Cutting off the cancer fuel supply
August 10, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160810174355.htm
ニュージャージー州のラトガーズがん研究所/Rutgers Cancer Instituteとプリンストン大学の研究者は、オートファジーという細胞の生存メカニズムを標的とすることで癌細胞の『燃料供給fuel supply』を遮断するという、癌治療に向けた新たなアプローチを明らかにした
ラトガーズ研究所の副所長Deputy DirectorであるEileen P. White, PhDと彼女の同僚たちは、Genes & Development誌の8月10日版に発表された論文で (doi: 10.1101/gad.283416.116) Krasタンパク質をドライバとする肺癌に焦点を合わせた
Q: なぜこの主題が調査するほど重要なのか?
Q: Why is this topic important to explore?
A: 肺癌の85から90パーセントが非小細胞肺癌/non-small-cell lung cancer (NSCLC) であり、標準治療への反応は概して良くない
転位性NSCLCの患者でいくらかのサブセットでは、特定の突然変異(EGFR, MAPK, PI3Kシグナル伝達)を標的とする治療が開発されたおかげで生存の改善が見られている
KrasなどRasタンパク質ファミリーの突然変異もNSCLCでしばしば検出されるが、しかしRasの変異を直接標的とする薬剤で有効だったものは一つもない
オートファジーの重要な細胞プロセスを解明し、そしてKrasをドライバとする腫瘍細胞におけるオートファジーの役割を理解することはNSCLCへの新たな治療アプローチにつながる可能性がある
Q: オートファジーとは何? そしてこのプロセスがどのようにして我々が既に知ることと関連する?
Q: What is autophagy and how does this process relate to what we already know?
A: 細胞が飢餓やストレスに陥ると自分自身を『食べる』ことがあり、そのようなプロセスをオートファジーと呼ぶ
これまで長い間信じられていた考え方は、オートファジーは細胞が自分自身の一部を消化してリサイクルすることrecyclingであり、その目的は細胞の代謝のサポートで、栄養の供給が中断interruptionされても生き残るためだというものだった
しかしそれが本当なのか、そしてリサイクルすることが何のために必要なのかは分かっていなかった
癌細胞は通常の細胞以上にオートファジーのスイッチを入れ、オートファジーを生き残るためにも使う
以前Whiteたちのグループは、Rasタンパク質ファミリーによって活性化した癌細胞にはオートファジーが必要であり、細胞の維持管理cell maintenance、代謝的なストレスへの耐性metabolic stress tolerance、そして腫瘍の成長にとって必須だということを発見している
Rasタンパク質の『スイッチがオン』になると、細胞の増殖と生存を可能とする他のタンパク質のスイッチを入れる能力を獲得する
したがって、オートファジーが何をしているかを理解することは、癌の治療に利用可能な固有の弱点inherent weaknessを明らかにする可能性がある
Q: あなたのチームはどのようにして研究に取り組み、そして何を学んだ?
Q: How did your team approach the work and what did you learn?
A: ラトガーズのWhiteたちのグループはプリンストン大学のRabinowitzたちと共に研究を実施し、オートファジーはどのようにして癌細胞がストレスを生き残ることを可能にするのかを解明しようとした
我々は遺伝子工学で作成されたKrasをドライバとするNSCLCのマウスモデルから作られた腫瘍由来の細胞系統を使い、質量分析mass spectroscopyという分析技術を通じて、オートファジーによって消化される細胞内要素の経路を追跡した
分析の結果、癌細胞は実際に自分自身を分解してリサイクルし、飢餓を生き残っていた
細胞内の一部をバラすcannibalizationことは、細胞の発電所であるミトコンドリアに燃料を供給してエネルギーレベルを維持する
したがって、オートファジーを阻害することは発電所への燃料供給を遮断し、エネルギー危機の状態を作り出して最終的に癌細胞を殺す
Q: この発見の意味は?
Q: What is the implication of this finding?
A: この発見は、オートファジーの阻害により癌細胞への『燃料』を遮断することが、Krasをドライバとする肺癌に対する潜在的な治療戦略である可能性を示唆するものだ
Krasをドライバとする肺癌で明らかにされたオートファジー経路が他のタイプの癌にも当てはまるかどうかは、将来の研究により明確になるだろう
http://dx.doi.org/10.1101/gad.283416.116
Autophagy provides metabolic substrates to maintain energy charge and nucleotide pools in Ras-driven lung cancer cells.
オートファジーはRasをドライバとする肺癌細胞におけるエネルギーチャージとヌクレオチドプールを維持するための代謝の基質を提供する
Abstract
オートファジーはタンパク質や他の巨大分子macromolecules、小器官organellesを分解し、そして仮説としてそれらをリサイクルすると考えられている
Krasをドライバとする肺癌のモデルとして遺伝子工学で作成したマウスモデル/genetically engineered mouse models (GEMMs) では、オートファジーは欠陥のあるミトコンドリアの蓄積を防ぎ、悪性腫瘍malignancy を促進する
オートファジーを欠損する腫瘍由来細胞系統は、呼吸が損なわれrespiration-impaired、飢餓に感受性があるstarvation-sensitive
しかしながら、欠陥のあるミトコンドリアdefective mitochondria、または代謝的な基質の供給不全impaired supplyから起きる 飢餓への感受性がどの程度までなのかは不明なままである
今回我々は、Krasをドライバとする肺腫瘍(野性型と、オートファジーに欠陥があるAtg7−/−)のミトコンドリアゲノムを配列決定した
Atg7の削除はミトコンドリアゲノムの突然変異の増大という結果になったものの、
非同義の変異nonsynonymous mutationsの存在は少な過ぎて、全般的なミトコンドリア機能不全を引き起こすことはできなかった
対照的に、放射性同位体でラベル化した栄養素を用いたパルスチェイス実験/pulse-chase studyにより、
オートファジー欠陥細胞では飢餓の間の ミトコンドリアへの基質の供給が損なわれていることが明らかになった
このことは、活性酸素種/reactive oxygen species (ROS) の増加、エネルギーチャージenergy chargeの低下、総ヌクレオチドプールの劇的な低下と関連する
オートファジー欠陥細胞の飢餓での生存は、全般的な抗酸化剤であるN-アセチル-システインでは回復しなかった一方、
グルタミンまたはグルタミン酸(どちらもTCA回路/クエン酸回路に入りヌクレオチド合成nucleotide synthesisに使われる)、またはヌクレオシドnucleosidesによって完全に回復した
ゆえに、ヌクレオチドプールの維持は、Krasをドライバとする腫瘍細胞が飢えた時の決定的に重要な課題challengeである
オートファジーは、生体エネルギーの基質ならびに生合成の基質を提供することによって、ヌクレオチドプールとそれによる飢餓の生き残りをサポートする
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/281aae37e50f702fb8cee950d3ad6a58
癌細胞の移動にはオートファジー遺伝子のAtg5とAtg7が必要
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125114106.htm
Atg5またはAtg7を抑制すると制御性T細胞(Treg)は機能しなくなる
参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。
は?
August 10, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160810174355.htm
ニュージャージー州のラトガーズがん研究所/Rutgers Cancer Instituteとプリンストン大学の研究者は、オートファジーという細胞の生存メカニズムを標的とすることで癌細胞の『燃料供給fuel supply』を遮断するという、癌治療に向けた新たなアプローチを明らかにした
ラトガーズ研究所の副所長Deputy DirectorであるEileen P. White, PhDと彼女の同僚たちは、Genes & Development誌の8月10日版に発表された論文で (doi: 10.1101/gad.283416.116) Krasタンパク質をドライバとする肺癌に焦点を合わせた
Q: なぜこの主題が調査するほど重要なのか?
Q: Why is this topic important to explore?
A: 肺癌の85から90パーセントが非小細胞肺癌/non-small-cell lung cancer (NSCLC) であり、標準治療への反応は概して良くない
転位性NSCLCの患者でいくらかのサブセットでは、特定の突然変異(EGFR, MAPK, PI3Kシグナル伝達)を標的とする治療が開発されたおかげで生存の改善が見られている
KrasなどRasタンパク質ファミリーの突然変異もNSCLCでしばしば検出されるが、しかしRasの変異を直接標的とする薬剤で有効だったものは一つもない
オートファジーの重要な細胞プロセスを解明し、そしてKrasをドライバとする腫瘍細胞におけるオートファジーの役割を理解することはNSCLCへの新たな治療アプローチにつながる可能性がある
Q: オートファジーとは何? そしてこのプロセスがどのようにして我々が既に知ることと関連する?
Q: What is autophagy and how does this process relate to what we already know?
A: 細胞が飢餓やストレスに陥ると自分自身を『食べる』ことがあり、そのようなプロセスをオートファジーと呼ぶ
これまで長い間信じられていた考え方は、オートファジーは細胞が自分自身の一部を消化してリサイクルすることrecyclingであり、その目的は細胞の代謝のサポートで、栄養の供給が中断interruptionされても生き残るためだというものだった
しかしそれが本当なのか、そしてリサイクルすることが何のために必要なのかは分かっていなかった
癌細胞は通常の細胞以上にオートファジーのスイッチを入れ、オートファジーを生き残るためにも使う
以前Whiteたちのグループは、Rasタンパク質ファミリーによって活性化した癌細胞にはオートファジーが必要であり、細胞の維持管理cell maintenance、代謝的なストレスへの耐性metabolic stress tolerance、そして腫瘍の成長にとって必須だということを発見している
Rasタンパク質の『スイッチがオン』になると、細胞の増殖と生存を可能とする他のタンパク質のスイッチを入れる能力を獲得する
したがって、オートファジーが何をしているかを理解することは、癌の治療に利用可能な固有の弱点inherent weaknessを明らかにする可能性がある
Q: あなたのチームはどのようにして研究に取り組み、そして何を学んだ?
Q: How did your team approach the work and what did you learn?
A: ラトガーズのWhiteたちのグループはプリンストン大学のRabinowitzたちと共に研究を実施し、オートファジーはどのようにして癌細胞がストレスを生き残ることを可能にするのかを解明しようとした
我々は遺伝子工学で作成されたKrasをドライバとするNSCLCのマウスモデルから作られた腫瘍由来の細胞系統を使い、質量分析mass spectroscopyという分析技術を通じて、オートファジーによって消化される細胞内要素の経路を追跡した
分析の結果、癌細胞は実際に自分自身を分解してリサイクルし、飢餓を生き残っていた
細胞内の一部をバラすcannibalizationことは、細胞の発電所であるミトコンドリアに燃料を供給してエネルギーレベルを維持する
したがって、オートファジーを阻害することは発電所への燃料供給を遮断し、エネルギー危機の状態を作り出して最終的に癌細胞を殺す
Q: この発見の意味は?
Q: What is the implication of this finding?
A: この発見は、オートファジーの阻害により癌細胞への『燃料』を遮断することが、Krasをドライバとする肺癌に対する潜在的な治療戦略である可能性を示唆するものだ
Krasをドライバとする肺癌で明らかにされたオートファジー経路が他のタイプの癌にも当てはまるかどうかは、将来の研究により明確になるだろう
http://dx.doi.org/10.1101/gad.283416.116
Autophagy provides metabolic substrates to maintain energy charge and nucleotide pools in Ras-driven lung cancer cells.
オートファジーはRasをドライバとする肺癌細胞におけるエネルギーチャージとヌクレオチドプールを維持するための代謝の基質を提供する
Abstract
オートファジーはタンパク質や他の巨大分子macromolecules、小器官organellesを分解し、そして仮説としてそれらをリサイクルすると考えられている
Krasをドライバとする肺癌のモデルとして遺伝子工学で作成したマウスモデル/genetically engineered mouse models (GEMMs) では、オートファジーは欠陥のあるミトコンドリアの蓄積を防ぎ、悪性腫瘍malignancy を促進する
オートファジーを欠損する腫瘍由来細胞系統は、呼吸が損なわれrespiration-impaired、飢餓に感受性があるstarvation-sensitive
しかしながら、欠陥のあるミトコンドリアdefective mitochondria、または代謝的な基質の供給不全impaired supplyから起きる 飢餓への感受性がどの程度までなのかは不明なままである
今回我々は、Krasをドライバとする肺腫瘍(野性型と、オートファジーに欠陥があるAtg7−/−)のミトコンドリアゲノムを配列決定した
Atg7の削除はミトコンドリアゲノムの突然変異の増大という結果になったものの、
非同義の変異nonsynonymous mutationsの存在は少な過ぎて、全般的なミトコンドリア機能不全を引き起こすことはできなかった
対照的に、放射性同位体でラベル化した栄養素を用いたパルスチェイス実験/pulse-chase studyにより、
オートファジー欠陥細胞では飢餓の間の ミトコンドリアへの基質の供給が損なわれていることが明らかになった
このことは、活性酸素種/reactive oxygen species (ROS) の増加、エネルギーチャージenergy chargeの低下、総ヌクレオチドプールの劇的な低下と関連する
オートファジー欠陥細胞の飢餓での生存は、全般的な抗酸化剤であるN-アセチル-システインでは回復しなかった一方、
グルタミンまたはグルタミン酸(どちらもTCA回路/クエン酸回路に入りヌクレオチド合成nucleotide synthesisに使われる)、またはヌクレオシドnucleosidesによって完全に回復した
ゆえに、ヌクレオチドプールの維持は、Krasをドライバとする腫瘍細胞が飢えた時の決定的に重要な課題challengeである
オートファジーは、生体エネルギーの基質ならびに生合成の基質を提供することによって、ヌクレオチドプールとそれによる飢餓の生き残りをサポートする
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/281aae37e50f702fb8cee950d3ad6a58
癌細胞の移動にはオートファジー遺伝子のAtg5とAtg7が必要
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125114106.htm
Atg5またはAtg7を抑制すると制御性T細胞(Treg)は機能しなくなる
参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。
は?