宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

日食グラスの再利用法  “金星の太陽面通過

2012年06月01日 | 宇宙 space
今世紀最後となる“金星の太陽面通過”が6月6日に迫っています。

太陽と地球の間を金星が通るときに起るのですが、金星の公転面は地球の公転面に対して少し傾いているんですねー

なので、地球と一直線に並ぶ機会は非常に少なく、だいたい100年に2回、8年の間隔をおいて起こります。

前回は8年前の2004年なので、今回を逃してしまうと次は105年後の2117年になります。

“金星の太陽面通過”は、かつて天文学者が太陽系のサイズを測るのに使われた歴史的にも重要な意味を持つイベントなんですねー

18世紀の天文学者は、金星が太陽を横切るのにかかる時間が観測場所によって異なることから、三角測量の応用で太陽までの距離を計算していました。

1769年にはジェームズ・クック(キャプテン・クック)がタヒチ島で観測を行い、1874年には世界各地から日本に観測隊がやってきています。

また、1761年の金星の太陽面通過では暗い外縁に沿って明るい輪があることが確認され(オレオール現象)、金星に大気があることが分かりました。
背景からくる太陽光が金星の大気で屈折して見えたんですね。(2004年NASAの太陽観測衛星“TRACE”)

その後、数々の探査機の観測によって分かった事はというと
金星は硫酸の雲に覆われていて、二酸化炭素からなる高圧の大気を持っていることです。

でも現代の天文学者にとって“金星の太陽面通過”は、違う意味を持つイベントになっています。
それは太陽ではなく別の恒星を公転する惑星… そう、系外惑星の観測法を発展させる良いモデルになるんですねー

系外惑星探しの主流となっている“トランジット法”が、恒星の光が手前を通過する惑星にさえぎられ、わずかに暗くなる現象を観測して惑星の存在と大きさを検出するからです。

また、惑星の大気を通過してやってくる光には水や炭素などの大気組成の情報も含まれるため、系外惑星の生命環境を探る手段にもなっています。

“金星の太陽面通過”は日食と違い見ていても動く様子は分からないのですが、時間をおいて確かめると小さな黒い点が少しずつ移動しているのが分かるはずです。

日食で使った観察グラスが手元にあれば試してみてください。
日本では6月6日の朝7時10分頃から13時47分まで、全過程を見ることができますよー