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超大質量ブラックホールの起源が見えてきた! ビッグバン直後でなくても大質量星が形成されるメカニズムを発見

2020年06月19日 | ブラックホール
ほとんどの銀河の中心にあるとされる超大質量ブラックホールは、どのように形成されたのでしょうか?。
これまで考えられていたのは、ガス雲が集まって超大質量ブラックホールの種となる大質量星を作れるのは、宇宙誕生直後に限られるということ。
でも、今回、ビッグバンから数億年以上経って重元素がばら撒かれた後でも、大質量星が形成されうることが分かってきました。
国立天文台のスーパーコンピューター“アテルイII”を用いたシミュレーションにより示されたそうです。


超大質量ブラックホールの起源

私たちが属する天の川銀河をはじめとして、ほとんどの銀河の中心には、太陽の数百倍から数十億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。

最大のものだと太陽の100億倍にも達する超大質量ブラックホールの質量ですが、どのように形成されたのかは未だによく分かっていないんですねー

起源の一つとして考えられているのは、莫大な量のガスが一気に収縮して太陽質量の10万倍以上の超大質量星になり、それがブラックホールになって、さらに周囲の物質を取り込んで成長するというもの。

これまでの理論では、ガス雲から超大質量星が直接形成されうるのは、宇宙空間にほぼ水素とヘリウムしか存在しないことが条件でした。
時期としはビッグバン直後の数億年に限られています。

でも、この理論で解明できるのは、宇宙初期に形成された一部の超大質量ブラックホールの起源のみ…
現在観測されている、より多くの超大質量ブラックホールの数を説明できていませんでした。


重元素を含んだガス雲でも大質量星は形成される

ビッグバンから数億年以上経つと、恒星内部の核融合で生成された酸素や炭素などの重元素が超新星爆発によってまき散らされ、ガス雲の中に混ざっていきます。

これまで予測されていたのは、重元素を多く含むガスは冷え易くなるので、ひとまとまりになる前に局所的に収縮し、質量はバラバラのままになるというもの。
膨大な量のガスが一気に収縮することがないので、大質量星は生まれないことになります。

ただ、この予測は計算機の性能が不足していたため、詳細には検証されていないんですねー
なので、ガスが分裂した後の進化はよく分かっていませんでした。

そこで、東北大学の研究チームは、少量の重元素を含んだガス雲から超大質量ブラックホールの種になる大質量星が形成される可能性を確かめることにします。
予測していたのは、分裂したガス同士がその後の進化で合体し、大質量星を形成するかもしれないというものでした。

研究では、重元素を含むガス雲の長期間にわたる進化を、高解像度の3次元でシミュレーション。
シミュレーションには、国立天文台のスーパーコンビューター“アテルイII”が用いられています。

すると、これまでの予測に反して、重元素が存在する環境下でも、大質量星が形成されうることが明らかになります。

これは、重元素の存在によってガス雲は激しく分裂するものの、依然としてガス雲の中心へと激しいガスの流れが存在するためでした。
ブラックホールの種になる大質量星の形成(イメージ図)。(Credit: 国立天文台)
ブラックホールの種になる大質量星の形成(イメージ図)。(Credit: 国立天文台)
分裂により小さい星は多数形成されるものの、それらの多くは中心へ流れ込むガスに引きずられることで、中心付近に形成された重い星と衝突、合体。
このようにして重い星が効率よく成長し、太陽質量の1万倍という大質量星の形成が可能になります。

重元素を含むガス雲から、これほど大きいブラックホールの種が形成されることを示せたのは、今回の研究が初めてでした。
この大質量星が、さらに成長を続けることで、超大質量ブラックホールに進化すると考えられます。
ブラックホール形成時の宇宙における物質分布(背景)とブラックホールを生み出すガス雲の密度分布(手前)のシミュレーション結果。手前の図において、中心付近にある黒い点が表しているのが、ブラックホールに進化すると考えられる大質量星。白い点は、ガス雲の激しい分裂により形成された小さな星で、それらの多くが中心の大質量星と合体し、星が効率よく成長する。(Credit: Sunmyon Chon)
ブラックホール形成時の宇宙における物質分布(背景)とブラックホールを生み出すガス雲の密度分布(手前)のシミュレーション結果。手前の図において、中心付近にある黒い点が表しているのが、ブラックホールに進化すると考えられる大質量星。白い点は、ガス雲の激しい分裂により形成された小さな星で、それらの多くが中心の大質量星と合体し、星が効率よく成長する。(Credit: Sunmyon Chon)
今回のシミュレーションに基づく大質量星形成モデルは、初期宇宙にしか適用できなかったこれまでのモデルの限界を突破するものでした。
天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホール“いて座A*”を含む、あらゆる超大質量ブラックホールの起源を説明する理論に一歩近づいたと言えそうですね。
重元素を含むガス雲で形成される星の質量分布。最初の星形成から約1万年の進化を計算したもの。炭素や酸素などの重元素の存在によりガス雲が激しく分裂し、太陽質量(値=1)付近にピークを持つ分布が存在する。一方、太陽の1万倍の質量を持つ大質量星も同時に形成されることが分かる。それらの星は、さらに質量が成長し、最終的に重いブラックホールに進化すると考えられる。(Credit: Sunmyon Chon)
重元素を含むガス雲で形成される星の質量分布。最初の星形成から約1万年の進化を計算したもの。炭素や酸素などの重元素の存在によりガス雲が激しく分裂し、太陽質量(値=1)付近にピークを持つ分布が存在する。一方、太陽の1万倍の質量を持つ大質量星も同時に形成されることが分かる。それらの星は、さらに質量が成長し、最終的に重いブラックホールに進化すると考えられる。(Credit: Sunmyon Chon)

ブラックホールの種になる大質量星形成のシミュレーション


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