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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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打ち上げから26年… 磁気観測衛星“あけぼの”運用を終了

2015年05月03日 | 地球の観測
1989年に打ち上げられた磁気観測衛星“あけぼの”が、運用を終了するようです。

打ち上げから26年… “あけぼの”による長期間の観測は、
太陽活動がオーロラ現象やバンアレン帯に、
どのような影響を与えるかについての解明に、大きく貢献してきたんですねー
26年間活躍し、現役最長寿の衛星になった“あけぼの”

磁気観測衛星“あけぼの(EXOS-D)”は、
1989年2月22日に、鹿児島にある内之浦宇宙空間観測所から、
Mー3SIIロケット4号機で打ち上げられました。

“あけぼの”は、
磁場や電場、プラズマ波動やエネルギー粒子、放射線などを計測する機器や、
オーロラを撮影するためのカメラなど、9つの観測機器を持ち、
オーロラ電子生成機構やオーロラ現象に関連した物理現象の解明を、主目的としていました。

当初の設計寿命は1年年間とされていたのですが、
その予想をはるかに超え、26年間も観測を続けることになります。

当初の観測対象はオーロラ現象だったのですが、
科学コミュニティからの要請や、搭載観測機器の性能維持状況などから、
2011年からは、地球をドーナツ状に取り巻く高放射線領域“バンアレン帯”の調査が主目的になり、多くの成果を挙げてきました。

でも、ここに来ていよいよ、
観測機器の多くが放射線劣化により観測を停止していること、
また衛星の電源系機器の劣化、高度の低下によって、
科学成果を出せる十分な観測データが取得できなくなったんですねー

近年は、9種類の観測機器のうち残っている3種類で、
バンアレン帯プラズマなどのデータを得ていたそうです。

それでも、軌道の変化による日照時間の減少やバッテリーの劣化などで、
観測効率の低下は止められず… そして今回の運用終了になります。


3月19日から4月18日にかけては、
衛星の地球周回軌道が地球の影を横切らないので、日陰時間が発生しない期間になります。

なので、“あけばの”搭載のバッテリーを使用せずに済むことになり、
“あけぼの”にとっては、観測機器を運用する電力が確保できる、絶好の観測期間になるんですねー

さらに、プラズマ波動観測器による観測の条件も良く、
スウェーデンのEISCATレーダーが、連続的にデータを取得している時期でもあるので、
同時観測も行われます。

そして、この観測を最後に、
“あけぼの”は電波を止め、運用を終了することになります。


バンアレン帯を通過する軌道を持つ“あけぼの”は、放射線に耐える設計になっていたので、
26年間も活躍することが出来ました。

11年の太陽活動周期をこえる長期間の観測により、
オーロラの発光が夏よりも冬に強くなることや、太陽活動が強くなるとバンアレン帯の外帯が縮小することなど、太陽活動とこれらの現象との関連の解明に大きく寄与してきたんですねー

“あけぼの”が得た成果や知見は、
2016年に打ち上げが予定されている“ジオスペース探査衛星(ERG)”の、
観測計画立案やデータ解析に役立てられるそうですよ。
長期間にわたるオーロラとバンアレン帯の観測から、
太陽活動との関連を解明した。

情報収集衛星光学5号機の打ち上げに成功 H-IIAロケット

2015年04月28日 | 地球の観測
三菱重工とJAXAが、
情報収集衛星光学5号機を搭載したH-IIAロケットの打ち上げに成功しました。

H-IIAは今回が28機目の打ち上げ。

6号機の失敗後、7号機からは22機連続での成功で、
昨年10月から約2か月おきに4機という、
ひじょうに短い間隔での連続成功にもなったんですねー


ロケットは種子島宇宙センターから離昇。

ただ、情報収集衛星の打ち上げなので、
事前に飛行プロファイルなどは公表されず、
打ち上げの中継も行われませんでした。

JAXAから打ち上げ成功の発表はあったのですが、衛星の分離時刻も公表は無し。

太陽同期軌道への打ち上げだったので、
おそらく離昇からおよそ16分後あたりで分離されたものと思われます。

また、アメリア戦略軍が運用する宇宙監視ネットワークが、今回の打ち上げで、3つの物体が軌道に乗ったことを確認しています。

1つは光学5号機、もう1つはH-IIAの第2段と考えられ、
3つ目の物体は何らかのデブリだと思われるのですが、詳細は不明なんですねー


情報収集衛星5号機は、三菱電機が製造を担当した衛星です。

運用は内閣衛星情報センターが行い、
日本の安全保障や、災害時の状況把握に活用するので、
地表の撮影を行うことを目的にしています。

情報収集衛星には、
電子光学センサー(高性能なデジタルカメラ)で、地表を撮影する“光学衛星”と、
合成開口レーダーを使って地表を撮影する“レーダー衛星”の2種類があります。

“光学衛星”は、“レーダー衛星”より地上の物体を細かく見分けられるのが特徴。
ただ、撮影したい地域が夜だったり、上空に雲がかかっていたりすると、
撮影できないんですねー

一方で“レーダー衛星”は、物体を見分ける能力は“光学衛星”より劣るのですが、
夜間や天候が悪くても撮影することが出来るという特徴があります。


情報収集衛星の寸法や性能などは、これまで明らかにされたことはなく、
今回打ち上げられた光学5号も同様でした。

ただ、搭載している電子光学センサーの分解能は、
地表を非常に細かく見ることが出来る性能を持っているようです。

その性能は、最大分解能30センチから40センチ。

これはアメリカの民間企業ディジタルグローブ社が運用する、
商業用の地球観測衛星“ワールドヴェブ3”に匹敵する数値なんですねー

情報収集衛星は、
1998年の北朝鮮によるテポドンの発射実験を契機に導入が決定。

光学衛星2機とレーダー衛星2機の4機を1セットとして、
運用することを目指して構築が始まりました。

この4機で1セット体制により、
地球上のある地点を、1日に最低1回撮影することが可能になります。

2003年3月に光学1号機とレーダー1号機が同時に打ち上げられたのですが、
同年11月の光学2号機とレーダー2号機が、ロケットの打ち上げ失敗で失われることに…

以来、打ち上げは2機同時ではなく、
実運用機に関しては1機ずつ打ち上げられることになり、
2006年に光学2号機が、2007年にはレーダー2号機が、
それぞれ改めて打ち上げられます。

でも、レーダー1号機と2号機は共に、
故障によって設計寿命より早く運用を終えたそうです。

その後、2009年に光学3号機が、また2011年に光学4号機とレーダー3号機、
そして2013年レーダー4号機が打ち上げられ、
当初の予定から約10年遅れで、ようやく4機体制が揃うことになりました。

これらの衛星は、
第1世代の光学、レーダーの1号、2号機よりも性能は向上しているそうです。

またこれら以外に、将来的に打ち上げられる衛星の技術実証機として、
2007年のレーダー2号機と一緒に“光学3号機実証衛星”が、
また2013年のレーダー4号機と一緒に“光学5号機実証衛星”が、
それぞれ打ち上げられています。

今回内地上げられた光学5号機には、
この光学5号機実証衛星の成果が、盛り込まれているはずなんですねー

現在運用されているのは光学3号機と光学4号機、レーダー3号機とレーダー4号機、
そして、光学5号機実証衛星、レーダー予備機の5機。
そこに今回打ち上げられた光学5号機が加わることになります。

ただ、光学3号機は設計寿命を越えた運用、
さらに、光学5号機実証衛星も近々設計寿命を越えるので、
どこまで運用が続けられるのかは微妙なようです。


H-IIAロケットは昨年10月の“ひまわり8号”の打ち上げから、
12月の“はやぶさ2”、2月の情報収集衛星レーダー予備機と、
約2か月おきという、H-IIAにとってはひじょうに短い間隔での打ち上げを続けています。

次のH-IIAの打ち上げ日時はまだ決まっていませんが、
2015年中にはカナダ テルスター社の通信衛星“テススター12V”と、
X線天文衛星“ASTRO-H”が打ち上げられるそうです。

アトラスVロケット、磁気圏観測衛星“MMS”の打ち上げに成功

2015年04月06日 | 地球の観測
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社が、
磁気圏観測衛星“MMS”を搭載した、アトラスVロケットの打ち上げに成功したんですねー

ロケットは3月12日、ケープ・カナベラル空軍ステーションを離昇。
順調に飛行し、1時間30分後から4機の衛星が5分おきの間隔で分離され、軌道に投入されました。

“MMS”はNASAのゴダード宇宙飛行センターで開発。
4機の衛星で構成され、地球を取り巻く磁気圏を観測することを目指しています。

観測は4機の同型の衛星が、
正四面体を形作るような編隊で飛行して行われることになります。

1機あたりは平べったい八角柱のような形をしていて、搭載している観測機器などは同じなんですねー

直径は約3.4メートル、1機あたりの全高は約1.2メートルで、打ち上げ時の質量は1360キロ。
自ら回転することで姿勢を安定させる、スピン安定方式を採用しています。

軌道は大きく2種類が計画されていて、
まず最初の1年半の間は、近地点高度2550キロ、
遠地点高度7万0080キロの軌道を回り、
その後の半年間は、遠地点高度を15万2900キロまで上げて運用される予定です。


ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社は、
ロッキード・マーティン社とボーイング社の共同出資で設立された、
ロケット運用会社です。

なので、今回打ち上げに使われたアトラスVロケット(ロッキード・マーティン社開発)と、
デルタIVロケット(ボーイング社開発)とは共に、同社が運用しています。

アトラスVロケットは今回を含め、これまでに53機が打ち上げられていて、
2007年に一度、予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は、
安定した成功を続けています。

今回の打ち上げに使われたのは、アトラスV 421と呼ばれる構成。

これは、フェアリングの直径が4メートル、固体ロケットブースターを2基装備し、
セントール上段にRL10エンジンが1基、ということを示しているんですねー

アトラスVロケットの第1段には、
ロシアのNPOエネルゴマシュ社が製造したRD-180エンジンが使われていて、
このエンジンを巡ってはアメリカ国内、またロシア側からも、
その使用や輸出に関して揉めている状況が続いています。

ロシアのロゴージン副主相は、
軍事衛星の打ち上げに、ロシア製エンジンの使用を禁止することも匂わせています。
なので今後、軍事衛星の打ち上げにアトラスVロケットが使えなくなる可能性も…

ただ、ロゴージン副主相の発言後もRD-180は定期的に輸出されているので、
差し迫った状況にはないのですが、
現在アメリカでは、国産代替エンジンを開発する動きが始まっています。


今回のアトラスVロケットの第2段には、RL10Aロケットエンジンが使用されました。

RL10はアメリカで50年以上使われ続けているロケットエンジンのシーリーズで、
これまで数多くの人工衛星や惑星探査機などを、打ち上げ続けてきた傑作エンジンでもあるんですねー

推進剤には液体水素と液体酸素が用いられ、複数回点火できる能力を持ち、
衛星をさまざまな軌道に、かつ正確に送り込むことができます。

また前回、前々回の打ち上げでは、RL10Aより新しいRL10C-1と呼ばれるエンジンが使用されています。

RL10C-1は、
デルタIVロケット向けに生産されたものの在庫が余ってしまったRL10Bエンジンを、
アトラスVロケットで使用できるように改造したモノ。

例えば炭素繊維強化炭素複合材料を使ったノズルや、燃焼室やインジェクターなどは、
RL10Bのものが使われています。

一方、ターボ・ポンプはRL10Aのものが用いられ、
また、RL10AにあってRL10Bにはない、
点火システムの冗長化や、推進剤の混合比率を制御するための電子機器の搭載といった、
改造も施されています。

RL10Cはいわば、RL10AとRL10Bを混ぜ合わせたようなエンジンで、
軌道上で運用できる時間も、従来の720秒から2000秒まで、3倍弱にまで向上しています。

なおアトラスVロケットには、第2段にエンジンを2基並べて搭載する“xx2”構成があります。

でも、RL10C-1はノズルの直径が大きいので、並べて搭載することが出来ないんですねー
なので、“xx2”構成のアトラスVロケットは、今後もRL10Aを使い続けることになります。

また、RL10C-1をさらにデルタIVロケット向けに改造したRL10C-2も開発中で、
数年のうちにデビューするそうですよ。


20年前に打ち上げられた気象衛星からデブリが大量発生?

2015年03月12日 | 地球の観測
米空軍が1995年に打ち上げた、“DMSP 5D-2 F13”と呼ばれる軍用の気象衛星。

この気象衛星が由来と思われる、
大量のスペースデブリ(宇宙ゴミ)が軌道上に発生したことが、
米戦略軍が提供するデータや、天文ファンらの観測から明らかになったんですねー

現時点で確認されたデブリの数は26個。

“DMSP 5D-2 F13”は、
すでに設計寿命を越えていて、
2006年からは定常運用からも外れ、
バックアップ運用に就いていました。

DMSPとは、
複数の衛星からなるシステムで、
“DMSP 5D-2 F13”は現在運用されているDMSP衛星の中で最も古い衛星でした。

人工衛星の軌道情報を扱うウェブサイト“CelesTrak”の分析によれば、
これらのデブリは、2月3日に発生したとのこと。

“DMSP 5D-2 F13”は800キロ上空の地球を南北に回る太陽同期軌道にあり、
デブリもこの周辺の「高度300キロから1,000キロまで」に散らばっているようです。

この周辺の軌道は、多くの人工衛星が回る交通量の多い場所…

なので、今回発生したデブリが他の衛星に激突し、
さらに新しいデブリを生み出す可能性は、他の軌道と比べると比較的に高いんですねー

デブリが発生した原因は、まだ明らかになっていません。

例えばバッテリーや推進剤タンクが爆発した、
あるいは別のデブリが衝突した、などといった可能性が考えられています。

ただ現時点では、米空軍などから公式の発表は行われていないそうです。

一度打ち切られた計画が復活? 衛星“DSCOVR”の打ち上げが成功。

2015年02月18日 | 地球の観測
2月12日、地球・宇宙天気観測衛星“DSCOVR”の打ち上げが成功しました。

“DSCOVR”は、
スペースX社のファルコン9ロケットに搭載され、ケープ・カナベラル空軍ステーションから離昇、順調に飛行し、約35分後に予定通りの軌道に投入されました。

現在“DSCOVR”は、近地点高度187キロ、遠地点高度124万1000キロの軌道に乗っていて、
今後衛星側のスラスターを使って、地球から約150万キロ離れた、太陽と地球のラグランジュ第1点に入ることになります。

いっぽうロケットの第1段を船の上に降ろす回収試験は、
船が待つ海域が悪天候のため行われず…

代わりに、海の上に着水させる試験が行われ、
約10メートルの精度で、垂直に安定して降りてくることができたんですねー

天気が安定していれば、船の上に降り立つことは可能なのかもしれません。
成功への期待が高まりますね。


“DSCOVR”はNASAとアメリカ海洋大気庁(NOAA)が開発した衛星です。

太陽から放出される荷電粒子や、次期嵐の状況といった“宇宙天気”を観測することと、
地球の昼の側を常時観測することを目的にしています。

“DSCOVR”はもともと、
1980年代に開発がはじまったトリアーナ計画を源流としていました。

太陽と地球のラグランジュ第1点から、地球の太陽に向いている面を常に観測し続け、
地球表面からのエネルギーの放射量やエアロゾル、オゾン、雲の動きなどを観測することが目的になります。

また、地球全体の姿をインターネットを通じてリアルタイムで世界中に配信することで、
環境問題への意識を高めることも期待されていたんですねー

でも、得られる科学的な成果が乏しいとの判断から、
2001年に計画は打ち切られ、衛星は未完成のまま保管されることに…

ところがその後、NOAAが新たに宇宙天気の観測を目的とした衛星として、
生まれ変わらせるために資金提供を行うことになります。
“DSCOVR”という名前が与えられて復活を果たすんですねー

ただ、搭載する観測機器は変わらないのですが、
ミッションの主役はNASAからNOAAに交代。

ファルコン9ロケットに打ち上げの機会を提供することを目的として、
アメリカ空軍も資金提供を行っていたりします。

打ち上げ時の質量は570キロ、設計寿命は約2年が予定されているそうです。