宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

いっぱい食べないと立派なクエーサーに成長できない?

2012年06月24日 | 宇宙 space
クエーサーは数十光年以上のかなたでも明るく輝いて見える天体です。
宇宙の中で最も明るい天体です。

その正体は銀河の中心にある大質量ブラックホールが活発化したものと考えられています。
活発化の要因の1つとして銀河同士の衝突があるのですが、ごく平均的な大多数のクエーサーには衝突などの痕跡が無いんですよねー なので、長期にわたる物質の「つまみ食い」で成長したみたいです (^^;

数十億光年以上のかなたでも輝いて見えるクエーサーを観測することは、宇宙初期に形成されたブラックホールや銀河について情報を得るのに役立ちます。
クエーサーの中でも目立って明るいものは、他の銀河との接触で変形した銀河に見られるんですねー
これは銀河同士の接近や衝突によって、大量のガスやチリが銀河の中心にあるブラックホールに燃料として送り込まれるからです。

じゃー 平均的な明るさのクエーサーはどうかというと
ガスの塊や伴銀河の「つまみ食い」が活動源になっているようです。

このことはブラックホール成長の全盛期だった、80億年から120億年に存在した銀河を調査してわかったんですねー

NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”のデーターから、活発なブラックホールを持つ30個の銀河を選びます。







調査対象となった遠方宇宙の銀河
中心部のクエーサーは
大量のガスやちりなどに隠れています




そして、その銀河の形状をハッブル宇宙望遠鏡の近赤外線データで調べました。
すると、銀河衝突の明らかな痕跡がある銀河は1つだけでした。それ以外ではほぼ見当たりませんでした。

なので大多数の平凡なブラックホールは、ガスの塊や小さな伴銀河などを長期にわたって「つまみ食い」してクエーサーに成長するんですねー
いっぽう際立って明るいクエーサーになるには、短期間に大量のガスを「バカ食い」する必要があったりします (^^;

天の川銀河の中心にも大質量ブラックホールがあり、その周り(数光年以内)にはクエーサーを生み出すのに十分な量のガスが存在しています。

今はたまたまそうなっていないだけで、何かのはずみで小さなガス雲がブラックホールに吸い込まれるかも…
ひょっとすると近い将来、天の川銀河の中心が明るく輝いているかもしれません (^^

クレーターの永久影に氷の証拠を発見!

2012年06月23日 | 宇宙 space
月の南極にあるシャックルトンクレーター

NASAの探査機“ルナー・リコナサンス・オービター”により、クレーター内部の22%が氷で覆われていることが分かりました。

月は自転軸の傾きが小さいため南極付近には、内部に永遠に光が当たらないクレーターがあります。








月の南極にある“シャックルトンクレーター”には
太陽光がずっと届かない永久影が存在します



探検家の“アーネスト・シャックルトン”にちなんで名付けられた
 “シャックルトンクレーター”もその1つなんですねー 直径が20km以上、深さが3km以上もあります。

NASAや大学機関の研究チームが“ルナー・リコナサンス・オービター”のレーザー高度計を使ってこのクレーターを調べました。






“ルナー・リコナサンス・オービター”が
レーザ高度計でとらえたシャックルトンクレーターの地形図
青色が最も低い場所、
赤と白が最も高い場所を示しています



すると、他のクレーターよりも明るく、少量の氷が存在することが分かったんですねー
底部の氷が光を反射していたようです。

この成果は月のクレーター形成と、まだ調べられていない領域の研究にも役立つようです。

研究ではクレーターの内部をレーザーで照らして反射率や、地形をこれまでにない精度で細かく測定しています。
出来上がった地図には氷の存在を示す証拠の他に、
形成後30億年以上の間、ほぼ原型をとどめている内部クレーターの姿も明らかになっていました。

クレーターの底には、さらに小さなクレーターがあり、
これらはシャックルトンクレーターが出来た衝突で作られたものと考えられています。

研究チームではクレーターの壁面が底部と比べて、さらに明るいこともつきとめています。
底部ではまったく日が当たらないのですが、壁面上部では日が当たることがあるんですよねー
日が当たると氷は溶けてしまうので、不思議な結果となりました。

この謎に対しては“月震説”が挙げられています。

隕石の衝突や、地球の潮汐力によって月に振動が起こるんですよねー
これにより古く色の濃い表面が壁面から崩れ落ち、下にあった新しくて明るい土壌が顔を出すという説です。

これで明るさの謎は解決。 かも知れません… (^^;

“ルナー・リコナサンス・オービター”は2009年6月に打ち上げられ、現在は科学観測を行っています。
将来の有人月探査に備えたミッションは終えそうですよ。

初めて恒星間航行に入る人工物は? “ボイジャー1号”

2012年06月22日 | 宇宙 space
35年前に打ち上げられたNASAの探査機“ボイジャー1号”

現在、太陽圏の果てを航行しているのですが、ここ1ヶ月で宇宙線の測定量が急増していることがわかりました。

178億kmの距離から16時間36分かけて届いくデータからは、1ヶ月に9%というペースで宇宙線が増えているんですねー 2009年1月~2012年1月の間では25%の増加でした。

太陽圏と恒星間空間の境界付近では、太陽風の荷電粒子と、超新星爆発で生成された宇宙線とがせめぎ合っています。








太陽風と宇宙線とがせめぎ合っている領域
(Stagnation region)


宇宙線の計測量が増加したということは、それだけ太陽圏の外に近づいているという証なんですねー

じゃー どこが境界なのかというと
境界の目安として、宇宙線以外に2つの重要な測定項目があります。

その1つは、太陽からの荷電粒子です。
現在はまだゆっくりとした減り方なんですが、境界をまたぐと急に減少するそうです。

もう1つは、探査機周囲の磁場の向き。
太陽から水平の向きなら太陽圏内なんですが、恒星間空間に入ると垂直の向きに変わるんですねー ただ、磁場の向きに関するデータは現在解析中とのことです。

ボイジャー打ち上げ当時は恒星間航行ができるのか誰もわかりませんでした。
それが今では人類が作った一番遠くにある物になっています。

恒星間空間に出るのがいつなのか? もう少しすれば分かるはずです (^^

銀河より速く成長するブラックホール

2012年06月21日 | 宇宙 space
銀河の中心で恒星が集まる“バルジ部”と、そのさらに中心にある超大質量ブラックホールは、共に成長すると考えられてきました。



銀河の外観図
銀河円盤の中心にある膨らみが“バルジ”
全体を球状に包むのが“ハロー”と呼ばれる部分
画像はM104“ソンブレロ銀河”


でも、ブラックホールの成長だけが異様に速い銀河が見つかったんですねー
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”の観測で、銀河の外からは影響を受けていないことがわかりました。

天の川銀河など多くの銀河の中心にはブラックホールがあるのですが、その質量は“バルジ部”に含まれる天体の層質量の約0.2%程度というのが一般的です。

でも銀河“NGC 4342(おとめ座)”と“NGC 4291(りゅう座)”の中心にあるブラックホールは違ったんですねー
典型的な質量のブラックホールの10倍から35倍も質量があります。





“チャンドラ”が観測したNGC 4342(左)とNGC 4291(右)
X線画像と赤外線画像を合成している


2つの銀河は約7500万光年と、約8500万光年の距離にあり、銀河としては近い部類に入ります。
これらの銀河の中心にあるブラックホールが、銀河自体と比較して重いことは以前から知られていました。

重い理由には「かつて接近してきた別の銀河の重力で、一部の恒星が引き剥がされた」が考えられるのですが、
引き剥がし現象が起これば恒星だけでなく、
銀河を囲む“ダークマター(暗黒物質)”のハローも引き剥がされるはずなんですよねー

そこでハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームが、“チャンドラ”を用いて銀河のハローの量を探りました。
銀河周囲の高温ガスが発するX線から、銀河内の重力の働きを推測して“ダークマター・ハロー”についての情報を得ます。

その結果、高温ガスが“NGC 4342”と“NGC 4291”の周りに広く分布していて、非常に多くの“ダークマター・ハロー”が存在することが分かりました。
なので、別の銀河による引き剥がしは無かったんですねー

このことから、銀河自体より速い速度で成長するブラックホールの存在が確認できたのですが、
どうしてブラックホールが、銀河全体より早く成長できるのか? っという疑問が残ります。

研究チームはブラックホールが成長する初期の段階に、大量の燃料補給があったと考えています。

銀河中心をゆっくり回っていた大量のガスを燃料に、ブラックホールは成長すればするほど成長の速度も速くなり、引き寄せて飲み込めるガスの量も大きくなります。

そうなると強いジェットが放出され、星の材料となるガスを吹き飛ばしてしまうんですねー
そして新しい星は誕生しにくくなることに…

要はブラックホールの成長が、銀河の成長を遅らせることになっていたんですね。

けっこう自由に行われていた? 地球のような小型岩石惑星の形成

2012年06月20日 | 宇宙 space
これまで地球のような小型岩石惑星は、
鉄やシリコンなどの“金属”が豊富な恒星の周りで作られると考えられていました。

今回、コペンハーゲン大学の研究から、
金属の量に関わらず多くの恒星で作られる可能性が高いことが分かったんですねー

ヘリウムや水素より重い“重金属”は、天文学では“金属”と呼びます。
惑星は若い恒星の周りにあるガスとチリの円盤から作られるのですが、円盤に含まれる金属の量は中心にある恒星の金属量を反映します。





恒星周囲のガスと塵の円盤の中から
惑星が生まれる


これまで有力だったのは「金属が豊富な円盤から、より多くの惑星が作られる」という説なんですねー
これは金属が豊富な恒星の周りで、短い好転周期を持つ巨大ガス惑星がいくつも発見されてきたからでもあります。

こうした巨大ガス惑星と同じく、
「地球のような小型岩石惑星も特定の環境で作られるのか?」
っというのが今回の研究なんですねー

コペンハーゲン大学の研究チームは、それを調べるためNASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”や地上の望遠鏡を用いました。
海王星より小さい惑星226個をもつ、155個以上の恒星の元素組成を調べたんですねー

その結果、小型岩石惑星は金属量に関わらず、様々な恒星の周りで作られていることがわかりました。
中には金属量が太陽の4分の1しかない恒星もあったようです。

なので巨大ガス惑星とは異なり、
小型岩石惑星の数と主星(恒星)の金属量には大きな相関関係はありません。
地球の4倍以下のサイズの惑星は、様々な金属量をもつ恒星の周りで作られてきたようです。

惑星形成は難しいものと思われてましたが、けっこう自由で多彩に行われているようです。
これも数千個もの惑星候補の観測が可能な“ケプラー”のおかげですねー