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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

地球は宇宙に浮かぶ美しいビー玉。 最新のブルー・マーブルが配信開始

2015年11月02日 | 地球の観測
今年の2月に打ち上げられた地球・宇宙天気観測衛星“DSCOVR”が撮影した、
地球の表面すべてに太陽光が当たった状態の“満地球”の写真。

この写真を準リアルタイムで配信するサービスが始まったんですねー

このサービスを開始したのはNASAとアメリカ海洋気象庁(NOAA)。

閲覧はWebブラウザからでき、
静止画の他、1~数時間おきに撮影された画像をつないだ動画としても、
見ることが出来るようです。


ザ・ブルー・マーブル

こうした“満地球”の写真は、
1972年12月7日に“アポロ17”の宇宙飛行士によって初めて撮影され、
宇宙に浮かぶ青いビー玉のように見えることから、“ザ・ブルー・マーブル”と呼ばれています。
太陽に照らされた地球。
今年夏に地球・宇宙天気観測衛星“DSCOVR”に搭載されたカメラによる撮影。

完全なブルー・マーブルを撮影するには、
衛星の軌道や、地球と太陽との位置関係が重要になります。

今回“DSCOVR”によって、
約43年ぶりに1枚の画像による完全なブルー・マーブルを、
撮影することが出来るようになったということです。

“DSCOVR”が運用される軌道は、太陽・地球系のラグランジュ第1点。
そこは地球から約150万キロ離れ、太陽と地球との間の引力が均衡しているポイント。

ここでは太陽や地球との位置関係が常に同じになるので、
太陽から地球に向けて飛んでくる太陽風の観測や、
その太陽風の地球との相互作用の観測に適しています。

そして、地球の昼の面を常に観測し続けることもできるんですねー


始まりはトリアーナ計画

“DSCOVR”はもともと、
1990年代に開発が始まった、トリアーナ計画が源流になっています。

トリアーナは当時のアル・ゴア米副大統領の肝いりで始まった計画でした。
もちろん、太陽・地球を観測することが目的なのですが、
青く輝く地球の写真を、ほぼリアルタイムで世界中に配信するというミッションも、
含まれていたんですねー

このミッションはゴア副大統領が考えたもの。

宇宙に浮かぶビー玉のように輝く地球の写真を、
トリアーナ(DSCOVR)を使って世界中に配信することで、
環境問題や世界平和への意識が高まることを期待したそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 太陽の光に照らされる月の裏側と、青く輝く丸い地球

オーロラは宇宙の電磁波によって瞬いていた。JAXAと名古屋大が仕組みを解明

2015年10月22日 | 地球の観測
JAXAと名古屋大学などの研究グループが、
“コーラス”と呼ばれる宇宙の電磁波が、オーロラを引き起こす電子を変調させることで、
オーロラの瞬きを作り出していることを解明したそうです。


小型高機能科学衛星

2005年8月に、ドニエブルロケットの相乗り衛星として打ち上げられたのが、
小型高機能科学衛星“れいめい”です。

小型衛星に適した理学観測機器を搭載していて、
世界最高の時間分解能で電子を観測することができるんですねー

さらに世界で唯一、
オーロラの画像とオーロラを光らせる電子の同時観測も行うことができます。
オーロラを観測する“れいめい”(イメージ図)


脈動オーロラ

宇宙から降ってくる電子が、
高度100キロ付近の超高層大気と衝突することによって起こる現象が、
“れいめい”の観測対象になるオーロラです。

オーロラには様々な形態のものがあり、
そのうち“脈動オーロラ”と呼ばれるものは、
ぼんやりとした形状で、数秒間ごとに点滅するという不思議な性質があります(主脈動)。

また“脈動オーロラ”が光っている際、
1秒間に数回の速さで瞬く(明るさが変化する)ことも知られています(内部変調)。

ただ、主脈動の起源については理解が進んでいるのですが、
どのような仕組みで“脈動オーロラ”の明滅や瞬きが起こるのかは、
分かっていませんでした。


宇宙のさえずり

今回の研究では、
“れいめい”のデータ解析とコンピュータシミュレーションによって、
脈動するオーロラの主脈動と内部変調のメカニズムを明らかにしています。

“脈動オーロラ”を光らせている電子に、
これまで知られていない性質があることを発見したことになります。

さらに、“コーラス”と呼ばれる宇宙空間で自然に発生している電磁波と、
電子との相互作用についてコンピュータシミュレーションを行い、
“れいめい”の観測結果を再現することに成功。

その結果から、“コーラス”が電子を変調させることで、
“脈動オーロラ”の明滅や瞬きを作り出しているという、
統一的な仕組みが明らかになったんですねー

“コーラス”は、音声に変換すると小鳥の声のように聞こえることから、
“宇宙のさえずり”とも呼ばれています。

今回の研究は、この“宇宙のさえずり”が、
オーロラの瞬きを引き起こしていることを解明したものになり、
明滅も同じ仕組みで起こっていることを示唆する結果になりました。

2016年に打ち上げ予定の“ジオスペース探査衛星”によって、
さらに、その性質の理解が進むことが予想されています。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 太陽活動とは関係なかった? 地球からのプラズマ大気流出

地球観測衛星“いぶき”が温室効果ガスの観測を再開

2015年10月17日 | 地球の観測
8月2日から中断していた、
地球観測衛星“いぶき”に搭載されている温室効果ガス観測センサー“TANSO-FTS”の、
熱赤外バンドによる観測。

JAXAの発表によると、観測は再開されていて、これで、全バンドでの観測に復帰したそうです。


原因は宇宙放射線

“いぶき”は今年の8月2日正午ごろ、
温室効果ガス観測センサーの熱赤外バンド(バンド4)用検出器を、
マイナス200度に冷却するための冷凍機が止まってしまったため、
熱赤外線バンドによる観測が中断されていました。

調査の結果、冷凍機の停止は、
宇宙放射線などのによる一時的な誤動作の可能性が高いと判断。

9月14日に冷凍機の再立ち上げが行われ、
結果、熱赤外バンド用検出器が所定の温度まで冷却されたので、
停止していた熱赤外線バンドの観測(全運転モード)を、
9月16日の12時(日本時間)から再開したそうです。


観測機器から発生する熱への対応

宇宙から赤外線を観測する場合、
観測機器そのものの熱から発生する赤外線によって、
観測に影響が出ないようにする必要があります。

なので機器から熱を出さないようにするため、
機器自身を冷やさないといけないんですねー

機器を冷やすのに使われる冷凍機として、
“いぶき”には、単段パルス管冷凍機と呼ばれるものが搭載され、
冷却には液体窒素が使われています。

この冷凍機はアメリカのノースロップ・グラマン社が製造し、
同型のものが“ひまわり6号”やNASAの地球観測衛星“OCO-2”などにも、
搭載されています。


観測の目的

“TANSO-FTS”は、
短波長赤外域(1.6と2.0マイクロミリ)と熱赤外域(14.3マイクロミリ)に存在する、
二酸化炭素などの温室効果ガスの吸収スペクトルを、
フーリエ干渉計と呼ばれる分光器の一種で測定し、
そのガス濃度を決定することができます。

なお、熱赤外バンドによる観測が中断していた間も、
短波長赤外バンド(バンド1~3)の検出器は正常だったので、
二酸化炭素・メタンの観測は継続して行われていました。

“いぶき”は温室効果をもたらすと言われている、
二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測。

気候変動の予測精度の向上や、
環境問題の対応に貢献することを目的としているんですねー

2009年1月23日に“H-IIA”ロケット15号機で打ち上げられ、
高度約667キロ、軌道傾斜角約98度の太陽同期準周回軌道から観測を続けています。

2014年1月には、当初計画されていた5年間の定常運用期間を完了。
でも衛星の状態が良好だったので、そのまま運用が継続されていました。

ただ2014年5月には、
2翼ある太陽電池パドルのうち、片側のパドルの回転機構が停止。
5年の設計寿命を超えているので故障も仕方ないですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 地球観測衛星“いぶき” 熱赤外バンドの観測を中断


NASAの地球観測衛星“SMAP” レーダー機器回復せず復旧を断念…

2015年09月11日 | 地球の観測
今年の7月に不具合が発生した、
地球観測衛星“SMAP”のレーダー観測機器ですが、
NASA・ジェット推進研究所(JPL)から復旧を断念することが、
発表されました。

ただ、もう1つの主要な観測機器である放射計は正常なので、
衛星の運用は今後も続けられることになります。

原因は電源の問題

この問題が発生したのは今年の7月7日。

“SMAP”に搭載されている観測機器の1つである、
合成開口レーダーに何らかの問題が発生し、動かせない状態に陥りました。

NASAのジェット推進研究所では対策チームを編成し、
問題の解決にあたっていたんですねー

そして、これまでに得られた衛星の状態を示す信号“テレメトリー”の分析で、
レーダーのパルスの出力を強くするための装置“HPA”の低電圧電源に、
問題がある可能性が高いことが分かります。

対策チームでは、地上にある予備の部品なども使い調査や試験を繰り返し、
そのデータから復旧が試みられるのですが、すべて失敗に終ることに…

考えられうるすべての手段を使い果たしたことから、
復旧は断念されることになります。


地球の水分を観測する衛星

“SMAP”は、NASAのジェット推進研究所が運用する地球観測衛星です。

今年の1月31日にデルタIIロケットにより打ち上げられ、地球全体の土壌に含まれる水分と、
凍結している箇所の融解具合を観測することを目的としています。

得られたデータは、
天気予報や気候変動の予測改善、洪水や干ばつなど災害の予防、
農業の生産性向上といったことに役立てられることになります。

そして“SMAP”は直径6メートルの傘のようなアンテナを持ち、
ユニークな姿をしているんですねー

このアンテナは、
合成開口レーダーと放射計、2種類の装置の目と耳として、
機能することになります。

合成開口レーダーとは、
電磁波を地上に向けて照射し、反射して衛星に返ってきた信号を分析する観測装置で、
放射計は地表から出る電磁波放射を計測する装置になります。

合成開口レーダーは壊れたものの、
もう1つの観測機器になる放射計は問題なく動いていて、
現在もデータを集め続けているんですねー

これまでに集められた土壌の水分データの最初のセットは、
9月末には公開される予定になっています。

またNASAでは、今回の問題に対する包括的なレビューを行い、
将来の他のミッションで、同様の問題が起こらないようにするそうです。
さらに別の調査チームも編成するとしています。


観測は始まったばかり

“SMAP”という名前は、
Soil Moisture Active Passive(土に含まれる水分を能動的、受動的に観測)の
頭文字から取られています。

もともとNASAで開発されていた“ESSPハイドロス”という衛星が、
基になっているんですねー

ただ“ESSPハイドロス”は、2005年にNASAの予算削減が原因で中止されることに…
その遺産を活用して組み立てられたのが“SMAP”になります。

打ち上げ時の質量は944キロで、
高度685キロ×685キロ、軌道傾斜角98.1度の太陽同期軌道で運用され、
8日ごとに同じ上空を通過しています。

予定されている設計寿命は3年。

レーダーを失ったことで、
計画されたデータ収集に、いくらかの影響は出てしまうのですが、
地球のシステムを理解するための貴重な科学成果を生み出してくれるはずです。


こちらの記事もどうぞ
  いまだ解決せず… 地球観測衛星“SMAP”のレーダー故障
  地球観測衛星“SMAP”打ち上げに成功!

地球観測衛星“いぶき” 熱赤外バンドの観測を中断

2015年08月24日 | 地球の観測
温室効果ガス観測技術衛星“いぶき”に搭載されている、
温室効果ガス観測センサー“TANSO-FIS”に問題が発生したそうです。

JAXAの発表によると、問題が発生したのは8月2日の正午頃のこと。

このセンサーの熱赤外バンド(バンド4)用検出器を、
マイナス200度に冷却するための冷凍機が停止したため、
熱赤外バンドの観測を中断したそうです。

JAXAでは現在、停止した要因の解析を進めていて、
今後の処置を検討しているそうです。

赤外線観測には冷凍機が必要

宇宙から赤外線を観測する場合、
観測機器そのものの熱から発生する赤外線によって観測に影響が出ないように、
機器自身を冷やす必要があります。

そのために使われるのが冷凍機なんですねー

“いぶき”に搭載されているものは、単段パルス管冷凍機と呼ばれるもので、
冷却には液体窒素が使われています。

アメリカのノースロップ・グラマン社が製造し、
同型の冷凍機は、“ひまわり6号”やNASAの地球観測衛星“OCO-2”などにも搭載されています。

“TANSO-FIS”は、
短波長赤外域(1.6μmと2.0μm)と熱赤外域(14.3μm)に存在する、
二酸化炭素などの温室効果ガスの吸収スペクトルを、
フーリエ干渉計と呼ばれる分光器の一種で測定し、
そのガス濃度を決定することができます。

なお、“TANSO-FIS”の短波長赤外バンド(バンド1~3)の検出器は正常で、
現在も二酸化炭素・メタンの観測を継続しているそうです。


気候変動予測や環境問題に貢献

“いぶき”の目的は、
温室効果をもたらすといわれている二酸化炭素やメタンなど、
温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測し、
気候変動の予測制度の向上や、環境問題の対応に貢献することでした。

2009年1月23日に“H-IIA”ロケット15号機で打ち上げられ、
高度約667キロ、軌道傾斜角約98度の太陽同期準回帰軌道から、
観測を続けています。

当初の計画通り、2014年1月に5年間の定常運用期間を完了するのですが、
衛星の状態が良好だったので、そのまま運用が継続されていました。

ただ、衛星の設計寿命である5年を超えているんですねー

なので、故障しやすくなっていて、
すでに2014年5月には2翼ある太陽電池パドルのうち、
片側のパドルの回転機構が停止していたそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 全球均一での観測を実現