モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

湿度90%の妻女山陣場平。粘菌のクダホコリ、ウスヒラタケが発生。ミズイロオナガシジミにミヤマフキバッタ。山椒の実で佃煮。能登群発地震と松代群発地震(妻女山里山通信)

2022-06-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨の晴れ間になるかと思ったら、朝からどんよりと湿度も高め。それでも10時過ぎに日が差してきたので妻女山の陣場平へ。前日の豪雨で林道は酷い泥濘状態。タイヤを何度も滑らせながらやっと登りました。まるでアマゾンで行うキャメルトロフィーの様でした。とにかく車が滑ります。コツはアクセルワークをこまめに変えてふかし過ぎない。ハンドルはあらぬ方向へ行きそうになったら逆ハンを素早く、カウンターステアをする。止まったら動けなくなる可能性があるので止まらないなど。若い頃に雪道で四輪ドリフトをやったりした経験が生きています。美大生のときに、ラリーをやってる同級生のナビをやったこともありました。

 長坂峠の丸太に粘菌のクダホコリを発見。遠目で見るとタラコです。

 可愛くて美しい。今夜は夕立はなさそうなので、明日の夜明けを待って胞子を飛ばし始めるのではないでしょうか。梅雨の雨上がりには粘菌が発生します。山の中の倒木や切り株だけでなく、庭や公園でも見られます。探しましょう。

 ヤマグワの枯れ木にウスヒラタケが出ていました。普通は初秋に出るキノコですが、条件が同じなら今頃でも出ます。食菌で美味しいキノコすが、今回はそのままにしました。上にはアラゲキクラゲも。夏には、トマトと採ってきて乾燥したアラゲキクラゲの中華風卵炒めを何度も作ります。馬鹿旨です。

 陣場平に行くと、気温は23度ぐらいなのですが、とにかく蒸し暑い。ホトトギスやサンコウチョウの鳴き声がします。二頭のゼフィルスが激しく舞っています。やっと撮れた一枚。ミズイロオナガシジミですね。あわてて撮影したのでぶれています。さすがのオリンパスの手ブレ補正でも無理でした。

 アカネ(茜)にミスジシリアゲのメス。尾部に赤いタカラダニがいます。節足動物門鋏角亜門クモ綱ダニ目ケダニ亜目タカラダニ科アナタカラダニ属に分類されるダニの一種で、どこにでもいます。セミとかカマキリなどに寄生し、宝物を抱えているように見えることからの命名。食性は雑食で、花の花粉や小型の昆虫を摂食するそうですが、生態はよく分かっていません。

 ヒシバッタかなと思って撮影したのですが、帰って拡大するとミヤマフキバッタでした。翅は退化しています。そのため地域差が激しいのです。これはまだ幼虫で全長が10ミリぐらいです。メスは砂の中に腹を差し込んで産卵します。

 セアカツノカメムシ(背赤角亀虫)。カメムシは臭いので嫌われ者ですね。でもパクチーの匂いと似ていて、これがパクチーを使ったタイ料理や中華料理を食べられるかの分岐点。私は好きですが。カメムシではなくパクチーを使った料理です。長男が1歳の頃、育てていたパクチーを座って葉っぱを全部食べてしまったのには、驚愕しました。

 テングタケの仲間のキノコと考えられます。ハイカグラテングタケ(灰神楽天狗茸)でしょうか。美味しいキノコらしいのですが、似ている猛毒のキノコもあるので食べる気にはなりません。夏には、他にウスヒラタケ、ヤマドリタケモドキ、βグルカンが豊富な幻のハナビラタケ、オムレツにすると美味しいアカヤマドリなどが出ます。

 オオミドリシジミを探したのですが、二頭いましたが湿度が高く樹冠にいて下りてきません。諦めて山椒の実を摘みました。前回、二組の女性たちが摘みに来ていました。まだ採り時です。

 妻女山里山デザイン・プロジェクトが最初に除伐作業をした場所。左に山椒の森があります。除伐以前は、ダンコウバイとカラコギカエデの鳥も昆虫もいない真っ暗な森でした。

 山を下ります。雷雨で林道は酷い泥濘状態。タイヤが横滑りするので轍(わだち)にタイヤを添わせてゆっくりと下ります。タイヤが滑った跡が生々しい。コントロールを誤ると崖下に転落です。

 ガマズミの実。秋には真っ赤になります。ルビー色の美しい酒ができます。抗酸化作用が強く老化防止にも効きます。もの凄く酸っぱいので、ハチミツを入れて炭酸で割ります。

 ウルシ(漆)。個人差がありますが、触れると酷くかぶれて水ぶくれになり2週間ぐらい治りません。触れたらすぐに洗って薬を塗ることです。最も危険なのはツタウルシです。

 これもウルシの仲間のヌルデ(白膠木)。ウルシほどではありませんが、かぶれる人もいます。別名は、フシノキ。生薬名は、塩麩子(えんふし)/塩麩葉(えんふよう)/五倍子(ごばいし)。小葉と小葉の間に翼(つばさ)があるのが特徴。 ヌルデにできる虫こぶ(ゴール)のことを五倍子といいます。これは、ヌルデの若芽にアブラムシ科のヌルデノミミフシが寄生し、枝の翼に卵を産み付け、それが耳状にふくれたものです。
 五倍子は、タンニンの含有量が多く、染め物では空五倍子色(うつふしいろ)とよばれる伝統色として用いられます。古くはお歯黒などにも使われました。
「足柄の 吾を可鶏山の かづの木の 吾をかつさねも かづさかずとも」(詠人知らず) 万葉集(巻14)東歌 *カヅノキ(可頭乃木)=ヌルデ

 能登が群発地震で大変なことになっていますが、原因が地下の大きな水たまりという説が。当地で起きた松代群発地震でも同じ説がいわれました。以前、皆神山の記事で紹介した文章を再掲します。
【松代群発地震】
 皆神山は、1965年(昭和40 年)8月3日から約5年半もの間続いた、世界的にも稀な長期間にわたる松代群発地震の震源地のほぼ中心でした。有感地震は6万2826回、あまりに長期に渡ったためノイローゼになる住民も出たほどです。幸い死者は出ませんでしたが、怪我人や家屋の倒壊はありました。近所の古民家の屋根瓦が全て落ちたり、土塀が倒れたりしました。震度5の時に太い梁が抜けて白い部分が見え、あと5センチずれたら家が壊れるという状況がありました。
 私も目撃しましたが、地震時の宏観現象として皆神山や妻女山などの発光現象があり、大きな話題になりました。このような目撃例は安政の大地震など古くから目撃例があり、岩盤の崩壊による放電が原因のようで特に珍しいことではないそうです。また、この群発地震で山は1m高くなったということです。
 皆神山付近には低重力域があり、地下には、縦800m、横1500m、高さ200mのマグマ溜りが起源と考えられる空洞があって、地下に巨大な貯水池があると推定されています。皆神山溶岩は150m程度の厚さがあることが確認されていて、その下に湖水堆積物が見つかっています。また、山頂には川の跡の河床礫が見られます。
 つまり溶岩がまだ地上に出る前は、ここは池や川があったということです。地蔵峠から流れ出る蛭川と藤沢川が、現在山のある一帯で合流していたのでしょう。山頂に泉があるのも豊富な地下水脈があるからと理解できます。皆神山を形成した溶岩は極めて粘性が強く噴火したり流れ出したりせずに、そのままプリン状に固まったと考えられています。
 ノイローゼ患者が出るほど長期に渡った松代群発地震は、最終的に大量の深層地下水湧出という事態になり、火山性群発地震という当初の想定が、水噴火群発地震であったとの考えに変わりました。しかし、最新の学説では地殻の継続的な変形による応力速度の上昇によって説明できることが分かったということです。


 山椒の実。葉も入っていますが一緒に佃煮にします。蒸し暑い梅雨時や猛暑の夏の食欲が落ちるときに最適です。素麺のつゆに入れたり、冷奴にのせたり、おにぎりに入れたりしていただきます。山椒の実を醤油に漬けた山椒醤油は、これからの鮎の塩焼きとかウグイの塩焼きに合います。

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