運動が慢性疲労症候群患者の疲弊を強める理由
Why exercise magnifies exhaustion for chronic fatigue syndrome patients
フロリダ大学(UF)の新しい研究によると、優れた運動選手に「(筋肉が)燃焼しているのを感じ」させるメカニズムは、慢性疲労症候群の人々がありふれた日常の行動で消耗したと感じる元凶であることが判明した。
Pain誌2月号で発表された研究で、疲労の感覚を脳に伝達する神経路が原因である可能性が示された。慢性疲労症候群の人々はこの経路の活動が過剰である。この発見は筋肉のような末梢の組織も疲労の感覚に寄与するというエビデンスを初めて提供する。疲労の原因の確定は、治療の標的を特定して治療法を開発するために役立つ可能性がある。
研究者は筋肉の代謝産物(乳酸やアデノシン三リン酸(ATP)など)の役割に焦点を合わせた。研究では、ヒトが筋肉を動かすときに放出されるこれらの物質が神経経路を活性化することが初めて示された。さらに、これらの経路は健康な人よりも慢性疲労症候群患者において非常に感受性が高いようである。
慢性疲労症候群は、最近米国医学研究所(IOM)が『全身性労作不耐性疾患(systemic exertion intolerance disease; SEID)』と名前を変更した極度の慢性的な疲労が特徴の疾患である。疾病管理予防センター(CDC)によると、その主症状である疲労はしばしば他の多くの疾患と関連しているため、実際には100万人以上がかかっていると思われるSEIDを診断することは難しい。疾患には根本となる医学的な原因がなく、研究者は何がそれを引き起こすかについてわからないままである。しかし彼らは治療法を見つけるために疾患の様々な側面を調査している。
「筋肉の代謝産物は、既に疲労がある人はもちろん、健康な人でも疲労を引き起こしうる。それはこれまでヒトでは示されていなかった」、UF医科大学でリウマチ学と臨床免疫学の教授であり、論文の筆頭著者のRoland Staud博士は言う。
研究者によれば、運動の間に筋肉が生じた代謝産物は代謝性受容体によって感知され、疲労経路(fatigue pathways)を通じて脳に情報が伝えられるという。しかし、SEIDの患者ではこれらの疲労経路の代謝産物に対する感受性が非常に高く、過剰な疲労感を引き起こす可能性がある。
「ほとんどの人は、激しい運動が続くと疲弊を感じて止まる必要がある。しかし我々は急速に回復するだろう」、Staudは言った。
「しかし、患者は非常に速く疲れ、時にはただ部屋の反対側に動いただけで完全に疲弊してしまう。これが彼らの人生を破壊する(This takes a toll on their lives)。」
学術誌参照:
1.慢性疲労症候群患者における疲労経路の感受性増加のエビデンス。
Pain、2015;
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150312154135.htm
<コメント>
論文のリンク先が間違っているようです。実際のアドレスはこちら。
慢性疲労症候群(CFS)の人は筋肉を動かした時の代謝物が感知されて脳に伝わる経路(fatigue pathways)が過敏で、過剰な疲労感を引き起こすという記事です。実験の内容は割愛しますが、ハンドグリップの運動後に血圧測定用の圧迫帯を巻きつけて代謝産物を閉じ込めた状態と圧迫帯をしない状態での疲労感を比較したというものです。
脳への疲労経路が過敏になる理由は不明ですが、脳の炎症やサイトカインが関与しているのでしょう。
関連記事には、筋肉から分泌されるセロトニンが関与しているというものがあります(中枢性疲労; central fatigue)。
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/03/130304151805.htm
>We have always known that the neurotransmitter serotonin is released when you exercise, and indeed, it helps us to keep going.
>However, the answer to what role the substance plays in relation to the fact that we also feel so exhausted we have to stop has been eluding us for years.
>We can now see it is actually a surplus of serotonin that triggers a braking mechanism in the brain.