アートセラピストのイギリス便り

アートセラピスト間美栄子のシュタイナー的イギリス生活のあれこれを綴った友人知人宛のメール通信です。

第122話  頭蓋骨にお花の絵-ハルシュタット(オーストリア)

2013-01-23 20:16:15 | Sacred places - 世界の聖地

 

 

 

オーストリアの湖のほとりハルシュタット- Bone House

 

* こちらイギリスも雪が降り、5日間家から出れずに、おこもりをしていた私ですが、卵なしケーキを焼いたり、牛乳もつきて、ココナッツミルクでタイカレーを幾種類も作るなどし、たんぱく質は、豆からとってと、サバイバル料理をしておりました。マッシュルームもないので、戻した干ししいたけを代用したり。意外な組み合わせがいけたりする、料理はアートに似ています。

テムズ川で元旦の花火を見ている間に泥棒に入られ、ハウスメイト全員と同様、ラップトップを盗まれたなずなは、大学の図書館で勉強するはめになって、かえってよく勉強しているようです。わたしも突然指が腫れ上がったりと、不調はありますが、これでもっと健康に留意して、長生きしそう。「人間万事塞翁が馬」。

 

第122話  頭蓋骨にお花の絵-ハルシュタット(オーストリア)

 

長い髪の毛を固めたドレッドヘアーのワイズマン、患者さんの「ジャングル」は、トーテムポール、と称して、粘土で作った大きな亀、マンモス、ハリネズミ、蛇、オラーウータン、ワシなどのシンボリックな意味のこめられた聖なる動物たちを、その形のまんま、高く積み重ねるという、できないことは何もない、という、ことをアートセラピーでみせてくれました。そういえば、クレイで大きな月を作って、クレーターを掘っていたときもあったし。(こんなに重たい月を天井から吊り下げるといってきかなかったけど)。

また、あるときジャングルは「ビネガーテイスターズ」という、3人の賢者がビネガーの大きなつぼを囲み、なめてみて、それぞれ違う表情をする、という中国の墨絵を描きました。その絵では、孔子は、すっぱい顔をしている。仏陀は、苦い顔。そして、老子は笑っている。ジャングルは「人生はどうとらえるか次第なんだよ。タオでは、人生はありのままでよしとし、すべてを楽しんでいくのさ。」と教えてくれました。

 

わたしが去年11月におとずれたオーストリアの湖のほとりハルシュタットでは、古くからケルト人が住み、岩塩を採っていたのですが、その岩を少し買ってきてなめてみました。むらさき色のクリスタルのような美しい石です。大昔とおんなじであろうしょっぱい味に驚きながら、古代人の暮らしに思いをはせていました。

ハルシュタットでは山が、湖のそばまで迫っていて、土地がないため、古くから住民は亡くなった人を埋葬したあと何年かして骨を掘り出し、頭蓋骨にお花の絵を描いてBone Houseに収めるということをしてきました。ずらりと並んだ色とりどりの花のついた頭蓋骨を見ていたら、死が生とつながっているような気がしました。

 

 

今年はメール通信で、わたしが訪ねたいくつかの世界の聖地について書いていこうと思っているのですが、出発地はわが、アートセラピールームかもしれません。多くのナースが妊娠しているし、わたしの長い黒髪もつやつや、レイラインも通っているかもしれないしなあ。

ジャングルは「俺は犬が好きだから、「Oh, my God!」という代わりに、「Oh, my dog! 」と言うことにしたのさ」などといって笑っていたときもありましたっけ。そんなクリエイティブな発想のできる場、聖地にはアートあり、ですね。

 

(間美栄子 2013年1月22日   http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef


第115話 祈りの場所

2012-08-16 20:56:50 | Sacred places - 世界の聖地

 上方の窓から差し込む光がうつくしい、セントピエトロ寺院

 

 

*ロンドンオリンピックも終わりましたね。わたしは最後の3日になってやっと見てみたのですが、ジャマイカのBOLTの走りはすごかったですね。イギリスにはジャマイカ出身の1世、2世がたくさんイギリス人になって住んでいるので(過去の移民奨励政策による)、友達もいることもあり、ジャマイカというと訪ねたことはないけれど親しみがあります。

 日本ではお盆、そして終戦記念日ですね。わたしのお休みはいつも月曜と火曜なのですが、FACEBOOKにポストしている友人が多かったので、そうか、みんなお盆休みなんだなあ、と思いました。

 

第115話 祈りの場所

 

3.11以来、毎月11日になると、ああ、今日は11日だ、と思います。

それは、朝黒板に、患者さんたちと一緒に、チョークで日付と曜日を書き入れるときであったり、お昼休みに森のいつもの場所でピクニックをしているときであったりするのですが、一秒間の黙祷という感じでしょうか。

 午前中のグループアートセラピーセッションで、アドレナリンもドバドバ出ているので、自転車で田舎道を走り、フィールドを歩いて横切り、森の川沿いのフットパスに入っていくと、少しは体も落ち着き、わたしのいつもの場所の倒木のベンチにたどり着きます。

 (なんせあのドイツ人のボスが、「セラピールームでは飲食絶対禁止」というので、零下の真冬でも、わたしは、このピクニックをやらざるを得なく、おかげさまで、四季の定点観察ができ、凍った小川の写真も撮ることができるというわけで、まったくありがたいしだいです。)

 イタリアでは数多くの教会をおとずれましたが、大きな木の幹に囲まれ、アッシュの緑の葉のステンドグラスの天井を見上げて、鳥たちのさえずりを聞き、川の水が反射して光るのを見ていると、わたしのいつもの場所もテンプルなんだなと思います。

 わたしはぜんぜん「いい人」ではないし、セラピストとしての力量もたいしてなく、毎日なんとか患者さんたちとのセッションをやれているのは、私の力ではなく、神か、何か大きな力のおかげだと感じます。さっきのセッションはおもしろかったな、とか、あの患者さん、あんなこと言えるようになってすごいなとか、小さな奇跡に驚きながら、ほーっとしながら、テンプルで感謝の気持ちで祈っています。

 

 

    ミケランジェロのピエタ

 

先月の11日はバチカン、セントピエトロ寺院にいました。ミケランジェロのピエタの前でひざまづき、長い間祈っている、茶色の僧服を着た修道院僧がいました。(日本人カップルが通り過ぎ、若妻が「これ有名?」と聞いているのも見ました。有名だよ、と教えてくれる夫がいて、よかったね)

 十字架に磔にされ息絶えたキリストをおろして、聖母マリアが抱きかかえるというこの大理石の像は、聖母マリアが、息子を亡くすという運命を引き受けているかのような、かなしい、静かな、美しい表情をたたえています。

     聖母マリア

 

わたしは、聖母マリアの顔をじっとみながら、ひとの運命のふしぎを感じていました。

 

(間美栄子 2012815   http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef

  (岩波書店が毎月11日に著名人の文章を載せています。http://www.iwanami.co.jp/311/index.html)


第113話  夢がかなうということ

2012-07-24 09:12:53 | Sacred places - 世界の聖地

    

                (写真はセントフランシスのアッシジ)

 

 

*みなさん、大変ご無沙汰をしました。お元気ですか。わたしはイタリア旅行から戻ってきて一息ついているところです。

イギリスでは今週の金曜日7月27日からいよいよオリンピックが始まります。わたしの勤める病院のフィリピン人作業療法士のレイモンドが、ロンドンでトーチを掲げて走るという名誉あることにあたり、故郷からもご両親がやってこられる、という、すばらしい親孝行をしていたので、わたしもちょっと、オリンピック気分。

 

第113話  夢がかなうということ

シュタイナーのアートセラピーの学校ハイバニアでは、2年にわたって毎週、アートヒストリーの講義があって、人間の意識の変革と発展を、洞窟画、古代文明のアートに始まり、ルネッサンスを経て、印象派、モダンアートにいたるという、スライドをふんだんに使っての授業がありました。それと同時に、チャーコールで模写したり、水彩絵の具でコピーしたりと、いろいろな名画や彫刻の研究をしたものでした。(どの意識段階に患者さんがいるのかというセラピー目的のため)

あれから10年以上を経て、ついにそれらを実際に目にすることができ、夢は何年かかかっても、かなうんだなあと、感動しています。

今回のイタリア旅行は、ローマ、アッシジ、フィレンチェ、ボローニャと南から北へ縦に、鉄道で上って行ったものでした。飛行機でたった二時間の距離なのに植生はイギリスとはまったく異なっていて、木を見れば、「ジオットの絵に描いてある木とそっくり」、と納得。

バチカンミュージアムやフィレンチェのウフィツィ美術館もいけて、ミケランジェロ、ラファエル、ダビンチ、ボティチェリの絵もゆっくり見れました。なんと言っても、修道院の修道士の何十もある小さな一部屋一部屋に、祈りをこめて描かれたフラアンジェリコの壁絵がみられたことが、わたしにとっては至福体験でした。

 動物たちにやさしく説教をするセントフランシスのアッシジは、オリーブの木に囲まれた丘の上の町全体が美しく淡いピンク色につつまれていました。

 イタリア旅行前にはあんなにストレスをためていた私は、いまやすっかり生まれ変わったようにリフレッシュして、さっそく患者さんたちと、ボティチェリの「ビーナスの誕生」を描いたりしているのです。

 これから数回にわたり、イタリア紀行を書いていきますので、どうぞよろしく。

 

(間美栄子 2012年 7月15日  http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef

 


第104話 「聖地」めぐり

2012-01-17 22:58:33 | Sacred places - 世界の聖地

          写真は350歳のYew Tree (Tunbridge Wells)

 

 

*うちのキッチンの窓辺では秋に植えておいたピンクと白とむらさきのヒアシンスが咲きはじめて強い香りを漂わせています。

お昼休みに職場の近くの森にピクニックにいくと、冬は下草のネトルも茂っていなくてどこでも好きに森の中を歩けるので、見つけた倒木をベンチにひなたぼっこ。もう少しすると、ブルー-ベルの芽が出てくるので、このようには歩けなくなるでしょう。冬には冬のよさがありますね。雪国そだちのわたしには、土があらわれているこの地の冬には春の訪れが早くやってくるように感じられます。

104 「聖地」めぐり

 

正月早々なずなと口争いをしてしまい、いかに自分がストレスをためていたかを認識したのですが、それを契機に、「急がなくてもいい」、「形あるものは古くなったり、壊れたりする」、「人は失敗をする」、という3つのことを呪文のように繰り返し唱えてひとつひとつの行為をマインドフルに行うようにこころみています。

                                         

コンピュータを消して、友人が日本から送ってくれた梨木香歩さんの「ピスタチオ」をゆっくり読みました。ライターの主人公の日本での暮らしが描かれている前半と、ウガンダを旅する後半がつながりを持っている、不思議な精神、無意識の世界を描いた小説です。

 

読後、わたしにも、わたしの精神、無意識の旅路があったのだった、と思い出しました。そして今わたしはどこにいるのか、まだ旅の途中なのか、考えてみました。

 

フィンドホーンを皮切りに、Forest of Dean、ウェールズのバイオダイナミックファーム、カンタベリー大聖堂と旅した一番最初の一人旅。

 

友達とレンタカーを借りて回ったコンウォール。アーサー王伝説のティンタジェル、

セントマイケルズマウント。ドーナツ型の岩が立っているMen- an-Tol.

 

さまざまな教会や、動物や植物のエネルギーにあふれた彫刻も目にしました。キルペックチャーチ、ロザリンチャペル、ヨーク大聖堂。

 

ストーンヘンジをはじめとする数々のスタンディングストーン。豊潤を祈願する、チョークの丘に刻まれた巨人の絵。

 

グラストンベリー、バース、いずみ湧き出る数々の聖地。

 

これらの地を訪れ、太陽を拝み、岩に触れ、空気を吸い、水を飲みながら、古代からの人々の「祈り」に思いをはせ、大きな力とつながることができたむかしの人間の素直さを感じていたわたしでした。

 

それから数年がたち、フルタイムで病院勤務になりレポート書きに追われ、家を購入したりしているうちに、心忙しくすごし、そんな「祈り」をわすれてしまっていたようです。

 

3.11、ことに原発事故で、おごり高ぶっていた人間のありさまを知らしめさせられたわたしたちは、いまもう一度、地霊との結びつきを取り戻すことが必要なのかもしれません。「聖地」といわれる土地だけではなく、すべての場所にいきづいている木の霊、水の霊をまた感じ始め、畏れ敬う、そんな時なのかもしれません。

 

14年前わたしがリュックサックひとつで日本をたつとき、携えてきたものに、明治生まれの民俗学者宮本常一さんの一冊の本がありました。この本を今再び手にとってみて、「ああ、わたしは日本の庶民の精神文化に帰っていくたびの途中なのか。」と、悟りました。

 

(間美栄子 2012年 115  http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef

 

上記の聖地の詳細は、25年間世界の聖地を旅している Martin Gray のホームページを。写真が美しい。

http://sacredsites.com/sacred_places/index.html

 

偶然見つけた「レイラインハンター日本の地霊を探訪する」の著者のブログ「祈りの風景」シリーズ、ぜひご覧ください。

http://obtweb.typepad.jp/obt/2011/05/pray.html