
もし、神様から歴史上の謎を一つ教えてやるといわれたら、なにを希望するだろうか。恐竜絶滅の原因、邪馬台国はどこにあったか、聖徳太子の実像、本能寺の変の真相、坂本龍馬の暗殺の黒幕などがすぐに思い付く。20世紀以降に限定してもフェチマの予言の3つめ、三億円事件の真犯人、そして今回のテーマのグリコ・森永事件の真犯人を知りたい。
このグリコ・森永事件の舞台は、関西の兵庫県尼崎から大阪の北摂、さらに京都市南部、滋賀県の草津と広がっている。事件の舞台の一つとなった京都市南部の伏見区の深草一帯は、弟が学生の時、下宿していた関係で馴染みがあり余計身近に感じる。
この本の著者の一人の宮崎学はかってグリコ・森永事件の容疑者と疑われた一人である。それは同氏が、かのキツネ目の男にそっくりであっただけでなく、京都市伏見区出身、ヤクザの組長の息子で、元共産党員、学生時代は学生運動に関わり、雑誌記者、さらに親族の経営する会社の役員を勤めた経歴を持ち、企業恐喝で京都府警に取り調べられた前歴を持つ。そのため右翼から左翼まで広がる交遊関係があり、事件当初から厳重に捜査本部にマークされていた。しかし同氏には、キツネ目の男が目撃された時間の鉄壁のアリバイがあるという。
これらの疑惑は、毎日新聞や一橋文哉の闇に消えた怪人などで指摘されている。また、この本のもう一人の著者、大谷明宏は宮崎学の学生時代からの友人だが、当時相当宮崎学を疑い、現在もまだ少し疑っているようである。
当初のグリコ事件の舞台は、ほぼ大阪府北部だったが、後の丸大ハム、ハウス食品、森永製菓の事件では舞台は京都市南部の伏見区に移る。この伏見の大手筋商店街には重要な物証の一つの脅迫状に使われた便箋を販売しているある文具店があった。その便箋はその文具店の特注品であった。
これらの事件と京都南部との関連から、この本の中で、宮崎学は重要な発言をしている。「(前略)犯人は宮崎さんの知っている人物である可能性が高いのではないですか」「おそらくそうでしょう。顔見知りの人物でしょう。私にはたぶんあいつらだと思う人物がいます」
この事件、2府2県の合同捜査本部が置かれるなど、舞台は広範囲に広がっているように見えるが、実は江崎グリコ社長宅が兵庫県にあり、ハウス事件の現金受け渡しが滋賀県草津市だった以外は、大阪府北部から京都府南部の淀川両岸の僅かな範囲に集中している。それもあって、前述のような発言になった。このエリア、いろいろ訳ありで、それがこの本の後半に一部書かれている。
この本では、当時の時代背景や、ヤクザの世界なとも考慮しながら、様々なことが述べられている。関西のヤクザの半数以上がマイノリティであるといわれている。当時、関西ではエセ同和がかなり活発に活動していた。エセ同和は当時、警察でも手が出しにくい存在であった。これ以上は、本を読んだ方が良いのだが、一部には確信に迫る部分もあった。
この事件、犯人は捜査線上にも上がらず、魑魅魍魎のはるかかなたに消える感がある。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます