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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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いまだ解決せず… 地球観測衛星“SMAP”のレーダー故障

2015年08月15日 | 地球の観測
“SMAP”はNASAのジェット推進研究所が運用する地球観測衛星で、
地球全体の土壌に含まれる水分と、
凍結している個所の融解具合を見ることを目的としています。

ただ、7月7日に発生したレーダー機器の不具合が未だ解決せず…

“SMAP”に搭載されている観測機器のひとつ、
合成開口レーダーに何らかの問題が発生し、動かせない状態になっているんですねー

復旧は少し先に

これまでの分析から分かったことは、
レーダーの大電力増幅器“HPA”の低電圧電源に問題があるらしいこと。

“HPA”はレーダーのパルスの出力を強くするための装置。

これまでに得られた衛星の状態を示す信号が示している状態から、
問題は、この低電圧電源内で起きていて、
原因としていくつかの候補が考えられています。

でも発表されたのは、
これまでに行われた復旧の試みが、すべて失敗していること…

ただ、その過程で貴重なデータが得られ、
問題の状況や原因を理解するのに役立っているんですねー

今後も引き続き、分析と地上での試験を続け、
早ければ8月下旬にも、再び復旧を試みるそうです。


“SMAP”ミッション

もうひとつの観測機器の放射計は問題なく動いていて、
現在もデータを集め続けています。

“SMAP”はNASAのジェット推進研究所が運用する地球観測衛星で、
地球全体の土壌に含まれる水分と、
凍結している箇所の融解具合を、見ることを目的にしています。

得られたデータは、
天気予報や気候変動の予測の改善、洪水や干ばつといった災害の予防、
農業の生産性の向上といったことに役立てられることになります。

衛星は直径6メートルの傘のようなアンテナを持つ、
大変ユニークな姿をしています。

このアンテナは合成開口レーダーと放射計の、2種類の装置の目と耳として機能。

合成開口レーダーとは、電磁波を地上に向けて照射し、
反射して衛星に返ってきた信号を分析することによって観測する装置で、
放射計は地表から出る電磁波の放射を計測する装置です。

土に含まれる水分を能動的、受動的に観測“Soil Moisture Active Passive”の、
頭文字から取られた“SMAP”です。

“SMAP”ミッションは、
もともとNASAで開発されていた“ESSPハイドロス”という衛星が、
基になっています。

っというのも“ESSPハイドロス”が2005年に、NASAの予算削減が原因で中止されたからで、
その遺産を活用したのが“SMAP”になります。

打ち上げ時の質量は944キロ。
高度685キロ×685キロ、軌道傾斜角98.1度の太陽同期軌道で運用され、
8日ごとに同じ地点の上空を通過するそうです。

設計寿命は3年が予定されているようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 地球観測衛星“SMAP”打ち上げに成功!

ヴェガロケット、地球観測衛星“センティネル2A”の打ち上げに成功

2015年07月30日 | 地球の観測
アリアンスペース社が、
地球観測衛星“センティネル2A”を搭載した、
ヴェガロケットの打ち上げに成功しました。

今回の成功でヴェガロケットは、
デビュー以来、5機連続での打ち上げ成功になったんですねー

ロケットは、2015年6月23日に南米ギアナ宇宙センターから離昇。
順調に飛行し、打ち上げから54分43秒後に衛星を分離、所定の軌道に投入されたそうです。

地球観測衛星“センティネル2A”

“センティネル2A”は、“コペルニクス”に基づいて開発された衛星で、
光学センサーを用いて地球を観測します。

欧州では、コペルニクス計画によって全地球の観測網を構築し、
継続的で自立した、信頼性の高いデータを取得して、
欧州の安全・安心を充実させようとしています。

一方で、地球環境保全や気候変動に関わる現象の理解など、
広範囲におけるミッションやサービスをカバーすることも、
目的にしているんですねー

製造はエアバス・ディフェンス&スペース社が担当。
センティネル2A

寸法は3.3×2.3×1.7メートルで、打ち上げ時の質量は1130キロ。
高度786キロの太陽同期軌道で運用されます。

ただ、機器などの設計寿命が7.25年なのに対して、燃料は12年分を搭載。

これは、設計寿命を過ぎた後も機器が生きていれば、
運用を延長するためだそうです。


ヴェガロケット

“センティネル1A”は2014年4月にソユーズロケットで打ち上げられました。

そして今回の“センティネル2A”を打ち上げたのが、
ヨーロッパ宇宙機関とイタリアのアヴィオ社が開発した、
固体ロケット“ヴェガ”です。

アリアンスペース社では、
大型ロケットのアリアン5、中型ロケットのソユーズ、
そして小型ロケットのヴェガとロケットを揃え、
多種多様な衛星の打ち上げに対応できるようにしています。

ただ、ヴェガは小型ロケットという分類なんですが、
高度700キロの太陽同期軌道に、
1500キロほどの打ち上げ能力持っています。

なので世界のロケットと比べると、
どちらかというと中型に分類される能力なんですねー

ヴェガロケットは2012年2月に1号機が打ち上げられて以来、
今回が5機目の打ち上げになり、すべて成功を収めています。

また11月頃には、重力波観測衛星“LISA”の技術実証機になる、
“LISAパスファインダー”の打ち上げも予定されています。


市場が認める信頼

ヴェガロケットは、2012年にアリアンの打ち上げ機ファミリーに加わり、
ここ数か月の地球観測衛星市場において、多くの受注を獲得しています。

2015年に入ってからは、
  アラブ首長国連邦の衛星“ファルコン・アイ”、
  ペルーの“ペルーサット1”、
  グーグル/スカイボックス・イメージング社の3つの衛星“スカイボックス”、
の打ち上げ契約を獲得。

アリアンスペース社は、ヴェガロケットの信頼性を市場が認めると確信し、
2014年10月に、10機のヴェガロケットを一括購入しています。

また、2014年末には、
ヴェガ・コンソリデーテッド(ヴェガC)という、
打ち上げ能力を強化したロケットの開発も決定しているそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 再使用型スペースプレーン験機“IXV” 飛行試験に成功!

地球磁気圏にプラズマが作るチューブ状構造を発検出

2015年07月25日 | 地球の観測
電波干渉計“MWA”による立体観測から、
地球の磁気圏にプラズマが作るチューブ状の構造が、
初めて検出されたんですねー
検出されたチューム状プラズマ構造(イメージ図)

このチューブ状の構造が検出されたのは、
西オーストラリアのマーチソン広視野電波干渉計“MWA”を用いた観測。

チューブ状のプラズマ構造は、高度約600キロの電離層上部から、
さらにその上のプラズマ圏に向かって伸びていました。

こうした構造の存在については、60年以上前から予測されていたのですが、
実際にとらえられたのは今回が初めて。

地球磁気圏中に、このような構造が起こす信号ひずみは、
衛星ナビゲーションシステムなどに影響を及ぼすので、
重要な観測成果になるんですねー

観測でとらえられたのは、
高密度プラズマと低密度プラズマとが交互に縞模様を作り、
地球の磁力線に沿ってオーロラのように「ゆらゆら」と流れているようすでした。
マーチソン広視野電波干渉計“MWA”

“MWA”は、砂漠の土地に設置された128個のタイル状アンテナで構成されています。

信号を東西に分けることによって、立体視が可能になっていて、
広い空域にわたるプラズマの動きを連続的に記録することで、
今回の発見が生まれたんですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 太陽活動とは関係なかった? 地球からのプラズマ大気流出

今度の気象衛星はカラーで解像度も2倍! “ひまわり8号”が運用を開始

2015年07月22日 | 地球の観測
これまで活躍していた“ひまわり7号”に代わり、
アジア・太平洋地域の天気や地球環境の観測を担うのが、
新型静止気象衛星“ひまわり8号”です。

本格的に運用を開始したのは7月7日の11時からで、
すでに気象庁のウェブサイトで“ひまわり8号”からの画像を、
見ることができます。

“ひまわり8号”は2014年10月7日に、
H-IIAロケットに搭載され、種子島宇宙センターから打ち上げられました。

その後、衛星は約10日間をかけて、観測拠点となる東経140度の軌道に移動。

観測機器や地上との連携などの試験を行い、観測開始に向けた準備を進めていました。

そして問題なく観測できることが確認されたので、
7月7日の11時をもって、“ひまわり7号”から運用をバトンタッチしたんですねー


世界最先端の可視赤外放射計

“ひまわり8号”は、
“ひまわり6号”(2005年に打ち上げ)と“ひまわり7号”(2006年に打ち上げ)の
後継機となる衛星で、性能が大幅に向上しています。

最大の特徴は、世界最先端の能力を持つ可視赤外放射計“AHI”の搭載です。

これは“ひまわり6号”や“ひまわり7号”に搭載されている、
可視赤外放射計と比べてひじょうに高性能で、
より詳しい雲の様子を観測することが可能になっています。

“AHI”はアメリカのエクセリス社で製造されたものを輸入し、
“ひまわり8号”に搭載されています。

エクセリス社は、
アメリカの次期静止気象衛星“GOES-R”シリーズに搭載予定の、
可視赤外放射計“ABI”の製造も行っていて、
“AHI”と“ABI”は、ほぼ同等の機能をもっているそうです。


3つの進化

“ひまわり8号”は、この“AHI”の搭載により、
6号と7号”から大きく3つの点で進化を遂げています。

まず、画像の解像度が約2倍になったこと。
6号と7号では、可視域の分解能が1キロ、赤外域で4キロでした。
でも8号では、可視域が0.5キロ、赤外域が2キロにまで向上しています。

そして観測できる種別(チャンネル)が約3倍に増えたこと。
6号と7号では可視域では1チャンネルで白黒画像しか撮影できず、
赤外域は4チャンネルでした。

それが8号では可視域が3チャンネルに増え、カラー画像が撮影できるようになり、
赤外域も13チャンネルまで増えています。

さらに、6号と7号では約30分かかっていた衛星から見える全範囲の観測は、
8号では10分に短縮。

地域を限定すれば、2.5分ごとの観測も可能になっています。

これらの進化によって、
雲の移動や発達の様子を、これまでよりも詳しく観測できるようになり、
また火山灰の分布も詳しく把握できるようになるそうです。

風や気温などの時間変化をコンピュータで計算して、
将来の大気の状態を予測する数値予報でも、
“ひまわり8号”で得られたデータは、大いに役立つことになります。
静止気象衛星“ひまわり8号”で観測した画像


運用は民間委託

“ひまわり8号”の製造は三菱電気が担当しています。

打ち上げ時の質量は約3500キロで、東経約140度の静止軌道で運用され、
設計寿命は観測機器が8年以上、衛星本体は15年以上と見込まれています。

運用は気象庁が担当するのですが、
衛星からのデータ受信といった実際の管制業務は、
民間に委託することになります。

新たに設立された気象衛星ひまわり運用事業株式会社が担当することで、
運用コストの削減をはかるそうです。

なお、今後“ひまわり7号”は、“ひまわり8号”のバックアップとして、
万が一8号が故障したりした場合に備えて待機します。

一方、これまで7号のバックアップに就いていた“ひまわり6号”は、
2015年中に運用を終える予定です。

また2016年度には、
“ひまわり8号”の同型機である“ひまわり9号”の打ち上げが、
予定されているんですねー

打ち上げ後には8号のバックアップとして7号と代わり待機し、
2022年からは立場が入れ替わり、9号がメインで8号がバックアップに入ります。


気象庁単独の資金で開発された初の衛星

8号と9号は、
気象庁単独の資金で開発される初の衛星になります。

“ひまわり”の1号と2号は科学技術試験衛星、
また3号から5号は科学技術衛星という扱いだったので、
科学技術庁が費用の全て、もしくはかなりの額を負担していました。

また6号と7号は、
航空保安システム機器を搭載した運輸多目的衛星だったので、
国土交通省航空局が約70%を負担。

運輸多目的衛星のように、他ミッションとの複合衛星にすることは、
8号と9号でも検討されたのですが、相手が見つからず…

一方で、6号と7号の寿命が近づいていたので、
最終的には、気象庁が全額負担して開発されることになったということです。

8号と9号の打ち上げは、2年ほど間隔が開くことになり、
その間のバックアップは7号が努めることになります。

ただ、7号は2006年に打ち上げられ、
設計寿命は10年なので、2016年のはじめには寿命を迎えるんですねー

なので、7号から9号へ無事バックアップ任務が引き継げるかが、
気象庁の今後の課題になるそうです。

こちらの記事もどうぞ ⇒ 気象庁の静止気象衛星“ひまわり8号”が完成しました。

太陽活動とは関係なかった? 地球からのプラズマ大気流出

2015年07月18日 | 地球の観測
極風(ポーラウィンド)と呼ばれる、地球の極域から電離大気が流出する過程があります。

この現象が、太陽活動の変化にはほとんど影響されていないことが、人工衛星の観測データから明らかになったんですねー

このことは、オーロラや磁気嵐といった現象や、惑星の大気流出についての理解を進める研究成果で、系外惑星の研究にも応用できるようです。
○○○
極風“ポーラウィンド”
極風イオン(図中a)は、エネルギーが極めて低く正確な計測が難しいので、
流出する高エネルギーの光電子(図中c)を計測してイオンの流出量を推定。
低エネルギーの光電子は約4000キロより高高度に存在する電位差で反射している。


極風“ポーラウィンド”

磁場が反対の半球に繋がっていない地球の極付近では、磁力線に沿って電離大気(プラズマ)が宇宙空間に流れ出す極風(ポーラウィンド)と呼ばれる過程が起こっています。

JAXAの磁気圏観測衛星“あけぼの”の観測データの解析からは、日照の有無が極風の密度などに影響を与えていることが分かり、様々な極風のモデルが提唱されてきました。
○○○
JAXAの磁気圏観測衛星“あけぼの”
でも、どれが正しいのかは、まだはっきりしていないんですねー

今回の研究では、地球を極軌道で周回している人工衛星“FAST”が取得したデータを使用。
この14年間のプラズマ観測データを使用して、太陽活動の変化が極風の流出量に、ほとんど影響を与えないことを明らかにしています。
○○○
人工衛星“FAST”


水素イオンの生成速度が影響

太陽活動が活発になると、プラズマ中の光電子の流出が増加するものの、極風イオンの流出量は変わらなかったんですねー

これまでは、プラズマ中の光電子が極風に影響するという可能性が長らく提唱されてきました。

でも、流出量を決定しているのは光電子ではなく、極風の主成分と考えられている水素イオンの生成速度だということが、今回の研究で示唆されることに…
光電子は、イオン流出の加速に大きく影響しているんですねー


惑星の大気進化解明へのヒント

地球周囲の磁気圏では、太陽風起源のプラズマと地球起源のプラズマが混じりあう中で、オーロラや時期嵐といった様々な現象が起こっています。

なので、極風を理解することは、この領域に、どのようにプラズマが供給され、どのような影響があるのかを、理解するうえでの一歩となります。

極風は固有磁場を持った惑星から、プラズマが流出する最も基礎的な過程であり、今回得られた知見は惑星からの大気流出や、それに伴う大気進化についての普遍的な理解にもつながります。

太陽系外惑星への応用や、惑星から水が失われる過程を理解するうえでのヒントになるかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 打ち上げから26年… 磁気観測衛星“あけぼの”運用を終了