長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『インサイド・ヘッド2』

2024-08-19 | 映画レビュー(い)

 記録的不入りが嘆かれていた2024年サマーシーズンを救ったのは13才の少女だった。子供の中にある喜び、悲しみ、不安、怒り、嫌悪といった感情を擬人化する独創的なアニメーション『インサイド・ヘッド』の続編だ。前作から9年が経てピクサーが安易なフランチャイズをやるワケがない。より複雑でやっかいな思春期感情の登場に子供の観客は目を見張り、大人は懐かしいやら恥ずかしいやら。劇場は今年一番の大盛りあがりだ。

 13才になったライリーは成績優秀、スポーツ万能、おまけに心優しい少女に育ってくれた。前作を知る僕らはその成長に目を細めてしまうところだが、近年のピクサーは一貫して子を持つ親の視点で描かれ、ヨロコビ達はいわば育ての親そのものである。ある日、感情司令部にシンパイ、イイナー、ハズカシ、ダリィら新たな感情たちが現れ、ヨロコビ達を幽閉してしまう。そう、やっかいな思春期が始まったのだ。周囲の人間関係を気遣う社会性が芽生えれば当然、喜びや怒りといったストレートな感情の発露は抑えられていく。あらゆる事態を想定し、対策を講じるシンパイの参入によって、ライリーは志望校で開催されたアイスホッケーの合宿に挑むのだが…。新ボイスキャストにはマヤ・ホーク、アヨ・エデビリ、アデル・エグザルコプロスら旬の若手女優が出演。フレッシュでファニーな掛け合いを聞かせてくれる。

 2020年代に入り、ピクサーはパンデミックとディズニープラスのローンチに挟まれ多くの作品が劇場公開のチャンスを逸してきた。満を持しての『インサイド・ヘッド2』はピクサーならではの既知をスクリーンに披露してくれている。前作より格段に向上した映像技術による色彩のカーニバルであり、ファミリー映画でありながらメンタルヘルスについての真摯な考察でもある。自分の感情を否定せず、それでいて1つの感情に囚われない心の豊かさとは如何にして得られるのか?大人でさえ容易に答えの出ない問いかけだが、この映画を観終えたお父さんお母さんは子どもの中の“ダリィ”に臆せず、まずは語らってみようじゃないか。


『インサイド・ヘッド2』24・米
監督 ケルシー・マン
出演 エイミー・ポーラー、マヤ・ホーク、ケンジントン・トールマン、ライザ・ラピラ、トニー・ヘイル、ルイス・ブラック、フィリス・スミス、アヨ・エデビリ、アデル・エグザルコプロス、ポール・ウォルター・ハウザー

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