* 昨年はジキタリスの当たり年で100本も花が咲きました。ジキタリスは二年目に花を咲かせるので、秋に新しく芽生えた株を二年後のことを楽しみにしながら広い場所へと移植したりします。
植物は気を長く持って行動するように、と私に教えてくれるようです。
第四十二 話 Gap Year
庭のいすに腰をかけモモを食べながら、大きな茶色のナメクジが白いバラの花びらを食べているのを眺めていました。「こういう小さい動物は一日中食べていたりするんだよね。」「人間が近くに寄っても逃げたりしないから、きっと恐れというものがないんだよね。」「本能だけで生きているんだね。」一緒にのんびりとこんな会話をしていたなずなも、もう大学の進路と「Gap Year」を考える頃となりました。
イギリスではA レベルという4科目の試験を受け、大学の内定をもらうけれども、すぐには大学に入学しないで、社会を経験するため、一年間の「Gap Year」 を取る若者がたくさんいます。アフリカにボランティアに行ったり、仕事をしてお金を貯めたり、とさまざまです。
私の勤めるラファエルハウスでGap Year をして働いていた19歳の女の子サリーナは、ちょっとニコルキッドマンに似ていて(耳には5個ずつと、はなにピアスをしています)Gap Year の最中に妊娠して、相手の男性が家庭を持ちたいと希望するのを断り、シングルマザーになる道を選んだのでした。サリーナの夢は子供を連れて世界中を旅することだ、といいます。
やり直しのできる社会イギリスのこと、サリーナが大学にいきたいと思ったら、いつでもいけるわけですが、そうすると、つまり私は20年間のGap Year を取ってしまったのか!という感じです。
同じくラファエルハウスで働く男性、オリーは、毎年1ヶ月のお休みをもらって世界を旅をしている30歳で、昨年はスペインにある聖地に向かってピレネー山脈を越え、徒歩巡礼したのでした。彼もまた、いま、一年で辞めてしまった大学に10年ぶりに戻ろうとしています。
人生経験をした後で、もっと何かを学ぶ意欲が出るというのは本当で、「新しいことを学ぶ」というのも、きっと人間の本能なのかもしれないなあと思ったりします。わたしもよぼよぼの90歳のおばあさんになってもまだ、なにかのコース、やっていそうです。
(間美栄子 2009年 6月1日)
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