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太陽から地球までの距離の約1パーセントしか離れていない!? 非常に接近した“超低温矮星”同士の連星を発見

2023年02月23日 | 宇宙 space
小さくて温度も低い恒星“超低温矮星”同士からなる連星が新たに発見されました。
惑星形成モデルによると、超低温矮星では原始惑星系円盤の質量およびサイズが小さいので、木星型惑星ではなく、水星から地球程度のサイズの惑星を比較的たくさん持ちうることが示唆されています。
この連星系でも“トラピスト1”のように地球型惑星が見つかるのでしょうか。
 今回の研究成果は、ノースウエスタン大学の博士研究員Chin-Chum Hsuさんを筆頭とする研究チームにより、アメリカ天文学会の第241回会合で発表されました。
“LP 413-53AB”星系(上段)、“TRAPPIST-1”星系(中断)、木星系(下段)を比較した図。“LP 413-53AB”を構成する2つの超低温矮星の間隔は、木星から衛星カリストまでの距離よりも短いとされる。(Credit: Adam Burgasser/University of California San Diego)
“LP 413-53AB”星系(上段)、“TRAPPIST-1”星系(中断)、木星系(下段)を比較した図。“LP 413-53AB”を構成する2つの超低温矮星の間隔は、木星から衛星カリストまでの距離よりも短いとされる。(Credit: Adam Burgasser/University of California San Diego)
“超低温矮星(Ultracool Dwarf Star)”は有効温度が3000ケルビン(摂氏2730度)を下回るほど赤い赤色矮星で、サイズや質量が恒星としての下限に近く、主に赤外線の波長で輝く天体です。

これまでに7つの太陽系外惑星が見つかっている恒星“トラピスト1(TRAPPIST-1)”も超低温矮星の一つになります。
 みずがめ座の方向約40光年の彼方に位置する“トラピスト1”は、太陽の9%ほどの質量で、表面温度が約2500Kとかなり低温の星。
今回報告されたのは、“おうし座”の方向に位置する連星“LP 413-53AB”。
この連星は2つの超低温矮星が互いに周回していると見られています。

ただ、2つの星は0.01天文単位程度しか離れておらず、公転周期はわずか20.5時間という短さ。
 1天文単位(au)は太陽~地球間の平均距離、約1億5000万キロに相当。
多くの連星の公転周期は年単位なので、測定は数か月ごとに行われ、ある程度の期間を経た後にデータが分析されます。

ところが、“LP 413-53AB”では観測データが数分単位で変化していたので、スペクトル線がシフトする様子をリアルタイムで観察することができました。
 スペクトルは光の波長ごとの強度分布。スペクトルに現れる吸収線や輝線を合わせた呼称がスペクトル線。
“LP 413-53AB”を構成する2つの超低温矮星の現在のサイズ(赤)と、形成から100万年頃の推定サイズ(点線)を示した図。(Credit: dam Burgasser/University of California San Diego)
“LP 413-53AB”を構成する2つの超低温矮星の現在のサイズ(赤)と、形成から100万年頃の推定サイズ(点線)を示した図。(Credit: dam Burgasser/University of California San Diego)
“LP 413-53AB”は形成されてから数十億年が経っていて、誕生から間もない頃の星のサイズは今よりも大きかったと見られています。

驚くべきことは、太陽から地球までの距離の約1パーセントしか離れていない“LP 413-53AB”の間隔。
形成されてから100万年程度しか経っていなかった頃には、星と星が重なり合っていたのかもしれません。

研究チームが推測しているのは、“LP 413-53AB”を構成する2つの星が進化する過程で互いに接近したか、現在は失われている3番目の星が星系から放出された後に接近した可能性です。

また、“LP 413-53AB”ではハビタブルゾーンが連星の軌道とたまたま重なっているので、ハビタブルゾーンに惑星が存在することは無いとされています。

太陽系の近傍にある恒星の15%を占めるとも推定されている超低温矮星。
もし、“LP 413-53AB”のように近接した連星が超低温矮星では一般的な場合、生命居住可能な惑星はほとんど見つからないかもしれません。

超低温矮星の連星に関するこれらのシナリオを調査するためには、さらに多くの観測データが必要になります。
研究チームは同様の連星をより多く特定したいと考えています。


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