森下一仁という作家がいて、『シナモン・ドロップス』という作品がある。SFの体裁がとってあるが、この作品のテーマの一つに『お気に入り』ということがある。
人間誰しも好き嫌い、好みというのがあって、千差万別であるところが面白い。私の場合、変な癖がある。『気に入ったものはスペアがほしい』という性癖である。予備がほしいのだ。なくしたときの備えである。
ただ、ボールペンだけはスペアは要らない。私はボールペンをよく紛失するからだ。いつの間にかどこかに置いてきてしまうのだ。ゆえにボールペンだけは、自分の考え方のほうを変えた。ボールペンは一〇〇円の、使い捨てのものを使用することにしている。無くせば買えばすむからだ。同じものが店に行けばいくらでもある。安心だ。気楽になくせる。ゆえにスペアは要らないのである。
いちばんスペアが欲しくなるものは、『本』である。ものすごく気に入った本があると、もう一冊、あるいは二冊買って手元に置いておく。あまりによい本なので、人にあげたくなることもある。古くなって虫が食う懸念もある。一つを愛読書として読み返し、一つを保存用に書架に並べておくということもある。そんなことは別にしても、いい本なのでとにかくもう一冊欲しい、ということもある。もったいないと思うだろうか? いや、そんなことはない。本、書籍というものは商品としては価値の上からすると一番安いと私は考える。あの一冊を作るのにどれだけの労力と情熱が必要であるか。お酒でも飲みに行くことを考えたら、ただみたいな金額であると思う。
なのでうちには同じ本が結構あるし、同じ本を結構買って帰ってくる。子供たちに一度そのことを見つかったことがあって、なぜ同じ本を買うのかと不審がられ、問い詰められたことがあるが、説明するのが面倒くさくて、いいの、とごまかしたこともある。
ああ、ほかにもあった、卓球のラケットである。気に入ったラケットがあると、もう一本欲しくなる。今までそうやって三本ほど同じラケットを買った。この場合は明確な理由がある。試合中に万が一ラケットが折れた、破損したというときのためだ。日本卓球ルール及び国際卓球ルールでは、使用中にラケットが折れたり、破損した場合、スペアのラケットを使用するか、人からラケットを借りて使用すれば試合を続行できる、と決まっている。が、その場合、コートから出ることはできないことになっている。自分のラケットと同じ型、種類のラケットを持っている人が近くにいるとは限らず、またその人が親切に貸してくれるとも限らない。試合中断も何分と決められているので、スペアのラケットを持っているしか、対処法がないのだ。
ただ、私の場合、まだ試合中にラケットをぶち折ったことはない。気持ちがぶちきれたことはあるが…。気持ちの方もスペアを用意しておくのがいいかもしれない。
人間誰しも好き嫌い、好みというのがあって、千差万別であるところが面白い。私の場合、変な癖がある。『気に入ったものはスペアがほしい』という性癖である。予備がほしいのだ。なくしたときの備えである。
ただ、ボールペンだけはスペアは要らない。私はボールペンをよく紛失するからだ。いつの間にかどこかに置いてきてしまうのだ。ゆえにボールペンだけは、自分の考え方のほうを変えた。ボールペンは一〇〇円の、使い捨てのものを使用することにしている。無くせば買えばすむからだ。同じものが店に行けばいくらでもある。安心だ。気楽になくせる。ゆえにスペアは要らないのである。
いちばんスペアが欲しくなるものは、『本』である。ものすごく気に入った本があると、もう一冊、あるいは二冊買って手元に置いておく。あまりによい本なので、人にあげたくなることもある。古くなって虫が食う懸念もある。一つを愛読書として読み返し、一つを保存用に書架に並べておくということもある。そんなことは別にしても、いい本なのでとにかくもう一冊欲しい、ということもある。もったいないと思うだろうか? いや、そんなことはない。本、書籍というものは商品としては価値の上からすると一番安いと私は考える。あの一冊を作るのにどれだけの労力と情熱が必要であるか。お酒でも飲みに行くことを考えたら、ただみたいな金額であると思う。
なのでうちには同じ本が結構あるし、同じ本を結構買って帰ってくる。子供たちに一度そのことを見つかったことがあって、なぜ同じ本を買うのかと不審がられ、問い詰められたことがあるが、説明するのが面倒くさくて、いいの、とごまかしたこともある。
ああ、ほかにもあった、卓球のラケットである。気に入ったラケットがあると、もう一本欲しくなる。今までそうやって三本ほど同じラケットを買った。この場合は明確な理由がある。試合中に万が一ラケットが折れた、破損したというときのためだ。日本卓球ルール及び国際卓球ルールでは、使用中にラケットが折れたり、破損した場合、スペアのラケットを使用するか、人からラケットを借りて使用すれば試合を続行できる、と決まっている。が、その場合、コートから出ることはできないことになっている。自分のラケットと同じ型、種類のラケットを持っている人が近くにいるとは限らず、またその人が親切に貸してくれるとも限らない。試合中断も何分と決められているので、スペアのラケットを持っているしか、対処法がないのだ。
ただ、私の場合、まだ試合中にラケットをぶち折ったことはない。気持ちがぶちきれたことはあるが…。気持ちの方もスペアを用意しておくのがいいかもしれない。