なんくるのひとりごと

日々の想いを言葉にしてみたい

母の唸り声

2008-06-23 13:46:44 | 日記
私の耳にいまだに残る母のうめき声があります。
突然、夜中に発せられるのです。
「あいえーなー」「あいえーなー」と聞こえるのですが
その声が聞こえると怖くて身が縮み声も出ないのです。
真っ暗な部屋で突然、何の前触れもなしにその声は聞こえました。
夢を見ているのです。
母は夢の中で何か怖いことがあったらしく「あいえーなー」を
くりええしました。

家も小さくて、みんなでざこ寝状態です。隣で寝ていた母が突然うめくのです。
周りに寝ていた姉も目を覚まして「かぁちゃん~かぁちゃん」と母を揺すり
起こします。
その間、怖くて私は声も出ずに膝を抱えてうずくまります。

「かぁちゃ~かぁちゃん」と何度が呼ばれて母は目を覚ましていいます。
「あきさみよー、また戦のいみんちょーたん(ゆめをみていたよー)」と。
「起こしてしまったねー大丈夫だからもう寝なさい」と、母は言い、私たちの頭をなでてくれました。
暫くは寝られないのです。よっぽと怖かったんだねーと。子ども心にも思いながら母の戦争を唸り声という形で体験しました。

「あいえーなー」声を震わせて地獄の底で声を出しているような
絞り出すような声でした。

何十回も何百回も聴きました。
姉も妹も兄たちも、同じような声を聞いたと・・。母の思い出話になると必ず出てくる場面です。
97才で、5年前に亡くなったのですが、
その唸り声は、戦争が終わって30年間も40年間も続きました。
戦後50年も経って、その頻度は落ちましたが、死ぬまで記憶にはあったはずです。
イクサの場面が。
南洋で戦争に遭遇た父と母でしたが、母の心に残る傷は死ぬまで続きました。

今日は慰霊の日、「戦争は愚かなことです。勝っても負けても人々には何も遺してはくれません」と、先日行ったひめゆりの塔で語って居た体験者の声が聞こえます。
あの母のき声唸り声は私の耳にいまも残ります。



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