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太陽系から最も近い地球サイズの惑星プロキシマケンタウリbの正確な質量が分かってきた! 気になるのは大気の存在。

2020年06月17日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
太陽系から最も近い距離にある系外惑星プロキシマケンタウリb。
この系外惑星は、これまで質量が地球の約1.3倍と見積もられていました。
でも、現在稼働している分光器の中で最高精度を誇る“ESPRESSO”による観測で、地球質量の約1.17倍という正確な値が得られたようです。


恒星のスペクトル変化から惑星の存在を検出する

恒星の中でも太陽系に近い約4.2光年の距離にあるプロキシマケンタウリ。
このプロキシマケンタウリを公転している地球サイズのプロキシマケンタウリbは、2016年に発見された系外惑星です。

プロキシマケンタウリbは11.2日周期で公転し、その重力に引っ張られて中央のプロキシマケンタウリも11.2日の周期でぶれているんですねー

主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。
この動く速度(視線速度)に応じて変化する恒星のスペクトルを読み取ることで検出されたのが、惑星プロキシマケンタウリbの存在でした。


次世代の分光器“ESPRESSO”による計測

今回の研究では、スペイン・カナリア天体物理研究所のチームがプロキシマケンタウリbの質量を調べています。

研究チームは、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTに搭載されている分光器“ESPRESSO”を用いて、プロキシマケンタウリの視線速度を高精度で計測。
すると、プロキシマケンタウリbの質量が、地球の1.17倍前後(下限値)であるという値が得られます。

これまで見積もられていた質量は地球の約1.3倍以上… 今回の調査により正確な値が求められたわけです。

“ESPRESSO”による精密な計測は、他にも驚くべき結果をもたらしています。
それは、データ中に不確定ながら、第2の惑星の存在を示す可能性のある信号が発見されたことでした。

もしも信号が惑星起源のものであれば、地球質量の3分の1以下の惑星が存在していることになります。
このサイズの惑星は、視線速度の計測によって発見された中でもっとも小さなものになるようです。

2016年にプロキシマケンタウリbを発見したのは、同じVLTに搭載されていた分光器“HATPS”を用いた観測でした。

翌年に稼働した次世代の分光器“ESPRESSO”では、プロキシマケンタウリの視線速度を秒速30センチ以内の誤差という精度で計測。
これは“HARPS”の約3倍という精度でした。

“ESPRESSO”のおかげで、プロキシマケンタウリの質量が地球質量の10分の1以下の精度で測定でき、地球質量の3分の1以下の惑星が存在する可能性も示されたわけです。
ジュネーブ大学天文学部のクリーンルームにある分光計“ESPRESSO”。(Credit: Unviersity of Geneva)
ジュネーブ大学天文学部のクリーンルームにある分光計“ESPRESSO”。(Credit: Unviersity of Geneva)


太陽よりも暗い恒星を回る惑星

プロキシマケンタウリbから中心星であるプロキシマケンタウリまでの距離は、地球から太陽までの約20分の1しかありません。

ただ、プロキシマケンタウリは太陽よりもはるかに暗い“赤色矮星”というタイプの恒星。
なので、プロキシマケンタウリbが中心星から受け取るエネルギーの量は、地球が受け取るのと同じくらいだと考えられています。

このため、惑星の表面温度も地球と似ている可能性があり、惑星の表面温度は水が液体の状態で存在できる程度になっていて、そこには生命に適した環境があるかもしれません。

でも、プロキシマケンタウリは活動が活発なので、プロキシマケンタウリbに届くX線は地球が太陽から受ける量の約400倍にもなるんですねー

このような致死的な光線から惑星を守る大気は存在しているのでしょうか?
大気が存在するなら、酸素といった生命の進化を促す元素が含まれているのでしょうか?
さらに、これらの好条件はどれだけ続いたのでしょうか?

もし、プロキシマケンタウリbに地球程度の濃い大気が存在していれば、地表の放射線の強度は地球型生命に影響を及ぼすほどにはならないそうです。
さらに、地球のような磁場があれば、その影響はさらに小さくなることに…

今後、研究チームでは、これらの疑問や可能性についての調査に取り組んでいくことになります。

そのために必要なのが、プロキシマケンタウリbからの光を検出するために製作する分光器“RISTRETTO”。
さらに、ヨーロッパ南天天文台の次世代39メートル超大型望遠鏡“ELT”に搭載予定の分光器“HIRES”の助けを借りれば、きっと研究が進むはず。どんな新しい発見があるのかワクワクしますね。
プロキシマケンタウリb表面のイメージ図。明るく描かれているのが中心星のプロキシマケンタウリで、その右の2つの点はプロキシマケンタウリと共に3連星を成すリギルケンタウルスとトリマン。(Credit: Unviersity of Geneva)
プロキシマケンタウリb表面のイメージ図。明るく描かれているのが中心星のプロキシマケンタウリで、その右の2つの点はプロキシマケンタウリと共に3連星を成すリギルケンタウルスとトリマン。(Credit: Unviersity of Geneva)


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