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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

この20年間で翅を持つ昆虫が60%近く減少した。草刈りの天敵ムモンホソアシナガバチ。クジャクチョウ・ルリシジミ・オオミドリシジミ(妻女山里山通信)

2022-06-19 | アウトドア・ネイチャーフォト
 信州に帰郷して10数年、妻女山の動物や昆虫を撮影し定点観測してきました。千曲市の松枯れ病のネオニコチノイド系劇薬の空中散布では、千曲市側の昆虫が絶滅しました。中止してから数年経っても完全には回復していません。それだけでなく、長野市側の昆虫も明らかに減少傾向にあります。そんな現在、非常に気になる研究結果が発表されました。
 イギリスの自然保護トラストBuglife の科学者たちが、英国全土の車のナンバープレートに「ぶつかった虫の数」を計算しました。その結果、この20年間で翅を持つ昆虫が60%近く減少したと発表しました。昆虫の急速な減少の原因は、生息地の破壊、農薬の使用、気候変動などが一因と考えられるということです。
 昆虫は、鳥、コウモリ、爬虫類、魚などの動物の餌となります。また、作物や野花の受粉や養分循環などの重要な役割も果たしています。甲虫、ハチ、トンボ類は、害虫駆除に役立つ捕食者として機能します。
 結果、生態系全体、そして食料生産システムが困窮し、鳥類が激減し人類の食糧危機を招くとしています。農薬、特にネオニコチノイド系農薬やグリホサート剤、放射能、人工電磁波(5G)は昆虫だけでなく人類をも滅ぼすかも知れません。
Insect decline could massively increase food bills, warn scientists

 妻女山の貝母(ばいも)の群生地のある陣場平。上杉謙信がここに本陣を構えた頃には、まだ貝母はなかったでしょう。どんな植物があったのか気になります。ヒカゲイノコズチは鉈鎌(なたがま)で刈っています。今年は例年よりも夏の花が咲くのが遅いのです。夏の昆虫の出現も遅い。おそらく梅雨寒が長く続いたためと思われます。

 貝母はほとんど倒れました。間にある大きな緑の葉がヒカゲイノコズチ。放っておくと50〜100センチにもなります。貝母の球根の成長を阻害するので刈ります。オオブタクサ、セイタカアワダチソウ、ハルジオンなどの有害帰化植物はすべて抜きます。それでも絶滅はしません。里山保全は本当に大変です。

 ムモンホソアシナガバチ。草の低いところに巣を作るため、除草作業で一番刺されることの多いハチです。私はひと夏に四回刺されたことがあります。ポイズンリムーバーで、すぐに毒を抜いたのでたいして腫れませんでしたが、痛いです。

 トンボエダシャク(蜻蛉枝尺蛾)シャクガ科エダシャク亜科。成虫は栗やハルジオンなどで吸蜜。幼虫の食餌植物は、ニシキギ科のツルウメモドキ。

 昼は堂平大塚古墳のログハウスを借りて。立ち枯れの落葉松に多孔菌科のツガサルノコシカケ(栂猿腰掛)。強固に付いているので、ノミと金づちがないと採取はできません。

 キヅタ(木蔦)ウコギ科キヅタ属の常緑つる性木本。フユヅタともいいます。常緑性で、秋に紅葉して枯れるのはナツヅタです。妻女山山系には両方あります。アイビーはセイヨウキヅタ。

 通路に小さな花が。撮影して拡大してみるとハクサンフウロの様な花。ゲンノショウコにしては花が小さすぎるし葉に切れ込みがある。ヒメフウロ(姫風露)の様です。

 昼を食べていたら、割と大きな蝶が二種類。ひとつはヒョウモンチョウの仲間。止まってくれないので撮影できず。もうひとつが、ログハウスのコンクリートに止まりました。タテハチョウ科のクジャクチョウ(孔雀蝶)でした。学名は、Inachis ioですが、亜種名はI. i. geishaです。

 ルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。翅の表面は水色から明るい青紫色。瑠璃色ということでルリシジミ。春先から晩秋まで、山地から田畑、人家周辺でも見かけます。幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科植物の蕾や花を食べます。

 川中島の戦いで、上杉軍の陣用水だったと伝わる蟹沢(がんざわ)の谷。左に水量豊富な湧き水があります。谷にはサワガニが生息します。子供の頃、獲ってきて祖母に唐揚げにしてもらって食べました。

(左)陣場平下のご天上の太いクヌギ。毎年のことですが、樹液を出すために今の時期ノコギリで傷をつけます。昔の様に薪を取ったりしないので、自然に出るだけの樹液だけでは多くの昆虫が餓死してしまうのです。傷は半年もすると塞がります。(右)山を下ろうとすると顔見知りの女性が二人。少し前に撮った花の名前が分からなくて。帰化植物でしょうかと。写真を見せてもらいましたが、残念花にピントが合っていません。花びら何枚でした?と聞くと4枚。アブラナ科かなと目星をつけて帰って調べると、キバナハタザオ(黄花旗竿)でした。長野県ではレッドリストに入っていない様ですが、妻女山では初めて見ました。貴重です。

 翌日は朝から晴れました。シモツケも咲き始めました。例年なら6月上旬から咲きます。顔見知りの女性二人が山椒の実を採っていました。前回作った佃煮が終わったのでまた採りにきたとか。山蕗の佃煮も美味ですが、山椒の実の佃煮は別格です。市販では味わうことができない滋味です。友人手作りの醤油と奄美大島のキビ糖だけで炊きます。

 シマサシガメ。カメムシの仲間で、蛾や蝶の体液を吸います。ゼフィルスの天敵です。

 イチヤクソウ(一薬草)。別名は 鹿蹄草(ろくていそう)といい生薬。 薬効は急性腎炎、膀胱炎、妊娠時のむくみなど。妻女山山系では貴重な花です。

 草むらに鮮やかな青緑の蝶が。まさかと思いながら追うと林道に止まりました。なんとオオミドリシジミでした。オオミドリシジミ(大緑小灰蝶:Favonius orientalis)は、チョウ目シジミチョウ科ミドリシジミ亜科に属するチョウ。オスの翅は、青緑に輝き非常に美しい蝶です。メスの翅は灰褐色。幼虫の食樹はブナ科のコナラ・クヌギ・ナラガシワ・カシワ・ミズナラなど。例年ならば6月下旬に見られる蝶なんですが、他のゼフィルスが梅雨寒で出現が遅れているというのになんということでしょう。再びよく見ると、これはハヤシミドリシジミですね。橙色の班が一部見られないので。ハヤシミドリシジミも生息するのは知っていましたが、撮影は初めてかも。

 クララ。マメ亜科の多年草。妻女山山系には、明るい場所でよく見られます。天然記念物のオオルリシジミの食草なんですが、妻女山でオオルリシジミを見たことはありません。「草原の青い星」といわれる様に、開けた草原で見られます。

 ヒカゲイノコズチの虫こぶ、イノコズチクキマルズイフシ。イノコズチウロコタマバエの寄生によって形成されます。これを切るとタマバエの幼虫がたくさんいます。

 朽ちた倒木に極小の粘菌が。あまりに小さくて見逃すところでした。中央右下の網状のものは、既に胞子を飛ばした後です。これで直系が2ミリあるかないか。コウツボホコリでしょうか。画像検索すると、以前にアップした私の画像も出てきましたが、高さも2ミリぐらい。そうかも知れません。

 最高気温は32度。しかし、山上は26度でした。それでも汗だらけになったので温泉へ。麦秋の風景。隣ではコンバインで刈り取り作業が行われていました。品種はおそらくユメセイキ。うどんにすると絶品です。『麦秋』といえば、小津安二郎監督による1951年・松竹大船撮影所製作の映画です。嫁に行かない独身娘の結婚話と、それにまつわる大家族の思いを綴った人情ドラマ。 出演者:原節子・笠智衆・‎淡島千景・三宅邦子。小津安二郎の作品はほとんど観ています。個人的には『東京物語』と『秋刀魚の味』が好きです。実は無声映画の『突貫小僧』が一番好きなんですけど。小津ファンでもなかなか観た人はいないかも知れませんが、色々な意味で最高の映画です。『生れてはみたけれど』も最高です。お腹を壊すのでなにもやらないでくださいと背中に紙を貼られた子供で、妻とひっくり返って笑った思い出。
■EARLY SUMMER (Bakushū), 1951


■『秋刀魚の味』予告編 / 小津安二郎監督作品 偉大なる映像作家・小津安二郎の遺作


■A Straightforward Boy / 突貫小僧 (1929) (EN)


 小津安二郎は一度ブログで記事にしたいと考えています。スタンリー・キューブリック、イングマル・ベルイマン、ウッディ・アレン、タルコフスキー、クラウス・キンスキー、グラウベル・ローシャ、鈴木清順、小栗康平とかも。
70年代は、ニューシネマ。そして私はシネマフリークになった」村上春樹さんのジャズ喫茶、ピーター・キャットを中心とした70年代のクロニクルまたはスラップスティック

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