ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

Dead or Alive

2023-10-08 09:52:32 | 詩誌霧笛137号(2021)以降
逃亡中の指名手配の犯人が目撃される
中折れ帽にトレンチコート
何の罪を犯したか定かではない
拳銃を所持しているかどうか
ナイフを隠し持っているか
人を殺める必要はそもそもあるのか

ブルースの聞こえそうな港町の岸壁を
繫留する漁船の傍らを
ふらふらと歩いていたとか
小さなウィスキーのボトルを手にしていたとか
いや
不似合いな
小さなギターを背負っていたとか
足元はスニーカーだったとか

いつお迎えが来たっていいんだ
と小声で口ずさんでいたとか
長いようで短い人生だった
と小声で口ずさんでいたとか

明日
どんな風が吹いてたって関係ない
俺には関係ないことだ
生きていようが死んでいようが
どっちだっていい
対岸の
ほのかに照らされた神明崎の木立の中の
ライトアップされた猪狩霊社の崖下の朱い浮見堂まで歩いて
海に浮かぶ屋根の架かった舞台に見立て
ハードボイルドなブルースを一曲弾き語りしようか
肩濡らしそぼふる雨から雨宿りして
テナーサックスを吹いてくれる友はおらず
どこかで女は泣いているのかもしれないがそれも知らず
すぐそこの
浮見堂の真向かいの
港町ブルースの歌碑の辺りで
だれかは幽すかな歌を聴いてくれるのかもしれない



最新の画像もっと見る

コメントを投稿