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癌細胞の移動にはオートファジーが必要

2016-05-15 06:06:20 | 
Stopping cancer in its tracks

Disrupting autophagy, a cellular housekeeping process, limits cancer spread

May 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160512124918.htm

シカゴ大学の研究者は、オートファジーの阻害が効果的に腫瘍細胞の移動と乳癌の転移を阻止することを示した
5月12日にCell Reports誌で発表された研究で彼らはこのプロセスが腫瘍の転移に必須であることを実証し、オートファジーを細胞移動につなげるメカニズムを説明する


「我々は遺伝学的・化学的な手段を使うことで、オートファジーが高度に転移性の腫瘍細胞の移動と浸潤に必須であることを示した」
チームリーダーのKay MacLeod, PhDは言う
彼はシカゴ大学Ben May Department for Cancer Researchでは準教授associate professorである

「我々の研究は臨床的状況clinical settingにおけるオートファジーの阻害が転移による癌の広がりを阻止するための効果的なアプローチであることを示唆する」

転移は癌による死因の90パーセントを占めている
急速に増殖する腫瘍細胞は密接に詰め込まれ、利用可能な酸素と栄養を急速に使い果たす
そのような腫瘍から逃れることで移動する癌細胞は飢えを回避し、密集していない環境で栄養を獲得することになる

「転移する癌細胞のオートファジーを止めると何が起きるのだろうと問うことから我々は始めた」
Macleodは言う

MacLeodのラボで研究していた二人のMD/PhD studentであるMarina SharifiとErin Mowersが転移性の癌細胞を培養皿の上に置いてtime-lapse microscopyで観察すると、それらは活発に動き回り続けた
しかし、彼ら研究チームがオートファジーに関する遺伝子のAtg5とAtg7をノックダウンしたところ、「それはまったく動かなかった
まるで止まってしまったかのようだった」という

その遺伝子を変化させた癌細胞をメスのマウスの乳腺脂肪パッドmammary fat padに注入すると、 癌細胞は増殖して巨大な原発乳癌腫瘍を形成した
しかし通常なら肺や肝臓、骨などの遠い箇所に転移するはずの癌細胞は、転移することができなかった

詳しく観察したところ、それらの細胞は形態的にmorphologically非常に異なることが示された
細胞の移動に重要な構造である『接着点focal adhesion』の数がおびただしく多くnumerous、そして異常に大きったのである

※focal adhesion: 接着点。インテグリンを介して細胞外マトリックスと細胞骨格が結合する場所。インテグリンの細胞内ドメインは、α-アクチニン、テーリン、パキシリン、ビンクリンなどの作用を受ける

※パキシリンpaxillin: 接着点focal adhesionでフォーカル・アドヒージョン・キナーゼ/focal adhesion kinase(FAK)と結合するタンパク質で、FAKとの結合箇所が2つある。パキシリンが足場となって、インテグリン・FAK・SRCキナーゼが会合する


「接着点はタンクトラック/tank trackのように機能する」
MacLeodは言う

これらの大きなタンパク質複合体は細胞の前面に組み立てられ、細胞の外面peripheryから伸びて細胞外マトリックスに接続する
細胞はそれを使ってマトリックスに対して細胞自身を押したり引いたりする

細胞が前へ移動する時、接着点は細胞の前面で形作られて、細胞外マトリックスへの動的な接続を確立する
細胞がそれを通ぎていくにつれて、引きずるように動く細胞の端を 接着点はだんだん後ろの方へずれていくdrift
そこでオートファジーが介入し、接着点をばらばらにしてdisassemble中身を分解し、細胞の後ろの端を細胞外マトリックスから離れられるようにする
そうして細胞は前方の端からの牽引力tractionによって引っ張られるのである


もしオートファジーが阻害されると、転移する腫瘍細胞は動くことができなくなることをMacleodたちは示した

入れ替わるturn overことがない接着点はだんだん大きくなり、細胞をその場に固定するanchor

「それらの細胞は文字通り『刺し留められてstuck』、動かなくなる
顕微鏡では細胞が動こうとして震えているwobbleのが見えるだろう
細胞は新たな突起protrusionを作って移動しようとするが、それは不可能だ
なぜなら細胞は刺し留められstuck、細胞の後ろ側の接着を分解するdissolveことができないからだ
基本的に、オートファジーに欠陥がある癌細胞は移動できず、結果として別の場所に行くことは不可能になる
こういう理由でオートファジーの阻害が腫瘍の転移を防ぐと我々は考えている」


このプロセスを詳しく分析することにより、オートファジーと接着点との間の生化学的なつながりが明らかになった
接着点に存在するパキシリンpaxillinというタンパク質は、突起の細胞内側の構成物を細胞移動へとつなげるために使われる
細胞が接着点を分解する必要が生じると、オートファジーのプロセスではLC3というタンパク質が使われる
LC3はパキシリンを飲み込みengulf、リソソームへと運んで分解させる

「LC3とパキシリンとの相互作用は、SRCによって調節される」

SRCは細胞の移動と転移を促進するキナーゼであり、初めて癌遺伝子として定義されたタンパク質でもある
研究の共著者co-authorであるErin Mowersは、SRCが転移を促進する能力がオートファジーに依存することを示した

「オートファジーを阻害すると、
もはやSRCは転移する腫瘍細胞を駆り立てることはできない」
MacLeodは言う

「これは非常に大きな発見である」

オートファジーを阻害する薬が既に承認されており、現在いくつかが臨床試験で評価中である
その内の一つ、ヒドロキシクロロキンはマラリアの予防と治療用としてFDAが承認し、今は腫瘍の成長を遅らせる手段として試験中である

「しかし、オートファジー阻害剤は転移を防ぐ方法として特に評価されてはいない」ということにMacLeodは言及する

「我々はヒドロキシクロロキンや他の関連する薬剤の効能を、転移の抑制という点で評価するようにデザインされた試験を調べたいと考えている
このオートファジーを阻害するアプローチはそのような場でこそ抗癌の手段として最も役立つだろうと我々は考えている」


著者は次のように結論する
「腫瘍の移動、浸潤、転移にオートファジーを関連付ける研究が増えつつある
我々の研究はそれに加わるものだ」

「我々の研究はパキシリンの分解を通じて接着点を分解する際にオートファジーが果たす重要な役割、そして原発腫瘍から逃れるためのオートファジーの必要性を明らかにしたが、
それに加えて腫瘍の転移を阻害するためにオートファジーを阻害することの潜在的な有用性を強調する」


Cell Reports誌で発表された実験のほとんどは乳癌の細胞をマウスに移植することで実施されたものだが、研究者たちは転移性のメラノーマ細胞でも同じ現象を観察したという

「そのため、オートファジーに依存する転移は一種類の腫瘍だけに特別なことではないように思われる」
MacLeodは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.065
Autophagy Promotes Focal Adhesion Disassembly and Cell Motility of Metastatic Tumor Cells through the Direct Interaction of Paxillin with LC3.
オートファジーはパキシリンとLC3との直接の相互作用を通じて転移性腫瘍細胞の接着点分解ならびに細胞移動を促進する


Highlights
・転移性の腫瘍細胞が移動して浸潤するためにはオートファジーが必要である
・オートファジーはパキシリンpaxillinの分解を促進し、接着点focal adhesionの代謝回転turnoverを促進する
・パキシリンは保存されたLIRモチーフを通じてLC3Bと相互作用し、それはSrcによって調節される
・オートファジーはSrcによって調節される細胞移動にとって必要である

Summary
オートファジーは種を通じて保存conservedされた異化catabolicのプロセスであり、凝集したタンパク質や細胞器官organelleの除去に関してハウスキーピング的な役割を演じる
また、オートファジーは栄養が欠乏した状態で活性化されて代謝産物とエネルギーを作り出す

オートファジーは腫瘍発生/発癌tumorigenesisにおいて重大significantな役割を演じるが、
癌におけるオートファジーの機能は状況依存的context-dependent functionsであり、時に正反対opposingでもあるため、
治療目的でオートファジーを標的にする研究者の努力は非常に複雑なものとなっていた
Autophagy plays a significant role in tumorigenesis, although opposing context-dependent functions of autophagy in cancer have complicated efforts to target autophagy for therapeutic purposes.

我々はオートファジーの阻害がin vitroで腫瘍細胞の移動と浸潤を低下させ、in vivoでは転移を減少させるattenuateことを実証する

オートファジーを欠く腫瘍細胞では非常に多数numerousの大きなlarge『接着点/focal adhesion (FA)』が蓄積する
これはパキシリンを標的とする分解degradationを通じて接着点を分解disassemblyする際のオートファジーの役割を反映する

我々はパキシリンがそのアミノ末端/N末端の保存されたLIRモチーフを通じて プロセスを受けたLC3/processed LC3(LC3-II)と相互作用し、その相互作用が発癌性oncogenicのSRC活性によって調節されることを実証する

合わせて考えると、これらのデータは
接着点の代謝回転・腫瘍細胞の移動・転移におけるオートファジーの機能を確定するものである



関連サイト
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/yoshimori/jp/research/030/
LC3はProLC3として翻訳された後、直ちにAtg4によってC末端22アミノ酸が除去され、LC3-Iとなります。
LC3-IはまずAtg7に、続いてAtg3に受け渡された後、オートファゴソーム膜のリン脂質分子フォスファチジルエタノールアミンにC末端で共有結合してLC3-IIとなります。
オートファゴソームの外側のLC3-IIはAtg4によってPEから切断され、再びLC3-Iに戻ることが出来ますが、オートファゴソームの内側のLC3-IIは、オートファゴソームがリソソームと融合すると分解されます。



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オートファジーを調節するbeclin 1の発現の低さは、トリプルネガティブ乳癌に罹患していることと35倍関連する
 

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