アートセラピストのイギリス便り

アートセラピスト間美栄子のシュタイナー的イギリス生活のあれこれを綴った友人知人宛のメール通信です。

第106話 映画スラムドッグ$ミリオネア

2012-02-14 12:55:45 | 映画

 

 

 

映画スラムドッグ$ミリオネア。

いつも鮮やかな黄色を身にまとっている女の子ラティカ

 

 

 

*私の故郷新潟は雪のようですね。こちらは一週間前に5cm降った雪が、連日続く氷点下の気温でなかなか溶けずにいたのが、やっとなんとか消えたところです。

イギリスではひとびとは、「この厳しい寒さがないと、ばい菌が死なない」といい慣わして、この気候を納得しているのですが、ほんとうかな?

春がとっても待ち遠しいですね。

 

106話 映画スラムドッグ$ミリオネア

 

わたしたちセラピストやナースが働きかけても反応しない重症の患者さんが、パートナーが耳元で「アイラブユー」とささやいたら、にっこり笑ったりするのをみると、愛情とはすごいものだなと感動します。

わたし個人はまだこの「愛情」というのがよくわからず、これからの人生で学んでいかなければならないところですが。

 

映画スラムドッグ$ミリオネアは、インドのスラムで育った青年の一途な愛のものがたり。http://www.youtube.com/watch?v=IsGkNoTbwTQ&feature=watch_response

 

チンピラになってしまった兄のせいで、行方がわからなくなった、女の子ラティカに再び会うために、ラティカもきっと見ているはずだとテレビの人気クイズ番組「ミリオネア」に出演したコールセンターのチャイワラ(お茶くみ) ジャマール。

 

全問正解で獲得額を増やしていくジャマールは、大学教授でも答えられないのに、無学のスラムドッグが正解とは、インチキをしているはずだと疑われ、警察で、拷問と取調べを受ける羽目になります。

そこで警官に語られた物語は、厳しい人生の体験の中で、いかにしてジャマールが、偶然(必然)に、それぞれの質問の答えを知るにいたるかというエピソード集なのでした。

ジャマールが信じていたのはただひとつ、自分とラティカは結ばれる運命にある、ということだけ。

 

わたしの病院に勤めている大勢のインド人の看護師やセラピストはぼ全員、「アレンジドマリッジ」で、ある日突然「結婚しました」とにっこり笑って写真を見せてくれる、というスピード結婚だったりするのですが、モダンテクノロジーの昨今では、新聞広告のみならず、インターネットも駆使した徹底したマッチングシステムがインドにはあるのだそうです。

どのカーストなのか、教育レベルなのか、家柄、職業、趣味、とすべてをおおっぴらにしたうえで、親が「このひと」と選んだ人とその家族とお見合いをした後、本人同士が顔を合わし、結婚式を挙げます。

 

恋愛結婚よりこの方が離婚率がずっと少ないのよ、と笑って話してくれた同僚は、それからふたりで愛情を育てていくのだといいます。

映画の中の青年ジャマールだけではなく、夫婦は運命と、一般的に信じられているカルチャーバックグラウンドがあるようです。

 

わたしはまだインドに行ったことはありませんが、お隣のネパールに旅したとき、路上で占い師に呼び止められ、手相と占星術で運命を占われるということがありました。薄っぺらな紙に表裏びっちりと筆記体で書かれた詳細なわたしの「運命」を、その後も財布の中に入れていたのが、十数年たち、折り目からびりびりになって破れているのをつなぎ合わせてなんとか読んでみると、ある箇所に「Meet Doctor Degree」とありました。そうか、運命ならやってみるか、と博士課程に進み、3年やったところで、病院に就職。論文は書けないまま二年間延長してきたのを、つい最近大学から、もう延長は出来ないと、追い出されることになりました。

 

いまは、重荷をとかれたようにリラックスして、料理したり、掃除したり

繕い物をしたりして、「これが生活するということなのか」と、初めての追われる事のない休日を味わって過ごしています。

 

スラムドッグ$ミリオネアはユーモアいっぱいのストーリーといいテンポの音楽&カメラワーク、鮮やかな色の画面が映画ならではの楽しい、お勧め映画です。

ついに待ち合わせ場所と決めていた駅のホームで再会できた二人が、踊りだし、群集も踊りに加わり、二人の子供時代を演じた子役たちもぴょんぴょん跳ね回る、エンディングがわたしは好きです。http://www.youtube.com/watch?v=YZzn2F3_FL0&feature=related

 

 

人生は案外シンプルなものかもしれません。

 

(間美栄子 2012年 215  http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef

 


第八十三 話  イギリス映画―ハッピーゴーラッキー

2011-02-28 22:40:52 | 映画

   

*お休みの日はここのところあまりいい天気に恵まれず、家の中でだらだらすごしているわたしです。日本の友達と無料のスカイプでビデオ電話して、画面に写っているふすまや畳を見ては感動したり。テクノロジはー日々発達し、人々の世界観や、関係性を変えていくようです。世論形成にもかかわってくるのも流れですね。

エジプトも民主化を果たし、それに一役買ったフェースブックにちなんで、生まれた赤ちゃんに「Facebook 」と名づけたエジプト人がいたそうです。

 

第八十三   イギリス映画―ハッピーゴーラッキー

 

3月ともなり、いよいよ春の気配が、とうきうきし始める方もいるでしょう。

私は職場での責任やボスとの関係など困難なこともあり、いまひとつ浮かないきょうごのごろ。回復の途上だった若い患者さんが二人亡くなったりと残念なこともあって、きっと長く医療関係で働く人はこんな風にいろいろな気持ちを抱えながら何とか毎日全力を尽くしているのだろうなぁ、と考えたり。毎日のように起こるチャレンジは自分自身を強める機会なのだ、と自分を諭しつつも、前向きになれないときもあるのです。

 

日本で主婦をしている私の友人たちも、キッチンドリンカーになっちゃって、と話してくれますが、だれかほかに話す人が身近にいて気分転換が出来るならいいですが、そうでない場合、ワインなんてまったく手ごろな、インスタント気分切り替え食品なんですよね。空腹で帰宅し、まずはフマスとセロリをおつまみにワインを少々、ということになるわけです。

 

私の場合、ワインに加え、映画で気分転換をしています。病院勤務になってから、かなり映画を見て、20年のブランクを取り戻しました。映画のストーリに巻き込まれている2時間は病院でのことを忘れていられるので。ということで、今回はイギリス映画のことなどをすこし。普通のイギリス人が主人公の映画です。

 

 

今回オスカーで受賞した、King’s Speech Colin Firth がでているコメディー、「ブリジットジョーンズの日記」は笑えましたね。いよいよ第三話が撮影、とのことですが、10年以上も前に英語のクラスで第一話を見ながら、日常会話を勉強したのも懐かしい。タバコとお酒がやめられず、ダイエットもなかなかうまくいかない普通のOLのおはなし。

あまりにもドジなブリジットに励まされる映画。

 

16 years of Alcohol」舞台はスコットランド。お酒や浮気症の父親の姿を見て失望して育ったフランキーもやがてはギャングに加わり転落していく。ガールフレンドが出来て希望の色が差し込むが自分でそれを壊してしまう。アルコール依存症のグループで出合ったメアリーと信頼を築きあっていけそうになったところで、またしても、過去の心の傷が覆いかぶさってきてしまう。

フランキーの過去に付きまとわれた、苦しい心が切なくて泣けてしまう映画。

http://www.oeff.jp/article324.html

 

「ハッピーゴーラッキー」はとてつもなく明るい、小学校の先生ポピーのお話。ポピーはたとえ返事が返ってこなくても誰に向かっても微笑み話しかけていく。自転車が盗まれてしまったときは、「せめて自転車にさよならをいいたかったわ」。ポピーは車の運転を習うことにしたが、相変わらずふざけてばかりで、変な教習官の人生観を惑わす。

ポピーのように笑って日々をすごそうかと思わせられる。笑う角には福来り。http://www.cinemacafe.net/movies/cgi/22169/

 

 

間美栄子 2011年 31  http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef

 

   forget- me- not (wasurenagusa)

 


第五十九話 イマジネーションは蝶のようにはばたく

2010-02-15 08:09:07 | 映画

               (ロックと窓)

*わたしのアートセラピーセッションでは、「ウェットオンウェット」といって、ぬれた紙の上に水彩絵の具で絵を描いていくのですが、ある患者さんの絵は筆の動かし方、強さなどが独特で迫力があり、面白い色が現れ、重なり、輝き、いつもわたしは「マークロスコー!」とうっとりしています。アートセラピストはまったくありがたい職業です。

第五十九話 イマジネーションは蝶のようにはばたく


あるときドキュメンタリー映画の構想で、こんなアイデアを考えていました。自分の頭にカメラをつけて一週間を過ごしてみるというのはどうかなと。私の目で見る世界は果たして美しいでしょうか。私の出会い、言葉を交わす人たちは美しいでしょうか。

ジャンドミニクはファッション誌の編集長。子供三人、妻とは別れ恋人と暮らし、充実した日々を送っている40代の男性。ある日彼は新しいスポーツカーの中で、脳溢血で倒れ、Locked in Syndrome で全身まひとなってしまうのです。フランス映画「潜水服は蝶の夢を見る」はまさに、このジャンドミニクの目から見た外の世界を描いたカメラワークです。

ジャンドミニクの、ほかの人には聞こえないつぶやきが流れ、真面目すぎる美人のスピーチセラピストがアップで写り(うちの病院も美人のセラピストぞろいです)瞬きで文字盤を示していく過程、が少しユーモラスに描かれています。

やがてジャンドミニクは、自分のうちの二つのものが健全であることに気づき「自分を哀れむのをやめる」ことにします。それは、想像力と記憶でした。

彼の世界は美しいもので満たされていることが映し出されます。海風ではためく繊細なスカート。手遊び歌を歌う子供たち。老いた愛情深い父親。

全身まひでまるで古い分厚い潜水服を着ているかのような体から、蝶のように自由に飛び立つこころ。蝶である彼自身が、一字一字綴ったお話は、何気ない日常のひとこまが美しくかけがえの無いものであることを教えてくれます。

(間美栄子 2010年 2月15日 http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef)


PS. 原作本「潜水服は蝶の夢を見る」も日本語訳ででています。


第四十九話  ふたたび旅へ

2009-09-15 00:00:00 | 映画

      (長い道)

* 政権交代で日本はこれからいいほうに変わっていくのでしょうね。
私個人もシュタイナーベースのニューロリハビリの病院でアートセラピストとして採用されたので、大きな変化を迎えています。また、新たなる土地で再出発。



第四十九話  ふたたび旅へ

やっぱり人間は追い込まれないと哲学できないのか、と思うこの頃。
永住権を獲得し、経済的にも楽になって、がけっぷちに立っているという緊張感がないせいか、夏の間中のほほんとしていたわたしです。

そんな時見た映画が、「The motorcycle diaries」キューバ革命のチェゲバラの若いころの旅のお話です。南アメリカ大陸をほとんど無銭で縦断し、人々と出会っていく中で、不平等な社会のシステムに気づき始める若き医学生ゲバラ。

映画を見ていて「あ、私にもそんな時があった」と、懐かしく思い出したのは、20代のときはじめて行った外国、タイ。スラムや難民キャンプを訪れることで理不尽な世界のシステムに気づき始めたのでした。それで、教員になるという道からはずれ、その後のWinding road。

「Into the wild」という映画では、クリスという大学を卒業したばかりの青年が,体裁ばかりの物質主義の両親に反発して家を出て、アメリカを無銭で旅し、ジプシーや老人に会って語り合う中で、考えを深めていきます。アラスカの自然の中で孤独に暮らし、クリスが最期に悟ったものは幸せとは他と分かち合うものだということでした。両親を許すことで光を見ることができるということでした。

あちこち訪ね歩くのが好きな私は、日本にいるときにも、「もうひとつの日本地図」という本を見ては、有機農業をやっている人たちや、有機八百屋、有機カフェ、と訪問していました。

福井にあるジャージー牛で有名なラブリー牧場で泊めてもらったときは、奥さんがとても気さくで、夜も更けるまでいろいろ語り合ったことがありました。

佐渡で裂き織りをしている方のところにお邪魔したときは、スーパーでバイトをしながら小説を書いている方も紹介してもらい、お風呂のかまどの火を見ながら、こういう風に少しの現金収入で、好きなことをする暮らし方もあるんだなあ、と感じ入っていました。

そんな旅で出会った人たちのことを思い出し、PhDが終わったら、ウーフWWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)で、また旅に出ていろいろな人の暮らしを見せてもらおうかな、と考えているところです。

(間美栄子 2009年 9月15日)

PS 岩崎サンという日本人男性がママチャリで7年もユーラシア大陸を旅しているという記事を目にしました。まるで「フォレストガンプ」とかかれていたけど、まだまだ旅を続けるそうです。


第四十五話 アメリー:変人でもいい

2009-07-18 18:13:57 | 映画

* 庭ではいまキキョウが咲いています。
みなさんはもうスカイプ(無料でインターネットを通して話せ
る)してますか? 私も先日、友人とスカイプで初ビデオ電話
し、空間の概念を変えさせられました。友達は、「どこでもド
ア」のようだといっていました。我が家の庭から中継してお話
しできるので、ぜひ試してみてください。

http://www.skype.com/intl/ja/welcomeback/


第四十五話 アメリー:変人でもいい

フランス映画の「アメリー」はかなり変わった女の人アメリー
の日常を描いた、おかしな映画ですが、最後のほうで同じよう
にかなり変人の彼ができて、二人でバイクに二人乗りをするシ
ーンで、泣けてくるのは、私だけではないでしょう。

今回パリでは「アメリー」を撮影した場所をいくつか訪ね歩き
ました。アメリーの働いていたカフェや運河、モンマルトルの
丘などを、アコーディオンの主題歌を口ずさみながら歩き回っ
たのでした。特に調べて行ったわけではなく、「アメリー」好
きのなずなが何回も映画を見て、場所の名前を覚えていたので
した。

映画の「アメリー」の登場人物はみな変人ぞろいで、一人一人
の癖や、こだわり、がよく描けているといえますが、そのせい
か「私も変人だけど、変人でもいいじゃないか」といつも映画
を見終わったときに思えるのです。

そして、人と付き合ったことのない、自分の想像の世界にこも
ったアメリーが、隣のおじいさんの後押しで、やっと一歩を踏
み出すことができるようになる、そこに、私も励まされます。
 

(間美栄子 2009年 7月15日)