今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

ノラたちとの共存を目指して 場外編・6「ジレンマ」(猫捨てを補完するノラ保護活動)

2022年07月31日 | シリーズ:ノラたちとの共存を目指して
前回の場外編5では日本が如何に"猫捨て天国"であるかを改めて訴えました。しかし日本人が命を粗末にするのは何も猫に限ったことではない。ペットと呼ばれる動物はみな、飼い主が動物愛護センターに持ち込めば殺処分だ。森林開発で生活の場を奪われた熊や猪、アライグマなどが街中に出てくれば害獣として殺処分。当県では廃園になった遊園地に放置されたキョンが野生化し、増えたからといって殺処分。お祭りで買ったミドリガメが大きくなったら池に放ち、それが増えたからといって冷凍殺処分を環境省が奨励している。

殺処分にするくらいなら販売禁止にするのがスジではないのか。まず管理放棄を厳罰に処すのがスジではないのか。森林開発に制限条件をつけて野生動物との共存を図ることは、開発区域の住民にとっても必要なことではないのか。自分たちの都合で増えた命、これだけ身勝手に粗末に扱えるのは日本人の特技とすら言える。ロシアのウクライナ侵攻を不条理だと思わない人はいないだろう。相手が物言わぬ動物だったら何をしてもいいのか。ワンニャンと暮らす人にとって彼らは家族と一緒です。人間と関わらないノラや野生動物だって同じ、彼らにも大切な家族がいるのです。

その一方、不幸なノラを救おうと立ち上がる人々も増えて来た。ノラ保護のボランティアさんだ。ボラさんたちは、今いるノラがすべて人に捨てられたかその子孫であることを知っている。ノラたちの不幸、つまり過酷な生活が人によってもたらされたことを知っている。だから単にかわいそうだけじゃなく、贖罪の意識を持っている人も多い。先日のあるブログに、保護した子猫の具合が悪いので調べてもらったらお腹に石ころや木くずが詰まっていたと。飢えに耐えきれずそんなものまで食べて命を落とす。過酷な生活とは、そういうことだ。

わが家に来るノラたちの守り神となった、みう (2019.8.9没)

猫保護のボラ活動には2つのパターンがある。個人と団体だ。個人のボラさんはよほど熟練した人でもない限り、自己資金の範囲内で活動範囲も大きくない。それに対して熟練したボラさんや団体(大抵はNPO法人)は広く寄付を募っている。個人ボラさんが身近なノラの保護を目指しているのに対し、団体の場合はその活動が多岐にわたる。啓蒙活動や役所等への働きかけなど、組織力を生かした活動は団体ならではのことだ。ただ、お金を集め組織が大きくなると、醜聞に出くわすこともままある。ちなみに、このボラさんたちのところには猫(飼い猫)を引き取ってくれとの依頼が後を絶たないようだ。

日本には全国に200を超える猫保護団体があって、その支部を含めればさらに多くなる。個人のボラさんに関する統計値はないが、今や相当な数にのぼることは想像に難くない。さらに地域猫活動に関しては全国すべての市町村が奨励し、推進しているボラさんたちも少なくないのに、どうしてノラの問題は一向に解消しないのだろうか。その理由の一端は、ネット上にある里親募集サイトを見ればわかります。

可愛い子猫の写真とともに書かれた「あと2日」「あと1日」「今日まで」の見出し。それは殺処分の日までの残り日数なのです。飼育放棄で各自治体の動物愛護センターに持ち込まれた猫たち。動物愛護センターとは何の冗談か、昔の保健所のことで持ち込まれた動物は数日後に殺処分される。その前に救おうと、必死になっているボラさんたちがいる。シリーズ前記事にも書きましたが、愛護センターに持ち込む人はまれで大抵は市中や野山、川などに捨てられる。その場合は大部分が生きていけないことになるのですが。

お店に来るノラたちの守り神となった、テン (2019.6.16没)

このシリーズ、いやこのブログで何度も述べて来たペット業界の闇。ブリーダーやペットショップでは必ず売れ残りが出る。小売店である以上それは宿命的なことだ。売れ残った動物を格安で引き取るのが"引き取り屋"と呼ばれる闇の人たち。自治体への報告では「販売」として扱われるのでその数すら把握できない。引き取られた動物(主にワンニャン)は身動きすらできない小さなケージの中で衰弱して死ぬまで放置されるのです。引き取り屋は業界の全てではないが、かなりの部分にはびこっていると考えられます。もちろんれっきとした動物愛護法違反だが取り調べも取り締まりも何故か殆ど例がない。しかしここでも、何とか救い出そうと活動するボラさんたちがいるのです。それだけじゃない。ブリーダーの廃業で残されたワンニャンが保護されたニュースは全国で後を絶たない。最近でも岩手県のペットショップ廃業で残された300匹の猫たちがボラグループに保護された。

ネットニュースによると、今日も長野県で高齢飼い主死亡により残された30匹の猫たちが救い出された。これも毎日のように散見され全国で後を絶たないのが多頭飼育の崩壊だ。最近は100匹を超える大型崩壊も増えて来た。悪意があるわけでも猫にたいする愛情がないわけでもない。しかし今のまま放置してボラまかせでは、ボラさんの手にも限りがあるし、その手から漏れた猫たちはそれこそ救われない。多頭の場合は申告制にして申告漏れには罰則を設けるとか、高齢者には認知症の検査を義務付けるとか、何か手を打つ必要があるだろう。

同じ悪意がないケースとして猫の脱走がある。確かに確信犯的な遺棄とは違うが、引っ越し時の置き去りなど立件し難いケースもある。猫の脱走に関しても、再保護できなかった場合は何らかの責任を問われるべきだと思います。これに対しては今年6月から義務付けられたマイクロチップの装着が将来役に立つ。飼い主さんにとっても愛猫が返ってくる可能性が高まるし、不心得の飼い主は何度も繰り返すだろうから罰則を設ければいい。マイクロチップの普及を早めるには不定期抜き打ちチェックと罰則だ。いずれにしても、そこまでやらないとノラは増えるばかりなのです。さらに言えば、川崎JFE人口島に残されたノラたちの問題や、世界遺産になった奄美でのノラ狩り(当局はノラをノネコ=野生の猫と勝手に判断し駆除を可能としている)等についても大勢の声に耳を傾け、関係者の責任と義務を明確にすべきだろう。

以上のような問題を放置し、何でもかんでも尻拭いをボラさんに任せているのが現状なのです。しかしよく考えてみて下さい。上記のような大仕事は組織だった(NPO等)ボラさんたちの役割になりますが、彼らは本当にそんなことをするためにボラになったのでしょうか。できる範囲内で活動している個人ボラさんと同様、身近にいる不幸なノラたちを救いたい、そう思ってボラになったのではないでしょうか。そんな気持ちに付け込んで、業界や悪意の猫捨ての尻拭いをさせているわけです。だから殆どのボラさんがジレンマを感じているけど、命の優先順位からしてやらざるを得ないのです。これは行政の怠慢も大きい。しっかり取り締まって悪意の猫捨てをなくすだけでボラさんたちが本来のノラ保護活動に専念でき、ノラの数が大きく減少に転じることだって夢ではないのです。ボラさんの数はもうそこまで増えているのだから。

目の前のノラを殺すことではなく(餌をやらない)、人間の悪行を駆逐することによってノラの数を減らす。それが本来の正当な方法ではないでしょうか。

当ブログ現役最古参のニャー

「ノラたちとの共存を目指して」目次  ※予告編(期日未定)含む
その1  資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題) 2017.2.27
その2  現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち) 2017.5.31
その3  エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの) 2017.8.31
その4  一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みう+テンちゃんの日常) 2017.11.30
その5  闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」 2018.4.29
その6  原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動) 2018.8.31
その7  形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う) 2020.1.31
その8  地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)
その9  理想追求編「殺処分ゼロの先にあるもの」(対等の精神と真の共存)
その10 最終章「共存の終焉」(ノラのいない社会)
番外編
番外編1「罪と罰」(法の実行と刑罰の妥当性) 2019.3.29
番外編2「動物愛護の精神を問う」(餌やり議論の本質) 2019.10.31
番外編3「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(前編)」(特別加入) 2020.6.30
番外編4「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(後編)」(特別加入) 2020.8.31
番外編5「政治とメディア」(ノラたちの未来を決める人たち) 2021.1.31
番外編6「保護に奔走する人たち」(その2とその6の補足)
場外編
場外編1  猫の煩悩とはこれ如何に 2021.7.10
場外編2  続・死刑に処すべし? ~死に体・動物愛護法の復活を期して~ 2021.7.21
場外編3  どうしてこんなに軽いのか <続・続・死刑に処すべし> 2021.11.10
場外編4  メディア批評、の・つもりが・・(国民の鏡としてのメディア) 2021.11.24
場外編5  社会の闇 (残存する「当たり前のように猫を捨てる文化」) 2022.6.29
場外編6  ジレンマ(猫捨てを補完するノラ保護活動)


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