聖高原のとある場所に、2500キロ海を渡る旅する蝶、アサギマダラの楽園があります。昨年と違い雲が多めで、雲に覆われると風も吹くので、なかなか難しい撮影状況でしたが、ご存じの方が次々と訪れていました。テレビでは宮田村の300から600頭も集まるというフジバカマの大きな楽園を紹介していました。ここはそれほど大規模ではありませんが、充分に楽しめます。
アサギマダラ(浅葱斑)は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶です。成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ海を渡って移動します。数千キロもの移動をするため、全国でマーキングをして調査をしています。アニメ『鬼滅の刃』にも登場して話題になりました。
この個体は、後翅下部に黒斑があるのでオスです。これは性標で、メスにはありません。オスはこの性標に性フェロモンを蓄えていて、尾部のヘアペンシルをここにこすりつけて、性フェロモンを移しとります。自然の仕組みというものは、ときに人智の域を越えたところにあります。
フジバカマで吸蜜。ただ、満開をわずかに過ぎて蜜の量が少ないのか短い時間でほかへ移ります。草間彌生の水玉模様の様な胸部が可愛い。アサギマダラは暑さに弱く北上し、寒さを避けるために南下するといわれています。それぞれの移動先で産卵し成虫は死ぬので、南下と北上の個体はまったく別のものといわれています。
アサギマダラと言われるのは翅の白い部分が浅葱色を帯びているからです。黒から茶色にかけてのコントラストが綺麗です。前翅の中程は半透明で透けて向こうの景色が見えます。この透明の程度は個体によってかなり異なります。
右の後翅の欠損から、一番上の個体と同じだと分かります。腹部が膨らんでいるので、メスで交尾を終えて卵を内包しているのでしょう。
これも上と同じ個体です。フジバカマなどで吸蜜し、ガガイモ科キジョラン属の常緑のつる植物のキジョラン(鬼女蘭)に卵を産み付け、幼虫は越冬します。ただガガイモは信州の里山にもあるのですが、キジョランの北限は東京なので、これらのメスはまもなく南下して産卵するのでしょうか。6月に飛来したメスが長野県内で産卵しているのが確認されたそうですが。産み付けられた植物はおそらく新芽が山菜のイケマ(牛皮消)でしょう。その卵は夏には羽化して産卵し、その子供達が晩秋に南下するのでしょう。では秋に産卵して育った個体は? どうも雪のない西日本に南下し産卵して一生を終える様です。
三頭のアサギマダラ。左の個体はかなり翅が欠損しています。どうしたのでしょう。ただ、オスが塩分やアンモニア摂取のために糞や尿の水たまりに集まる習性がある様で、その際に襲われたのかもしれません。しかし、最初のメスの翅の欠損はどういう理由なのでしょう。メスも地上に下りることがあるのでしょうか。
なかなか撮影できない胸部の裏側からのカット。脚の付き方が分かります。オオムラサキは前の二本が胸に折りたたまれて使われないのですが、アサギマダラは使っていますね。私も腕がもう二本あったら便利だなと思うことがあります。
閉じて吸蜜している個体を捕まえて撮影。後翅に黒い性標があるのでオスでした。オスは捕まえると尾部からヘアペンシルを出すそうなのですが、出しませんでした。捕まえるのは必ず翅を閉じている時に。開いているときに片方の翅を捕まえると激しく羽ばたいて翅がちぎれてしまう恐れがあります。撮影後にそっとフジバカマの花に置くとそのまま吸蜜していました。それから、マーキングは趣味でやる様なものではありません。然るべき団体に入ってきちんとレクチャーを受けてからにしてください。
浅葱色というのは、薄い葱の色という意味で、日本の伝統色の名前です。翡翠色、江戸紫、群青色、銀鼠などは聞いたことがあると思いますが、瓶覗とか高麗納戸、甚三紅とかは聞いたことがないと思います。日本の伝統色にもっと興味を持っていただけると嬉しいです。
幼虫はガガイモ科のキジョラン、カモメヅル、イケマ、サクラランなどを食草とし、卵は食草の葉裏に産みつけられます。幼虫も成虫も体内に食草由来のアルカロイド系毒物質をもち捕食されるのを防いでいます。
吸蜜に来たハナアブ科のクロヒラタアブ。幼虫はアブラムシを食べます。一瞬、絶滅危惧種のルリモンハナバチ(ブルービー)かと思ってドキッとしました。その記事もこの夏アップしています。
フジバカマ(藤袴)キク科ヒヨドリバナ属の多年生植物。「秋の七草」の一つで、万葉の時代から人々に親しまれてきた植物です。
「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 あさがほの花」 山上憶良(巻8-1538)
萩の花、ススキ、葛、ナデシコ、オミナエシ、そしてフジバカマとキキョウの花、と秋の花を並べています。咲く花の情景を思い浮かべると秋の趣が感じられます。
あちこちでノコンギク(野紺菊)も咲いています。聖高原も妻女山山系もそうですが、ヨメナ(嫁菜)も両方あって、なかなか区別が難しい。ヨメナは葉がスベスベ。ノコンギクは繊毛があるとか、色々違いはあるのですが、そこまではっきりとしていないのでどっちかなと迷うことが多いです。これにユウガギク、シラヤマギク、ゴマナとか入ってくるともういけません。野菊の闇です。
林下にサラシナショウマ(晒菜升麻)の群生地。風に吹かれるたびに長い花穂が優雅に揺れます。
ある開けた秘密の場所から見る仁科三山。左から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳。最も雪が少ない季節。
聖山は別荘地があり、山菜キノコは採取禁止なので別の山域へ。大きなショウゲンジ(コムソウ)がたくさん採れました。夕食はカルボナーラに入れて。カルボナーラはレトルトですが、自家製ベーコンを加えました。キノコの風味があふれる逸品です。残りは後日ジンギスカンやキノコうどんにしようと思います。
普通天然キノコは通販や道の駅や産直でないと買えませんが、私は在京時代から東京、神奈川、山梨の山で家族とキノコ狩りをしていました。現在はもちろん天然キノコはすべて採りに行きます。買うことはありません。ただ天然キノコは同定を間違うと死ぬ危険性もあります。
●信州の秋はジコボウはじめキノコ三昧。キノコ料理のレシピ。放射能除染方法も(妻女山里山通信):秋になると毎年アクセスが爆発する記事です。
●ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケ(妻女山里山通信):一番誤食が多いキノコです。アクセスも多い。リンクのクイズもやってみて下さい。
今回もガマズミの赤い実を摘みました。ガマズミ酒。時間が経つと綺麗なルビー色になります。酸味が強い、老化防止にもいい抗酸化作用が強い酒になります。
●『驚異の飛翔2500キロ アサギマダラの神秘』:「八ケ岳では初夏から夏の終わり、ときには秋半ばまで、身近に見かけるアサギマダラ。この小さな蝶が日本列島を縦断、さらに南の沖縄や台湾や香港まで2500キロ 以上飛んでい くのです。翌年春、その逆のコースを日本に渡ってきます。 近年その不思議な旅が明らかになりつつあります。」
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★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
アサギマダラ(浅葱斑)は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶です。成虫は、春から夏にかけて南から北へ移動し、移動先で世代を重ねた後、秋になると南へ海を渡って移動します。数千キロもの移動をするため、全国でマーキングをして調査をしています。アニメ『鬼滅の刃』にも登場して話題になりました。
この個体は、後翅下部に黒斑があるのでオスです。これは性標で、メスにはありません。オスはこの性標に性フェロモンを蓄えていて、尾部のヘアペンシルをここにこすりつけて、性フェロモンを移しとります。自然の仕組みというものは、ときに人智の域を越えたところにあります。
フジバカマで吸蜜。ただ、満開をわずかに過ぎて蜜の量が少ないのか短い時間でほかへ移ります。草間彌生の水玉模様の様な胸部が可愛い。アサギマダラは暑さに弱く北上し、寒さを避けるために南下するといわれています。それぞれの移動先で産卵し成虫は死ぬので、南下と北上の個体はまったく別のものといわれています。
アサギマダラと言われるのは翅の白い部分が浅葱色を帯びているからです。黒から茶色にかけてのコントラストが綺麗です。前翅の中程は半透明で透けて向こうの景色が見えます。この透明の程度は個体によってかなり異なります。
右の後翅の欠損から、一番上の個体と同じだと分かります。腹部が膨らんでいるので、メスで交尾を終えて卵を内包しているのでしょう。
これも上と同じ個体です。フジバカマなどで吸蜜し、ガガイモ科キジョラン属の常緑のつる植物のキジョラン(鬼女蘭)に卵を産み付け、幼虫は越冬します。ただガガイモは信州の里山にもあるのですが、キジョランの北限は東京なので、これらのメスはまもなく南下して産卵するのでしょうか。6月に飛来したメスが長野県内で産卵しているのが確認されたそうですが。産み付けられた植物はおそらく新芽が山菜のイケマ(牛皮消)でしょう。その卵は夏には羽化して産卵し、その子供達が晩秋に南下するのでしょう。では秋に産卵して育った個体は? どうも雪のない西日本に南下し産卵して一生を終える様です。
三頭のアサギマダラ。左の個体はかなり翅が欠損しています。どうしたのでしょう。ただ、オスが塩分やアンモニア摂取のために糞や尿の水たまりに集まる習性がある様で、その際に襲われたのかもしれません。しかし、最初のメスの翅の欠損はどういう理由なのでしょう。メスも地上に下りることがあるのでしょうか。
なかなか撮影できない胸部の裏側からのカット。脚の付き方が分かります。オオムラサキは前の二本が胸に折りたたまれて使われないのですが、アサギマダラは使っていますね。私も腕がもう二本あったら便利だなと思うことがあります。
閉じて吸蜜している個体を捕まえて撮影。後翅に黒い性標があるのでオスでした。オスは捕まえると尾部からヘアペンシルを出すそうなのですが、出しませんでした。捕まえるのは必ず翅を閉じている時に。開いているときに片方の翅を捕まえると激しく羽ばたいて翅がちぎれてしまう恐れがあります。撮影後にそっとフジバカマの花に置くとそのまま吸蜜していました。それから、マーキングは趣味でやる様なものではありません。然るべき団体に入ってきちんとレクチャーを受けてからにしてください。
浅葱色というのは、薄い葱の色という意味で、日本の伝統色の名前です。翡翠色、江戸紫、群青色、銀鼠などは聞いたことがあると思いますが、瓶覗とか高麗納戸、甚三紅とかは聞いたことがないと思います。日本の伝統色にもっと興味を持っていただけると嬉しいです。
幼虫はガガイモ科のキジョラン、カモメヅル、イケマ、サクラランなどを食草とし、卵は食草の葉裏に産みつけられます。幼虫も成虫も体内に食草由来のアルカロイド系毒物質をもち捕食されるのを防いでいます。
吸蜜に来たハナアブ科のクロヒラタアブ。幼虫はアブラムシを食べます。一瞬、絶滅危惧種のルリモンハナバチ(ブルービー)かと思ってドキッとしました。その記事もこの夏アップしています。
フジバカマ(藤袴)キク科ヒヨドリバナ属の多年生植物。「秋の七草」の一つで、万葉の時代から人々に親しまれてきた植物です。
「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 あさがほの花」 山上憶良(巻8-1538)
萩の花、ススキ、葛、ナデシコ、オミナエシ、そしてフジバカマとキキョウの花、と秋の花を並べています。咲く花の情景を思い浮かべると秋の趣が感じられます。
あちこちでノコンギク(野紺菊)も咲いています。聖高原も妻女山山系もそうですが、ヨメナ(嫁菜)も両方あって、なかなか区別が難しい。ヨメナは葉がスベスベ。ノコンギクは繊毛があるとか、色々違いはあるのですが、そこまではっきりとしていないのでどっちかなと迷うことが多いです。これにユウガギク、シラヤマギク、ゴマナとか入ってくるともういけません。野菊の闇です。
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聖山は別荘地があり、山菜キノコは採取禁止なので別の山域へ。大きなショウゲンジ(コムソウ)がたくさん採れました。夕食はカルボナーラに入れて。カルボナーラはレトルトですが、自家製ベーコンを加えました。キノコの風味があふれる逸品です。残りは後日ジンギスカンやキノコうどんにしようと思います。
普通天然キノコは通販や道の駅や産直でないと買えませんが、私は在京時代から東京、神奈川、山梨の山で家族とキノコ狩りをしていました。現在はもちろん天然キノコはすべて採りに行きます。買うことはありません。ただ天然キノコは同定を間違うと死ぬ危険性もあります。
●信州の秋はジコボウはじめキノコ三昧。キノコ料理のレシピ。放射能除染方法も(妻女山里山通信):秋になると毎年アクセスが爆発する記事です。
●ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケ(妻女山里山通信):一番誤食が多いキノコです。アクセスも多い。リンクのクイズもやってみて下さい。
今回もガマズミの赤い実を摘みました。ガマズミ酒。時間が経つと綺麗なルビー色になります。酸味が強い、老化防止にもいい抗酸化作用が強い酒になります。
●『驚異の飛翔2500キロ アサギマダラの神秘』:「八ケ岳では初夏から夏の終わり、ときには秋半ばまで、身近に見かけるアサギマダラ。この小さな蝶が日本列島を縦断、さらに南の沖縄や台湾や香港まで2500キロ 以上飛んでい くのです。翌年春、その逆のコースを日本に渡ってきます。 近年その不思議な旅が明らかになりつつあります。」
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。
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