加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

水木しげるとアドルフ・ヒットラー。

2015年11月30日 21時25分23秒 | 本のこと。
水木しげるさんが亡くなられた。
「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめ数々の名作を残されたが、ぼくが一番好きなのは、この作品。

劇画ヒットラー (ちくま文庫)
水木 しげる
筑摩書房


二十世紀最大の独裁者の貧乏な画学生だった若者時代からベルリン崩壊までのヒットラーの半生を描いた比較的オーソドックスな伝記漫画である。
おなじみの妖怪は出てこない。普通の意味では。

だが読んでいただくとわかるのだが、この「ヒットラー」と、彼を取り巻く人物たちが、もう「妖怪」なのだ。それはどんな妖怪よりも怖い。
普通の妖怪はヨーロッパを蹂躙し、数千万のユダヤ人を殺したりしない。

93歳。男性の平均年齢よりも長いし、大往生だったろうけど、もっと長生きしていただきたかった。

親子三代007(ゼロゼロセブン)

2015年11月29日 11時47分23秒 | 音楽・映画のこと
もうすぐ九十歳になろうかというぼくの父は「007シリーズ」が大好きで、街に一つあった小さな洋画専門の映画館にぼくを連れて観に行っていたものだ。
それこそ第一作目の「ドクターノオ」(公開時007は殺しの番号)から第六作目の「女王陛下の007」まで一緒に観た記憶がある。

ドクター・ノオ [Blu-ray]
ショーン・コネリー,ジョセフ・ワイズマン,ウルスラ・アンドレス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


女王陛下の007 [Blu-ray]
ジョージ・レーゼンビー,テリー・サヴァラス,ダイアナ・リグ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


大人になって観返すと、そんなに難しいストーリーの作品はない007シリーズだが小学生低学年の自分にはわかるはずもなく、「ドクターノオ」の「ドラゴン」を模した火を噴く装甲車や「ゴールドフィンガー」のアストンマーチンや、「二度死ぬ」の忍者部隊なんかをただ面白がっていた。
それに、きれいな女優さんとエッチなことをするシーンが多いので、なんだかドキドキして観ていたことを憶えている。

死ぬのは奴らだ [Blu-ray]
ロジャー・ムーア,ヤフェット・コットー,ジェーン・シーモア
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


007役がロジャー・ムーアに代わってからの一作目「死ぬのは奴らだ」は一人で観に行った。
中学生になっていたからだった。

昨日の夜、ぼくは地元で働いている息子と一緒にダニエル・クレイグの007最新作「スペクター」をレイトショーで観てきた。ぼくの書斎に並んでいる007のブルーレイのコレクションを観て、息子はいっぱしの007通になっていたのだ。
最新作「スペクター」は、そんな50年以上にわたるシリーズのファンに向けた、「オマージュの塊」みたいな映画だと思う。アクションとかロケ地のそこかしこに「女王陛下~」であるとか「二度死ぬ」とか「ロシアより~」を思わせるシーンの連続である。
ぼくたちはとても楽しんだ。父と初めてみた「ドクターノオ」に負けない面白さだった。

親子三代に引き継がれる映画シリーズ、なんて、007以外にはない。
「ジェームズ・ボンドは帰ってくるでしょう」と「スペクター」のエンドクレジットにもあったように、今後もずっと続いていってほしい。