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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

七色のハンミョウを求めて猛暑の茶臼山山系へ。ヨメナで吸蜜するベニシジミ。ワレモコウ、ゲンノショウコ、クマノミズキの実で初秋の趣(妻女山里山通信)

2023-09-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ブルービー(ナミルリモンハナバチ)は、ノアザミが咲き終わったのでいません。そろそろハンミョウの羽化のシーズンなので生息地へ。湿った南風が入って森は酷い蒸し暑さでした。ただ千曲川の堤防上にはアキアカネの大群が舞っていました。茶臼山では桜やクヌギの紅葉が始まりました。耐え難いほど蒸し暑い日でしたが、小さな秋はあちこちに見られました。ただ10月まで気温は高めとか。9月に入っても30度以上が続きそう。今年のキノコは難しいかも知れません。たとえ雨が降っても地温が高ければ秋のキノコは出ないからです。ただ好気性の松茸はそこそこ出るかも知れません。

 ハンミョウ(斑猫)はナミハンミョウともいい、コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ科の甲虫です。動作は機敏で、アリや蛾などの小型の昆虫を捕らえて食べます。幼虫は1年から2年の期間を過ごし、夏の終りに羽化します。周囲には羽化したばかりと思われる成虫が20〜30匹ぐらいいました。冬は土中で集団越冬します。そして、翌春に交尾産卵をします。

 大きな複眼とメタリックで鋭い大顎が目を引きます。飛び出た複眼で後方も見えるのでしょう。後ろからそっと近づいてもサッと逃げます。複眼でどういう景色を見ているかは実は確実には分かっていません。おそらく脳でひとつにまとめて魚眼レンズで見るような景色だろうとか、色はどこまで識別できているのかとか想像の世界で、当事者でないと分かり得ないことです。

 ハンミョウの幼虫も大きな顎を持ち、穴の中に隠れて獲物を襲い体液を吸います。食べ終えた昆虫は巣の外に捨てます。それをアリや他の昆虫が食べます。ハンミョウの天敵は、幼虫の初期の頃はホソツヤアリバチで、ハンミョウの幼虫に針を指して麻痺させ卵を産み付けます。やがてハチの幼虫の餌になります。成虫の天敵は肉食の昆虫(ムシヒキアブ類、ジョウカイボン類、徘徊性クモ類)や鳥ですが、この七色の体も目をくらます効果があるといわれています。

 近づくとすぐに逃げて1mぐらい先に止まります。これを繰り返すので「道教え」とか「道しるべ」とかいわれますが、撮影しようとすると逃げまくるので非常に厄介な被写体です。撮影が難しい昆虫のベストテンには必ず入るでしょう。ハンミョウの仲間には、ヒメツチハンミョウの様に猛毒を持つものがあるので絶対に触ってはいけません。

 ヨメナ(嫁菜)で吸蜜するベニシジミ(紅小灰蝶)。幼虫の食草は、タデ科のスイバやギシギシなど。翅に構造色を持っている為、角度によって銅のような金属光沢を放つ事があります。夏型(6〜9月)は春型(3〜5月)に比べて翅の表の色が黒くなります。

 久しぶりに棚田の一番上まで行ってみました。遠く拙書でも紹介の虫倉山が見えます。2014年(平成26年)11月22日22時8分ごろ発生した神城断層地震で山頂は4割が崩壊。さらにクラックが入っています。山頂直下に崩れた跡が見えます。棚田の稲は例年より早く黄金色になっています。帰りにひとつ稲刈りしてはぜかけしてある田んぼがあって驚きました。

 ワレモコウ(吾亦紅、吾木香、吾妹紅)バラ科ワレモコウ属。別名には酸赭、山棗参、黄瓜香、豬人參、血箭草、馬軟棗、山紅棗根などたくさんあります。上から咲き始めています。ミズヒキやキンミズヒキと共に、古代より愛された初秋を感じさせる植物です。
「老いを忘るる菊に、おとろへゆく藤袴、ものげなきわれもこうなどは・・・」源氏物語 42『匂宮(匂兵部卿)『吾亦紅・ワレモコウ』。
(匂宮は不老の菊、衰えてゆく藤袴、見ばえのせぬ吾木香(ワレモコウ)などという香のあるものを霜枯れの頃まで愛し続ける様な風流をしておいでになる方であった)
「吾も亦 紅なりと ひそやかに」 高浜虚子

 ゲンノショウコ(現の証拠)フウロソウ科フウロソウ属。胃腸、下痢便秘の薬草として有名です。センブリ、ドクダミなどとともに日本の民間薬の代表的なもの。

 アオイトトンボ(青糸蜻蛉)。茶臼山は棚田や溜池が多いので色々なトンボが生息します。オオアオイトトンボ、モノサシトンボ、オツネントンボも見られます。

 アキアカネ(秋茜)。真っ赤なナツアカネ(夏茜)もいました。他にはオニヤンマにシオカラトンボなども。

 クマノミズキ(熊野水木)の花序の枝は緑の実をつけてピンク色になっています。秋が深まると実は紫色から黒紫に。枝もサンゴのような鮮やかな朱色になります。蒸し暑さとクロメマトイの襲来でバテバテです。帰りに温泉に入って生き返りました。

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