土星の主要衛星の中では最も小さい“ミマス”は、密度が低く、大部分は氷と岩石で構成されていると考えられています。
約23時間の周期で土星を公転しているのですが、その周回中にリズミカルな揺れが検出されているんですねー
地下に海があるという仮説は、このリズミカルな揺れという現象からきているのですが、“ミマス”のコアが球体でないという点も、有力な原因として考えられています。
“ミマス”は氷で覆われた外層は球体なのですが、岩石のコアは、ラグビーボールのような楕円体なのかもしれません。
どのような理由であれ、土星探査機“カッシーニ”の画像を丹念に調べて発見した揺れは予想外のものでした。
地球の衛星の月を含め多くの衛星は、公転中にわずかに揺れているので、その事自体は珍しくありません。
でも、その幅は直径400キロ程度の衛星にしてはかなり大きく、1回の公転で3キロ程度と予想していたのが、実際にはその2倍もあったんですねー
どうすればミマスの揺れをうまく説明することができるのでしょうか?
そして、ミマスの地下に海は存在するのでしょうか?
それは、ミマスの直径が約400キロと小さく、他の衛星との位置関係から潮汐力もあまり受けないので、内部で熱は生じていないと考えられていたためです。
そのうえ、ミマスの表面に火山や谷のような構造は見られず、表面を覆うクレーターには埋められた形跡も無いんですねー
なので、ミマスの内部は氷と岩石がほぼ均一に混ざり合っていて、明確な構造を持たないと考えられていました。
ところが、NASAの土星探査機“カッシーニ”のミッションが終わりに近づいた頃に状況が変わります。
ミマスに接近した“カッシーニ”が自転周期を厳密に測定すると、わずかながら振動していることが分かりました。
この現象は“秤動(ひょうどう)”と呼ばれていて、地球の月をはじめ多くの天体で一般的に起こる現象でした。
でも、ミマスの場合は公転軌道の値だけでは秤動を説明できないことが分かっています。
このことにより、ミマスの大まかな構造は判明。
でも、これだけでは秤動を完全には説明できませんでした。
どうすればミマスの秤動をうまく説明することができるのでしょうか?
それには、地殻と核の間に液体の水の層があると仮定すると、最も簡単に説明できそうです。
ただ、この場合だと地殻の厚さは24キロから31キロあり、その下には深さ40キロ未満の海が存在することになります。
それに、海と呼べるほど大量の水が凍らずに液体のままで存在するには熱源が必要になってきます。
潮汐加熱によって氷衛星の内部に広大な海が存在する可能性は、ミマスと同じ土星の衛星エンケラドスをはじめ、木星の衛星エウロパや海王星の衛星トリトンなどで指摘されています。
これらの衛星は外殻から間欠泉“プルーム”が噴出するなど活動が盛んで、衛星の表面は地質学的に短いタイムスケールで更新されていると考えられています。
でもミマスでは、この地質活動の証拠が見当たらないんですねー
なので、内部に液体の水の層は存在せず、核が球形ではなくラグビーボール型に大きく変形していることで、対象型ではない核の構造が秤動に影響を及ぼしている、とする説も有力視されていました。
研究の対象としたのは、ミマスで最も目立つ“ハーシェル・クレーター”。
このクレーターは直径が約140キロと、ミマスの直径の3分の1ほどもある大きなクレータです。
でも、より興味深いのはその構造でした。
クレーターの深さは約10キロで、高さ約6キロの中央丘が存在しています。
このような明確なクレーター構造は、地殻が固くなければ形成されないんですねー
仮に、内部に海があって地殻が薄いとすれば、クレーターの形成時に地殻を破って海水が表面に現れるので、このような構造は形成されないはずです。
そこで研究チームが繰り返し行ったのは、予想されるミマスの地殻の厚さを最も薄い予測値である25キロから、すべて凍結している場合の予測値である70キロまで様々な値に設定して、“ハーシェル・クレーター”形成時の衝突のシミュレーションでした。
地殻の厚さを内部に海が存在するモデルにおける値である30キロ未満に設定したシミュレーションでは、予想通り地殻は衝突によって破れてしまう結果になりました。
地殻の厚さが55キロ以上の場合だと実際の状況と結果が最も一致。
でも、現在のクレーターの形状がよく再現されたのは、内部で十分な熱が生じている場合のみでした。
以上の結果から導かれたのは、“ハーシェル・クレーター”形成時のミマスの地殻の厚さは55キロ以上あったこと。
さらに、地殻は現在に至るまでの間に、約30キロまで薄くなっている可能性があるそうです。
つまり、ミマスには地質活動があり、徐々に内部が融けることで形成された若い海が存在する可能性が示されたわけです。
このシナリオの場合、ミマスの地殻は現在進行形で徐々に薄くなっているけど、地質活動が表面に現れるほど薄くはなっていないという現状と一致しています。
それでも熱源やその保持には、まだ多くの謎が残っています。
液体の水が豊富に存在する場合は、内部が完全に凍結している場合と比較して、熱の保持に関するパラメータが大きく変更されるので、この謎は新たなモデルを構築することで解明できる可能性はあります。
ミマスの軌道要素は特殊であり、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスのように、内部に海を持つと考えられるほかの氷衛星のモデルをそのまま適用することはできません。
そう、ミマスの場合は新たなモデルを一から構築しなければいけないんですねー
この点からも、今回の研究結果の検証にはしばらく時間がかかりそうだといえますね。
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約23時間の周期で土星を公転しているのですが、その周回中にリズミカルな揺れが検出されているんですねー
地下に海があるという仮説は、このリズミカルな揺れという現象からきているのですが、“ミマス”のコアが球体でないという点も、有力な原因として考えられています。
“ミマス”は氷で覆われた外層は球体なのですが、岩石のコアは、ラグビーボールのような楕円体なのかもしれません。
どのような理由であれ、土星探査機“カッシーニ”の画像を丹念に調べて発見した揺れは予想外のものでした。
地球の衛星の月を含め多くの衛星は、公転中にわずかに揺れているので、その事自体は珍しくありません。
でも、その幅は直径400キロ程度の衛星にしてはかなり大きく、1回の公転で3キロ程度と予想していたのが、実際にはその2倍もあったんですねー
どうすればミマスの揺れをうまく説明することができるのでしょうか?
そして、ミマスの地下に海は存在するのでしょうか?
“カッシーニ”が観測したミマスの振動
土星の衛星ミマスは、かつては地質活動のない天体だと考えられていました。それは、ミマスの直径が約400キロと小さく、他の衛星との位置関係から潮汐力もあまり受けないので、内部で熱は生じていないと考えられていたためです。
そのうえ、ミマスの表面に火山や谷のような構造は見られず、表面を覆うクレーターには埋められた形跡も無いんですねー
なので、ミマスの内部は氷と岩石がほぼ均一に混ざり合っていて、明確な構造を持たないと考えられていました。
ところが、NASAの土星探査機“カッシーニ”のミッションが終わりに近づいた頃に状況が変わります。
ミマスに接近した“カッシーニ”が自転周期を厳密に測定すると、わずかながら振動していることが分かりました。
この現象は“秤動(ひょうどう)”と呼ばれていて、地球の月をはじめ多くの天体で一般的に起こる現象でした。
秤動とは、ある天体からその周囲を公転する衛星を見たときに、その衛星が見かけ上行うように見える、または実際に行うゆっくりとした周期的な振動運動。単に秤動という場合には、地球を周回する月の秤動を指すことが多い。
秤動に大きな影響を与えるのは公転軌道の特性です。でも、ミマスの場合は公転軌道の値だけでは秤動を説明できないことが分かっています。
図1.“ハーシェル・クレーター”が目を引く土星の衛星ミマス。その内部構造はよく分かっておらず、地殻の下に海があるという説と、非対称な形状を持つ核をがあるという説が提唱されている。(Credit: Denton & Rhoden) |
なぜミマスは振動しているのか
秤動の測定からミマスの内部は均一ではなく、分厚い地殻と大きな核に分かれた明確な構造を持っていることも判明しました。このことにより、ミマスの大まかな構造は判明。
でも、これだけでは秤動を完全には説明できませんでした。
どうすればミマスの秤動をうまく説明することができるのでしょうか?
それには、地殻と核の間に液体の水の層があると仮定すると、最も簡単に説明できそうです。
ただ、この場合だと地殻の厚さは24キロから31キロあり、その下には深さ40キロ未満の海が存在することになります。
それに、海と呼べるほど大量の水が凍らずに液体のままで存在するには熱源が必要になってきます。
潮汐加熱によって氷衛星の内部に広大な海が存在する可能性は、ミマスと同じ土星の衛星エンケラドスをはじめ、木星の衛星エウロパや海王星の衛星トリトンなどで指摘されています。
これらの衛星は外殻から間欠泉“プルーム”が噴出するなど活動が盛んで、衛星の表面は地質学的に短いタイムスケールで更新されていると考えられています。
でもミマスでは、この地質活動の証拠が見当たらないんですねー
なので、内部に液体の水の層は存在せず、核が球形ではなくラグビーボール型に大きく変形していることで、対象型ではない核の構造が秤動に影響を及ぼしている、とする説も有力視されていました。
衛星の軌道が円形でないとき、惑星から遠いときはほぼ球体の衛星も、接近するにしたがって惑星の重力で引っ張られ極端に言えば卵のような形になる。そして惑星から遠ざかるとまた球体に戻っていく。これを繰り返すことで発生した摩擦熱により衛星内部は熱せられる。このような強い重力により、天体そのものが変形させられて熱を持つ現象を潮汐加熱という。
木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドス、海王星の衛星トリトンといった天体では、潮汐作用による惑星内部の過熱“潮汐加熱”を熱源とした低温火山活動によって、地下から水などの物質が噴出していると見られている。
木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドス、海王星の衛星トリトンといった天体では、潮汐作用による惑星内部の過熱“潮汐加熱”を熱源とした低温火山活動によって、地下から水などの物質が噴出していると見られている。
クレーターを対象とした研究へ
この謎を別のアプローチから検証したのは、パデュー大学のC.A.Dentonさんとサウスウエスト研究所のA.R.Rhodenさんの研究チームでした。研究の対象としたのは、ミマスで最も目立つ“ハーシェル・クレーター”。
このクレーターは直径が約140キロと、ミマスの直径の3分の1ほどもある大きなクレータです。
でも、より興味深いのはその構造でした。
クレーターの深さは約10キロで、高さ約6キロの中央丘が存在しています。
このような明確なクレーター構造は、地殻が固くなければ形成されないんですねー
仮に、内部に海があって地殻が薄いとすれば、クレーターの形成時に地殻を破って海水が表面に現れるので、このような構造は形成されないはずです。
図2.衝突クレーターのシミュレーションの結果の一例。地殻の厚さが30キロの場合、内部の海が表面に現れてしまい、現在のクレーターの形状と一致しない。よく一致するのは、地殻の厚さが55キロ以上の場合になる。(Credit: Denton & Rhoden) |
地殻の厚さを内部に海が存在するモデルにおける値である30キロ未満に設定したシミュレーションでは、予想通り地殻は衝突によって破れてしまう結果になりました。
地殻の厚さが55キロ以上の場合だと実際の状況と結果が最も一致。
でも、現在のクレーターの形状がよく再現されたのは、内部で十分な熱が生じている場合のみでした。
以上の結果から導かれたのは、“ハーシェル・クレーター”形成時のミマスの地殻の厚さは55キロ以上あったこと。
さらに、地殻は現在に至るまでの間に、約30キロまで薄くなっている可能性があるそうです。
つまり、ミマスには地質活動があり、徐々に内部が融けることで形成された若い海が存在する可能性が示されたわけです。
このシナリオの場合、ミマスの地殻は現在進行形で徐々に薄くなっているけど、地質活動が表面に現れるほど薄くはなっていないという現状と一致しています。
それでも熱源やその保持には、まだ多くの謎が残っています。
液体の水が豊富に存在する場合は、内部が完全に凍結している場合と比較して、熱の保持に関するパラメータが大きく変更されるので、この謎は新たなモデルを構築することで解明できる可能性はあります。
ミマスの軌道要素は特殊であり、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスのように、内部に海を持つと考えられるほかの氷衛星のモデルをそのまま適用することはできません。
そう、ミマスの場合は新たなモデルを一から構築しなければいけないんですねー
この点からも、今回の研究結果の検証にはしばらく時間がかかりそうだといえますね。
こちらの記事もどうぞ
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