竹が生える日差しが照りつける坂の崖の地面から青い竹が生える隠れた地下茎から竹の子が分かれてしなやかなしたたかな竹が生えるフュシスあるいはナトゥーラ能産的自然人間が意図して呪文を唱えて生え出すものではない自ずから然り萌え出ずるもの燃え上がるもの制御できない時分の花百年に一度の華やぐことのない花稲穂のような見過ごされる花花の美しさなどはない青竹の眩い輝きは昔々目くらましのように一度高貴の人々を打ったが . . . 本文を読む
ガラスの靴を履いてかぼちゃの馬車から降り立って百段もある階段を昇る壮麗なドアが開くと華麗な室内交響楽団の音楽があふれ出し午前零時までの舞踏会が始まりを告げるかまどの前で灰まみれの猫のように眠るみすぼらしい姫午前零時の鐘が鳴り終える前に駆け下りた階段に引っかかって脱げたまま置いてきたガラスの靴もう一方は大切に隠して仕舞いこんで継母と連れ子の姉たちの仕打ちに耐え昼の苦行に夜はいっときの休息を得てかまど . . . 本文を読む
吹き抜けの上の高いところに開いた幅三〇センチメートル高さ一八〇センチメートルの縦長の窓天空のまん丸い月がちょうどその幅に収まっている長い耳のうさぎが餅つきする大きな明るい月その手前を透き通るヴェールのような薄墨色の淡い雲が通り過ぎる里に帰る月の姫が乗るには儚すぎる雲はらはらと涙を落とすかのような雨を降らすには薄すぎる雲仰ぎ見る貴公子がひょうと鏑矢を放ち射落とすには軽すぎる雲長い耳のうさぎが夜の夢を . . . 本文を読む