ハイボール

ウィスキーを炭酸で割って
もちろん
氷は入れて

ただの炭酸も美味い
と最近気づいて
甘さも香りもつけない
シンプルな炭酸水

もちろん
ただの水もうまいが
炭酸水も
シュワッと
少し刺激的で

それで
炭酸水もだけど
それでウイスキーを割った
ハイボールがうまい

ぼくが
酒を飲み始めた頃
ハイボールは昔の飲み物だった
水割りが全盛で
ロックやストレートはあったけど
（strait & chaserとか言ってね）

ハイボールは
流行らない一昔前の飲み物
場末の裏ぶれた小汚いバーで
年増のホステスが
手持ち無沙汰に丸いスツールに腰掛けて
カウンターに片肘ついて
煙草をふかしている

ドアを開けて入って来た
トレンチコートの男が
ハイボール
と床に響くような低音で注文する

女は
ちらと男に目をやって
返事もしない

バーテンダーがグラスに氷を入れ

みたいな

あ
ハイボールが
少し
カッコよくなり始めたころ
だったかな

でもね
ハイボールは
せっかくのウィスキーの味を殺す
みたいなイメージを持ってた

でもね
シンプルな炭酸水で割った
ウィスキーも
うまいものだな

ああ
うまい

ところで
場末
っていったいどこなんだろう？
言葉としては
盛り場の端っこ
盛り場の終わるところ
ということは明確だけど

場末のバー
というところに
いちどは行ってみたいものだ
とあこがれたものだ