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月の内部はどうなっている? アポロのデータと最新データから分かってくること

2016年01月07日 | 月の探査
40年前のアポロ計画で得られたデータと、
月探査機“グレイル”による測定などから、月の内部構造が推定されたんですねー

これにより“マントルオーバーターン仮説”と呼ばれる、
月の形成史を指示する結果が得られたそうです。


アポロ計画のデータ

月の内部構造を知ることは、
月の誕生や進化を理解するカギの1つになると言われています。

約40年前に実施されたアポロ計画の観測では、
月にも月震と呼ばれる地震があることが分かっているんですねー

そしてアポロ計画のデータからは、月の内部構造の研究は進むのですが、
月の表面から約1200キロより深い部分(中心から540キロ以内の部分)については、
いまも不確かさが残ったままになっています。


内部構造を知る手がかり

月の内部構造を知る手がかりは、
月の回転や変形を詳しく調べることで得ることができます。

月の回転は、
すでにアポロ時代からレーザーで観測され続けています。

さらに月の変形に伴うわずかな重力変化は、
NASAの月探査機“グレイル”によって高精度に観測。

これらの測月観測から、
月の変形のし易さや、内部の密度分布についての情報が得られています。


月の内部構造モデル

でも、最新の測月データと月震データを組み合わせた、
月の内部構造の研究はされていませんでした。

今回、国立天文台の研究チームは、
月震データと最新の測月データとの双方を説明できる、
新しい月の内部構造モデルを構築。

このモデルでは、先行研究の結果と比べて、
マントルの底にあると考えられる軟らかい層がより厚く、
密度がより大きい結果になりました。
月の内部構造(概略図)

ただ、この新しいモデルの密度は、
“マントルオーバーターン仮説”と呼ばれる月の進化理論に、
一致していたんですねー

作られたばかりの月には大規模な融けたマグマの海があり、
それが冷えるにしたがって、マントルを作る岩石が沈んでいったと考えられています。

岩石中のチタンは融けた部分に残りやすいので、
マグマの海が固まる最終段階では、
チタンを多く含む層はマントル上部に作られていくことになります。

でも、チタンに富む層は下層に比べて重いので、深部に沈みはじめ、
最終的にはマントルの層構造が反転した可能性があるんですねー

このような反転現象“マントルオーバーターン”が起こったと考えれば、
マントルの密度が高いことを説明することができます。

今回の研究では、アポロのデータと最新データから、
月の進化の議論につながる内部構造モデルが導かれました。

軟らかい層の厚さについては、
さらにデータを積み重ねて、月中心付近にある核の大きさや、
月の起源・進化の議論を深めていく必要があるようですね。


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