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銀河進化のモデルを見直す必要がある!? ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で見つけた初期宇宙にある棒渦巻銀河

2023年02月21日 | 銀河・銀河団
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、宇宙年齢が現在の2~4割だった時代に棒渦巻銀河が6個見つかりました。

棒渦巻銀河では、棒構造によって銀河中心部にガスが送り込まれることで、他の領域よりも速く星の形成が進みます。
このことは、棒構造が初期の時代に星の形成を加速するという、新たな経路が銀河進化モデルの中に見出されたことになるんですねー

初期宇宙での棒渦巻銀河の存在率を正しく導くように、銀河進化のモデルを見直す必要があるのかもしれません。

これまでに見つかった中で最も遠い棒渦巻銀河

アメリカ・テキサス大学オースティン校のYuchen Guoさんたちの研究チームは、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が行った初期観測プログラムの一つ“宇宙進化初期リリース科学サーベイ(CEERS)”で得られた画像から、中心部に棒構造を持つ“棒渦巻銀河”を6個見つけました。
 棒渦巻銀河は渦巻銀河と全く同じ特徴を持つが、銀河中心のバルジを貫くような配置の棒状構造をディスク(中心核と腕を含む銀河円盤)内に持ち、渦巻腕がこの棒構造の両端から伸びている点が通常の渦巻き銀河と異なる。
棒渦巻銀河が見つかったのは、宇宙年齢が現在の20~40%だった時代でした。

今回見つかった棒渦巻銀河の一つ“EGS-23205”が位置しているのは、うしかい座の方向約110億光年の彼方(赤方偏移z=2.136)。
 膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまう。この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになる。110億光年より遠方にあるとされる銀河は、赤方偏移の度合いを用いて算出されている。
その姿は、ハッブル宇宙望遠鏡の画像ではチリに覆われた円盤の形がぼんやりと見える程度でした。

でも、昨年夏に撮影されたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の画像では、明らかに棒構造を持つ美しい棒渦巻銀河としてとらえられていたんですねー
棒渦巻銀河“EGS-2305”。(左)ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線画像、(右)ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による中間赤外線画像。(Credit: NASA/Guo, Jogee, Finkelstein and CEERS collaboration/University of Texas at Austin)
棒渦巻銀河“EGS-2305”。(左)ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線画像、(右)ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による中間赤外線画像。(Credit: NASA/Guo, Jogee, Finkelstein and CEERS collaboration/University of Texas at Austin)
ハッブル宇宙望遠鏡ではほとんど見えなかった棒構造が、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の画像では際立っていたわけです。
このことは、銀河の基本構造を見る上でジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が驚異的な威力を持つことを示していました。

なぜ、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は遠くの銀河の構造をハッブル宇宙望遠鏡よりもくっきりと撮影できるのでしょうか?

この理由は、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡がハッブル宇宙望遠鏡よりも主鏡が大きく集光力・分解能が高いこと。
それに、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡よりも長波長の赤外線で観測するので、チリを見通すことができるためです。

研究チームは、同じく約110億年彼方(赤方偏移z=2.312)にある棒渦巻銀河“EGS-24268”も同定。
“EGS-23205”と“EGS-24268”は、これまでに見つかった棒渦巻銀河の中で最も遠いものになりました。
そして、残りの4個の棒渦巻銀河も80億光年以上の彼方に位置していました。

今回の研究で目にしたのは、こうしたデータを過去に誰も使ったことも定量的に分析したことも無い、まったく新しい領域でした。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた6個の棒渦巻銀河。各左上のラベルは銀河の名称とその銀河が存在する時代(Gry=10億年)で、約84億~110億年前の範囲にあたる。(Credit: NASA/Guo, Jogee, Finkelstein and CEERS collaboration/University of Texas at Austin)
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた6個の棒渦巻銀河。各左上のラベルは銀河の名称とその銀河が存在する時代(Gry=10億年)で、約84億~110億年前の範囲にあたる。(Credit: NASA/Guo, Jogee, Finkelstein and CEERS collaboration/University of Texas at Austin)
棒渦巻銀河では、棒構造によって銀河中心部にガスが送り込まれることで、他の領域より10~100倍も速く星の形成が進みます。
さらに、中心部に供給されたガスの一部は、銀河中心にある超大質量ブラックホールの成長にも使われます。

今回、初期の宇宙に棒渦巻銀河が見つかったことで、棒構造が初期の時代に星形成を加速するという、新たな経路が銀河進化モデルの中に見出されたことになります。

こうした初期の宇宙に、すでに棒渦巻銀河が存在するという事実は、まさに現行の銀河の理論モデルに見直しを迫るもの。
そう、初期宇宙での棒渦巻銀河の存在率を正しく導くように銀河の物理を修正する必要があるんですねー
研究チームでは、今後の論文で様々なモデルの検証を行っていくそうです。


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