共に協議し、共に建設し、共に分かち合う原則を強調してきたが、米国は依然として「一帯一路」イニシアチブを現存する国際秩序に対する挑戦だと見なし、警戒から妨害へとレベルアップしている。
しかし日本の態度の変化は意味深長で、無関心から「インド太平洋戦略」で対抗することに至り、最終的に「インド太平洋構想」を編み出し、且つそれが「一帯一路」構想と共存できることを表明し、中日が第三国市場協力を提起するまでに至った。
その転換には中日関係がプラスに転じたという大きな背景があるだけでなく、「一帯一路」共同建設への参加によって実益が伴う可能性があるという緻密な研究と慎重な判断があったからだ。
「一帯一路」建設が深く着実に進んでいる重要な時期に、日本の「脱戦略」によって「インド太平洋構想」に至ったプロセス、「一帯一路」構想と「インド太平洋構想」が共存する可能性、および中日の第三国市場協力の見通しなどの問題を政策面と学術面でしっかり研究する必要がある。

キーワード
「一帯一路」イニシアチブ/「インド太平洋戦略」
「インド太平洋構想」/第三国市場協力
中日関係

2013年9月と10月、習近平国家主席は「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」建設での協力を相次いで提起し、この二つを合わせて「一帯一路」イニシアチブと総称した。
この構想が提起された当初、日本側はこれを重視することはなかった。
まず、地理的に見て、日本は「一帯一路」の沿線国に属しておらず、「六廊六路」を含む「シルクロード経済ベルト」にも、「海上シルクロード」にも、日本は「一帯一路」当初の構想には含まれていなかった。
政治関係から見ると、2013年は釣魚島の領土紛争をめぐって中日双方の関係が極度に悪化し、武力衝突のリスクさえ危惧されていた時期であったため、「一帯一路」イニシアチブでの協力は論外であった。
日本の学界や経済界の認識も比較的に遅れており、「一帯一路」イニシアチブの地域範囲があいまいで、具体的な枠組みや計画がはっきり見えず、理念や内容も大雑把な「構想」だとに考えられていた。
2015年12月、中国主導でアジアインフラ投資銀行(AIIB)が設立され、英、仏、独などの先進国を含む57カ国が加盟して、その創設メンバー国となり、その後さらに短期間で加盟国は93カ国に増えた。
中国政府は、AIIBはあくまでも国際開発銀行であり、「一帯一路」建設と直接関係がないと繰り返し強調してきたが、AIIBの順調な発展は日本が「一帯一路」イニシアチブを重視するきっかけとなった。
「一帯一路」が「ビジョン」から徐々に現実化し、成果がどんどん現れてくるにつれて、特に中国との「一帯一路」に関する二国間協力文書の調印が増え続け、協力の枠組みが形成され、さらに明確な法解釈を持つようになってからは、西側は漸く「一帯一路」は伝統的な国際経済とルールに基づく自由貿易なのか、既存のルールと対立するシステムなのか、それとも全く新しい秩序を創造しようとしているのかといった問題を真剣に考えるようになった。
一方、米国は同盟国を束ねて「一帯一路」建設に圧力をかけ始め、中国が「債務のわな」外交を実施していると非難してきた。
2016年8月、安倍晋三首相は「インド太平洋戦略」を打ち出し、「法の支配に基づく、自由で開かれたインド太平洋の海洋秩序」を維持し、価値観を同じくするインド太平洋地域諸国と連携して安全保障協力を強化し、かつ「質の高いインフラ整備」を推進すると主張した。
しかし日中関係が徐々に改善されるにつれ、日本政府は2018年11月に「インド太平洋戦略」を「インド太平洋構想」に書き換えた。
安倍首相は李克強首相訪日を歓迎するあいさつの中で、日中関係を競争から協調へ転換しなければならないと表明したことについて、ある日本の学者は、「インド太平洋戦略」から「インド太平洋構想」への転換は、日本政府が「競争」から「協調」へ転換する姿勢を示していると指摘する。
いま、日本の「インド太平洋構想」は、軍事安全保障を強調する米国の「インド太平洋戦略」と距離を置き、少なくとも表面的には地政学的な競争色を弱め、経済共同建設の観点から中国と協力して国際社会での共同発展を推進することを強調している。
一部の日本の学者は「インド太平洋構想」と「一帯一路」イニシアチブとの共存の可能性を検討すべきだと提案した。
一方、中国の学術界では、まだこれについての真剣な研究が始めておらず、「インド太平洋構想」については、多くは批判的な見方をしており、国際公共財の提供を強化しようとする試みについての判断も慎重な姿勢を見せている。
実際には、中国政府の政策の方向性は非常に明確であり、「中国はグローバル化を受け入れる立場から『一帯一路』建設を推進しており、『一帯一路』は人類運命共同体構築の推進を実践する重要なプラットフォームだ」としている。
中国と日本はグローバル化プロセスの支持者として、自由で開かれた、多国間主義など国際秩序の原則を守る面で幅広い利益と共通の立場を持っている。
中国政府の政策実施も非常に迅速で、2018年に中日間でいち早く第三国市場での協力に関する協定が結ばれ、「一帯一路」の枠組みの下で中国と先進国の間で展開する第三国市場協力の先陣を切った。
こうしたことからも「一帯一路」イニシアチブが如何に開放的でかつ包摂性に富むかが見て取れる。
日本は「開放性、透明性、経済性、財政健全性」という4つの基準を取り上げ、中日の第三国市場協力に参加する前提条件としている。これに対して中国側もしっかりとこれに対応している。
習近平主席は2019年4月に開催された第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの基調講演で、「質の高い発展の方向に沿って絶えず前進し」「受け入れ可能で、.普遍的な国際ルールと基準に基づいて実施し」「商業・財政上において持続の可能性を確保」しなければならないことを強調した。これは「一帯一路」が「細密性に富む」段階に踏み入れたことを意味するキーワードとなった。
「一帯一路」イニシアチブと「インド太平洋構想」が地政学上において、対立を避け経済を共同で建設する立場からより多くの協力が実現できるか否かは、中日間の第三国市場協力は一つの検証モデルとなる。双方は小異を残して大同を求めるという立場に立って着実に推進し、中日関係長期発展のために信頼を蓄積し、基礎を固めて行くことができる。


一、「インド太平洋戦略」を以て「一帯一路」に対抗する
2012年年末に第二次安倍政権が誕生し、対外政策において「地球儀を俯瞰する外交」「積極的平和主義」「インド太平洋戦略」を相次いで打ち出した。
習近平主席が2013年9月に提唱した「一帯一路」イニシアチブに対して、安倍首相は2016年8月にケニアで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD)で、米、印、豪などに先駆けて「自由で開かれたインド太平洋戦略」(Free and Open Indo-Pacific Strategy)を正式に打ち出し、基調講演で「日本は太平洋とインド洋、アジアとアフリカの交わりに責任があり、力による威嚇を許さず、自由と法の支配、そして市場経済を堅持していく。アジアとアフリカの両大陸を結ぶ海を、平和でルールに基づく海にしていく。さらにはアジアに根ざした民主主義、法の支配、市場経済をアフリカ全体に広めていかなければならない」と強調した。
日本の外務省は「インド太平洋戦略」について以下の見解を示している。
(1)インド太平洋の平和と安定の基礎となる国際秩序の維持という基本原則を通じて、法の支配、航行の自由、自由貿易などの基本的価値観を普及・強化する。
(2)「モノ」「ヒト」「制度」の3つのつながりを改善することで、経済繁栄を追求する。「モノのつながり」とは、質の高いインフラのことを指す。「人のつながり」とは、主に教育、職業訓練、友好的往来を指す。「制度的連結」とは、経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)を通して、協力と共通のルールを形成することを指す。
(3)海上における法の執行能力の向上、人道的支援、災害救助などの活動を通じて平和と安定を守る。以上を「インド太平洋戦略」の3本柱と呼ぶ。
京都大学の中西寛教授は、「インド太平洋戦略」の形成は主に台頭を続ける中国に焦点をあてていると指摘する。
中国は「海洋強国論」を掲げて軍事力を増強し続け、アフリカで資源を獲得し、大規模なインフラ投資を核とした「一帯一路」イニシアチブを打ち出しているが、これらは西側主導の既存の国際秩序と抵触している。
日米は「自由で開かれたインド太平洋戦略」についての認識は完全に一致しているわけではないが、法の支配に基づく地域秩序や海洋航行の自由維持、地域や各国間の安全保障協力の推進などでは見解が基本的に一致している。
トランプ米大統領は2017年11月東アジアを訪問した際に、日本が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」に賛同を示し、且つこれは米政府の新たなアジア太平洋戦略だと宣言した。
2017年12月、アメリカは『国家安全保障戦略報告書』を公表し、中国がインド太平洋地域で国家主導型の経済モデルを拡大することで、アメリカの価値観と利益に反する世界を作り出そうとしていると指摘した。
2018年1月、米国の「国防戦略報告書」は、中国は米国の「戦略的競争相手」であり、中国の目的は国際社会における米国の影響力を弱めることである。中国は略奪的な経済手段を利用して隣国を脅かしたり、南シナ海で軍事力を強化させるなどは、インド太平洋地域で秩序を再編し、中国の利益を獲得するためだと指摘した。
ペンス米副大統領は、米国はインド太平洋全域で自国の利益を主張し続けていく。そして「自由で開かれたインド太平洋地域」というビジョンの実現に向けて、米国はインドからサモア諸島までの全域で、自国と価値観を同じくする国々との連携を強めていくと述べた。
2018年5月、米国は米軍太平洋軍司令部を米軍インド太平洋軍司令部に名称変更し改組した。その上で、日米はインド、オーストラリアとともに「インド太平洋戦略」の中核4カ国を構成した。
中国の「一帯一路」イニシアチブに対抗し、日本政府は「質の高いインフラ整備」に力を入れ続けてきた。2015年5月、日本は『質の高いインフラパートナシップ』を発表し、この先の5年間で1100億ドルのインフラ建設投資基金を提供することを約束し、これまでの5年間に比べて30%アップし、AIIBの法定資本金の1000億ドルをも超えている。
2016年5月、日本はG7サミットで新興国・途上国のインフラ整備支援には「質の高いインフラ投資」が必要だとする、いわゆる「G7伊勢志摩原則」を主導的に策定し、「質の高いインフラ」の重要性を世界に訴えた。
2016年9月、日本はG20杭州サミットで「質の高いインフラ」を改めて強調し、さらに2019年6月に開催されたG20大阪サミットでそれを優先議題とした。日本は欧州の新アジア戦略におけるインフラ投資の諸原則にも呼応している。

二、日本政府の「一帯一路」イニシアチブに対する態度の変化
2017年前後から、中日関係が徐々に改善するにつれて、「一帯一路」構想に対する日本政府の態度にも変化が見られ始めた。
北京で開催される第1回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに参加するか否かを判断する前に、日本政府は急遽専門家諮問グループを立ち上げ、3つの問題を検討させた。
一つは「一帯一路」イニシアチブに関する中国政策の動向を把握し、「一帯一路」が中国外交全体におけるポジショニングを判別することであり、二つ目は「一帯一路」に関連するプロジェクトとアジアインフラ投資銀行の資金調達方法などの分析で、三つ目は、「一帯一路」関連国の立場に立って、このイニシアチブの意義と直面する問題を分析することである。
東京大学の川島真教授は、「一帯一路」は中国の過剰生産能力を解決する手段だと考えている。確かにこれはアメリカのアジア太平洋復帰戦略に対抗し、周辺外交を基礎にグローバル化を推し進める新しい試みではあるが、まだ模索段階にあり、中身も固まってなく、実践において試行錯誤している。しかし「一帯一路」が一たび「精確な投資」段階に入ると、国内財政は即座に難題に直面することになるだろうと指摘する。
中居良文学習院大学教授は、中国の「一帯一路」イニシアチブはオバマ政権が主導する「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)に対抗する狙いがあるとの見方を示している。中国はTPPを米国がアジア太平洋諸国を抱き込んで中国を包囲する手段だとみなしている。しかしトランプ大統領が登場し、米国がTPPから離脱したことで、「一帯一路」イニシアチブの戦略的な意味合いが相対的に薄れ、経済的な役割が重要視されるようになった。
2014年以前は、「一帯一路」の屋台骨が大きすぎて、沿線諸国の状況も非常に複雑で、一部の国の信用が低く、腐敗が蔓延し、国内政治が不安定で、どんなプロジェクトでもこのような劣悪なビジネス環境の中では継続することが難しかったのである。中国はすでにこうした問題を重視し、2015年以降は投資先の選別を始めていると指摘する。
中居良文氏はさらに、「一帯一路」の沿線諸国は過去の「中華帝国」を中心とした貿易体制を今なお忘れておらず、過去と異なるのは、現在の中国周辺国の多くは安全保障の面では米国に依存しているが、経済的には中国に依存するようになりつつあるとも指摘している。
丸川知雄東京大学教授は、中米両国の国内総生産(GDP)、1人当たりGDP、輸出入貿易額、対内外直接投資、購買力平価などを比較することで、中国経済は米国を追い上げ、途上国への影響力も拡大していること、そしてこれらの国々が中国への依存をより一層深めていることを証明した。特に中国の周辺国は中国への原材料と原製品の輸出に大きく依存しているため、自国の発展水準向上が困難になっているという。
中国と「一帯一路」沿線諸国との貿易関係は世界経済の「中心」とその「周辺」の構造を再構築することになるであろう。
さらに多くの見方は、中日両国の実力はすでに逆転しており、日増しに「大国化」する近隣中国に直面して、日本はもっと長期的な視点を持って自国の安全保障利益と経済利益を捉えて行かなければならないため、中国との関係改善はもはや大勢の赴くところであると考えている。
2017年5月、安倍首相は二階俊博自民党幹事長に政府代表団を率いて第1回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに参加するため中国へ派遣し、そして自らの親書を託した。
習近平主席は二階氏と会見した際に、「中日両国は経済のグローバル化を推進するに当たって共通の利益を持っており、『一帯一路』イニシアチブは中日両国の互恵ウィンウィン、共同発展の新たなプラットフォームである」と述べた。
同年6月、安倍首相は東京で開催された第23回国際交流会議「アジアの未来」で講演を行い、「今年、ユーラシア大陸には時代を超える変化が見られ、中国の貨物列車が初めて英仏海底トンネルを越えて義烏と英国を連結させた。「一帯一路」は海洋の東西と周辺地域をつなぐ潜在力ある構想であり、これがアジアおよび世界の平和と繁栄に貢献することを期待している」と述べた。さらに、「一帯一路」は自由で公正な環太平洋経済区と仲良く付き合い、インフラ建設にはより開放的で、透明かつ公正な入札方式を採用し、関連プロジェクトが債務の持続可能性を持つなどを含む一定の条件の下であれば、日本は中国に協力して行きたいと表明した。
同年7月、ドイツのハンブルクで開催されたG20サミットにおいて、安倍首相は習近平主席に対し、「『一帯一路』は潜在力ある構想であり、日本は支援と協力を望んでいる」と表明した。
同年11月、ベトナムのダナンで開かれたAPECサミットで習近平主席は安倍首相と再び会談し、両国が協力するためのガイドラインを固めた。一方、李克強首相と安倍首相はASEAN首脳会議の際に、日中両国が経済交流を強化し、第三国市場での日中民間経済協力を強化することで認識を一致した。
このように、安倍政権は少なくとも表向きは、「インド太平洋戦略」を以て「一帯一路」イニシアチブをけん制する姿勢を変えて行った。
2017年12月4日、安倍首相は日本経済団体連合会が主催する「第3回日中企業家及び元政府高官対話」において、「アジアのインフラ整備をめぐっては、日本は『自由で開かれたインド太平洋戦略』を堅持すると同時に、中国が提唱する『一帯一路』イニシアチブと大いに協力することができ、双方経済界の深い融合が日中関係改善の大きな原動力になることを期待している」と述べた。その後も安倍首相は多くの場で、日中双方が第三国で経済協力を行うことは両国にとって有益であるだけでなく、相手国の発展にも有益であると言明した。
安倍首相が先述のような積極的な発言を表明した後、日本政府は自国企業が中国企業と第三国において共同で「一帯一路」協力を展開する際の立場を強く主張した。それには、プロジェクトの経済面での合理性、開放性、透明性、債務国の債務持続性など4つの条件の再確認が含まれている。
2017年11月、日本の首相官邸は外務省、財務省、経済産業省、国土交通省の4部門と「一帯一路」建設に参加するためのガイドラインを共同で完成させ、その中で日中両国の民間企業のビジネス協力を推進するため、手始めに省エネ・環境保護、アジア・欧州物流などの分野から協力を始めても良いと指摘した。
2018年5月、李克強首相は中国国家首脳として8年ぶりの日本公式訪問を行った。中国の国家発展改革委員会、商務部と日本の経済産業省、外務省は共同で『中日が第三国市場協力に関する覚書』に調印した。
同年10月、『中日平和友好条約』締結40周年にあたり、安倍首相が日本政府のトップとして7年ぶりに中国を公式訪問し、両国は第1回中日の第三国市場協力フォーラムを共同開催した。李克強首相はあいさつの中で、「中日両国の第三国市場協力は中日により広い空間をもたらした。中日は第三国市場において『悪質な競争』を避け、相互補完によって優位性を大きく発揮し、相互補完の空間をさらに大きく広げ、第三国市場で相互補完・ウィンウィンの協力を実現しなければならない」と指摘した。安倍首相は、日本側は中国側と共に開かれた透明性と市場化の原則に従い、第三国市場におけるホスト国のニーズと国際基準に合致した協力プロジェクトを展開し、互恵・ウィンウィンとより多くの利益の獲得を実現したいと述べた。中日両国企業は計52件に上る協力の覚書を締結し、その総額は180億ドルを超えた。さらにこれをきっかけに、中日は東南アジア、南アジア、ユーラシア大陸での第三国協力も徐々に動き始めた。
以上のように、首脳外交によって日本政府は「一帯一路」に対する態度を比較的急速に転換させた。日本側では、安倍政権は「一帯一路」への支持を中日関係改善の足がかりとする考えを持っており、さらに首相官邸の主導と日本政府の推進の下で、各界の「一帯一路」への関心度が急速に高まり、認識も次第に変化してきた。

三、「一帯一路」イニシアチブと「インド太平洋構想」は共存できるか
日本政府の「一帯一路」への姿勢転換に伴い、「インド太平洋戦略」が「インド太平洋構想」に変わり、中国封じ込める色は少なくとも表面的には薄れてきている。日本のかつての「インド太平洋戦略」は明らかに「一帯一路」に向けていると一般的に思われているが、10年前に日本が初めて「二つの海の交わり」「インド太平洋」の概念を提起した時から、2016年に「インド太平洋戦略」を打ち出し、さらに2018年にそれを「インド太平洋構想」に変え、最近になって安倍首相および日本の外務省は「自由で開かれたインド太平洋構想」に関する政策表明に至るまで、日本の「インド太平洋」政策に関する具体的な内容は大きく変化し、「脱戦略」とまで呼ぶ日本の学者もいて、激しい論争を巻き起こしている。

(1)日本政府の「インド太平洋」政策の中身の変化
ここで日本政府が掲げた「インド太平洋」の概念を振り返ってみる必要がある。安倍首相は第一次内閣時代に「自由と繁栄の弧」という価値観の外交政策を打ち出した。
2007年8月、安倍首相はインドの国会で演説し、インド洋と太平洋の「二つの海の交わり」概念を初めて提起し、「太平洋とインド洋は自由の海、繁栄の海として交わりつつあり、地理的な境界線を突破し、『拡大されたアジア』を形成するだろう」と述べた。
さらに、日本とインドは手を結んでアメリカとオーストラリアを「拡大されたアジア」に引き入れ、太平洋全体を網羅する巨大なネットワークを形成し、人、モノ、資本、知恵が開かれた透明性のもとで自由に行き来できるようにする。そして自由と繁栄を追求することは、日印両民主主義国の大きな責任である」と表明した。
防衛大学校の神谷万丈教授は「安倍首相は演説の中で中国を名指しこそしなかったが、二つの海が交わることを通して日米印豪の連携を強化し、台頭する中国に力を合わせて対抗しようという意図は明らかだ」と指摘する。
2012年年末、安倍首相は再び政権に就き、「アジアの民主的セキュリティ・ダイアモンド構想」を提起した。
2013年、安倍首相は米戦略国際問題研究センター(CSIS)で「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」と題した演説を行い、いずれも「二つの海の交わり」をスローガンに掲げ、価値観を同じくする民主国家に「緊密に協力し合い海洋という世界の公域を共に守る」よう呼びかけた。当時は釣魚島の領有権争いをめぐって中日双方の関係が極度に悪化していた時期で、安倍首相は東シナ海における中国の脅威を暗に指し、諸海洋国に抵抗するよう呼びかけた。この時期の日本の「インド太平洋」概念は、地政学的な色彩が鮮明で、戦略的に中国を封じ込める側面が際立っていた。従って、日本が「インド太平洋」概念を提起した最初の動機は、台頭し続けている中国を狙ったものであることは疑いない。
2016年、安倍首相は「インド太平洋戦略」を正式に打ち出した。これまでの「インド太平洋」概念と比較して、「インド太平洋戦略」が際立って変化したのは、コネクティビティ、すなわち「三大連結」を打ち出したこと、そして地域の範囲を明確に画定したことである。「インド太平洋戦略」の第二の柱は、アジア・アフリカ両大陸と太平洋、インド洋の二大海洋を統合し、東アジアを起点に南アジア、中東、アフリカ大陸に至るまで、「質の高いインフラ整備」を推進することである。
先述のように、中国は「一帯一路」イニシアチブの下でインド太平洋地域の海陸インフラ整備を進めており、日本は中国の地域への影響力が日増しに拡大し、従来のリベラルな国際秩序が揺らいでいることを痛感していた。従って、日本は、日本の主導による、法の支配に基づく、自由で開かれた秩序の構築を加速しようとしていた。しかし、安倍首相が「インド太平洋戦略」を打ち出して以来、米、印、豪が呼応している以外は、他の国は積極的ではなく、特に二つの海が交わっている位置にいるASEAN諸国は「インド太平洋戦略」の中の「戦略」という言葉に反感を抱いていた。「インド太平洋戦略」は中国を抑止する意図を含んでいることは明らかであり、ASEANは「国を選んで隊列を組む」(どちらかの一方に加担し仲間になる)ことに懸念を持っているため、ASEAN独自の「インド太平洋協力」理念を掲げ、安全保障ではなく経済協力を強調していた。また、安倍首相の「インド太平洋戦略」がインフラ整備において「質の高さ」を繰り返しながらも、魅力的なプロジェクトをなかなか出せず、有名無実化していたことも、効果的な局面打開に失敗した大きな要因である。
2018年、中日両国首相の相互訪問は中日関係を正常な軌道に戻し、両国関係がさらに改善する方向へ力強く後押しした。この過程で、中国に対する封じ込め、排斥する「インド太平洋戦略」は、中国と協力が可能な「インド太平洋構想」へと変化していった。
2018年1月22日、安倍首相は国会での施政方針演説で、「太平洋からインド洋に至るまで、ここの人々は古くから広大な海を舞台に豊かさと繁栄を享受してきたが、航行の自由と法の支配が基盤となっている。この海は、未来においても平等に人々に平和と繁栄をもたらす公共財でなければならない。この方向に沿って中国と協力することで、アジアのインフラ需要増加に対応することができる」と述べた。安倍首相の発言は、「インド太平洋戦略」の下で日本が中国と協力する可能性を示唆している。また、日中関係について「日本と中国は地域の平和と繁栄に重要な責任を負っており、切り離せない関係であり、大局的な観点から中国と安定および友好関係を発展させ、国際社会の期待に応えるべきだ」とも述べた。
その後、日本は「一帯一路」建設に参加する具体的な方法を模索し始め、中日の第三国市場協力を打ち出した。その過程において、「戦略」という言葉は「構想」に置き換えられた。
安倍首相は2018年11月の中国公式訪問後に、「インド太平洋戦略」を「インド太平洋構想」に置き換えた。
2019年1月28日、安倍首相は国会施政方針演説で、「インド洋から太平洋までの広大な海と空を、すべての国の包摂的な平和と繁栄の基盤にしていかなければならない。そのために、日本はこの構想を共有するすべての国と手を携えて、『自由で開かれたインド太平洋』を構築していきたい」と述べた。ここで「構想」という言葉が出てきたかわりに、「自由、民主主義、人権、法制など、価値観を共有する国と手を結ぶ」という内容が削られていた。
日本共同通信社論説員の岡田充氏は、それは「日中関係は改善していく重要な時期にあり、日本が中国に戦略的に対抗しているという誤解を与えたくなかった」と指摘した。
安倍首相はさらに日中関係について、「昨秋の訪中以降、日中関係は完全に正常な軌道に戻った。これからの両国は『国際ルールの下で競争から協調へ』『互いに脅威とならない』『自由で公正な貿易体制を共に発展させる』ことで、日中関係を新たな段階に押し上げていく」と述べた。
注目すべきは、2019年1月に日本外務省の「自由で開かれたインド太平洋構想」の三本柱についての紹介には、「価値観を共有する国が手を結ぶ」といった内容が削除されただけでなく、さらに、これは「開放・包摂の概念であり、いかなる国をも排除せず、新たなメカニズムを設けず、既存の地域協力メカニズムを代えたり、または弱体化させたりしない」とわざわざ表記したことだ。
2019年3月27日の参議院予算委員会で安倍首相は、中国「一帯一路」に参加する具体的な行動について、「沿線国への合理的な融資、関係国の財政の健全性、プロジェクトの開放性、透明性、経済性の確保」を満たすことを前提に、中国と第三国市場協力を深めたていきたいと述べた。
先述の日本政府の態度転換について、ある日本の学者は「一帯一路」イニシアチブと「インド太平洋構想」の両方ともコネクティビティ―(三大連結)を強調しており、且つユーラシア大陸、インド洋と太平洋、アフリカ地域におけるインフラ建設の需要は膨大であると指摘している。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の予測によると、2016年~2030年の15年間に、アジアの発展途上国でのインフラ建設に26兆ドルの資金が必要であり、年平均で1.73兆ドルが必要になる。
20か国の財団から委託され設立したグローバルインフラストラクチャハブ(Global Infrastructure Hub)は、2040年までアフリカのインフラ建設に使われる資金の不足額は1.7億ドルに達する予定だと予測している。つまり「一帯一路」と「インド太平洋構想」への投資額を足してもその需要に応えられない計算である。従って、両者が互いに競争し合うよりは、手を携えて共同開発した方が良いということだ。
日本政策大学の田中明彦学長は、日本のメディアは「インド太平洋戦略」を中国の「一帯一路」イニシアチブに対抗する外交政策として宣伝しがちだが、これは自由主義的な世界秩序の維持を目指す日本の外交戦略を短小化した近視的な見方だ。インド太平洋地域の社会経済発展について言えば、この地域のインフラ整備の需要は膨大であるため、「インド太平洋戦略」は「一帯一路」イニシアチブと競合すべきではなく、むしろ協調関係を築くべきであると指摘した。

(2)中国は「一帯一路」イニシアチブの協力方式を絶えず最適化している
2018年、中日は「第三国市場協力」の協定を結んだことによって、「一帯一路」の枠組みの下で中国が先進諸国間で展開する第三国市場協力の先陣を切った。いま、中国は「一帯一路」共同建設の二国間協力を積極的に推進しているだけでなく、多国間ルートをも模索し始めている。中日で第三国市場協力に続き、中国はスペイン、オランダ、ベルギーなど14カ国とも第三国市場協力文書に調印した。
協力の中身は二国間協力と一致しているが、形式は三国間、またはさらに多い国間に進化している。このことからも、「一帯一路」イニシアチブは開放的で包摂的なものであることがわかる。『一帯一路』は規則を排斥しないが、規則にとらわれず、むしろ発展的な戦略を取り入れ、より開放的で実務的かつ柔軟で多様な制度形式を提唱して行きたい。
規則に慣れている日本は、中日の第三国市場協力について、「開放性、透明性、経済合理性、関係国の財政健全性」という四つの基準を提起し、これを日本側が協力に参加する前提条件とした。中国は「一帯一路」共同建設の実践の中で絶えず政策と基準を改善し、協力方式を最適化している。
2018年4月に中国は対外援助事業を統括的に計画する部門――国家国際発展協力署を設立し、対外援助活動の政策計画と統一的な調整機能を強化した。
2018年8月、習近平主席は「一帯一路」建設推進5周年座談会で、過去5年間の成果を総括する一方で、「一帯一路を質の高い方向に発展させて行かなければならない」「企業の投資行動を規範化し、法令遵守の経営を徹底させ、環境保護に注意し、社会的責任を果たすようにすべきだ」と強調した。
2019年4月に開催された第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムにおいて、これらの政策調整がさらに詳しく説明された。習主席は基調講演で、次のように指摘した。「『一帯一路』共同建設が質の高い発展に向けて絶えず前進するよう推進する」「企業のプロジェクト建設、運営、調達、入札などは、受け入れが可能な普遍的な国際ルール・基準に基づいて行うとともに、各国の法律・法規を尊重しなければならない」「商業・財政上の持続可能性を確保し、全力で行いそして全力で成し遂げると共に有終の美を飾らなければならない」。
習近平主席は演説の中で「『一帯一路』の債務持続可能性分析の枠組み」についても言及したが、これは中国財政部が国際通貨基金(IMF)と世界銀行が発表した低所得国の債務持続可能性の枠組みを参考にして、「一帯一路」諸国の国情と発展の実情に照らし合わせて債務持続の可能性を分析するツールとして制定したものである。

(3)「一帯一路」イニシアチブと「インド太平洋構想」
2019年5月、中国社会科学院日本研究所は「世界非常事態下の中日関係」をテーマとする国際学術シンポジウムを開催した。注目すべき現象として、ワークショップのテーマは非常に多岐にわたるものであったが、出席した日本側の政治家、国会議員、駐中国大使、経済界代表、著名な学者は、例外なく習近平主席が第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムで行った、「中国は質の高いインフラ建設を包摂的な発展を推進する重要な足がかりとし、高い基準、民生優先、持続可能な目標の実現に尽力することに賛同する」という演説に焦点を当て高く評価した。
シンポジウムにおいて、日本側の学者から、中国の「一帯一路」イニシアチブと日本の「自由で開かれたインド太平洋構想」が共存できるか否かという質問を重点的に提起した。
東京大学の高原明生教授は、「日中関係をいかにさらに強化していくか、私が最も注目しているのは、中国が提唱する『一帯一路』と、日本が提唱する『自由で開かれたインド太平洋構想』が共存共栄できるか否かだ」。そしてこの二つの構想には、戦略的な側面と経済的な側面の両方が考慮されている。日本が提起した「自由で開かれたインド太平洋構想」はアメリカの「インド太平洋戦略」と趣きが異なり、日本はより経済を重視しており、中国が提唱する「一帯一路」も経済を重視している。
「一帯一路」イニシアチブが開放性、透明性を実行し、対象国の財務負担を増やさないようにすることができれば、日本は「一帯一路」プラットフォームで中国と協力することができる。同様に中国側も日本側に条件を提示し、『インド太平洋構想』のプラットフォームで日本と協力することができる」と述べた。
田中明彦氏は、「国際ルールや基準を順守し、各国の法律や法規を尊重する」と中国側が明言しているため、「これによって、中国と沿線諸国とのイデオロギー面での対立をある程度緩和することができる。そして中国が開発モデルを対外輸出しようとする意図はないことを国際社会に示すこともできる」と述べた。
日本は政策面や学術面で情勢の変化に鋭く反応し、いち早く判断を下した。こうした動きに中国の学界も見習うべきである。
これまでの中国政府の政策の方向性は一貫して明確であり、「一帯一路」イニシアチブを提起した当初から現在に至るまで脈々と進められてきている。
2013年から、習近平主席はさまざまな公の場で、「一帯一路」建設は決して既存の地域協力メカニズムとイニシアチブを取って代わろうとするものではなく、既存のものを基礎にして、沿線諸国の発展戦略と相互連結、優位性の相互補完の実現を推進するものである。『一帯一路』イニシアチブの共同建設は地政学上のツールではなく、実務協力のプラットフォームである。中国はグローバル化を受け入れる立場から、「一帯一路」共同建設を他国と利益を共有する新しい国際協力のプラットフォームにして行きたいと強調している。
国際社会に対する政策提言だけでなく、内部に対しても、2015年10月の政治局学習会議で、習近平主席は「一帯一路」建設は共に商う、共に建設する、共に享受する原則を堅持すべきだと述べた。
2018年5月15日の中央外事工作委員会第1回会議でも、「『一帯一路』建設はわれわれが人類運命共同体を推進する重要な実践プラットフォームであり、各方面の共通認識を結集し、協力のビジョンを計画し、対外開放を拡大し、各国との意思疎通、協議、協力を強化し、『一帯一路』建設を深くかつ着実に推し進めて行かなければならない」と指摘した。
いまのアジアは世界で最も発展の活力と潜在力を備えた地域であり、世界人口の3分の2と経済総量の3分の1を有している。同じアジアに位置する中国と日本は世界第2と第3の経済大国として、世界経済の発展をリードする共通の任務を担っている。中日は経済グローバル化の受益者として、開放型世界経済、多国間主義などの国際秩序原則の面で幅広い利益と共通の立場を有している。中国政府は「一帯一路」イニシアチブをグローバルガバナンスを推進し、発展のチャンスを共有する新しい国際協力のプラットフォームと見なしている。
習近平主席はさらに中国は日本が掲げる「インド太平洋構想」が異分子排斥の地政学色を薄め、そしてこれを国際協力を推し進める公共財にするために尽力していくことを期待している。『一帯一路』が追求しているのは百花斉放の大きな利益であり、一人勝ちの小さな利益ではない。そしてアジアひいては世界の繁栄と安定を共に促進することこそが、中日両国が追求すべき目標であると述べた。

四、おわりに
「一帯一路」構想は数千年に及ぶ中華文化の深い英知に基づいて打ち出された壮大な青写真であり、古の「シルクロード精神」から今日の「人類運命共同体構築」の理念に至るまで、その価値観は確かに西側が打ち立てた地政学戦略、軍事同盟、同じ価値観を持つ国間だけで規則・秩序を制定するなどといった狭隘な観念と異なる。
日本を含む一部の西側諸国は当初、「一帯一路」イニシアチブの壮大な意義をまったく理解できなかった。中国の改革開放初期に鄧小平が提起した「石橋を叩いて渡る」という社会主義市場経済理論を理解できなかったと同様である。これには地政学的な競争やイデオロギー的偏見に加え、文化という深層面の違いにも原因がある。「一帯一路」の初期成果の刺激によって「インド太平洋戦略」が生まれたが、一方、「インド太平洋戦略」には地政学的な競争の側面がある反面、「コネクティビティ―」を強調する側面もあり、これは正に「一帯一路」イニシアチブの影響によるものであると見るべきである。
中日関係の改善と「一帯一路」沿線諸国の切実な訴えによって、日本は「インド太平洋戦略」を「インド太平洋構想」に転換させ、地政学的な競争の色合いが次第に薄れ、実務協力がより強調されるようになった。そして「一帯一路」の枠組みの下での中日第三国市場協力の実現は、日本の「一帯一路」建設に対するさらに一方進んだ共感である。
最近、ある日本のシンクタンクは政府に対して、外であれこれを語るよりも、実際に参加してその最適化を助けるなど、ポジティブな役割を果たすべきだと提言している。
「一帯一路」は実施の過程において改善と高度化を絶えず続けて行く必要がある。日本側から提起した協力条件は、「一帯一路」共同建設にとって有利であれば、中国側は開放的で包摂的な態度で好意的に受け入れるべきだ。人類運命共同体構築の実践プラットフォームとして、「一帯一路」は全人類の知恵を結集していかなければならない。「一帯一路」の青写真を一筆で書き上げることは不可能であり、特に「細密画」にする段階で提起される日本の意見と提案は非常に建設的であるはずで、きっと数年後にそれが実証されるであろう。
中国の「一帯一路」イニシアチブと日本の「自由で開かれたインド太平洋構想」が共存できるか否かについては、習近平主席の次の言葉から答えを見いだすことができる。『一帯一路』共同建設構想は中国に源を発しているが、チャンスと成果は世界に属している。中国は地政学的な駆け引きをしない、閉鎖的で排他的なサークルを作らない、人を凌駕するような強引な買いたたきをしない。特に指摘しなければならないことは、「一帯一路」建設は全く新しいものであるため、協力に際し異なる意見が出るのは極めて自然なことであり、各方面が共に協議し、共に建設し、共に分かち合うという原則を堅持して従えば、必ず協力を増進させ、見解の相違を解消させることができ、そして『一帯一路』を経済グローバル化の潮流に順応する最も広範な国際協力のプラットフォームに作り上げて行くことができる。『一帯一路』の共同建設で各国の人民により良い幸福をもたらそう。

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汚染水の海洋放出は絶対に許されない!  太平洋は日本政府と東電の独占物ではない!

汚染水の海洋放出は絶対に許されない! 
太平洋は日本政府と東電の独占物ではない!


 政府と東京電力は福島第一原発にたまり続ける汚染水を「海洋放出」しようとしているが、その汚染水を処理する設備で、排気中の放射性物質を吸着するフィルターが25カ所中24カ所で破損していたことが明らかになった。

 2年前の点検でも25カ所すべてで破損が見つかっていたが、東電は当時、公表せずにコッソリ部品を交換し、再発防止策も講じていなかった。こんなことをしていて、誰が東電の言うことを信用するのか?どうして「海洋放出」が認められるのか?

 政府や東電は、処理してもトリチウムは取り除けないが、トリチウムは水で薄めれば安全なので問題ないとしている。

 しかし、現在稼働している原発からトリチウムが放出されている地域では、全国平均とくらべても明らかに白血病による死亡率が高い。 

 九州電力玄海原発がある玄海市では1985~2012年の間に白血病で亡くなった人は10万人当たり101人で、同じ期間の全国平均の5倍近い数字が出ている。

 トリチウムは細胞の中に組み込まれると遺伝子に異常が起きることが知られており、けっして安全な物質ではない。科学者の声を無視して、壊れている処理施設で処理した汚染水を海洋放出するなど、絶対に許されない。

 そもそも、トリチウム以外の放射能は全部取り除くとしているが、それ自体が全く信用できない。2018年にもトリチウム以外の放射性物質は取り除いたとしていたが、実際にはヨウ素などの放射性物質が基準値を65回も超えていたのに、「検出されていない」という虚偽報告をしていた。2017年8月~2018年3月では、84回分析して45回、基準値を超えていた。半数以上が基準値を超えているが、なぜ超えたのか?東電は何も説明していない。

 福島県漁業協同組合連合会は、処理水の海洋放出について、6月に「断固反対」の特別決議を満場一致で採択した。これは去年に続いて2度目になる。

 中国や韓国も反対している。こういう危険なものを海に流せば、アジア地域全体の水産業に悪影響を与える。政府は「風評被害については補償する」と言っているが、お金で国内の反対を抑えれば解決するという問題ではない。

 海に汚染水を放出するという問題は、地球そのものを汚すという事であり、世界中の人々の許可を得る必要がある。

 世界の反対意見は聞こえないフリをして海洋放出のための海底トンネルの工事を今年度中にも始めると言っているが、太平洋は日本政府と東電の独占物ではない。(いんば)

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中国人留学生に対する生活支援物資の配布について

 学生時代に一緒に日中友好運動をやっていた進藤氏から近況を知らせるメールが届きました。秋田県日中友好協会の活動のヒトコマを伝えるチラシが添付されていましたので、投稿します。(いんば)

中国人留学生に対する生活支援物資の配布について

 当協会では、中国から本県の大学に留学している学生たちとの交流事業を実施してきていますが、現在はコロナ禍のため2年近くは交流ができない状況が続いています。
 このため、当協会では留学生のみなさんがどうしているのかその実情を知るため、中国留学生秋田地区学友会(会長 屈国偉 秋田大4年)の会長と副会長から話を聞きました。その結果、多くの留学生はアルバイトをしながら勉学に励んでいたが、それも激減し「「生活が厳しく大学などの支援制度を活用して頑張っていることや、リモート授業の毎日で「学生達や人との交流もなく、何のために留学したのか疑問に思っている。」というような話を聞きました。
 こうしたことから、当協会では留学生のために何か支援できることはないか考え、留学生の話も参考にしながら、当面の生活支援を行うため、下記のとおり生活支援物資を配布することにしました。
 現在、県内に留学している中国人留学生は100人程いるとのことであり、学友会と協力し、希望者全員に配布できればと思っています。

○ 支援物資  お米(精米済み)2㎏、
       袋麺(5袋入り)1パック
       マスク(10枚入り)一包

○ 秋田大学(79人)秋田県立大学(14人)国際教養大学(3人)への配布要領については省略します。

 令和3年8月19日         秋田県日中友好協会
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「中国を理解する」オンラインセミナー始動

「中国を理解する」オンラインセミナー始動

 9/14、第一回「中国を理解する」オンラインセミナーが開催されました。セミナーは中国駐大阪総領事館の主催により全10回シリーズで開催されます。
 コロナ禍にあって日中各分野での交流が大きく制限される中、様々な誤解から日中関係に悪影響を及ぼすことのないようにとの願いを込めて開催されるものです。
 政府系シンクタンクなど中国各分野の権威ある専門家が勢揃いし、中日関係、中国発展戦略、中国経済社会発展の現状と展望、習近平外交思想と中国の特色ある大国外交、一帯一路、中米関係、新疆にかかわる問題、香港にかかわる問題、海洋問題、台湾問題等の注目の問題を詳しく解説するというものです。
 メディアを通さずに、生の中国情報をじかにキャッチできるまたとないチャンスです。「中国を理解する」オンラインセミナーシリーズに注目しフォーカスしていきたいと思います。(報告 伊関)

詳しくは、大阪中国領事館のホームページの専用サイトをご覧ください。
「中国を理解する」オンラインセミナーシリーズのご案内 (china-consulate.org)☚クリックしてご覧ください。

 以下、私のメモをもとに第一回セミナーの様子を雑駁にまとめてみます。不十分ですので、下記URLから領事館のホームページの講演録画を是非ご覧ください。
中日関係ーーその真実、問題点と活路——「中国を理解する」オンラインセミナーシリーズ第一回 - YouTube☚クリックしてご覧ください

第一回「中国を理解する」オンラインセミナー

 「中日関係ーその真実,問題点と活路」をテーマに中国社会科学院日本研究所 楊伯江 所長を講師にお迎えして開催されました。「中国を理解する」オンラインセミナーシリーズの巻頭にあたり、セミナーシリーズ全体を俯瞰するような総論的なお話をされたように思いました。

 「現在、世界は深い大きな変化の中にあり、日中関係も深い大きな変化の渦中にある。日中間に多くの問題が目立つようになった。」「日中間に情報バリアが張られている。中国の実情とかけ離れた情報は日本の利益にならない。中国情報をストレートに伝えたい。」「日中関係の問題点を明らかにし、活路を見出したい。」とお話を始められました。

●貿易投資
 「日中間の貿易投資は全体的に好調」「日中貿易は一部競争があるものの相互補完性がある」「貿易額は2012年73.8億ドルをピークに釣魚島問題発生から4年連続マイナスがあった」「サプライチェーン強化のなか日本企業は中国から撤退するか?撤退したのは中小企業で大勢に影響は小さい」 「かつて中国は世界の工場と言われました。今は世界の工場であり、世界の市場です。」と言ったお話をされました。中国は日本の企業にとって魅力的な生産拠点であると同時に無限の可能性を秘めた一大市場に変貌を遂げたのです。日中友好無しでは日本の経済発展は望めないだろうとの思いを強くしました。

●日中関係の問題点
 「自民党内からネガティブメッセージ~東海、釣魚島そして中国の内政問題である台湾、香港、新彊問題」「ネガティブメッセージは日本国民の中国への好感度を低下させる。また、中国国民の日本に対するイメージを悪化。中国国民の日本に対するイメージ:悪いが89.7%・良いが10%程度」「右翼の釣魚島上陸計画、自衛隊10万人規模の演習」といった問題点を挙げられました。

●中国外交と対日政策
 「中国共産党19回大会報告(2017/10/18)で生態文明体制改革加速=『美しい中国』建設を打ち出す」「平和発展=人類運命共同体の道」「中国社会の矛盾は、人民の素晴らしい生活への需要と不均衡・不十分な発展との間の矛盾」「物質文化生活への要求、民主、法治、公平、正義、安全、環境といった人々の需要に対応」「中国は社会主義の初期段階にある」「就職、社会保障、教育問題への取り組み」といったお話をされ、教育問題では「塾負担、宿題負担の解決」といった例を挙げて話されました。また、「中国共産党は中日関係を重視している」と仰って、中日両国の指導者が「互いに協力、パートナーであり、互いに脅威とならない」ことを確認すべきといったことを指摘されました。

●中日関係の「正常」と「不正常」
 「中日関係は歴史のなかで友好、鎖国、侵略それぞれ異なる様相を呈してきた」「隣国間での問題発生は普通のこと」「1972年と今の日本は別世界。この間の中国の変化はもっと大きい・天地がひっくり返る大変化」「セルフメディアの時代」「コロナ禍にあって日中間の相互信頼が流出」「コロナ禍にあって、GDPは2020年中国+2.3%、日本-4.8%、アメリカ-3.5%、2021年中国+6%見込み」「中国は発展途上にあり、発展余力がある」「共産党一党支配に違和感などの日本のネガティブ言論」「日中は謙虚に学ぶ・包容的に」「直接会うことの大切さ」といったことを話されました。発展余力のある中国を前にしてネガティブ言論を展開するのは甚だしいミスリードだと思います。政権与党である自民党は責任ある態度で中国に向き合うべきだと思います。

●健全安定発展に向けて
 「友好協力・実務的協力+戦略的対話」「情報交換プラットフォームの共同創出」「多くの接触交流、相互理解。相互尊重」といったことを話されました。「信義・約束を守る」ということについて具体手に台湾問題に触れ「1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、1998年の平和発展友好協力パートナーシップ協定、2008年の戦略的互恵関係に明記されていることを守ることで解決できる」ことを指摘されました。上記4つの日中間の原則的共通認識を見れば、確かに台湾は中国の不可分の1部であり、一つの中国の原則を否定することは日中間の約束をやぶる内政干渉で、巡り巡って日本の国益を害する結果になると私は思います。また、釣魚島問題についても上記の4つの原則的共通認識で「政治的困難を克服し、日中双方が(釣魚島)から撤退する」といった具体的提案を述べられました。
 また、中国の人々の好感度を下げるとして「福島原発汚染水の海洋投棄」、「自民党総裁選での高市早苗氏の靖国参拝発言、岸田氏の人権補佐官設置発言」を問題にされました。「いずれも選挙のことしか見ておらず問題の本質を知らない」と指摘されました。靖国問題では「A級戦犯の分祀、別の戦没者追悼施設の設置」といったことを話されました。
最後に「生存者バイアスを克服し(特異な例で全体を判断しないで)、世界2位3位の経済大国である中日は友好協力すべきである」と結論されました。とりわけ、若年層の日中の友好交流の必要性を力説されました。

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感嘆!中国のコロナ克服の実際=ゼロコロナ

感嘆!中国のコロナ克服の実際=ゼロコロナ

 中国から届いた吉川さんのお便りを紹介します。PCR検査の徹底、ロックダウン、臨時病院等に関するもので、ゼロコロナを基本とする中国のコロナ克服がリアルに伝わります。翻って、ウイズコロナで感染爆発と緊急事態宣言を繰り返す日本。日本は謙虚に中国に学ぶべきだと痛感します。長くなりますが日中友好ネットに掲載させて頂きました。お便り資料とも井上さんから転送して頂きました。

伊関さま
少しご無沙汰していましたが、お元気でしょうか。
吉川さんからのメールが届きましたので転送させていただきます。
南京は感染者が出て大変だったようです。
コロナ対応、あまりに日本と違っていて本当に感嘆してしまいます。
添付ファイル(4つあります)、うまく送信できていなければご連絡ください。
(パソコンの調子悪く、初期化とかしたもので)
井上郁子


《吉川さんからのお便り》

ようやく秋、そしてようやく感染者数が減ってきたのかなあと思います。
郁子さん、お母さん調子はいかがですか?
こちらでは感染流行がおさまって、少し遅い学校の新学期を迎えようとしています。
私も後述のように、全員PCR検査を5回受け、陽性者を見つけ出して厳しく隔離する中国の防疫を肌で感じました。
私の知人の団地も封鎖されましたが、配給の食品がよかったと言ってました。
(区により内容が違い、うちの区は無料だし、食材がいいと評判でした。ナマズまであったそうです。)
配給の食材で作った料理をSNSで披露する人も多かったです。
こちらでは封鎖になってもあまり苦情を言う人はいません。
言ってもしかたないこともあるし、このやり方で感染が抑えられているのを理解している人が多いと思います。


さて、8月8日に中国国務院 新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構 から出された
『全員PCR検査の組織と管理の強化についての通知』の日本語版をお送りします。
(セットになっている2月7日付けの『新型コロナウイルス全員PCR検査の組織と実施指南』も掲載しています。)
中国本土では7-8月各地でデルタ株の流行があり、8月26日政府発表の本土症例感染者は1390例と、武漢の流行に次ぐ規模となりました。
ただちに隔離、交通規制、住民全員PCR検査などの措置が取られた結果、
約1か月で本土新規感染者はほぼ0となり、死亡者は出ていません。
その過程で政府から、デルタ株流行に対応した防疫についての通知や指南がいくつか出されました。
今回翻訳した通知もそのうちの一つです。
このたびの中国本土の流行の始まりは、
・南京空港のロシア便機内清掃要員の感染(7月20日発見9例→本流行の江蘇省確定症例820例)と
・鄭州の輸入症例収容病院の院内感染(7月30日発見1例→本流行の河南省確定症例167例)で、
南京に住む私は、家の近くも封鎖になり、全員PCR検査も5回受け、以下のような防疫を実際に見聞しました。
南京の流行について
クラスター発見
・7月20日夜、南京空港清掃作業員9名の陽性が定期検査で確認され、ただちに接触者の検査と隔離開始。
全員PCR検査
・7月21日から8月10日まで全6回実施。
・1~3回目は全市民(人口931万人)が対象、4回目からは陽性者0の地域を順次対象から外す。
・のべ4千万人を検査し、233人の陽性者を発見。
・ドーム式など臨時の検査室も設置し、700万人分/日の検査を実現。
・担当した医療従事者は、南京1万余名、他市からの支援5千名。
・医学生、看護学生、医学系教員、計4千余名が検体採取、疫学調査などに加わる。
入院
・確定患者、疑似患者は指定病院で入院治療、無症状感染者は指定病院で医学観察。
・指定病院は南京市公共衛生センター928床(うちICU116床、陰圧室57床)をコロナ専門病院として運用。
・治療は原則として西洋医学と中医学の併用。
・退院基準に達した患者は引き続きリハビリ専門病院(第1期改装270床)に入院してリハビリ隔離。
隔離
・濃厚接触者、二次接触者は宿泊施設で医学観察(305地点3.26万人)、予防の中薬を服用。
・陽性者と同じ棟または同じ出入口の住民は宿泊施設で医学観察。
・陽性者が1人でも出た小区(マンション10-100棟前後)や村は21日間封鎖して医学観察。
・各戸出入禁止14日間+マンションの敷地以外出入禁止7日間(過渡期間)、毎日PCR検査実施。 
・封鎖地区では毎日生鮮食品や生活物資を行政が無料配給、またはボランティアが代理購入、宅配便なども使用可。
・普段飲んでいる薬などはボランティアが配達、受診の必要があれば送迎。
・空港近くの封鎖地区の陰性の住民の疾病は専門病院(588床)で治療。
・農村地区ではボランティアが作物や家畜類の世話を担当。(南京市のボランティア総数は4.3万人)
・隔離対象者の解雇は禁止、在宅勤務または有給休暇を適用して通常の賃金を支払う。
記者会見
・南京市は7月21日から8月19日まで毎日、計30回の記者会見を実施。
http://www.nanjing.gov.cn/zt/yqfk/yqtb/index.html
・国務院 新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構は7月31日から8月27日まで計4回の記者会見を実施。
http://www.nhc.gov.cn/xcs/xxgzbd/gzbd_index.shtml
今回はデルタ株対応のため、隔離対象の範囲が広く、隔離日数が長くなり、患者さんの退院後もそのままリハビリ病院に収容など、以前より厳しい措置が取られました。

武漢の臨時病院について
ところで、最近日本でコロナ専門の臨時病院の設置を検討されているという報道を目にします。
中国では最初の新型コロナウイルス感染症流行地となった武漢で、臨時病院をうまく使って流行を収束させました(武漢市ロックダウン2020年1月23日~4月8日)。
当時の戦略は、
1.重症(日本の中等症2)~重篤の患者さんは、既存の病院+ 2つのプレハブ臨時病院で治療
① 火神山病院
(3.39万㎡、1000床、2020年1月23日計画、2月4日患者受入れ開始、4月15日運用休止、期間中収容患者3059名)
② 雷神山病院
(7.97万㎡、1600床、2020年1月25日計画、2月8日患者受入れ開始、4月15日運用休止、期間中収容患者2011名、うち重症899名、重篤179名)
2.軽症~中等症(日本の中等症1)の患者さんは体育館や展示施設などに設けた臨時病院で隔離治療
(中国名 方艙Fangcang医院、計16か所15000床、2020年2月3日計画、2月5日患者受入れ開始、3月10日運用休止、期間中収容患者1万2千余名、死亡者なし、院内感染なし、医療従事者8千名)
これにより感染者の収容治療が進み、家庭内や地域での感染が阻止できたことが決め手になり、武漢の流行は収束に至りました。

この武漢のコロナ臨時病院をめぐる2冊の書籍(英語版)が昨年出版されています。
添付写真は内容の一例ですが、カラー写真や図が多く、実際に武漢で臨時病院を設営したときの図面をもとに、体育館などの改造方法も示されており、実用的、実践的な内容となっています。
中国発行元:中国協和医科大学出版社(China Union Medical College Press)
英語版発行元:World Scientific Publishing
下記のリンクから電子版を注文できますので、よろしければご覧ください。

1. Emergency Hospitals for COVID-19
中国語名《新冠应急医院建设运营手册》
(COVID-19緊急病院建設運営マニュアル)
Construction and Operation Manual
https://doi.org/10.1142/11903 | August 2020
Pages: 124
Editor-in-chief: 閻志 Zhi Yan  (Zall Foundation, China)
Translated by: Ge Yan (Zall Foundation, China)
https://www.worldscientific.com/worldscibooks/10.1142/11903

2. Fangcang Shelter Hospitals for COVID-19
中国語名《方舱庇护医院建设运营手册》
(COVID-19臨時シェルター病院建設運営マニュアル)
Construction and Operation Manual
https://doi.org/10.1142/11904 | August 2020
Pages: 124
Editor-in-chief: 閻志 Zhi Yan (Zall Foundation, China)
Translated by: Ge Yan (Zall Foundation, China)
https://www.worldscientific.com/worldscibooks/10.1142/11904

井上さんに本の購入を勧めてるわけではありません。
府知事が大阪に臨時病院を作るなら、
少しでもいいものを作ってほしいと思っています。)

各国の情報交換が日本での新型コロナウイルス感染症対策と治療の一助になればと思っています。
お忙しいとは存じますが、季節の変わり目、栄養と休養を十分にとって、感染を防いでください。
お母さまによろしくお伝えください。              吉川淳子


《吉川さんからお送り頂いた資料》







全員 PCR 検査の組織と管理の強化についての通知
中華人民共和国国務院 新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構 医療グループ
2021 年 8 月 8 日 共同予防抑制機構医療発〔2021〕67 号
http://www.nhc.gov.cn/cms-search/xxgk/getManuscriptXxgk.htm?id=d9534df0b9d543a8b45876477c3a90f2
各省、自治区、直轄市、新疆生産建設兵団新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構(責任者 グループ、指揮部門):

最近全国の複数の地点で感染が発生し、局部的にはアウトブレイクの様相を呈したため、いくつかの 地区では陸続と全員 PCR 検査が展開されている。各地の全員 PCR 検査の組織と管理などの指導をより 強化するために、以下のように通知する。 一、全員 PCR 検査の重要性についての認識の向上 全員 PCR 検査の展開は、ウイルス感染者のすみやかに発見により、隔離、感染経路の有効な遮断、感 染拡散防止を実施するための最重要手段の一つであり、「四早(早期発見、早期報告、早期隔離、早期 治療)」の要となる措置である。各地方は全員 PCR 検査の重要性を認識し、検査拡大による予防戦略を 堅持して、組織力、協調力の強化と準備に尽力し、規範に沿い秩序立てた全員 PCR 検査を展開して、最 短時間で感染流行を最小範囲に抑制する。 二、全員 PCR 検査実施方案の制定と整備 各地方は『新型コロナウイルス全員 PCR 検査の組織と実施指南』(共同予防抑制機構総発〔2021〕27 号、以下『指南』と略称)の関係規程にもとづき、当地の実際の状況に応じて、当地の全員 PCR 検査実 施方案を制定、整備する。緊急対応体制を設立、整備し、各項目に対する措置を適切に実施し、検体採 取の場所と PCR 検査機関を合理的に選択して、PCR 検査能力の支援計画を制定するとともに、人員、 設備、物資の備蓄と保障能力を拡充し、方案の即応性と可操作性を強化して、充分な準備と保障能力を 確保する。 2 / 20 三、組織力、協調力の一層の強化 各地方は新型コロナウイルス全員 PCR 検査を展開する中で、統一指揮配置システムを今一歩整備し、 地方党委員会と地方政府の責任を明確にして実行するとともに、各部門の力量を十分に統括して、郷鎮、 コミュニティ1 の管理能力を発揮する。グリッド化、ピンポイント化管理を実行し、検査を受ける人数を 明確にして、1 世帯、1 人の漏れもないようにするとともに、予約管理を実行する。検体採取会場では案 内に力を入れて人の密集を防止する。医療廃棄物の収集運搬態勢を強化し、検体採取会場の感染防止の 各項目の規定を厳格に実行して、全員 PCR 検査では採取漏れ対象者を出さず、会場での人の密集による 感染を招かないことを保証する。同時に検体採取-輸送-検査の調整体制を確立して、検体が検査に進ま ない、検査能力があるのに検体が来ないといった事態を防止する。 四、PCR 検査能力の一層の向上 各地方は『新型コロナウイルス PCR 検査能力整備のさらなる推進』の関係要件を厳格に実行し、管轄 区内の PCR 検査能力の整備をさらに推進する。日常的な PCR 検査の需要と全員 PCR 検査の需要を統一 して管理し、各検査機関の PCR 検査能力を有効に効率的に割り振って、全員 PCR 検査展開時でも日常 必要な検査と希望者への検査の実施を保障する。PCR 検査機関の品質管理を強化し、規定に沿って内部 精度管理を実施するとともに、室間の外部精度評価にも参加する。スタッフへの研修訓練を強化し、全 員 PCR 検査の組織管理者、検体採取要員、梱包輸送要員、検査要員、報告要員、品質管理要員、感染対 策要員など、関与するすべてのスタッフにそれぞれ対応する研修訓練を実施する。とりわけ検体採取と 検査要員がプール方式検査の技術を十分に掌握し、規範に沿った検体採取と検査を行なうことにより、 検査の精度と効率の向上、検査結果の正確性と信頼性、すみやかな結果の報告とその有効性を保証する。 五、厳格で規範に沿った陽性症例の報告 全員 PCR 検査の実施過程で陽性症例が出現した場合は、『指南』の規定に厳格にしたがい、規範に則 って報告を行なう。単独検査の検体が陽性であった場合は、検査機関はただちに所在地の県レベル衛生 健康行政部門に報告し、法定報告機構を通じて 2 時間以内に関係情報を感染症ネットワークシステムで オンライン報告する。プール方式の検体が陽性かグレーゾーン、あるいは 1 つのターゲットのみが陽性 の場合は、検査機関はただちに所在地の県レベル衛生健康行政部門に報告する。衛生健康行政部門はプ 1 訳者注:中国の区画は省>市>県>郷鎮>行政村>自然村、都市部では市>区>街道>コミュニティ(社区)>小区 (塀などで囲まれ独立したマンション群)などで、小区内はさらにグリッドに分けられる。 3 / 20 ール化検体の数量にもとづいて、相応する数の緊急検体採取チームを即時派遣し、当該検体に関係する 受検者の検体を再採取して再測定を実施し、陽性者を確定して報告する。 六、情報化技術サポートの一層の強化 各地方は全員 PCR 検査の情報化システム能力構築の強化、データ積載能力の増強を行ない、適時に負 荷テストを展開する。受検者のチェック、検体の輸送、検査能力調達などの面で情報化のレベルをさら に向上させ、質が高く効率のよい、安定的な運用を確保する。同時に情報の授受を重視し、全員 PCR 検 査での個人の検査結果をすみやかに受検者に報告し、データ情報の応用範囲の拡大をはかる。 感染が出現していない地方では、適時に実戦訓練を展開し、組織管理、指揮調達、検体採取-輸送-検 査の調整、物資の供給保障、情報化サポートなど全方位的に協調、点検と問題や不充分点の発見を行な い、全員 PCR 検査実施方案の向上をはかる。感染が出現した場合はただちに緊急対策体制を発動し、緊 急指揮系統を立ち上げる。全員 PCR 検査実施を確定後は、可及的すみやかに全員 PCR 検査実施方案の 実行を組織し、受検者が 500 万人以内の場合は 2 日以内、受検者が 500 万人を超える場合は 3 日以内の 全員検査完成を保証する。 4 / 20 新型コロナウイルス全員 PCR 検査の組織と実施指南 中華人民共和国国務院 新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構 総合グループ 2021 年 2 月 7 日 共同予防抑制機構総発〔2021〕27 号 http://www.nhc.gov.cn/xcs/zhengcwj/202102/c7744556a26f4db1b9f9714dba2dc670.shtml PCR 検査は新型コロナウイルス感染防疫の重要な手段である。各地方の新型コロナウイルス感染症流 行に対する大規模 PCR 検査への各種準備業務を指導し、決められた時間内に質と量を確保して、計画区 域範囲内の全員 PCR 検査の任務を完成することで、「早期発見、早期報告、早期隔離、早期治療」を実 現するために本指南を制定する。 一、全体要件 新型コロナウイルス感染症流行に積極的に対応し、すみやかに効率よく流行を抑制する。全員 PCR 検 査の組織、検体採取、検査、報告などの業務手順を規範に則って実行し、PCR 検査の資源を統一管理し て、PCR 検査の品質を向上させる。人口 500 万人以内の都市は 2 日以内に全員 PCR スクリーニング検査 任務を完成させるものとし、必要な場合は省(区、市)内で統一的に保障する。人口 500 万人を超える 都市では 3-5 日以内に全員 PCR スクリーニング検査任務を完成させるべきであり、必要な場合は全国に 支援を要請する。 二、実施の組織 「省レベルで統一的に計画、市と県が責任を持ち、重点を明確に秩序立てて組織、安全を確保する」 の原則の下、科学的に責任グリッドから最小単元まで範囲区分し、グリッド内全員の人数をリアルタイ ムで掌握する。感染流行の範囲と深刻さの程度にもとづいて、市、県(市、区)、中高リスクグリッド 内の全員 PCR スクリーニング検査の各項措置を実行する。 (一) 総責任は党委員会と政府 各レベルの党委員会と政府は全員 PCR スクリーニング検査の総責任を負い、各レベル各関係部門を統 5 / 20 括し、協調共同システムを構築する。 (二) 統一管理と指揮 大規模 PCR スクリーニング検査指揮センターを設立し、全員 PCR スクリーニング検査について統一 管理を行なう。科学的に責任グリッドを区分し、スクリーニング検査の手順を規範化する。住民小区の マンション、自然村、学校、機関の事業単位、企業、会社、市場、ホテルなどを最小単位として、漏れ なく全面網羅する。全員 PCR スクリーニング検査のための物資は統一購入、統一配分する。 (三) 実施チームの設立 PCR 検体採取、検体輸送、PCR 検査、情報プラットフォーム技術サポート、それぞれの緊急対応など 各レベルのチームを設立して、検体採取と検査の責任エリアを明確にし、省内のどの地域で全員 PCR ス クリーニング検査を実施することになっても、ただちに業務を開始できるようにする。各緊急チームは 24 時間持ち場で待機し、いつでも出発できるよう各項目の準備をする。 (四) 資源の統一配分 省内の PCR 検体採取とスクリーニング検査地域への支援システムを構築し、各地の PCR 検査機関の 基本状況と 1 日(24 時間)の検査能力を全面的にリアルタイムに掌握して、全員 PCR 検査実施地域の 必要にもとづき科学的、合理的に配分する。必要な場合は国務院共同予防抑制機構に支援を申請する。 (五) 緊急対策案の制定 各郷鎮、コミュニティは専門チームを立ち上げ、充分なスタッフを集める。全面的調査によりグリッ ド全員の人数をリアルタイムで掌握し、検体採取会場の合理的な計画と物資の準備を行ない、検体採取 会場のレイアウトや人員配置などを明確にする。緊急対策案を制定し、定期的に訓練を実施して、実施 が確定した場合には全員が迅速に配置について、現場での検体採取を秩序立てて展開できるようにする。 三、実施準備 (一) 人口掌握と台帳の作成 各地方は公安管理の戸籍と人口調査のデータを基礎に、情報化手段を使って予備登録を行ない、当該 地域の人口と分布を明らかにする。配慮が必要な住民の状況、検査機関の能力、PCR 検査物資の備蓄、 該当エリアの検体採取と検査チーム、検体輸送人員と車両基準などの状況について正確に把握する。業 6 / 20 務台帳を作成し、明確なタイムスケジュール、行程表を制定し、PCR 検査任務の量にもとづいて、今あ る備蓄をチェックし、漏れがあればすみやかに補い、感染流行が突然出現した場合ただちに全員 PCR 検 査を展開できるようにする。 (二) 合理的な地区区分と科学的配置 各地方は人口、地理、交通、PCR 検査機関の分布などの状況を総合し、科学的に検体採取会場を配置 する。2,000~2,500 人に対して検体採取会場 1 か所という基準を参考に(各地はコミュニティ、街道、 郷鎮、農村、都市郊外の実際の人口に応じ総合して決定できる)、検体採取会場の位置を確定する。固 定の検体採取会場を基礎とした上で、グリッド化管理方式を採用し、コミュニティでの検体採取を中心 に、学校や企業、職場などの形式できめ細かい配置を実現して、市民の検体採取の便をはかり、採取の 効率を向上させる。検体採取会場は規範に沿って 4~6 時間以内で開設し、使用を開始する。感染流行 の実際の状況に基づいて研究、判断を強化し、リスクのある地区を迅速に科学的に区分して、リアルタ イムに調整する。1 回目の検査ではすべて 10 検体プール方式を採用することができ、できるだけ早い感 染者の発見をはかる。それに続く全員スクリーニング検査では、重点対象者と高リスク地区では個別検 査、中低リスク地区ではプール方式検査という方案で実施する。プール方式検査は 10 検体プール方式 または 5 検体プール方式を採用できる。スクリーニング検査結果の総合判断にもとづいてスクリーニン グ検査の回数を確定し、必要な場合は特定の地区と重点対象者に対し何度もスクリーニング検査を実施 することができる。各地方は検体採取、輸送、検査、結果報告、陽性検体の追跡など全過程の情報化を 推進し、円滑で効率的な指揮、手配により陽性症例の迅速なモニタリングと治療を保証する。 (三) 人員と物資の充足 各地方は必要な検体採取要員数をもとに、管轄区内のすべての医療従事者に PCR 検体採取の研修訓練 を実施し、いつでも検体採取の任務を担えるようにする。検体採取会場の設置にあわせて検体採取要員、 公安人民警察、機関幹部、ボランティアなどを含む検体採取チームをいくつか設立し、事前に検体採取 会場に配置する。「準備をして使わないのはよいが、準備を欠いてはならない」の原則の下、雨雪、低 温、高温などの特別な天気状況を充分考慮した上で、全員 PCR 検査に必要な各種物資を備蓄し、近くて 便利な場所に保管する。 四、実施内容 (一)情報収集と登録 7 / 20 全員 PCR 検査の準備段階では、コミュニティ(村)を実施単位とし、各種方法で事前に管轄区の住民 の検体採取に関する情報(住民の氏名、身分証番号、居住地住所(部屋番号まで)、連絡先電話番号は 必須)を収集、登録する。同時に住民の情報は安全に保護する。 (二)検体採取会場の規範的な設営 一か所の検体採取会場には複数の検体採取レーンを設置できる。採取レーンごとに検体採取要員、情 報収集要員、ボランティアなど関係要員と必要な物資を配備する。 1. 人員の準備 (1) コミュニティのスタッフとボランティアは受検者の情報の登録を担当し、受検者をグループに分け、 時間をずらして順序よく検体を採取する。人が集まるのを防ぎ、「1m 線」の間隔を厳格に実行して、人 の密度を厳しくコントロールする。待合エリアや通路を合理的に設置し、現場の秩序維持を重視する。 採取エリアでは、各採取レーンに入る人員は毎回 10 人を超えないものとする。 (2) 各採取レーンには 1~2 名の採取要員を配置する。合理的に採取要員の交替を手配し、原則として 担当 2~4 時間ごとに 1 回交替して休憩する。 2. スペースの準備 採取会場は独立したスペースで、換気ができるものとする。内部は清潔区と汚染区にゾーニングし、 手指衛生設備や装置を配置する。採取会場はわかりやすくガイド表示し、採取の流れや注意事項を明確 にする。独立した待合エリアを設置し、人員の一方向動線を保証する。 3. 物品の準備 (1) 基本物品:テント、机、椅子など、採取の実施に必要な物品。 (2) 検体採取物資:専用の検体採取用スワブ、採取用チューブ(合格品)、充分な数のチューブラック、 輸送用車両、輸送用容器(カテゴリーB 対応包装)、検体採取要員の防護物資。 (3) 情報収集システム:各地方は専用の情報収集システムを構築して、検体採取の効率を高め、PCR 検 体採取の情報化管理を強化し、手作業での入力がないようにする。 4. 採取方法 8 / 20 『医療機関新型コロナウイルス核酸検査業務マニュアル(試行第 2 版)発行についての通知』(共同 予防抑制機構医療発〔2020〕313 号)に沿って実施する。 5. 関係基準 (1) 人員基準 新型コロナウイルス PCR 検査検体採取を担当する要員は医師または看護師とする。検体の種類と採 取方法を熟知の上、検体採取の操作手順と注意事項を掌握し、検体情報登録を正しく行ない、基準を満 たす検体の質を確保して、検体と関係情報のトレーサビリティを保証する。 (2) 採取用チューブ基準 チューブキャップとチューブはポリプロピレン製とし、密封できる O-リング内蔵の操作しやすいス クリューキャップ式で、凍結保存対応とする。サイズは、チューブ外径(14.8±0.2)mm×(100.5±0.4) mm、キャップ外径(15.8±0.15)mm、高さ(12.5±0.5)mm とする。容量規格は 10 mL で、グアニジン 塩(グアニジンイソチオシアン酸塩、塩酸グアニジンなど)またはほかの有効なウイルス不活化保存用 試薬 3mL 入り(個別検査および 5 検体プール方式用)、6mL 入り(10 検体プール方式用)とする。第一 選択はグアニジン塩を含む採取用チューブである。保存用試薬は観察、識別しやすい色(ピンクなど) で、一定の流動性があり、検体採取に便利なものとする。 (3) 採取用スワブ基準 綿やアルギン酸カルシウムを使用しない、ポリプロピレン、ナイロンなどのスワブで、柄の部分は木 製以外の材料とする。切断点はスワブ先端から 3cm 前後の部分にあり、切断が容易であるもの。 (4) 採取要員の防護具基準 『医療機関新型コロナウイルス核酸検査業務マニュアル(試行第 2 版)発行についての通知』(共同予 防抑制機構医療発〔2020〕313 号)にもとづくものとする。 (5) 情報収集システム基準 検体採取の前に、採取要員は受検者の身分情報のチェックを実施する。情報収集システムには少なく も下記の情報と機能を含むものとする。 ① 受検者情報:受検者(患者)氏名、身分証明書の種類、身分証明書番号、居住地住所、連絡先電話 9 / 20 番号。 ② 検体採取情報:検体採取場所の名称、検体番号、検体採取日、時間、採取部位、種類、数量など。 ③ 情報のフィードバック:検査機構と感染情報報告機関の情報システムのデータをリンクし、陽性が 疑われる検体の受検者情報はただちにフィードバックする。 (三)検体採取要員の配置比率 手作業で情報登録をする必要がある検体採取会場では、検体採取要員、サービス保障要員、検査待ち 受検者の比率は「1:4:100」とし、検査待ち受検者 100 人ごとに検体採取要員1組、サービス保障要 員 4 人を配置する。QR コード読み取りによる情報化登録実施の検体採取会場では、検体採取要員、サ ービス保障要員、検査待ち受検者の比率は「1:3:130」とする。 (四)検体の保管と輸送 検体は原則として低温(2~8℃)で保管する。低温保管の条件がない場合は、検体採取会場での保管 時間は 4 時間を超えないようにする。検体は採取後 4 時間以内にまとめて輸送し、6 時間以内に検査を 実施する。長距離輸送が必要な検体は、ドライアイス冷却などの方法で保管する。不活化されていない 検体については、WHO の『感染性物質の輸送規則に関するガイダンス』の UN2814 カテゴリーA の感染 性物質に該当するものは PI620 分類の包装を行なう。UN3373 カテゴリーB の感染性物質の基準に該当す る不活化検体は PI650 分類の包装を行なう。検体輸送用容器の封をする前に、75%のアルコールまたは 0.2%の塩素系消毒剤で容器の表面を消毒する必要がある。 指揮センターは検体採取状況と検査能力を正確に把握して、採取量と検査量を正しく調整配分し、充 分な車両と専門要員を配置して、専門要員、専門車両での検体輸送を保証する。輸送業務を担当する車 両は病原微生物菌(ウイルス)種運搬証明書を取得する。輸送任務期間中は車両をほかの用途に使用し てはならず、輸送中はバイオセーフティの確保に努める。公安、交通運輸などの部門と協調して、実際 の必要に応じて安全輸送を保障する。 検体を他の省(区、市)に送付して検査する必要がある場合は、省レベルの衛生健康行政部門を通じ て国家衛生健康委員会に申請し、その回答にもとづいて実施する。 (五)規範に沿った検体受取り 検査室は検体受取りの専門チームを作るとともに、科学的で規範に沿った効率的な検体の受取り手順 10 / 20 を制定し、訓練を実施する。 (六)検査能力と品質の保障 各省(区、市)は統一手配を強化し、人口、医療資源の分布などの実際の状況にもとづいて、必要な 人数と機器数を算出して配備を行ない、その基礎の上に 20%の人員と設備をプラスして予備検査能力と する。同時に管轄区内の市レベル政府が全員検査任務の期限や検体採取戦略を制定する。毎日 1 万管 (個別検査 1 万人分、5 検体プール方式 5 万人分、10 検体プール方式 10 万人分)を検査する場合の必要 な検査能力は以下の通りである。 1. 検査要員と設備 新型コロナウイルス検査要員 24~25 人、 補助要員 15 人、 96 ウェル核酸抽出装置 4~6 台、 96 ウェル PCR 増幅装置 10~12 台、 A2 型 2 人用安全キャビネット 3 基。 セットで使用する 8 チャンネルマイクロピペット、プレート用遠心機、ボルテックスミキサー。 2. 検査試薬と消耗品 プール方式か個別検査かによりそれぞれ必要な量の試薬を準備する。通常の検査試薬以外に精度のよ り高い、通常の検査とは増幅ターゲットが異なる別の試薬 1~2 種類を準備して再検査に使用する。相 応する量の消耗品(PCR 増幅プレート、ロングピペットチップ、チューブラックなど)を配備する。 3. 防護用品 医療用防護マスク(オーバーヘッドタイプ)、サージカルマスク、ガウン、防護服、ラテックス手袋 (パウダーフリー)、シューズカバー、フェイスシールドまたはゴーグル、キャップ、ハンドソープな ど、1 人 1 日 1 セットとして 2~3 日分の量を配置する。人員の体型に応じて異なるサイズの防護具を配 置する。 4. 関係基準 (1)人員基準 11 / 20 『医療機関新型コロナウイルス核酸検査業務マニュアル(試行第 2 版)』の規定に沿って執行する。 (2)抽出装置ならびに増幅装置基準 核酸抽出装置を使用する場合は、核酸抽出試薬と核酸抽出装置はセットのものを使用し、増幅試薬キ ット指定の核酸抽出試薬と増幅装置を選択する。すべての装置は必要なバリデーションと校正を実施し ていることが必要で、機器の使用、メンテナンス、バリデーションと校正の手順書を作成し、手順書に 沿って厳格に執行する。 (3)試薬基準 試薬は検査機器に適合したものを使用する。新型コロナウイルスのオープンリーディングフレーム 1ab(open reading frame 1ab,ORF1ab)と核タンパク質(nucleocapsid protein,N)ゲノム領域に対応する 試薬の使用を推奨する。増幅試薬キットは国家薬品監督管理局が批准した登録番号のあるものを使用す る。最小検出感度が低く、精度が高い高感度の試薬キット(最小検出感度≦500 コピー/mL)の使用が望 ましい。すべての試薬は規定にしたがって厳格に保管し、有効期限内に使用する。 (七)規範に沿った検査と結果のすみやかな報告 1. 検体検査 検査室は検体受取り後、ただちに検査を実施する。検査前に検体を充分振動させて、スワブに付着し たウイルスをサンプル液に浮遊させた後、核酸抽出と増幅検査を実施する。 2. 品質管理 妥当性確認、内部精度管理、外部精度評価などを『医療機関新型コロナウイルス核酸検査業務マニュ アル(試行第 2 版)』の規定にしたがい実施する。 3. 検査報告 新型コロナウイルス核酸定性検査報告には、検査結果(検出/陽性、未検出/陰性)、検査方法と最小検 出感度、検査時間などを含むものとする。使用した増幅試薬の説明書の記載にもとづいて、検査結果が (検出/陽性)であるか(未検出/陰性)であるかを判断する。 4. 報告期限の明確化 12 / 20 検査結果はすみやかに上級機関に報告する。重点地区の重点対象者の報告期限は 6 時間以内、その他 の対象者では 12 時間以内とし、原則上 24 時間を超えないものとする。 (八)規範に沿った陽性症例の報告処理手順 1. 個別検査検体の陽性報告処理手順 検査結果が陽性の場合は、検査機関はただちに所在地の県レベル衛生健康行政部門に報告するととも に、法定報告機構を通じて 2 時間以内に関係情報を感染症ネットワークシステムでオンライン報告する。 衛生健康行政部門はすみやかに陽性症例を陰圧救急車で指定医療機関に搬送して隔離治療を行ない、疫 学調査の展開、環境消毒、濃厚接触者の追跡を組織する。 2. プール方式検体の陽性報告処理手順 プール方式の検体が陽性、グレーゾーン、あるいは 1 つのターゲットのみが陽性の場合は、検査機関 はただちに所在地の県レベル衛生健康行政部門に報告し、衛生健康行政部門はプール化検体の数量にも とづいて、相応する数の緊急検体採取チーム(5 検体プール方式であれば 5 チーム、10 検体プール方式 であれば 10 チーム)を即時派遣し、当該検体に関係する受検者の検体を再度採取して再測定を実施す る。同時に疾病予防管理部門にその検体に関係する受検者を暫定的に単独隔離することを通知する。個 別の再検査がすべて陰性の場合は、陰性結果として報告し、暫定的隔離された受検者の隔離を解除する。 再検査の結果が陽性の場合は、陽性受検者を特定し、その他の受検者の隔離は解除する。同時に衛生健 康行政部門はすみやかに陽性症例を陰圧救急車で指定医療機関に搬送して隔離治療を行ない、疫学調査 の展開、環境消毒、濃厚接触者の追跡を組織する。 3. 緊急保障措置 各区、県は緊急検体採取チームを少なくとも 10 チーム設立し、プール方式検体の陽性結果があれば、 ただちに検体の再採取と再検査を実施する。緊急検体採取チームは、検体採取要員、データ収集要員、 運転手からなり、車両を配備する。公安、コミュニティ(村民委員会)などの関係要員は緊急検体採取 要員の訪問採取に協力する。採取は鼻咽頭スワブ方式を採用し、採取した検体はもとの検査機構に届け て検査する。 (九)医療廃棄物の処理 PCR 検査では各段階で医療廃棄物が発生する。医療廃棄物の収集、梱包、無害化処理、一時保管、引 13 / 20 渡し、運搬などの際は、二重にした専用袋に医療廃棄物を入れ、有効に封をする。厳格な密封と、医療 廃棄物の包装に破損や流出がないことを確保する。 1. 基本要件 新型コロナウイルス検体の採取場所と PCR 検査を行なう検査室は、医療廃棄物の処理手順を制定する。 すべての危険を伴う医療廃棄物は、統一規格の容器とマークを用いて廃棄物の内容を規定通り正しく表 示する。必要な研修を経た要員がふさわしい個人防護具と装備を使用して、危険を伴う医療廃棄物の処 理を実施する。 2. 医療廃棄物処理措置 医療廃棄物の処理では、採取場所と検査室のバイオセーフティの重要ポイントを管理し、バイオハザ ードを有する廃棄物の分類の充分な把握が必要で、対応する処理手順を厳格に執行する。 (1) 検体採取会場では医療廃棄物収集容器を設置し、すみやかな収集と、会場の定期的な消毒を行な って環境汚染を起こさないようにする。各街道(郷鎮)は各検体採取会場に 3~5 人の人員を配置し、 採取会場の終末消毒と医療廃棄物の運搬を担当する。 (2) 検査室の廃液や個体廃棄物の処理は『医療機関新型コロナウイルス核酸検査業務マニュアル(試 行第 2 版)』の規定にしたがい実施する。 (3) 検体検査完成後、結果が陽性であった場合は、安全キャビネットと検査核心エリアの医療廃棄物 は必ず発生地点で高圧蒸気滅菌した後、感染性廃棄物として収集、処理を行なう。検査結果が陰性で あった場合は、検査結果が正しいことを確認後、ただちに陰性検体の検査で発生した医療廃棄物を規 定通り梱包し、医療廃棄物処理の手順に沿って処理して、高圧蒸気滅菌はしなくてもよい。 (4) ゲノム増幅検査完成後、増幅したあとの反応チューブの蓋は開封しない。直接専用袋に入れ、袋 の口をしっかり閉じて、高圧蒸気での滅菌はせず、一般の医療廃棄物として検査室から搬出して処理 する。 (5) 検査室で高圧蒸気滅菌実施の際は毎回化学的インジケータ法で消毒効果を検証し、消毒と検証の 14 / 20 記録を保管する。バイオリスクの評価にもとづき、月ごとまたは 3 か月ごとに 1 回、操作規定に沿っ て、高圧蒸気滅菌効果の生物学的バリデーションを実施する。 3. 医療廃棄物の収集 (1)管理業者を確定する。PCR 検査機構(検査室)は、相応する能力のある医療廃棄物収集処理業者 を自主的に選定して医療廃棄物の収集、無害化の業務を委託することができる。衛生健康部門が感染流 行管理の必要にもとづき PCR 検査任務を大幅に拡大したことにより医療廃棄物の運搬能力が発生量に追 いつかない場合は、当地の生態環境部門は、管轄区の医療廃棄物収集運搬企業の現行の収集路線に近く 便利なことを原則として、合理的に収集運搬業務を配分し、収集運搬の能率を向上させることができる。 (2)PCR 検査機関(検査室)は、医療廃棄物収集処理業者と協議の上委託契約を締結し、料金は発展 改革部門の指導価格とする。医療廃棄物収集処理業者と委託契約を締結できていない場合は、当地の生 態環境部門が指定する医療廃棄物収集処理業者が医療廃棄物収集を実施し、検査機関と委託契約を締結 する。 (3)すみやかな収集を確保する。PCR 検査機関(検査室)は、一時保管場所での医療廃棄物保管状況 にもとづいて収集業者に収集時間を予約する。収集は強風、雷雨などの天気を避けて行なう。収集業者 は運搬車両の手配を効率化し、合理的な収集路線を設定して円滑な医療廃棄物収集を保障する。防疫対 策の状況に応じ、PCR 検査が大幅に増加した時は、収集の回数を適宜増やすものとする。 (4)収集過程の防護を強化する。PCR 検査機関(検査室)は医療廃棄物運搬専用通路を設定し、専用 の荷物用エレベーターや階段を使用する。医療廃棄物収集要員は個人防護を行ない(一般医療廃棄物の 運搬前には仕事着、新型コロナウイルス関連医療廃棄物の運搬前には防護服を着用)、防護マスク、手 袋などの防護用品を正確に着用して、運搬過程ではできるだけほかのスタッフとの接触を避ける。医療 廃棄物収集要員は予約した時間に専用通路を使って医療廃棄物を指定の場所に運搬し、医療廃棄物の落 下、紛失や収集漏れが発生しないことを保障する。引渡しの過程では、当該医療廃棄物が「新型コロナ ウイルス関連医療廃棄物」に該当するかどうかを明確に告知する。 毎回医療廃棄物収集業務終了後に、収集要員の防護用品を消毒して医療廃棄物として管理し、ドアハ ンドルなど収集要員が接触した場所や運搬エリアの環境(運搬専用通路、専用の荷物用エレベーターや 階段、一時保管場所の収集後スペースなど)、設備、運搬車両、容器などを全面的に消毒する。 15 / 20 (5)台帳と伝票制度を実行する。PCR 検査機関(検査室)は医療廃棄物管理台帳制度を制定し、医療 廃棄物の発生量、収集運搬量、収集運搬業者などの状況をすみやかに記録する。医療廃棄物の運搬に際 しては、『医療廃棄物委託伝票』に記入の上規定通り保管し、調査に応じられるようにする。 五、PCR 検査支援チーム基準 各省(区、市)の党委員会と政府は、当該省の状況にもとづいて、少なくとも 10 チームの PCR 検査 支援チームを設立し、各チームに検査能力 1 日 1 万管相当の関係物資を配備して、当地区またはほかの 省の全員検査の任務を担当する。PCR 検査支援チームが必要な物資は単独配備することとし、チーム派 遣先の備蓄物資は使用しない。各省(区、市)の党委員会と政府は、国務院新型コロナウイルス感染症 対策共同予防抑制機構の PCR 検査能力整備に関する関係部署にもとづき、国家公共実験室と、都市核酸 検査基地を優先的に PCR 検査支援チームとして確認し、この基礎の上に実際の必要に応じてその他の PCR 検査支援チームを設立する。 各 PCR 検査支援チームには、少なくとも以下の人員と物資を配備する。 (一)人員 1. 人数 26 名(3 交替制、各班 8 名、検査能力 1 万管/24 時間で計算)。 2. 基本要件 臨床ゲノム増幅検査室職務研修証書保有者、役職不問、2 年以上の病原体核酸増幅検査経験、新型コ ロナウイルス核酸検査の経験があり、健康な者。 チームリーダー1 名、団体管理経験者で総合的素質がよく、良好なリーダーシップ、組織協調能力、 コミュニケーション能力を持つ者。 リーダー補佐(兼連絡員、検査予備員)1 名。 機器の設置とテスト調整、メンテナンス・修理、校正、データネットワークデバッグ能力を持つ者 1 ~2 名以上。 核酸検査品質管理習熟者と検査結果の分析報告員 4~6 名以上。 検査室のバイオリスク評価と相応する防護措置の知識と能力を持つ者 1 名以上。 高圧滅菌容器の使用研修を受け、その資質のある者 1 名以上。 16 / 20 (二)機器装置 機器設備の梱包材はできるだけ繰り返し使用できる丈夫な物を選択し、機器の頻回の梱包輸送に備え る。 1. 核酸抽出装置(96 ウェル):6 台 2. 蛍光 PCR 増幅装置(96 ウェル): 12 台 3. マイクロピペット:シングルチャンネル(1-10µL、5-50µL、10-200µL、200-1000µL)4~5 セット 8 チャンネル 4~5 本 4. 補助装置: シングルチューブ用卓上遠心機 2~3 台 8 連チューブ用/96 ウェルプレート用遠心機 各 2~3 台 卓上ボルテックスミキサー 2~3 台 マルチチューブボルテックスミキサー 1~2 台 (検体採取チューブプレートのシェイク、ミキシング用) マイクロピペットスタンド 5 台 5. 機器の予備部品: 一定数量の消耗しやすい部品。核酸抽出装置磁気プレート、ヒューズ、電球など (三)試薬 1. 核酸抽出試薬 2~3 万件の検体検査の使用量を準備する。核酸抽出試薬は核酸抽出装置に適合したものとする。 2. 増幅検査試薬 少なくとも 2 種類準備する。うち 1 種類は日常検査試薬として核酸抽出試薬とセットのもので、分析 精度(最小検出感度)≦500 コピー/ mL で、2~3 万件の検体検査の使用量を準備する。その他の 1~2 種類の試薬は、増幅エリアが日常検査試薬のものとは違い、分析精度が日常検査試薬より高いもの(最 小検出感度≦100~300 コピー/ mL など)とし、日常検査試薬で陽性が出現した場合の再検査確認に使用 する。増幅検査試薬はコールドチェーン輸送容器で輸送する。 3. その他 機器校正用の試薬キット。検査システムの性能バリデーションと内部精度管理に用いる品質管理用模 擬ウイルスなど。 (四)消耗品 17 / 20 1. ロングフィルターチップ 規格:10µL、100µL、1000µL。 DNase/RNase フリー、数量は検査試薬に対応。 2. 8 連チューブ、セットの 96 ウェルプレート、プレートシール、密封チャック袋、ピペッティングリ ザーバー 検査試薬の数量に対応し、増幅装置に適合したもの。 マイクロピペットに適合したリザーバー 10 個 8 連チューブ用ウェルラック 20~30 個 3. チューブラック 4*8 または 8*12 チューブラック 50~100 個 (径が大きく 5 検体プール方式、10 検体プール方式の PCR 検体採取チューブが立てられるもの) 4. 防護用品 医療用防護マスク(オーバーヘッドタイプ)、サージカルマスク、ガウン、防護服、ラテックス手袋 (パウダーフリー)、シューズカバー、フェイスシールドまたはゴーグル、キャップ、ハンドソープな ど、1 人 1 日 1 セットとして 2~3 日分の量を配備する。人員の体型に応じて異なるサイズの防護具を配 備する。 5. その他 (1)トランシーバー 4~5 セット 検査室の各エリアと検査室外部の通話に使用する。 (2)スマートフォン 1 台 検査室内から外部へのすみやかな写真情報の伝達や、上級への迅速な結果報告に使用する。 (3)パソコン 1 台 増幅装置付属のパソコンのほかに、もう 1 台パソコンを配備し、検査室外部のデータ処理に使用 する。 (4)外付けハードディスクまたは大容量 USB ディスク 1~2 個 (5)デスクトップ共有ツール 条件がある場合は、全部のパソコンに TeamViewer などのデスクトップ共有ツールをインストール し、検査室外でのチームリーダーや品質責任者による随時チェック、陽性結果の審査に使用する。 (6)救急箱 1 箱 常備薬や救急用品を配備する。 18 / 20 六、PCR 検査室の備蓄と保障 人口が 500 万人以下の都市では、PCR 検査支援チームが使用する検査室または改装可能スペースを 2 か所以上確保しておく。人口が 500 万人を超える都市では、PCR 検査支援チームが使用する検査室また は改装可能スペースを 5 か所以上確保する。それぞれの検査室または改装可能スペースには、少なくと も 5 チーム以上の PCR 検査支援チーム受け入れを可能とし(各チームの検査能力は 1 日 1 万管として計 算)、関連する検査装備、試薬、消耗品を備蓄する。支援 PCR 検査室各所に配置する人員、場所、物資 の詳細は下記の通りとする。 (一)人員 1. 検体受取り、不活化、検体整理要員:20~25 人 2. 清掃、医療廃棄物処理要員:4 人 3. 医療機関連絡要員:1 人 PCR 検査支援チームとペア支援医療機関との連絡を担当。 4. 行政連絡要員:1 人 PCR 検査支援チームと当地行政との連絡を担当。 (二)場所の準備 1. 検体受取り、不活化(必要時)処理 検体受取りスペースは 50 平方メートル前後とし、A2 型 2 人用安全キャビネット 2~3 基を配置する。 人員は 4 交替制で各班 5~6 人とする。前処理室には少なくとも大きいサイズの検体輸送ボックス、冷蔵 庫、空気消毒機、エアコン、大量のチューブラック、収納ラックなどを配置する。検体が大量で安全キ ャビネット内だけで不活化処理ができない時は、風通しがよく、相対的に人の少ない広い場所で、輸送 車両が通行、荷下ろししやすい所を選んで、検体の受取りと不活化処理、ナンバリングを行なうことが できる。 2. 核酸増幅検査室 試薬準備エリア(20 平方メートル以上)、検体準備エリア(40 平方メートル以上)、核酸増幅・産物 解析エリア(40 平方メートル以上)など最低 3 つの物理的に完全に区分されているエリアが必要である。 検査室に機械換気システムがある場合は、各エリアの通風換気は 1 時間 10 回以上とする。機械換気シス テムがない場合は、検体準備エリアと核酸増幅・産物解析エリアには必ず外に面した窓が必要で、窓に は外に向けた強力な換気扇を 1~2 台設置する。各エリアには核酸抽出装置、PCR 増幅装置などの設備 を置く実験台を充分に配置する。同時に検査室用の電力容量は使用する数量の機器の総負荷をまかなえ るものとする。 19 / 20 3. 休憩室 各 PCR 検査支援チームには 1 室の清潔な部屋を用意し、事務作業や休憩に利用できるようにする。 4. 倉庫 各 PCR 検査支援チームには専用の倉庫を用意し、持参した各種消耗品や機器装置の梱包材などを収納 する。 (三)機器装置 1. 安全キャビネット A2 型 2 人用安全キャビネット 4~5 基。 検体受取り、不活化(必要時)処理エリア 2 基 検体準備エリア 2~3 基 2. 不活化処理用恒温器 3~4 台 3. クリーンベンチ 1 台 試薬準備エリアに設置 4. -20℃冷凍庫 2 台 試薬準備エリアに設置 2~8℃冷蔵庫 2 台 検体準備エリアに設置 5. 移動式紫外線ランプ 8 台 6. エアコン 各エリアには良好なエアコンを設置し、室内温度は 18~20℃を維持する。 7. 高圧蒸気滅菌器(蒸気の器外排出がないもの) ≧80 ㎥、2~3 台 8. 空気消毒機 3~5 台 (四)試薬 1. 核酸抽出試薬 スクリーニング検査の人数に対応する検査量相応の数量。 2. 増幅検査試薬 スクリーニング検査の人数に対応する検査量相応の数量。 (五)消耗品 1. ロングフィルターチップ (箱入り、DNase/RNase フリー、使用するマイクロピペットに適合したもの)(10µL、200µL、1000µL) 2. シャープスコンテナ(感染性鋭利器具廃棄容器):中サイズ 3. 個人防護用具 N95 マスク、サージカルマスク、キャップ、ガウン、防護服、ラテックス手袋(普通サイズ・ロング 20 / 20 サイズ、パウダーフリー)、シューズカバー、長靴カバー、ゴーグル、フェイスシールド、曇り止めス プレー、セパレート防護服、ゴム長靴。 (六)消毒用品 75%アルコール(500 mL 入り、6 箱)、固形塩素系消毒剤(1 箱)、噴霧器(大、中サイズ、10 個)、 ごみ箱(大、中サイズ、各 6 個)、バケツ付きモップ(5 セット)、除菌ハンドソープ、速乾性擦式消毒 剤、医療廃棄物専用袋(大、中、小サイズ)、結束バンド、医療廃棄物ラベル、1250 化学的インジケー タストリップ、ペーパータオル、Bacillus stearothermophilus バイオインジケーター (七)事務用品 トランシーバー 5 セット、パソコン 1 台、プリンタ 1 台、A4 コピー用紙、はさみ、ピンセット、 フェルトペン、ゲルインクボールペン、幅広粘着テープ、2 段クリップ 『全員 PCR 検査の組織と管理の強化についての通知』 《关于进一步加强全员核酸检测组织管理工作的通知》 中華人民共和国国務院 新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構 医療グループ 2021 年 8 月 8 日発行 国务院应对新型冠状病毒肺炎疫情联防联控机制医疗救治组 联防联控机制医疗发〔2021〕67 号 http://www.nhc.gov.cn/cms-search/xxgk/getManuscriptXxgk.htm?id=d9534df0b9d543a8b45876477c3a90f2 『新型コロナウイルス全員 PCR 検査の組織と実施指南』 《全员新型冠状病毒核酸检测组织实施指南》 中華人民共和国国務院 新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構 総合グループ 2021 年 2 月 7 日発行 国务院应对新型冠状病毒肺炎疫情联防联控机制综合组 联防联控机制综发〔2021〕27 号 http://www.nhc.gov.cn/xcs/zhengcwj/202102/c7744556a26f4db1b9f9714dba2dc670.shtml 日本語訳 吉川淳子(南京中医薬大学)

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コロナ対策「中国は独裁だからできる」では済まされない日本の感染爆発 コロナから人命を守る「中国の独裁」の方が国民の命を守れない日本の政治制度より優れている

コロナ対策「中国は独裁だからできる」では済まされない日本の感染爆発
コロナから人命を守る「中国の独裁」の方が国民の命を守れない日本の政治制度より優れている


 いつも中国に対する辛口の批判的意見で知られる遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士)氏がご自身のブログ(8/7)で、中国のコロナ対策の基本ルールの根幹は次の2点であることを指摘し、日本のコロナ対策と比較し以下のように述べておられます。

「●全員のPCR検査を徹底させること。
 ●無症状者や軽症者だけでなく、濃厚接触者を含めて、全て隔離して医療機関に移送し観察を徹底させること。
 日本のようにPCR検査をできるだけ避け、感染者全員を医療機関に隔離入院させず自宅療養を重視するというようなことは絶対にしない。日本のやり方は、ひたすらコロナ感染拡大に寄与するだけで、中国のコロナ対策政策から見ると「日本の感染拡大は絶対に収まらない」ということになるかもしれない。
 少なくともコロナ対策分科会の(尾身)会長が知らされていなかったようなコロナ政策が、数名の打ち合わせによって朝令暮改的に、行き当たりばったりで出されるようなシステムとは違う。 
 濃厚接触者もすべて拾い上げて隔離観察するという徹底ぶりだ。」

 中国に対する辛口ご意見番の遠藤誉氏からみても日本のコロナ対策は中国よりはるかに劣っているということです。私は、情けない気持ちを通り越して政府のやり方に怒りを覚えます。

 現時点でのコロナ感染者数は累計で、中国では94,982人(9/3)、日本では1,524,679人(9/4 15:08)。コロナによる死者数累計は、中国4,636人(9/3)に対し、日本は16,184人(9/4 15:08)です。しかも、中国の人口は約14億人に対して日本は1億2千万人です。

 これをもって「中国は独裁だからできる」というのであれば、人権という観点からすれば国民の生命を守る「中国の独裁」の方が、国民の生命を守ることができない日本の政治制度より優れているということになります。中国の悪口を言う前に、コロナ対策は素直に中国に学ぶべきでしょう。 (伊関)



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