米コミック界の巨匠、スタン・リー氏が死去 「X−メン」などの生みの親
記事のとおり、スタン・リー氏が亡くなられた。
95才という高齢なので、いつかはこんな日がくると思ってはいたけれど、いざ訃報を目にすると、やはり寂しく、悲しい。
ぼくがアメリカのコミックを読み出したのは高校二年のとき。1973年。ぼくはついこの間六十になったところだから、四十五年前になるのだろうか。
実はスタン・リー氏のもっとも重要な仕事、――つまり「スパイダーマン」や「ハルク」「ソー」「ファンタスティック・フォー」「Xメン」といった、今では誰でも知っているようなヒーローたちを創り出したこと――が一段落した後くらいに、ぼくはマーベルコミックスと出会った。
「スパイダーマン」をはじめとするマーベルの悩めるヒーローたちが大きなブームになったのは、六十年代後半から。
ぼくがマーベルコミックスを読み始めたころは、スタン・リー氏はストーリーライターから一歩引いて編集長といった立場だったように思う。もちろん、よく知られているようにアメリカのコミックはタイトル毎に別の雑誌になっているので、いわゆる「少年ジャンプ」の編集長とは違うのだが、それぞれのヒーローが世界を共有するおおきなマーベルユニバースの総監督という立場だったように思う。
高校生だったぼくは、この人の全盛のころの作品を読みたくて、当時は珍しかったハードカバー版のマーベルヒーローやヴィランのオリジン集を取り寄せたりしていた。
「コミックブック界のシェイクスピア」
複数のコミックのストーリーを書いていたころの氏を評した当時の言葉である。
なんとなく、わかる。グローブ座の座付き作者として観客に喜ばれるような芝居を書くうちにとんでもない高みにのぼりつめてしまった劇作家と、弱小コミック会社で複数の優れたシリーズを書きまくって一大潮流を生み出したコミック脚本家とは、似ているではないか。
登場人物の喜怒哀楽の振幅も似ている。
今はどうか知らないが、マーベルコミックの吹き出しの台詞の文末には「.(ピリオド)」は使わない方針だったそうだ。必ず「!」か「・・・」のどちらかを使うことにしていたとか。それで台詞のやりとりに勢いとリズム感が出るという。ずっと昔、それこそリー編集長の「編集後記」にそう書いてあったような気がする。
ああ、面白かったコミックの思い出が次々にわいてくる。
いまごろ、天国で、先に行っている漫画家のジャック”キング”・カービーさんや、スパイダーマンの初代絵師だったスティーブ・ディッコ氏らとともに、退屈しきった天国の住人向けに、とびきり面白いコミック作りを始められたにちがいない。
Excelsior!