モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

大海を渡り2500キロ旅するアサギマダラ。アキノキリンソウ、ハナカズラ!?、シシウド、サラシナショウマ、ウバユリ(妻女山里山通信)

2023-09-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 妻女山の陣場平へ登ったらマルバフジバカマで数頭のアサギマダラが吸蜜していました。忘れていました。そうだ聖高原へ行かなければと翌日向かいました。天候はあいにく曇り空。しかし、これを逃すとフジバカマは散ってアサギマダラは飛び去ってしまいます。

 曇り空で撮影条件はよくありませんが、ほぼ無風なのが救いです。早速フジバカマで吸蜜するメスを撮影。アサギマダラ(浅葱斑)は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶です。成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ海を渡って移動します。数千キロもの移動をするため、全国でマーキングをして調査をしています。アニメ『鬼滅の刃』にも登場して話題になりましたが、植物学者牧野富太郎をモデルにした朝ドラの『らんまん』のオープニングにも出てきますね。

 吸蜜するメス。アサギマダラはガガイモ科キジョラン属の常緑のつる植物のキジョラン(鬼女蘭)に卵を産み付け、幼虫は越冬します。ただガガイモは信州の里山にもあるのですが、キジョランの北限は東京なので、これらのメスはまもなく南下して産卵するのでしょう。6月に飛来したメスが長野県内で産卵しているのが確認されたそうですが。産み付けられた植物はおそらく新芽が山菜のイケマ(牛皮消)でしょう。その卵は夏には羽化して産卵し、その子供達が晩秋に南下するのでしょう。では秋に産卵して育った個体は? どうも雪のない西日本に南下し産卵して一生を終える様です。

 上のメスを捕まえて撮影。お腹の膨らみから卵を持っているか見ました。この膨らみからすると卵を抱えていますね。マーキングの際もこんな風に捕まえますが、傷つけない様にコツが必要です。撮影後は放します。

 この個体は、後翅下部に黒斑があるのでオスです。これは性標で、メスにはありません。オスはこの性標に性フェロモンを蓄えていて、尾部のヘアペンシルをここにこすりつけて、性フェロモンを移しとります。

 オスのアップ。アサギマダラと言われるのは翅の白い部分が浅葱色を帯びているからです。黒から茶色にかけてのコントラストが綺麗です。前翅の中程は半透明で透けて向こうの景色が見えるものも。個体差があります。

 吸蜜する2頭のオス。浅葱色(あさぎいろ)というのは、薄い葱の色という意味で、日本の伝統色の名前です。翡翠色、江戸紫、群青色、銀鼠などは聞いたことがあると思いますが、瓶覗とか高麗納戸、甚三紅とかは聞いたことがないと思います。日本の伝統色にもっと興味を持っていただけると嬉しいです。

 メスのアサギマダラ。アサギマダラは暑さに弱く北上し、寒さを避けるために南下するといわれています。それぞれの移動先で産卵し成虫は死ぬので、南下と北上の個体はまったく別のものといわれています。真夏に四阿山のカルデラの中の浦倉山から下った渓流で大きな群れを見たことがあります。

 そのクローズアップ。草間彌生の水玉模様の様な胸部が可愛い。この浅葱色の部分は構造色です。この部分の鱗粉は、開かずに縮んだままで細長い形です。

 フジバカマで吸蜜するのはアサギマダラだけではありません。これはキタテハ(黄立羽)。幼虫はカラムシなどのイラクサ科の葉を食べます。

 おそらくこれもキタテハだと思います。いや違いますね。これはヒョウモンチョウの仲間です。種類までは同定できません。フジバカマ(藤袴)は、キク科ヒヨドリバナ属の多年生植物。「秋の七草」の一つで、万葉の時代から人々に親しまれてきた植物です。
「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 あさがほの花」 山上憶良(巻8-1538)
 萩の花、ススキ、葛、ナデシコ、オミナエシ、そしてフジバカマとキキョウの花と秋の花を並べています。咲く花の情景を思い浮かべると秋の趣が感じられます。

 ホソヒラタアブのオスも来ていました。体長は9〜11ミリ。小さいです。撮影は大変です。幼虫はアブラムシを食べます。

 吸蜜に訪れる小さな昆虫を捕らえに来たアキアカネ。ナツアカネとの見分けは胸部の黒い模様ですが、尖っているのでアキアカネとしました。今年は赤トンボの発生が少ない様に思いました。小雨が降り始めたので帰ります。

 前回の茶臼山自然植物園の記事でソリダゴファイヤーワークスがアキノキリンソウの仲間と紹介しましたが。これがアキノキリンソウです。

 薄紫のノコンギ(野紺菊)の脇にシラヤマギク(白山菊)の群生がありました。これにユウガギク、ヨメナ、ゴマナとかあるので、秋の野菊の同定は大変です。『らんまん』のオープニングには薄紫の野紺菊も出てきます。

 センニンソウ(仙人草)かボタンヅル(牡丹蔓)の花後の実。葉に鋸歯縁が無いのでセンニンソウでしょう。どちらも毒草です。センニンソウは山野草の中ではトップクラスのいい匂いがします。花はブライダルブーケの様に清楚で豪華ですが、茎や葉の汁は皮膚炎を起こすので要注意です。

 久しぶりに見ました。ツル性植物のトリカブトでハナカズラ(花葛)といいます。牧野植物園では、九州、朝鮮半島、中国東北部、ロシア沿岸地域に分布とあり、絶滅危惧IB類なんですが。信州にあるんですけど。大発見ですかこれ。環境省でも九州にしかないと。でもあるんですけど。どうしましょ。ただ朝鮮半島にあるなら信州にあっても変ではないですよね。右上の花は結実しています。見頃は20日頃でした。その下は花がありません。こんな毒草を食べる動物がいるのでしょうか。妻女山陣場平の貝母も薬草で毒草ですが、ニホンカモシカは花を食べることがあります。トリカブトは猛毒です。山菜のニリンソウと似ていて誤って食べると死に至ります。素手で触るのも避けなければいけません。

 シシウド(猪独活)でしょうか。すぐ近くにある2m以上のシシウドは花後ですでに立ち枯れし始めています。これは高さ50センチぐらい。シシウド属の別種なのかまだ小さいのか。ノダケ、シラネセンキュウ、ウバタケニンジン、イワニンジンとかありますが、分かりません。

 サラシナショウマ(晒菜升麻)で吸蜜するクロヒラタアブ。

 今年は山栗が不作です。猛暑と少雨が原因です。松茸も不作だそうですが、森に入っても食菌はおろか毒キノコさえありません。先週かなりの豪雨があったのですが出ません。地温が高すぎるのです。松茸、ショウゲンジ、ウラベニホテイシメジ、ホンシメジ、天然舞茸は不作でしょう。10月下旬に雨が続けばハナイグチ、クリタケ、ムキタケ、ムラサキシメジは出るかも。

 ウバユリ(姥百合)が結実しています。枯れると割れてプレパラートの様な薄い膜のついた種を大量にばら撒きます。真夏に咲くラッパ状のユリの花は美しい。オオウバユリは高さ2mぐらいになります。

 小雨に煙る三峯山(1131.4m)。眼下にへらぶな釣りで有名な聖湖。小さなスキー場とスライダーがあります。麓には蒸気機関車やジェット機も展示されています。右奥は冠着山(姨捨山)。

 千曲川展望台から眼下に姨捨の棚田。稲刈りはこれからのところと終わったところも。千曲川の向こうに五一山脈。その向こうには私のホームフィールドの妻女山、斎場山から鞍骨山、鏡台山へと続く戸神山脈。
 今回は聖山へは登りませんでしたが、拙書でも紹介しこのブログでも何度も記事にしています。北アルプスから中央アルプス、美ヶ原、八ヶ岳連峰、志賀高原の山々に戸隠連峰と360度の大展望が魅力。県外からもハイカーがたくさん訪れる本当にいい山です。

●2021年9月23日に撮影した「ハナカズラ(花葛)」と思われる植物です。今回と同じ場所です。こちらの方がツル植物ということがはっきりと分かると思います。

●拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林の冠着山(姨捨山)のページにトリカブトの写真があるのを思い出しました。見るとどうもツル性のトリカブトらしいということで、写真データを探すと4枚ありました・2011年9月27日の冠着山です。場所はほとんど人が通ることのない北面巻き道で、ほぼ廃道になっています。山頂付近にもツル性のトリカブトがあります。冠着山や聖山、聖高原以外にも探すとツル性のトリカブトはあちこちにあるのかも知れません。探してみようと思います。

■2500キロ海を渡り旅する蝶、アサギマダラ


あいみょん – 愛の花【ACOUSTIC MUSIC VIDEO】 :あいみょんのアコースティックギターが心に響きます。

 昔、神田の古書店で『牧野植物図鑑』と『原色牧野植物大図鑑』を見つけて欲しいと思ったけどあまりに高額で諦めた思い出。今回古本の縮刷版を買いました。私もアートディレクターやデザインプロデューサー時代は仕事大好き人間で2度ほど死に損なったことがありますが、彼の仕事量は比べ物になりません。しかもアナログで全て手作業。交通の便も良くないのに日本中を飛び回り。想像を絶します。そして、そんな彼を支えた妻・壽衛さん。史実はドラマとは違いもっと過酷だった様ですが、彼女がいなければこの歴史に残る偉業はなし得なかったでしょう。
「家守りし 妻の恵みや わが学び」
「世の中の あらん限りや スエコ笹」


『原色牧野日本植物図鑑』北隆館が届きました。定価は4800円ですが新古本で3000円で買えました。さらに2、3とありますがとりあえず1を。コンパクト版なので携帯できます。大型本だと中古でも45000円はするので、昔、神田の古書店で見つけて諦めたことがあります。雨などで山に行けない日などに読むのもいいと思います。ただ植物の同定には使いません。近年,植物の分類体系が「新エングラー体系」や「クロンキスト分類体系」などから「APG 分類体系」とよばれる別のシステムに変わりつつあるのです。よって今まで形象学的に分類されていたものがAPG 分類体系によって、エッ!これがこれの仲間?ということがたくさん起きています。興味ある方は調べてみてください。
 朝ドラ「らんまん」で牧野富太郎が一般の人にも知られましたが、実際は二重婚で酒蔵の実家の金を絞り出して倒産させたり、お手伝いに手を出し、金が無いのに遊郭三昧とクズ男の見本。まあ妻の壽衛さんありきです。彼女がいなかったら稀代の植物学者牧野富太郎は間違いなく生まれなかった。

APG 分類体系と植物の進化 横浜国立大学教育学部 倉田 薫子:難解ですが、図版も豊富でじっくり読むといいでしょう。山野草好きにはおすすめです。APG 分類体系で、なんでこれがこれの仲間なの!?って思った方も少なくないと思います。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、
『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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ハンミョウに会いに茶臼山へ。自然植物園では珍しいホウジャクと邂逅。外来種の植物のオンパレード(妻女山里山通信)

2023-09-16 | アウトドア・ネイチャーフォト
 2週間ぶりにハンミョウに会いに茶臼山へ。前回は穴から出てきたばかりでたくさんいたのですが、今回は森の中に散ってしまった様で、4匹ぐらいしかいませんでした。代わりにクロメマトイが大量に発生していて鬱陶しいこと。結局15分ぐらいで退散しました。そして茶臼山自然植物園へ。

 ハンミョウ(斑猫)はナミハンミョウともいい、コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ科の甲虫。アリとか小さな昆虫が餌ですが、まだ捕食シーンを見たことがないのでいつか見てみたいと思います。

 成虫の天敵は肉食の昆虫(ムシヒキアブ類、ジョウカイボン類、徘徊性クモ類)や鳥ですが、ハンミョウが食べられているところも目撃したことはありません。

 かなり鋭い牙なので不用意に掴むと痛い目にあいます。ハンミョウの生態については、前の記事をご覧ください。クロメマトイがあまりに煩いので自然植物園へ向かいました。

 花を撮影しようとしたら突然ホウジャクが吸蜜に訪れました。慌てて撮影。もう少しいいカットを撮りたかったのですが突然のことで。すぐに何処かへ飛び去ってしまいました。残念。ホウジャクはスズメガ科の蛾の一種です。長い口吻でホバリングしながら吸蜜します。

 ホウジャクが吸蜜していた花は、トリコステマ・ラナタム。南カリフォルニアとメキシコに自生する芳香性の植物です。

 クマバチ(キムネクマバチ)も何匹も訪れています。黄色い花粉がたくさん付いています。トリコステマ・ラナタムの花粉でしょう。クマバチはハナバチの仲間でオスには針がなく刺されることはありません。クマバチ(クマンバチ)は強靭な顎を持っていて枯れ木に穴を開けて巣を作ります。そこへ蜜と花粉の団子を運んで子育てをします。

 ガウラ。アカバナ科の多年草です。和名をハクチョウソウ(白蝶草)といいます。北アメリカ、メキシコ原産。

 ツマグロヒョウモンのオスがたくさん舞っていました。縄張りを維持するために占有行動をとることが知られています。

 激しい戦いの跡でしょうか、翅がボロボロです。

 ハナツクバネウツギ(花衝羽根空木)。スイカズラ科ツクバネウツギ属の園芸品種です。別名は、アベリア、ハナゾノツクバネウツギ。

 親子で昆虫採取。男の子はツマグロヒョウモンのメスを捕まえました。しばらく観察した後で放してあげました。ハンミョウの写真を見せたらすぐに「ハンミョウだ!」と。昆虫好きの様です。

 ヘリアンサスの仲間。別名は宿根ヒマワリ。原産地は北アメリカ。2m以上の大きなものもありました。

 ルリマツリ。イソマツ科ルリマツリ属(プルンバゴ属)の常緑性低木です。原産地は南アフリカ。熱帯性の花木のため、暑さには強い様です。

 ソリダゴファイヤーワークス。キク科の宿根草(耐寒性多年草)です。日本に自生するアキノキリンソウの仲間。名前の通り花火の様に咲き乱れます。

 ソリダゴファイヤーワークスのアップ。

 植物園から望む松代方面。中央に奇妙山。その奥に根子岳と四阿山。右手前にプリン型の皆神山が見えます。最高気温は32度。9月半ばとは思えないほどの暑さでした。帰りに茶臼山動物園の横を通ったのですが大人気ですね。県外ナンバーの車にもたくさんすれ違いました。

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ヤマトシジミ(大和小灰蝶)が大発生。特定外来生物のアカボシゴマダラ。クズの花にウラギンシジミの幼虫。ザトウムシ(妻女山里山通信)

2023-09-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 久しぶりに妻女山山系へ。7月30日以来です。この猛暑で樹液バーにはなにもいませんでした。かわりにアブとクロメマトイが大発生。では昆虫たちはどこへ行ったかというと、谷筋の渓流沿いや貯水池や沼などの周辺です。ツバメも里にはいませんでした。高原に行くとたくさん見られます。昆虫の中にも標高の高い山へ移動したものがいるはずです。最高気温はまだ30度を少し超えますが、最低気温は20度を下回る日も出てきました。

 ある開けた場所でヤマトシジミ(大和小灰蝶)が大発生していました。ノボロギク(野襤褸菊)で吸蜜しています。ノボロギクは、明治初期に渡来した欧州原産の帰化植物で、野に咲くサワギクの意味です。毒草です。ヤマトシジミの複眼には瞳の様なものが見えますが、これは偽瞳孔です。

 ヤマトシジミのメス。オスは淡い青紫色をしています。

 カントウヨメナ(関東嫁菜)で花粉を食べるコアオハナムグリ。似ているノコンギクやユウガギクはまだ咲きだしていません。野菊は他にもヨメナ、シラヤマギク、ノジギク、ゴマナなどあり同定はなかなか困難です。

 コムラサキ(小紫)の緑の実が紫に染まり始めました。ムラサキシキブ(紫式部)より実は小さいのですが、数がたくさんなります。我が家の庭にもあるのですが鳥は食べに来ません。有毒ではないのですが、食べると無味に近く美味しくありません。でも庭にあるということは、何かの鳥が山から運んできたということでしょうね。誰でしょう。

 ツユクサ(露草、鴨跖草、鴨跖)。ツユクサ科ツユクサ属の一年草。朝咲いて午後にはしぼんでしまう半日花です。おひたしなどで食べられます。水で色落ちするので友禅の下絵に使われます。
 万葉集には9首詠まれています。儚い命や移ろいやすい心の例えに使われた様です。
「月草の うつろひやすく 思へかも 我が思ふ人の 言も告げ来ぬ」大伴坂上大嬢
「月草に  衣色どり 摺らめども うつろふ色と 言ふが苦しさ」詠人知らず


 堂平大塚古墳に寄ってみました。大事な山仲間だったKさんが亡くなってもう10年。彼の友人達も高齢になって手入れが行き届かなくなりました。

 陣場平へ。クロメマトイの大群に襲われました。そこら中にいます。貝母は枯れて倒れた茎だけが少し残っています。ミンミンゼミが鳴いています。あちこちにジョロウグモの巣があります。貝母(編笠百合)の里山での群生地は日本でここだけです。見頃は4月10日から20日頃。カスミザクラ、ヤマザクラ、オオヤマザクラなどが咲いてさながら桃源郷。妻女山駐車場から登って30分ぐらい。県外からもたくさん訪れます。満開の様子は去年以前の4月のアーカイブを御覧ください。

 乱れ咲くミズヒキの花。水引は、信州飯田の伝統工芸で、全国の70%を生産しています。秋を知らせる代表的な花のひとつです。

 ミズヒキ(水引)。タデ科イヌタデ属の多年草。あまりに花が小さくてかなりアップにしないと分かりません。まだつぼみですが、開くと紅白の4つの花びら(萼)に。おめでたい花なんですが、なぜか万葉集や和歌には詠われていません。

 入り口に設置したベンチにザトウムシ。節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目で日本には80種類ぐらいいます。アメリカでは足長伯父さん(Daddy Longlegs)と呼ばれています。「千と千尋の神隠し」の釜爺(かまじい)のモデルであり、また「新世紀エヴァンゲリオン」のマトリエルのモデルとなっています。8本足なんですが3本ほど欠損しています。

 クサギ(臭木)の実。染色に使えるそうです。

 イチモンジチョウ(一文字蝶)。 幼虫はウツギ・スイカズラなどの葉を食べます。

 コミスジ(小三條)。羽ばたきと滑空を繰り返し軽やかに舞うチョウ。幼虫の食草はクズ、フジ、ハギ、ニセアカシアなどのマメ科植物。冬は3齢幼虫で越冬します。人の気配に敏感です。

 サンショウ(山椒)の実が色づいてきました。

 今年はシナノガキ(信濃柿・豆柿)が豊作の様です。鈴生りになっていました。この青い実を水に浸けておくと柿渋ができます。柿渋は平安時代から使われていたそうで、防虫剤や民間薬、染料として使われました。我が家では昔、虫除けのために畳の下に染み込ませた厚い和紙を敷いていました。買うと結構いいお値段がします。

 イヌザンショウ(犬山椒)の実。山椒と違っていい香りがしないので食用にはなりません。

 センニンソウ(仙人草)が満開です。今回の目的の花なんですが樹冠に咲いていてアップで撮影できません。センニンソウは、キンポウゲ科センニンソウ属に分類されるつる性の半低木(木質の多年草)。ただ、茎や葉の切断面から出る汁や濡れた花粉に触れると炎症を起す有毒植物なので、要注意です。別名は、ウマノハオトシ(馬の歯落とし)、ウマノハコボレ(馬歯欠)、ウシクワズ(牛食わず)、ハコボレ(歯欠)、ハグサ(歯草)など。毒草ゆえの名前なのでしょう。

 特定外来生物のアカボシゴマダラ。国立環境研究所のサイトによると、「“放蝶ゲリラ”による人為的な放蝶によると考えられている。」とあります。タテハチョウ科は、植物防疫法で検疫有害動物に指定されています。ゴマダラチョウやオオムラサキと競合するので、それらの減少を招く危険性があります。

 ヨウシュヤマゴボウ(マルミノヤマゴボウ)。有毒です。繁殖力がもの凄く、妻女山では林道脇に繁茂し、在来植物を淘汰しています。オオブタクサ、セイタカアワダチソウと共に駆除すべき植物です。

 クズ(葛)の花に何かの幼虫がいました。ウラギンシジミの幼虫の様です。刺激すると触覚から花火の様なフラッシュブラシを出すそうです。触覚のある方がお尻です。

 枯れ木にシュタケ(朱茸)ヒダナシタケ目サルノコシカケ科でしょうか。けっこう肉厚です。もちろん食べられません。

 妻女山展望台裏手の四阿から望む茶臼山。右奥は虫倉山。両山とも拙書で紹介しています。北アルプスは雲の向こうです。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、
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七色のハンミョウを求めて猛暑の茶臼山山系へ。ヨメナで吸蜜するベニシジミ。ワレモコウ、ゲンノショウコ、クマノミズキの実で初秋の趣(妻女山里山通信)

2023-09-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ブルービー(ナミルリモンハナバチ)は、ノアザミが咲き終わったのでいません。そろそろハンミョウの羽化のシーズンなので生息地へ。湿った南風が入って森は酷い蒸し暑さでした。ただ千曲川の堤防上にはアキアカネの大群が舞っていました。茶臼山では桜やクヌギの紅葉が始まりました。耐え難いほど蒸し暑い日でしたが、小さな秋はあちこちに見られました。ただ10月まで気温は高めとか。9月に入っても30度以上が続きそう。今年のキノコは難しいかも知れません。たとえ雨が降っても地温が高ければ秋のキノコは出ないからです。ただ好気性の松茸はそこそこ出るかも知れません。

 ハンミョウ(斑猫)はナミハンミョウともいい、コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ科の甲虫です。動作は機敏で、アリや蛾などの小型の昆虫を捕らえて食べます。幼虫は1年から2年の期間を過ごし、夏の終りに羽化します。周囲には羽化したばかりと思われる成虫が20〜30匹ぐらいいました。冬は土中で集団越冬します。そして、翌春に交尾産卵をします。

 大きな複眼とメタリックで鋭い大顎が目を引きます。飛び出た複眼で後方も見えるのでしょう。後ろからそっと近づいてもサッと逃げます。複眼でどういう景色を見ているかは実は確実には分かっていません。おそらく脳でひとつにまとめて魚眼レンズで見るような景色だろうとか、色はどこまで識別できているのかとか想像の世界で、当事者でないと分かり得ないことです。

 ハンミョウの幼虫も大きな顎を持ち、穴の中に隠れて獲物を襲い体液を吸います。食べ終えた昆虫は巣の外に捨てます。それをアリや他の昆虫が食べます。ハンミョウの天敵は、幼虫の初期の頃はホソツヤアリバチで、ハンミョウの幼虫に針を指して麻痺させ卵を産み付けます。やがてハチの幼虫の餌になります。成虫の天敵は肉食の昆虫(ムシヒキアブ類、ジョウカイボン類、徘徊性クモ類)や鳥ですが、この七色の体も目をくらます効果があるといわれています。

 近づくとすぐに逃げて1mぐらい先に止まります。これを繰り返すので「道教え」とか「道しるべ」とかいわれますが、撮影しようとすると逃げまくるので非常に厄介な被写体です。撮影が難しい昆虫のベストテンには必ず入るでしょう。ハンミョウの仲間には、ヒメツチハンミョウの様に猛毒を持つものがあるので絶対に触ってはいけません。

 ヨメナ(嫁菜)で吸蜜するベニシジミ(紅小灰蝶)。幼虫の食草は、タデ科のスイバやギシギシなど。翅に構造色を持っている為、角度によって銅のような金属光沢を放つ事があります。夏型(6〜9月)は春型(3〜5月)に比べて翅の表の色が黒くなります。

 久しぶりに棚田の一番上まで行ってみました。遠く拙書でも紹介の虫倉山が見えます。2014年(平成26年)11月22日22時8分ごろ発生した神城断層地震で山頂は4割が崩壊。さらにクラックが入っています。山頂直下に崩れた跡が見えます。棚田の稲は例年より早く黄金色になっています。帰りにひとつ稲刈りしてはぜかけしてある田んぼがあって驚きました。

 ワレモコウ(吾亦紅、吾木香、吾妹紅)バラ科ワレモコウ属。別名には酸赭、山棗参、黄瓜香、豬人參、血箭草、馬軟棗、山紅棗根などたくさんあります。上から咲き始めています。ミズヒキやキンミズヒキと共に、古代より愛された初秋を感じさせる植物です。
「老いを忘るる菊に、おとろへゆく藤袴、ものげなきわれもこうなどは・・・」源氏物語 42『匂宮(匂兵部卿)『吾亦紅・ワレモコウ』。
(匂宮は不老の菊、衰えてゆく藤袴、見ばえのせぬ吾木香(ワレモコウ)などという香のあるものを霜枯れの頃まで愛し続ける様な風流をしておいでになる方であった)
「吾も亦 紅なりと ひそやかに」 高浜虚子

 ゲンノショウコ(現の証拠)フウロソウ科フウロソウ属。胃腸、下痢便秘の薬草として有名です。センブリ、ドクダミなどとともに日本の民間薬の代表的なもの。

 アオイトトンボ(青糸蜻蛉)。茶臼山は棚田や溜池が多いので色々なトンボが生息します。オオアオイトトンボ、モノサシトンボ、オツネントンボも見られます。

 アキアカネ(秋茜)。真っ赤なナツアカネ(夏茜)もいました。他にはオニヤンマにシオカラトンボなども。

 クマノミズキ(熊野水木)の花序の枝は緑の実をつけてピンク色になっています。秋が深まると実は紫色から黒紫に。枝もサンゴのような鮮やかな朱色になります。蒸し暑さとクロメマトイの襲来でバテバテです。帰りに温泉に入って生き返りました。

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