寒さで芽吹きが遅れていた信州の里山にもようやく山菜の日々が訪れました。といっても林道脇のめぼしいものは、ハイカーや山菜採り初心者によってまだ小さなうちに採られてしまいます。固く小さなものはまだ甘みも少ないのですが、枝ごと切り取られるよりはいいでしょう。タラノメやハリギリは、その植生を知っていれば、初めての山でも比較的容易に探し出すことができます。とはいえ留山になっているところで採るのは御法度ですが。
今の季節、山菜採りに疲れて倒木に腰を掛けて休んでいると、森の色々な命の営みが聞こえたり見えてきます。自然というのは人の心を裸にするので、己を偽って生きている人は都会では生きて行けてもこういう自然の中では恥ずかしくて行き場を失うでしょう。人間の小さな虚栄心や嘘など自然の中では通用しませんから。森が潜在意識のメタファーとして使われるのも、実際にひとりで深い森にいるとよく分かる気がします。
ニホンカモシカの真っ直ぐな眼差しを見られるかどうか。野生動物は、たとえ子供でも凛としています。自分らしくなどという倒錯した概念もあるはずもありません。彼らは自然と一体なのですから。自然から学ぶことは実に多いのですが、そう思っている間はまだ一体化していないということなのでしょう。まだまだ修行が足りませんか。
背の低いタラノメには、ニホンカモシカの食痕が見られます。彼らも山のバターともいわれる山菜の栄養価を知っているのでしょう。もちろん背の高いものは彼らには採れません。そこでなるべく背の高いものをいただいてくるわけですが、これには現地で作る手作りの道具が必須です。そして、タラノキは比較的固く折れやすいので、倒す方向が決め手です。これを間違えると折れてしまい、翌年はもう採れません。
最近ハリギリが人気です。幻の山菜などといわれてもいますが、あるところにはたくさんあるものです。タラノキと同様に、なるべく下のわき芽は残し、枝が増えるようにします。こういう木を森の中でみつけると、先人が大切にしてきたのだろうなとおもわずにはいられません。5年10年とかかることですから。そういう木をみつけると、一本で充分な量が採れます。
山で出会ったおじいさんが、刺のないタラノメも食べられるよねと言っていましたが、それは栽培種で山には自生していません。山で刺のないタラノメといったらヤマウルシなどで、毒です。山菜ブームですが、正しい知識を持たないと非常に危険です。似た毒草は完璧に見分けられるように覚えておかないといけません。ニリンソウとヤマトリカブト、セリとドクゼリなど。間違えたら命取りになります。
コシアブラは最近人気ですが、妻女山山系にはありません。これといった特徴のない木で、しかも他の木が芽吹くころに出るので初心者にはなかなか見つけられないと思います。いずれも天ぷらで塩でいただくのがベストですが、炊き込みご飯も絶品です。人の不幸の上にあぐらをかいて平気で幸せを謳歌するようなご時世ですが、山の幸とはよく言ったもので、節度さえ守れば最も手軽に自然の恵みを堪能できる小さな幸せです。
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★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。山藤は樹木で。他にはキノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。カタクリは、花 春に載っています。