加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

最後まで噛み合わない人々「裏返しの男」

2012年04月16日 22時41分45秒 | 本のこと。
裏返しの男 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社


最近、フレッド・ヴァルガスというミステリ作家に凝っている。
私は海外作家に凝り出すと、翻訳されたものを全部読んでしまうのだが、この作家もやっぱりあっという間にぜんぶそろってしまった。

「フレッド」といっても女性で、フランス語で書かれたミステリなのだが(本人はフランス人ではない)、めっぽう面白い。

ミステリとしての最高作は出世作の「死者を起こせ」、次点は「青いチョークの男」なんだろうけど、この「裏返しの男」も面白い。

こんなほめ方がミステリ作家に対してどうなのかわからないのだが、フレッド・ヴァルガスは殺人事件が起こらなくても面白い作家だと思う。じじつこの本で最初の殺人事件が起こるのはだいぶページが進んでからなのだが、それでも面白くてたまらない。謎があって真犯人がわかっても、たとえそれがミステリ的にたいしたことがなくても、なぜか低く評価することができない。

ヴァルガスのファンならわかってもらえると思うけど、個性的な登場人物の噛み合わない会話が死ぬほど好きだ。
そうだ、人間同士のコミュニケーションなんて、こんなもんだ。彼女の周到に計算されてる(かもしれない)会話を読みながらわたしはそう思う。探偵役と読者の代弁者役のかみ合い過ぎる会話なんて、悪役の説明語り以上につまんねーだろ、と。

そんなわけで、わたしは次に翻訳されるヴァルガスの本も買うだろう。

あ、ちなみに、この本はオオカミが人を噛む話です。