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にしみの鉄道情報局付属ブログ

オシ17の台車

2016-10-11 | 鉄道

横川の碓氷峠鉄道文化むらにはオシ17が保存されています。いろいろな遍歴をたどったこの車両ですが、台車にも見るべきところがあります。
そのオシ17の台車、近鉄電車ファンなら非常に見覚えがある台車を履いています。


オシ17専用のTR53形台車、近鉄電車でおなじみのシュリーレン式台車そのものです。


近鉄電車のシュリーレン式台車

10系客車は1955年から製造された、軽量構造の車体を採用した客車で、のちの国鉄車両の車体設計に大きな影響を与えています。10系の前に製造された優等列車用の43系客車の車体重量が40t前後なのに対して、多くの車両が30t前後で、平均10t近い軽量化を達成していました。

オシ17もこの10系客車の一員ですが、成り立ちは少し違って、当時余剰となっていた戦前製の優等列車用客車を改造して作られた車両です。新造車に近いのですが、車籍と台枠を流用して、他の10系客車に準じた車体を載せています。10系では他に寝台車のオハネ17(冷房化後はスハネ16)も、同様に台枠を流用しています。

国鉄の客車の車体更新の場合、台車も種車から流用するのが普通で、先のオハネ17は種車となった32系客車から台車を流用しています。
オシ17が種車から台車を流用しなかった理由はよく分かりませんが、どうやらオシ17へ改造された車両は戦前製の寝台車や食堂車で、そのほとんどは重い3軸ボギー台車を履いていました。それを流用して、スシ58形とする計画もあったそうで、3軸ボギー台車の10系客車という、珍車が登場していたかも。

さすがに3軸ボギー台車を流用するのは問題だったのか、オシ17は近畿車輛が製造したシュリーレン式のTR53形台車を使用しています。なぜこの台車が採用されたのかは、よく分かりませんが、近畿車輛が国鉄に売り込みをかけて、採用されたのかもしれません。同時期の近鉄電車や都営5000形とほぼ同形態の台車で、模型ではこれらを流用するケースもあるとか。
シュリーレン式は軸箱支持機構が国鉄としては珍しい円筒案内式で、国鉄在来線ではこれ以降201系やキハ40系まで採用例が無い方式となっています。

またオシ17は客車としては初めてディーゼルエンジン駆動の冷房装置を搭載しています。それまでも一等寝台車などでは冷房装置を搭載してた車両がありましたが、すべて車軸駆動式の冷房装置で、ディーゼルエンジン駆動のものは、オシ17が初めての存在でした。しかし、厨房の完全電化は達成できず、石炭レンジを用いていました。

さてオシ17は登場後、東海道本線の特急「つばめ」・「はと」や寝台特急「あさかぜ」、東北本線初の特急「はつかり」などで活躍を始めました。これらの列車が、電車気動車化やブルートレイン化されると、急行列車に転じて活躍しました。
しかし、1970年代に入ると急行列車の食堂車は廃止されていき、1972年3月の時点で、使用列車は北陸本線の急行きたぐにと東北本線の急行十和田のみに減少していました。

そして1972年11月6日、北陸トンネルを走行中の急行きたぐにの食堂車オシ17 2018から出火、いわゆる北陸トンネル火災事故が発生しました。当初、石炭レンジからの出火とみられ、事態を重く見た国鉄は直ちにオシ17の使用を停止し、これ以降オシ17が使われることはありませんでした。

なお、後の調査で石炭レンジではなく喫煙室付近から出火していることが判明し、火元は電気暖房配線のショートと判明しました。これは食堂車だけではなく、電気暖房を使用する旧型客車全てで発生する可能性がある火災ですが、内装に可燃性の高い合成樹脂材を多く使用する10系客車が被害大きくした面がありました。
これ以降防火面で問題の多い10系客車の多くは、車体の老朽化もあり急行列車の運用から外されることになります。

事故後オシ17はその後多くが廃車されますが、2両だけ電気機関車の教習車に改造され、オヤ17になり国鉄分割民営化の直前まで生き残りました。その後も1両は解体されず、碓氷峠鉄道文化むらに保存されています。

撮影 2008年3月8日 碓氷峠鉄道文化むら 2013年3月10日 西大垣
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1 コメント

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Unknown (酒井 英夫)
2021-11-29 08:17:01
TR53台車には関心があってオシ17以外でも採用されて不思議では無かったと考えます。オハ36に電暖をつけたら少しの重量増でスハ40になったケースなど、TR47をTR53に置き換えればオハ36のままで済んだはず。これなどは国鉄が機動的に考えてオシ17の廃車があった際保存してあれば出来たはず。
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