ニガイメ記

文章が苦手なので、イメージ写真でお茶をにごす日記
・・・の略。

Paizo

2007年06月06日 | NATURA

クァルテット・ウェンズデイの第57回は、パイゾ・クァルテット。
デンマークから初来日の若き俊英。注目株である。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番ハ短調 Op.18-4
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番「クロイツェルソナタ」
ニールセン:弦楽四重奏曲第1番ト短調 Op.13,FS4

これはまたなんとも私好みのプログラムでして。
殊にニールセンは楽しみ。4曲ある番号付きの四重奏曲はどれも好き(CDではNaxosのオスロSQ盤がおすすめ)、しかしコンサートにかかることはまず滅多にない。そこへこのたび作曲家と同国の演奏家で聴けるチャンスが到来。
そもそもニールセンの、しかも若書きの第1番をメインプロに持ってくるとは余程自信があるのだろう。果たして名刺代わりの一発となるか。

まず1曲目ベートーヴェン、弱音での入りが意表を突く冒頭部分で、瞬時にこのクァルテットの凄さがわかった。非常に緻密かつ鋭い表現だが、音自体は実にマイルドでハーモニーに適度な厚みがあって、いい感じ。これが彼らの特徴か。無理やり譬えると、弱音主体でマイルドになったハーゲンSQみたいとでもいおうか。とにかくユニークな演奏で楽しめた。

続くヤナーチェクが、さらに凄い。よく練られ、整っているが、随所に激しい表現が。憧れ、戦き、悲しみ・・・といった心理のさらに奥の領域まで仮借せず突っこんでいって剔り出してくる感じ。聞こえてくる音響としてはバランス良くまとまっているのだが、そこに孕まれているものとして巨大な混沌や闇のようなものを感じさせられるという、言葉ではうまくいえないのだが、ちょっと衝撃的な体験となった。
ヤナーチェクの中ではわりとよく演奏される曲だが、録音・実演あわせた自分の経験の中では今回の演奏が最高。この曲の真価を知った。

で、ニールセンだが、本日の曲目の中では比較的オーソドックスな解釈だったかも。
初期作品ゆえの、色濃く残るドイツ・ロマン派的な重厚さをこの曲の持ち味として、それを率直に打ち出した感じ。ブラームスばりに目の詰んだ書法を丁寧に解きほぐし、先鋭さよりは歌ごころを前面に出した、頗る安定度の高い堂々たる演奏。名演。さすが、手の内に入ってる感じ。

アンコールは、スウェーデンとデンマークの民謡風な親しみやすい小品を3曲も。ユーモラスなしぐさを交えつつ立ったままで演奏。トークも楽しい。こういうエンターティメント性の高さも将来の大物を予見させる。いや彼らは必ず大物になるでしょう。日本での知名度が上がるかどうかは知ったこっちゃないが。

いやはや前評判どおりの凄いクァルテットだった。もっともっといろんな曲を聞いてみたくなった。
と思ってたところへ得た情報。この秋、CPOレーベルから「ニールセン:弦楽四重奏曲全集」がリリースされるという。待ち遠しい!


camera: Fuji NATURA BLACK F1.9  film: Agfa VISTA100