加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

カタクリの花と風の穴。

2012年04月29日 01時19分36秒 | 自転車と旅、メシ。


ひさしぶりに山に行ってきた。
愛媛県の「赤星山」といって、標高1453メートルの山である。
北と南、東西縦走路といくつかルートがあるんだけど、わたしと友人とはいちばんハードな北側の野田登山口から入った。
若い頃から数回登っているのだが、最後に登ったのが二十年前なので、ほとんど記憶にない。
写真は頂上から東隣にある「豊受山」(1427m)に向かう尾根道から振り返って撮ったもの。



「赤星山」の北側ルートはハードって書いたけど、そのかわりに大小さまざまな多くの滝が目を楽しませてくれる。
あなたが「滝マニア」(いるのか?)ならば、ぜひこの山とルートをおすすめする。水量の多い時期もいいし、真冬も凍りついて美しい。
日本アルプスのいくつかの山に行ってるけど、これほどいくつもの滝があって綺麗なコースはそうないと思う。ごめん、でも写真の腕が悪いので綺麗に撮れてはいないんだけど。



この季節のこの山というと、カタクリの花が見ものだそうだ。残念ながら北側ルートから登るとカタクリの群生地は無い。
ただし頂上に登ってしまえばところどころ咲いている。
あ、言っておきますが、写真は花を摘んでいるわけではないですよ。下向きに花が開いているので、そっと指をそえているだけです。ほんとは接写してみたべつの写真があるけれども失敗していたのだった。

頂上に着いたのは12時ちょうどだったので、隣にある「豊受山」のピークを踏んで帰ることに。
そこで一番目の写真になるわけです。

「豊受山」というと山の北側にある地方に言い伝えがあって、「やまじ風」と呼ばれる激しい南の季節風を起こしている「風の穴」があるそうな。で、「やまじ風」が農作物に被害を及ぼさないよう、「風の穴」におにぎりをお供えするという。うろ覚えなので違ってたらすまん。

「豊受山」の頂上付近で、なんと三島川之江インター付近から山に入って12キロの道のりを縦走してきた若者と出会い、頂上で世間話。
そこでこの言い伝えのことを聞いてみると「知りませんねえ。でも途中に朽ちた神社みたいな建物が見えましたよ」とのこと。
そうだ、そこだ。そこにきっと「風の穴」があるのだ。わたしたちは若者と別れて、その神社みたいな建物を探すことに。そして。



北側、つまり瀬戸内海側に突き出た「豊受山」の頂上から東隣にある通称「のこぎり山」に向かう尾根道からすこし降りたところに問題の「風の穴」はあった!
まあ、たしかにお祀りはしていますね。ここから自動車をもひっくり返す季節風が吹き出ているなんて、すごいです。

そんな感じで、なんとなくホノボノとした満足感に包まれたわたしたちは、通称「タカちゃん新道」と呼ばれる比較的新しい登山道を通って下山することにした。

「タカちゃん新道」ってのは、その名のとおり「タカちゃん」というひと(男性)が切り開いた登山道なのだ。
じつはわたしたちは、野田登山口から少し入ったことろで、そのとうの「タカちゃん」に会っていたのである。
ちょうど増水で流された登山道を整備するために木を切り出しておられたところだった。
「通らせてもらいますね」
と声をかけると照れくさそうな笑いを浮かべる人のいい感じの方だった。

どこの山だって、こんな善意のひとたちが整備してくれてるから、われわれみたいな登山者が楽しめるんだ、なんてまじめに思ってしまった一日でした。

白鳥とハーモニカ。

2012年04月25日 18時58分07秒 | 自転車と旅、メシ。


まともなデジカメを持って行ってなかったのでボケボケだが、四国の新居浜市にある公園の中にある池を撮った一枚。

この間の桜の公園とはちがう。距離も三倍以上。自宅から30キロほど離れた場所に、自転車で行った。

湖面に映るメルヘンチックな建物は実はトイレである。
そのトイレの前にある手すりにもたれかかって、老人がハーモニカを吹いているのだ。目を凝らして見ると、彼の足下の水辺には、一羽の白鳥が羽を休めるようにじっとしている。まるで老人がハーモニカで奏でるメロディに聴き入っているようだった。

むかし、京都で学生だったころ、鴨川の欄干にもたれかかって、真っ白なユリカモメにパンくずを投げてやっている老人のことを思い出した。毎日、夕暮れになるとその老人はやってきて、カモメたちに餌をやっていたのだ。

ハーモニカのお年寄りも、そうかもしれない。
日課のようにあの白鳥にハーモニカの演奏を聴かせに来ているのかもしれない。


曇り空の昼下がり、静かな公園と湖水との対比。おもしろいな、と思ってスマホで撮った。

欲を言えば老人の吹く曲はレイ・チャールズの「我が心のジョージア」あたりであって欲しかったのだが、残念ながら昭和歌謡であった。だから、なんとなく夜市の見世物のような趣もあった。

どちらを向いても向かい風。

2012年04月22日 19時49分45秒 | 自転車と旅、メシ。
夜になってようやく止んだのだが、愛媛県の東部(伊予の国の東という意味で「東予地方」という)は、朝から激しい風と雨に見舞われていた。

せっかくの日曜日、週に100キロは自転車で走りたいわたしは、雨が止んだ午前中のわずかな隙に、自転車に乗って家を出たのだが、風が強くてまともに走れない。そのときは西から東に向かっていたのだけれど、北から強い風が吹いてきて、右側、つまり車道の真ん中に向かって押し流されそうになった。そのままでは危険なので脇道に逸れ、西に向かうけれど、今度ままともに正面から風が来る。

自転車を漕いでいる身にとって、逆風は平地でも坂を上っているような気にさせてくれる。
傑作自自転車マンガの「シャカリキ!」の一シーンを思い出した。
自転車で上り坂を攻めることを得意とする主人公が、平地で気合いが入らなくてタイムが上がらないのが、強い向かい風による坂道効果によってめざましいダッシュをするシーン。

貧脚のわたしはとにかく家に帰り、ぼんやりとネットを見ていた。
午後三時。風と雨が止んだ。
時間は遅いが、10キロくらいは走れるだろう。
わたしはジャージに着替えて自転車に乗った。

今度は西へ向かう。
ところが強烈な逆風である。
歯を食いしばりながら15キロほど走って隣の市境まできて折り返す。
やっぱり正面から風が吹き付ける(笑)

いったいおまえは何風やねん。

自然現象に文句を言っても仕方がない。
広い田園地帯に出ると、もう四方八方から風が吹いてくる。
だけど、なぜか順風だけにはならない感じである。

家に帰るとGPSで30キロあまり走ったことになっていた。
ほぼ平坦なのに、膝が痛い。

どちらを向いても向かい風。
ヴォネガットの言葉を借りれば、
そんなものだ。

最後まで噛み合わない人々「裏返しの男」

2012年04月16日 22時41分45秒 | 本のこと。
裏返しの男 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社


最近、フレッド・ヴァルガスというミステリ作家に凝っている。
私は海外作家に凝り出すと、翻訳されたものを全部読んでしまうのだが、この作家もやっぱりあっという間にぜんぶそろってしまった。

「フレッド」といっても女性で、フランス語で書かれたミステリなのだが(本人はフランス人ではない)、めっぽう面白い。

ミステリとしての最高作は出世作の「死者を起こせ」、次点は「青いチョークの男」なんだろうけど、この「裏返しの男」も面白い。

こんなほめ方がミステリ作家に対してどうなのかわからないのだが、フレッド・ヴァルガスは殺人事件が起こらなくても面白い作家だと思う。じじつこの本で最初の殺人事件が起こるのはだいぶページが進んでからなのだが、それでも面白くてたまらない。謎があって真犯人がわかっても、たとえそれがミステリ的にたいしたことがなくても、なぜか低く評価することができない。

ヴァルガスのファンならわかってもらえると思うけど、個性的な登場人物の噛み合わない会話が死ぬほど好きだ。
そうだ、人間同士のコミュニケーションなんて、こんなもんだ。彼女の周到に計算されてる(かもしれない)会話を読みながらわたしはそう思う。探偵役と読者の代弁者役のかみ合い過ぎる会話なんて、悪役の説明語り以上につまんねーだろ、と。

そんなわけで、わたしは次に翻訳されるヴァルガスの本も買うだろう。

あ、ちなみに、この本はオオカミが人を噛む話です。


散った後でも美しい。桜と池の公園。

2012年04月15日 12時20分34秒 | 自転車と旅、メシ。


朝、自転車に乗って10キロほど先の公園に行った。
桜は、この間の強風でほとんど散っている。

しかし、桜の花びらの量がはんぱではない。遠目からは、まるで雪が積もっているようだ。



この公園に隣接するかたちで、小さめのため池がある。池のそばに植えられた桜の枝が、水面に映っていた。



池を巡る道を、ゆっくりと一周した。
水面を覆う桜の花びらが美しい。

ペダルを漕ぎながら、ふと、思った。

この世界は、クルマなんかじゃ見えないものばかりだな、と。

この公園は自宅からほんの10キロ足らず。子どもの遊具は無く、ただ展望台らしきものと、桜の木と池しかない。だから、存在はしっていたのだが、来たことがなかったのだ。

クルマじゃ近すぎて、かえって来ることはなかったろう。

スポーツ自転車を始めてほんの一年足らずだが、世界の意外な広さに驚かされてばかりだ。

【映画】「バトルシップ」は最高!

2012年04月14日 21時31分54秒 | 音楽・映画のこと
バトルシップ(ピーター・バーグ監督、テイラー・キッチュ、浅野忠信 出演) [DVD]
クリエーター情報なし
メーカー情報なし


単純な、燃える映画が大好きだ。

だから、撮影開始のニュースの聞いてから楽しみにしていた「バトルシップ」を息子と一緒に観に行った。

あえて日本語吹き替え版を選んだのだが、艦内もとい館内の「オッサン率」が異様に高い(笑)
子どもなんて一人しかいなかった。

で、感想。

もしあなたが「戦艦ゲーム」「ブルーラインシリーズ」「ミズーリ」「大艦巨砲主義」「海上自衛隊」「リムパック」「宇宙戦艦ヤマト」のいずれかに反応する人だったら、今すぐ観に行った方がいい。
(もちろんアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の主要キャラの氏名がどこから来ているのか知っているひとも)


そりゃ、ツッコミどころは山ほどあるし、冗長な部分もあるが、これほどすかっとして「燃える」映画もない。

ネタバレといっていいのか、伏線はりまくりなので、すぐにわかると思うのだが、あんがいあっささりと敵の船(?)を倒した後に、その「超弩級」(←これも海軍用語だった)のクライマックスはやってくる。これがもう、たまらないカッコ良さである。わたしはその筋の人ではないのだが、思わず映画館で敬礼してしまいそうになった。

ハリウッド大作2作目の浅野忠信もいい。「マイティ・ソー」の256倍は台詞がある、というか、文句なく「準主役」だ。

これがアメリカよりも先に日本で観られるのは幸せ。

でも最後にひとつ。
アメリカで公開するときには、ちょっと編集し直した方がいい。25分は短くできるし、しても問題は無い。


映画「バトルシップ」公式サイト

自転車でイースター祭りに行く話。

2012年04月08日 22時42分11秒 | 自転車と旅、メシ。
ちょっとした縁があって、自転車の師匠からパナソニックのロードバイクを借りている。なんとチタニウムのフレームの、かっこいい自転車だ。



いままでスポーツ自転車というと「クロスバイク」という種類の物しか乗ったことがなかったので、ロードバイクは初体験である。ロードバイクといえば、なんと言っても「ドロップハンドル」だ。上の写真のひん曲がったへんな形のハンドル。

とにかく馴れるために、どこに行くのでもこの自転車に乗っている。

今日は、公園で行われた「イースター祭り」のイベントに乗って行った。

木陰に停めて写真を撮る。十年以上前の自転車だから、近寄るとそれなりにヨレている。鉄製のスポークは錆だらけだし、カーボンフォークには大きな傷があった。

だが、離れて見ると、チタニウムの金属感がただただ美しい。



さて、イースターというと、「イースターエッグ」である。茹でたタマゴに色をつけるのだ。ウィキペディアを読んでから行ったのだが、正直、この風習がよくわからない。いや、言葉は理解できるのだが、わかったとはいえない。



パステルカラーに色づけされたタマゴ。原色が無いので聞いてみると、「春らしい」ということで、このような淡い色に染めるのが「正しいイースターエッグ」とのこと。

ますますわからない。
イースターはもちろんのことハロウィンも、クリスマスもつきつめて考えると、ぼくは、よくわからないのだ。

キリスト教の仮面を被った、土着的で、呪術的なお祭りということはなんとなく共通しているような気がする。

日本のお祭りは、どれもあんまり「仮面」を被ってはいない、と思う。せいぜい「仏教」の化粧をほどこしているだけ。なにげない「お祭り」の底に、ひっそりと「古代」がある。

欧米人の感覚も、あんがいそうなのかもしれない。

4月になれば彼女は。

2012年04月03日 18時57分43秒 | 公園のつぶやき。
ちょうど一年前の4月3日、わたしの娘が亡くなった。
19歳だった。6月になれば二十歳になるところだった。

紋切り型の表現だけど「心が固い鎧に覆われたかのように」、娘の死を掘りさげて考えることができない。
ただ、このアルバムにある小品、「4月になれば彼女は」という曲が浮かんでくるだけである。

April come she will
4月になれば彼女は

と歌い始めて、恋が芽生え、そして、心変わり、やがて

August die she must
8月、彼女は死んでしまう。

という、もの悲しい歌である。
わたしの娘は、4月、人生の入り口に立ったまま、遠い世界に旅立っていった。

April come she will die.
残されたわたしは、これから毎年、こんな気分になるんだろう。


2012年4月3日 風の強い日に。


サウンド・オブ・サイレンス
クリエーター情報なし
Sony Music Direct