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恒星が誕生してから時が経っているはずなのに… 十分なガスが残っているのはなぜ? 惑星系形成を促進しているガスの移動と集積

2023年02月01日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
今回の研究では、“うみへび座TW星”を取り巻く原始惑星系円盤のガスの量を、アルマ望遠鏡の観測データを用いた新たな手法で測定しています。
天体の年齢が比較的高いことから、かなり少なくなっていると考えられていたガスの量でしたが、予想外に多く存在していることが分かったんですねー
この結果は、惑星系の形成過程を解明するための重要な一歩になるのかもしれません。

若い恒星を取り巻くガスやチリからなる円盤

惑星は、若い恒星を取り巻く原始惑星系円盤と呼ばれる円盤の中で形成されます。
 原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がる水素を主成分とするガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。
特に、木星のような巨大ガス惑星は、円盤の中のガスを材料として作られます。

惑星が作られた後、残ったガスは円盤から外へと流れ出して、太陽系のようにガスが存在しない惑星系になります。

なので、惑星系の形成過程を理解するには、いろいろな原始惑星系円盤でのガスの量を測定することが必要になるんですねー
でも、これまでは様々な制約のために測定が進んでいませんでした。

円盤内のガスの移動が惑星系の形成を促進している

今回の研究で用いたのは、“うみへび座TW”を取り巻く原始惑星系円盤を観測したアルマ望遠鏡のアーカイブデータ。
このデータを用いて、感度がこれまでより10倍以上高い画像を作成しています。
 この研究を進めているのは、総合研究大学院大学の大学院生の吉田有宏(よしだ ともひろ)さんを中心とする研究チームです。
そして、その画像を解析してみると、円盤の中心近くにあるガスが出す電波から、これまでの感度でははっきりと分からなかった特徴をとらえることに成功しました。

その特徴は、惑星の大気のようなガスの密度が非常に高い場所から放射される電波と、よく似ていたことでした。
そう、円盤の中心近くにあるガスの密度は、惑星の大気と同じくらい高くなっていたわけです。
図1.“うみへび座TW星”を取り巻く原始惑星系円盤。アルマ望遠鏡による観測データを画像化したもの。中心の白色の部分が、今回の研究で明らかになった大量のガスが存在する場所に対応している。(Credit: T. Yoshida, T. Tsukagoshi et al. – ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
図1.“うみへび座TW星”を取り巻く原始惑星系円盤。アルマ望遠鏡による観測データを画像化したもの。中心の白色の部分が、今回の研究で明らかになった大量のガスが存在する場所に対応している。(Credit: T. Yoshida, T. Tsukagoshi et al. – ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
解析を進めた結果、太陽系における木星軌道にあたる中心からおよそ5天文単位より内側の領域に、木星の質量の7倍にも相当する大量のガスが存在することが明らかになりました。
 1天文単位(au)は太陽~地球間の平均距離、約1億5000万キロに相当。
“うみへび座TW星”は、原始惑星系円盤を持つ他の若い星に比べて年齢が高く、これほど大量のガスが存在していることは予想されていませんでした。

また、この天体の過去の観測データと比較してみると、木星軌道より内側に存在するガスの量が急激に多くなっていることも明らかになりました。

ガスは、時間の経過とともに円盤の内側へとゆっくり移動していると考えられています。

ただ、その移動速度が急に変化すると、ある特定の場所にガスが溜まってしまうんですねー
このことは、惑星形成の材料になるガスが木星軌道付近に集積し、惑星系の形成を促進していることを示しています。
図2.“うみへび座TW星”周りのガスの分布のイメージ図。木星軌道付近より内側の場所では、その外側と比較して、ガスの量が格段に多くなっている。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
図2.“うみへび座TW星”周りのガスの分布のイメージ図。木星軌道付近より内側の場所では、その外側と比較して、ガスの量が格段に多くなっている。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
今回の研究では、初めてガスの分布を観測的に測定できました。
これによって明らかになったのは、年齢が高い原始惑星系円盤の中にも、惑星形成の材料であるガスが豊富に存在することでした。

今後、研究チームでは、同様の手法を他の原始惑星系円盤にも適用していくそうです。
さまざまな特徴、さまざまな年齢の円盤に存在するガスの量を調べて、ガスが失われる過程や惑星系が形成される過程が明らかになることが期待されますね。

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