宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

地球の大気は宇宙空間へ流出している? 流出量は磁気嵐のタイプによって異なっているようです。

2019年08月05日 | 地球の観測
知ってました? 磁気嵐が発生すると地球の極域から宇宙空間に大気が流出していること。
この流出現象では大気の流出量が多くなるタイミングがあるんですねー
それは、コロナ質量放出に由来するタイプの磁気嵐のとき。レーダー観測から明らかになったようです。


太陽風の影響で大気が宇宙空間に流出している

太陽が放出するプラズマは“太陽風”と呼ばれ、地球に到達するとオーロラを発生させる要因になっています。

また、地球に到達した太陽風の影響により、地球の極域の上空で大気中のイオン化した酸素原子などが宇宙空間へ流出することがあります。

これまでの研究から分かっているのは、特にオーロラ爆発が起こると、同時に大量のイオンが超高層大気中から上昇すること。

太陽から大量かつ高速のプラズマがやってくると、しばしば地球の磁場が乱れる“磁気嵐”が発生します。
この磁気嵐が起こるときには、オーロラ爆発が頻繁に発生するので、極域でのイオンの上昇流も頻繁に起こっていると考えられているんですねー

でも、その時間変化や上昇流量についての観測は十分でなく、磁気嵐との関係も不明のままでした。


極域のはるか上空で夜に起こっていること

今回、国立極地研究所のチームが解析したのは磁気嵐と上昇流の関係について。
研究には“EISCAT(欧州非干渉散乱)レーダー”の超高層大気観測データが用いられました。
  ノルウェーに設置されている“EISCAT(欧州非干渉散乱)レーダー”は、
  日本など6カ国が共同運用しいている。

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EISCATスバールバルレーダー
ノルウェーのトロムソ(北緯69度)と、スバールバル諸島ロングイヤービン(北緯78度)の2箇所の観測データから、過去20年間(1996年~2015年)に磁気嵐が起こっていたときの高度400~500キロでの観測データを取り出し、磁気嵐時の上昇流の特徴(大気イオンの上昇流量や上昇速度)を調査。

その際、磁気嵐を引き起こす要因を、高速の太陽風が先行する低速太陽風に追いつく現象(共回転相互作用領域:CIR)であった時と、太陽フレアに伴う突発的な太陽の爆発現象(コロナ質量放出:CME)であった時の2種類を区別して調べています。

その結果、トロムソでは発生初日に夜間のイオン上昇流量が激増し、コロナ質量放出起源の磁気嵐での流量は共回転相互作用領域起源の場合の4倍になることが分かります。

一方、スバールバルでは昼にイオン上昇流量が増加し、コロナ質量放出起源と共回転相互作用領域起源で流量の差はみられませんでした。
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ノルウェーのトロムソ(北緯69度、次期緯度66度)とスバールバル(北緯78度、次期緯度75度)で観測されたイオン上昇流量の日変化。
4つの時間帯を色分け(MLT:時期地方時。自転軸から約11度傾いている磁軸を使って定義した地方時)。
緯度の低いトロムソではコロナ質量放出発生時に夜側で、緯度の高いスバールバルではコロナ質量放出または共回転相互作用領域発生時に昼側で、イオンの上昇する流量が顕著に増えていることがわかる。
また、夜間のイオン速度増加が起こっているときには、超高層大気中の電子とイオンの温度が共に上昇することも分かります。

このことが示唆しているのは、極域のはるか上空で、エネルギーの低い電子の下降と、電場の増大の両方が夜間に起こっていること。

さらに、コロナ質量放出発生時にトロムソで見られたイオンの上昇流量の増大は、多量の下降粒子に伴って超高層大気中のイオンの密度が増えることに起因することも分かります。
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共回転相互作用領域とコロナ質量放出起源の磁気嵐の発生初日における極域イオン上昇流の特徴をまとめたイラスト。
赤点線と青点線は観測所の位置(一自転中の通り道)を示している。
このような地球大気の流出に関する基本的な性質や機構の理解は、火星や金星などの他の惑星大気が太陽風の変化に対してどのように反応するかをシミュレーションなどによって理解する研究にも貢献すると期待されています。

研究チームは今後、異なる高度での特徴を明らかにし、より低高度での調査から、重い分子イオンがいつどこで上昇しているのかを調べるそうです。


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