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地球に似た惑星を見つけた場合、そこには恐竜並みに大きな生物がいる!? 恐竜がいた頃の地球は見つけ易いようです

2023年12月31日 | 地球の観測
現在、地球の酸素濃度は21%です。
でも、過去の地球の酸素濃度は様々な値に変化していました。

仮に過去の地球と似た環境を持つ太陽系外惑星(系外惑星)を観測した場合、どのような観測データが得られるのでしょうか?

特に注目されるのは、“バイオシグネチャー”(※1)に関連した大気分子を見つけられるかどうかです。
※1.惑星を外部から観測したときに、生命が存在することの証拠と考えられる指標となるデータを示す。惑星大気中に酸素、オゾン、メタンなどの存在を示す証拠が一般的である。
今回の研究では、地球に大型の生物が出現した“顕生代”の期間にほぼ等しい、5億年間の大気組成をシミュレーション。
望遠鏡で大気の観測を行った場合の観測データを推定しています。

その結果、分かったのは、酸素濃度が大幅に高かった今から3億年前~1億年前までの期間は、バイオシグネチャーを観測しやすいことでした。
この期間は、地球に恐竜が生息していた時代に相当するそうですよ。
この研究は、コーネル大学のRebecca C. PayneさんとLisa Kalteneggerさんの研究チームが進めています。
図1.顕生代の期間中の地球の酸素濃度の変化。現在の地球は21%だが、過去の地球は10%以下から最大で35%まで変化したと考えられている。(Credit: Rebecca Payne (Carl Sagan Institute))
図1.顕生代の期間中の地球の酸素濃度の変化。現在の地球は21%だが、過去の地球は10%以下から最大で35%まで変化したと考えられている。(Credit: Rebecca Payne (Carl Sagan Institute))


大幅に変化してきた地球の酸素濃度

今のところ、生命が見つかっている唯一の天体が地球です。

ただ、生命の発生条件は良く分かっていないので、生命が存在する可能性のある惑星を探すうえで、参考になるのは地球の環境だけになります。

このため、太陽系から遠く離れた系外惑星の観測では、地球と似たような環境かどうかに関心がもたれています。

特に関心がもたれているのは、生命活動に関連すると考えられるバイオシグネチャーという指標の観測です。

大気中に酸素と共にオゾンまたはメタンが見つかると、それはバイオシグネチャーである可能性があります。

でも、地球の環境は歴史を通じて、ずっと同じだった訳ではありません。
酸素濃度に限ってみても、その濃度は現在の21%に至るまでの間に大幅に変化してきました。

目に見える大きさの生物が出現したのは、約5億4000万年前から現在までの“顕生代”の期間ですが、顕生代の期間中に大気中の酸素濃度は少ない時で10%以下、多いときは最大で35%(※2)まで変化していました。
※2.酸素濃度が35%を超えると、一度燃え出した火災は自然鎮火することがないと考えられている。そのような大火災の痕跡がないことや、そのほかの地質学的証拠から、地球の酸素濃度は35%を超えたことは無いと考えられている。
では、酸素濃度の変化によって、他のバイオシグネチャーも変化していたのでしょうか?

過去の地球はバイオシグネチャーが観測しやすい

今回の研究では、過去の地球環境をシミュレーションし、バイオシグネチャーがどのように変化するのかを調査しています。

気候モデルには、よく確立された“GEOCARB”と“COPSE”を使用。
5億年前から現在までを1億年ごとに時間を区切った上で、高度ごとに大気に含まれる酸素、オゾン、メタン、水、二酸化炭素の濃度をシミュレーションしています。
図2.“GEOCARB”と“COPSE”のそれぞれの気候モデルで推定されたバイオシグネチャーを示す大気分子の吸収スペクトル。3億年前から1億年前までのグラフ(より薄い色)は、現在の地球(灰色)よりも吸収スペクトルが大きい。(Credit: R. C. Payne & L. Kaltenegger)
図2.“GEOCARB”と“COPSE”のそれぞれの気候モデルで推定されたバイオシグネチャーを示す大気分子の吸収スペクトル。3億年前から1億年前までのグラフ(より薄い色)は、現在の地球(灰色)よりも吸収スペクトルが大きい。(Credit: R. C. Payne & L. Kaltenegger)
そして、それぞれの大気を観測した場合に、赤外線領域での吸収スペクトル(大気分子によって吸収される光の波長)が、どのように観測されるのかを再現しました。

その結果、酸素濃度が最も高い30%だった期間を含む、今から3億年前~1億年前までの期間は、現在の地球よりもバイオシグネチャーがはっきりしていることが分かります。

これは恐竜がいた中生代(2億5200万年前~6600万年前)の期間を含んでいて、高い酸素濃度が大型動物の出現と関連していると考えられている期間です。

この結果を簡単に言うと、恐竜がいた頃の地球は、現在の地球よりも観測しやすいことを意味しています。

地球で巨大な生物が出現していた環境の方が、現在の地球よりも観測で見つけやすいというのは興味深い発見でした。

もし、将来の観測で地球と似たような惑星を見つけた場合、そこには恐竜並みに大きな生物がいる可能性があるからです。

また、今回のシミュレーションで得られた吸収スペクトルは、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で観測可能な波長および感度を示しています。
なので、過去の地球と似たような環境の惑星が存在すれば、発見できる可能性があるという点でも興味深いことと言えます。

そう、恐竜がいた頃の地球に似た系外惑星は、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測で見つかるかもしれないんですねー
なんか、ワクワクしてきませんか?


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自転速度が減速し続けている地球には、自転周期がほとんど変化せず1日が約19時間の期間があった

2023年08月12日 | 地球の観測
現在の地球は、約24時間で1回転する自転運動をしています。

ただ、地球の自転周期は少しずつ減速し続けていると考えられているんですねー
なので、過去の地球は、より速く自転していたはずです。

また、その減速率は一定だとこれまで考えられてきました。

ところが、今回の研究で明らかになったのは、今から約20億年前~約10億年前までの10億年間は、自転速度がほとんど低下せず、1日は約19時間でほぼ固定されていたこと。

興味深いのは、この期間は地球史における“退屈な10億年(Boring Billion)”と呼ばれる期間とほぼ一致していることでした。
この研究は、中国科学院のRoss N. Mitchellさんとエバーハルト・カール大学テュービンゲン校のUwe Kirscherさんの研究チームが進めています。

地球の自転にブレーキをかけているもの

そもそも、なぜ地球の自転周期は長くなってきているのでしょうか?

それには、地球唯一の衛星“月”が関わっています。

月は重力によって地球を引っ張っているので、地球をわずかながらもラグビーボールのような細長い形に変形させています。

この時、力学的に安定するのは、わずかに変形した地球の長い側の頂点同士を結んだ線が、月と一直線に並ぶような配置です。

ところが、月の公転速度に比べ地球の自転速度は約30倍も速いんですねー
なので、変形した地球の長い側の頂点は、月と地球の重心を結んだ直線を追い越すことになります。

この時、月は追い越して行った部分を引っ張って一直線上に戻そうとすることに…
そう、このプロセスが地球の自転にブレーキをかける訳です。
この現象は“潮汐トルク”と呼ばれています。
図1.潮汐トルクの概念図。ある天体A(青)を公転する別の天体B(グレー)の公転周期と自転周期が一致している場合、てんたいBの長軸は天体Aと一直線に並ぶ(右図)。でも、公転周期と自転周期が一致していない場合には一直線に並ばなくなり、ズレを元に戻そうとする力が働く(左図)。この作用によって天体Bの自転周期が変化する現象のことを潮汐トルクと呼ぶ。(Credit: WikiMedia Commons / Matryosika)
図1.潮汐トルクの概念図。ある天体A(青)を公転する別の天体B(グレー)の公転周期と自転周期が一致している場合、てんたいBの長軸は天体Aと一直線に並ぶ(右図)。でも、公転周期と自転周期が一致していない場合には一直線に並ばなくなり、ズレを元に戻そうとする力が働く(左図)。この作用によって天体Bの自転周期が変化する現象のことを潮汐トルクと呼ぶ。(Credit: WikiMedia Commons / Matryosika)
潮汐トルクの影響を受け続けているので、地球の自転速度は少しずつ遅くなり、自転周期が長くなっている訳です。

液体の海水は固体の地殻に比べてずっと変形しやすく、潮汐トルクの影響を受けやすいので、月からの潮汐トルクは“海洋潮汐トルク”とも呼ばれています。

でも、地球には月からの海洋潮汐トルクだけでなく、太陽がもたらす“熱潮汐トルク”も働いています。

熱潮汐トルクは、太陽によって大気中の水蒸気やオゾンが加熱され、大気が膨張することで起こります。

その効果は、海洋潮汐トルクと比べて非常に弱いもの。
でも、海洋潮汐トルクとは反対に、地球の自転を加速させるトルクという点で注目されています。
図2.月の重力で引き起こされる海洋潮汐トルクによって、地球の自転は少しずつ減速している。一方で太陽の熱で引き起こされる熱潮汐トルクは、地球の自転を加速させる。過去には、これらが釣り合っていた時期があったと考えられている。(Credit: Nature Geophysics / Mitchell & Kirscher)
図2.月の重力で引き起こされる海洋潮汐トルクによって、地球の自転は少しずつ減速している。一方で太陽の熱で引き起こされる熱潮汐トルクは、地球の自転を加速させる。過去には、これらが釣り合っていた時期があったと考えられている。(Credit: Nature Geophysics / Mitchell & Kirscher)

先カンブリア時代の自転周期

自転速度が今よりも早かった過去の地球では、海洋潮汐トルクがかなり弱く、ある時期には現在の4分の1未満だったと考えられています。

この時期は、熱潮汐トルクと海洋潮汐トルクが釣り合っていたので、地球の自転速度が加速も減速もしない停滞期間だったことになります。

地球の自転周期の変化に停滞期があったとする考えは、古い時代の地層や化石の記録を詳しく検証できるようになった1980年代頃から提唱されてきました。

でも、この考えは長い間仮説に留まっていたんですねー
その最大の理由が地質記録の不足でした。

過去の地球の1日が何時間だったのかを推定する上で、サンゴや木の年輪のような化石が役に立ちます。
でも、そのような大型生物は5億4000万年前から始まる顕生代になるまで現れず、それ以前の先カンブリア時代には存在しませんでした。

そこで、顕生代よりも古い時代には、地球の自転周期を推定するのにストロマトライトが使用されます。
ただ、分析に使えるのは特定の条件を満たしたストロマトライトに限られていて、そのような標本はめったに見つかりません。
ストロマトライトは、シアノバクテリアなどの光合成をおこなう細菌と、泥などの粒が交互に積み重なった層を持つ岩石。光合成をおこなっていない夜間に層が成長するので、日中の時間変動が生じる季節変動から過去の地球の1日の長さを推定することができるが、そのためには層が一定速度で積み重なったことを証明する必要があるなど、いくつかの厳しい条件をクリアする必要がある。
また、分析に欠かせない条件の解釈も極めて困難で、同じ標本を分析しても、研究者によって結果が全く異なることも珍しくありませんでした。

そのため、先カンブリア時代の地球の1日が何時間だったのかという問いは、非常に難しい問題といえました。

今回研究チームは、“ミランコビッチ・サイクル”と呼ばれる地球の性質を利用。
これにより、推定が難しい先カンブリア時代の自転周期の算出を試みています。

ミランコビッチ・サイクルとは、地球の自転および公転の性質が非常に長い周期で変化する現象のこと。
自転周期が短かった過去の地球では、ミランコビッチ・サイクルがより短い周期で巡ることになります。
なので、過去のミランコビッチ・サイクルは、当時の自転周期を間接的に示すことになる訳です。
図3.分析された堆積物の例。縞模様は海面の高さを反映していて、これを分析することで地球の自転周期を推定することができる。(Credit: Ross N. Mitchell)
図3.分析された堆積物の例。縞模様は海面の高さを反映していて、これを分析することで地球の自転周期を推定することができる。(Credit: Ross N. Mitchell)

自転速度の減速がストップした期間

ミランコビッチ・サイクルは、地球の気候に周期的な温暖化や寒冷化をもたらします。

気候の変化は、海が凍ってできる氷床の発達度合いに影響するので、結果的に海面の高さが周期的に変化しています。

海岸線の近くで形成された堆積物には、
陸地に近い(浅い)場所ほど粒の大きな石が堆積し、
陸地から遠い(深い)場所ほど粒の小さな泥が堆積しやすい、
という関係性があります。
なので、“堆積物の粒の大きさ”⇒“海面変動の周期”⇒“ミランコビッチ・サイクルの周期”⇒“1日の長さ”という順番で、地球の自転周期を知ることができるはずです。
図4.今回の研究で推定された地球の自転周期の変化(赤線)。約20億年前から約10億年前までの10億年間、地球の自転周期の変化は横ばい、つまりほとんど変化していなかったことが分かる。また、変化が横ばいとなった時期の始まりと終わりには、どちらも酸素が大量に供給されるイベントがあった。(Credit: Nature Geophysics / Mitchell & Kirscher)
図4.今回の研究で推定された地球の自転周期の変化(赤線)。約20億年前から約10億年前までの10億年間、地球の自転周期の変化は横ばい、つまりほとんど変化していなかったことが分かる。また、変化が横ばいとなった時期の始まりと終わりには、どちらも酸素が大量に供給されるイベントがあった。(Credit: Nature Geophysics / Mitchell & Kirscher)
そこで、研究チームは、約26億5000万年前~5億5000万年前までの22の地層データを分析。
過去の地球の自転周期の変化を調べています。

その結果、明らかになったのは、今から約20億年前~約10億年前までの約10億年間、地球の自転周期はほとんど変化せず、1日が約19時間でほぼ固定されていたことでした。

分析されたデータは、約24億6000万年前~約20億年前のどこかの時点で、海洋潮汐トルクと熱潮汐トルクが釣り合い、自転速度の減速がストップしたことを示唆していました。

退屈な10億年

ただ、自転周期がほぼ変化しなかった時期は、地球の歴史においても興味深い時期に当たるんですねー

今回の研究で自転周期がほぼ固定されていたことが判明した時期と、ほぼ重なる18億年前~8億年前までの10億年間。
この期間は、地殻や気候がほとんど変化せず、生物の進化も極めて遅かった“退屈な10億年”と呼ばれる時期に相当しています。

退屈な10億年が、なぜ生じたのかは長年の謎ですが、地殻変動の原動力になる月からの潮汐力の変化が乏しかったという仮説が、候補の1つとして上がっていました。

地殻変動が乏しければ、火山活動による気候変動は起こりにくくなり、生物の栄養になる無機類(いわゆるミネラル)の供給も乏しくなります。

また、退屈な10億年の始まりと終わりには、それぞれ遊離酸素(O2)が大量に供給されるイベントがあったことが知られています。

酸素供給の大幅な変動が、退屈な10億年の開始と終了にどの程度影響したのかは、現在でも議論されていますが、今回の研究からすると、少なくとも地球の自転周期に影響した可能性はあります。

遊離酸素は紫外線の作用によってオゾンを形成し、オゾンは水蒸気よりも効果的に熱を吸収します。
つまり、遊離酸素の増加は、熱潮汐トルクを増大させた可能性がある訳です。

一方で、退屈な10億年の始まりでは酸素濃度が上昇してから減少するという順番だったのに対し、終わりでは酸素濃度が減少してから上昇するという順番で変化しました。

この違いが自転周期の変化に関わっていた可能性もありますが、はっきりとは分かっていません。

今回の研究は、果たしてどこまで正確に地球の歴史を描写しているのでしょうか? このことは、まだ不明です…

でも、“特徴がないことが特徴”ともいえる退屈な10億年について、より深い理解をもたらすきっかけになるのかもしれません。


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地球のもうひとつの月“ミニムーン” 今回見つかったのは、どうやら人工物のようです。

2020年12月06日 | 地球の観測
一時的に地位球を周回する、いわゆる“ミニムーン”になっている小惑星“2020 S0”。
NASAのジェット推進研究所の発表によると、1960年代に打ち上げられたロケットの一部であることが確認されたそうです。
天然の小惑星ではなくなった“2020 S0”の正体は、米ソ宇宙開発競争の時代に使われたロケットの一部のようです。

一時的に地球を周回する“ミニムーン”

今年の2月にアリゾナ大学の観測プロジェクト“カタリナ・スカイサーベイ”によって発見された小惑星“2020 CD3”は、2017年頃から一時的に地球を周回していた可能性が指摘されていました。
地球の近くを通過する小惑星のイメージ図。(Credit: ESA – P.Carril)
地球の近くを通過する小惑星のイメージ図。(Credit: ESA – P.Carril)
もともと地球の公転軌道の近くで太陽を周回している小惑星のうち、地球の重力の影響で一時的に地球を周回するようになったものは“ミニムーン”とも呼ばれています。

“2020 CD3”は今年の4月に地球を離れていきましたが、新たな“ミニムーン”になると思われる天体が見つかるんですねー

2020年9月17日にハワイの掃天観測プロジェクト“パンスターズ”によって発見された小惑星“2020 S0”は、2020年11月~2021年5月頃にかけて一時的に地球を周回するとみられていました。

小惑星として推定されたサイズは6~14メートルで、ジェット推進研究所によると“2020 S0”は2020年11月8日に地球のヒル球(Hhill sphere)に入り、2020年12月1日に地球から約5万キロまで再接近。
ヒル球とは、重い天体(例:太陽)を周回する天体(例:地球)の重力が、重い天体の重力を上回る範囲。
“2020 S0”の動き(黄色)を示した動画。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
“2020 S0”の動き(黄色)を示した動画。(Credit: NASA/JPL-Caltech)

小惑星ではなくロケットの一部だった

発見後の観測で分かってきたのは、“2020 S0”の軌道は地球の公転軌道に対してほとんど傾いていないこと。
地球よりも少しだけ太陽から離れたところ(公転周期は約386日)を周回していました。

このことから、“2020 S0”は天然の小惑星ではなく、人工物ではないかと早い段階から指摘されていました。

そこで、ジェット推進研究所では“2020 SO”の軌道をさかのぼって分析。
すると、“2020 S0”が過去数十年の間に地球へ数回接近していただけでなく、1966年9月下旬には地球と月に非常に接近していたことが明らかになります。
1966年5月に月探査機“サーベイヤー1号”を搭載して打ち上げられた“アトラス・セントール・ロケット”。同年9月の“サーベイヤー2号”の打ち上げにも同じロケットが使われている。(Credit: NASA)
1966年5月に月探査機“サーベイヤー1号”を搭載して打ち上げられた“アトラス・セントール・ロケット”。同年9月の“サーベイヤー2号”の打ち上げにも同じロケットが使われている。(Credit: NASA)
その時期に一致する1966年9月20日、NASAは月の“中央の入江”への着陸を目指して月探査機“サーベイヤー2号”を打ち上げていました。

ただ、“中央の入江”に着陸して地表の様子を観測するはずの“サーベイヤー2号”は、トラブルに見舞われてしまいます。
その結果、コペルニクス・クレーター近くの月面に衝突したと見られています。

なので、“2020 S0”はこの打ち上げに使われた“アトラス・セントール・ロケット”の上段ステージ“セントール”なのではないかと考えられることになります。
1964年に撮影された“セントール”上段ステージ。“サーベイヤー2号”の打ち上げにも同様の上段ステージが使用された。(Credit: NASA)
1964年に撮影された“セントール”上段ステージ。“サーベイヤー2号”の打ち上げにも同様の上段ステージが使用された。(Credit: NASA)
“サーベイヤー2号”を分離した後に月の近くを通過してから太陽を周回する人工惑星になった“セントール”上段ステージだと、“2020 S0”のような軌道を描くと考えたわけです。

過去に打ち上げられた人工物が、小惑星として“発見”されたケースはこれまでにもありました。
2002年9月に見つかった“J002E3”の場合は、発見後の分光観測で二酸化チタンを使った白色塗料の存在が判明。
分析の結果、“アポロ12号”を打ち上げた“サターンVロケット”の3段目“S-IVB”だと考えられています。

でも、ハワイのマウナケア山にあるNASAの赤外線望遠鏡“IRTF”を使った“2020 S0”の分光観測では、違った結果が出てしまうんですねー
“2020 S0”の分光観測に用いられた“IRTF(Infrared Telescope Facility)”は、ハワイのマウナケア山頂にあるNASAの3メートル赤外線望遠鏡。(Credit: University of Hawaii Institute for Astronomy / Michael Connelley)
“2020 S0”の分光観測に用いられた“IRTF(Infrared Telescope Facility)”は、ハワイのマウナケア山頂にあるNASAの3メートル赤外線望遠鏡。(Credit: University of Hawaii Institute for Astronomy / Michael Connelley)
1971年に通信衛星の打ち上げに使われて現在も静止トランスファ軌道を周回する、別の“セントール”上段ステージの観測データと“2020 S0”の観測データが一致。
そう、“2020 SO”は1966年ではなく1971年の“セントール”上段ステージになるようです。


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直前の対策による降水リスクの軽減へ! 衛星データを活用した5日後までのリアルタイム降水予報が公開されました。

2020年08月26日 | 地球の観測
人工衛星がとらえた世界の降水観測データを活用した、5日後までのリアルタイム降水予報。
こんなWebサイトが、理研(理化学研究所)、千葉大学、東京大学、JAXA(宇宙航空研究開発機構)らの国際共同研究グループにより、8月20日に公開されました。
増大する大雨の降水リスクに直前の予測で対応することで、災害による被害の防止や軽減につなげていくようです。


雨量計による降水の観測

地球規模の気候変動により、世界の降水量が大きく変化してきています。
これまでに経験したことがない規模の大雨や渇水などの災害が、日本を含め世界各地で頻発するようになっているんですねー

これまで気象学では、降水という大気現象の理解を深めることで予測技術を発展させてきました。

でも、世界の降水については、まだよく分かっていないのが現状です。
それは、降水の観測を行う上で基本となっているのが、バケツに水が溜まる原理で行う雨量計観測だからです。
これだと、雨量計が設置された地点でしか観測結果が得られません。

そのため、雨量計の設置が難しい海洋上や極域、山岳地帯などでは、雨や雪がどのように降っているのかを正確に測ることができませんでした。


人工衛星を用いた降水の観測

人工衛星は、宇宙から雨雲を測定するため、雨量計の有無にかかわらず、広い範囲を一様に観測できます。
つまり、世界の降水を知るのに有効なのが、人工衛星での観測ということです。

そこで、JAXAとNASAが共同で進めてきたのが、降水を観測するための人工衛星を打ち上げることでした。
1997年11月に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星“TRMM(トリム)”は、2015年4月まで熱帯の降雨を観測。
その後継機になる全球降水観測計画主衛星“GPM”は、2014年2月に打ち上げられ、現在も観測を続けています。

これらの衛星には、降水レーダーが搭載されていて、雨雲の立体的な分布を観測できます。

この観測データを活かし、その他のマイクロ波放射計などの各種衛星観測データを統合した“衛星全球降水マップ(GSMaP)”をJAXAが開発し、リアルタイムで運用されています。


二つの降水予測“降水ナウキャスト”と“数値天気予報”

降水の予測は計算を用いて行われ、“降水ナウキャスト”と“数値天気予報”という二つの手法があります。

“降水ナウキャスト”は、観測データによる直近の降水分布の動きをとらえ、それがそのまま持続すると仮定した将来の降水分布を予測します。
特徴は、雨雲の発生や発達などの気象学的なメカニズムを考慮しないので、計算が単純で高速だということ。
でも、予測時間が長くなると精度が急速に低下するという問題もあります。

一方の“数値天気予報”は、気象学的なメカニズムを考慮したシミュレーションに基づいているので、予測時間が長くなっても“降水ナウキャスト”より精度を高く保つことが可能。
ただ、スーパーコンピュータを用いた複雑な計算が必要になります。

日々の天気予報に使われている気象庁の“全球モデル(GSM)”は、地球全体をおよそ20キロ四方のメッシュ状に区切り、1日1回、11日後まで予測する数値天気予報システムになります。


“降水ナウキャスト”の予測精度を向上させる

国際共同研究グループでは、降水予測の高度化を目指し、人工衛星による降水観測データを生かした降水予報に関する研究を、2013年4月から進めていました。

降水予測の高度化として研究グループが取り組んだのは、これまでの“降水ナウキャスト”手法に“データ同化”手法を取り入れること。
これにより、予測精度を向上させた新しい“降水ナウキャスト”技術を開発しています。

“データ同化”は、“数値天気予報”の要として、シミュレーションに実測データを取り込む方法です。

“降水ナウキャスト”では、降水分布の場所ごとの移動の方向や速さ(移動ベクトル)をとらえることが重要になります。
でも、刻々と変動する降水分布の画像データから、安定した移動ベクトルを得ることが難しいという課題がありました。

これに対して、“数値天気予報”で用いられる“データ同化”の方法を応用してみると、移動ベクトルがより安定的に算出できるようになりました。

研究グループでは、この新しい“降水ナウキャスト”手法を“衛星全球降水マップ(GSMaP)”に適用。
2017年5月以降、12時間後までの降水予報を、理研の天気予報研究のウェブページおよびJAXAの理研ナウキャストウェブページで公開してきました。


“降水ナウキャスト”と“数値天気予報”を統合する高精度降水予測

また、研究グループでは、“降水ナウキャスト”技術とは異なる高度化技術の研究として、“NICAM-LETKF数値天気予報システム”を新たに開発しています。

“NICAM-LETKF数値天気予報システム”は、“数値天気予報”モデル“NICAM(非静力学正20面体格子大気モデル)”と局所アンサンブル変換カルマンフィルタ“LETKF”を組み合わせたもので、“衛星全球降水マップ(GSMaP)”データを同化することに成功しています。
降水観測データを“数値天気予報”に用いるのは難しく、ガウス分布変換手法を降水データに適用することでこの問題を解決している。
“NICAM-LETKF数値天気予報システム”をJAXAのスーパーコンピュータ“JSS"(JAXA Supercomputer System Generation 2)”によりリアルタイムで実行し、“世界の気象リアルタイムNEXRA”として公開している。

降水予測のさらなる高度化はまだ続きます。
“降水ナウキャスト”による12時間後までの予測データと、“NICAM-LETKF数値天気予報システム”による5日後までの降水予測データ、この二つの異なる降水予測データを統合して、一つの高精度な降水予測データを作成しています。
“降水ナウキャスト”と“数値天気予報”を統合した高精度降水予測の全球分布図。2020年7月5日22時を初期時刻とした3時間後の降水予測地の分布を表示している。(Credit: 理研/JAXA/千葉大/東大)
“降水ナウキャスト”と“数値天気予報”を統合した高精度降水予測の全球分布図。2020年7月5日22時を初期時刻とした3時間後の降水予測地の分布を表示している。(Credit: 理研/JAXA/千葉大/東大)
この手法では、場所ごとの統計的特徴を考慮した局所最適化という独自の工夫を行うことで、予測精度を向上させています。

これにより可能になったのは、12時間後までは“降水ナウキャスト”と“数値天気予報”を統合する高精度降水予測です。
ただ、12時間後から5日後までは、“降水ナウキャスト”の予測精度が低下してしまうので“数値天気予報”のみを用いています。

この“降水ナウキャスト”と“数値天気予報”を組み合わせた5日後までの予報データが今回公開され、理研の天気予報研究のウェブページおよびJAXAの降水情報ウェブページ“GSMaPxNEXRA 全球降水予報”で見ることができます。
JAXAの降水情報ウェブページ“GSMaPxNEXRA 全球降水予測”の例。2020年7月5日22時を初期時刻とした3時間後の降水予測地の分布を表示。令和2年7月豪雨に伴う大雨が九州南部で予測されている。(Credit: 理研/JAXA/千葉大/東大)
JAXAの降水情報ウェブページ“GSMaPxNEXRA 全球降水予測”の例。2020年7月5日22時を初期時刻とした3時間後の降水予測地の分布を表示。令和2年7月豪雨に伴う大雨が九州南部で予測されている。(Credit: 理研/JAXA/千葉大/東大)
増大する大雨などの降水リスクに、直前の予測による災害への対応は重要なことになります。

世界には、地上に設置する雨量計やレーダーなどの降水観測が限られている地域も多くあるので、広い範囲を一様に観測する衛星データの利用は有効な手段と言えます。

今後研究グループでは、スーパーコンピュータ“富岳”を用いて、降水予報のさらなる高度化にも取り組んでいくそうです。

衛星降水観測データを活用したリアルタイム予測情報が、世界の国々で活用され、直前の対策による被害の防止や軽減に役立てられるといいですね。


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地球の水は星間分子雲のチリからできたのかも? 彗星や小惑星の衝突で持ち込まれたものではなかったようです。

2020年06月09日 | 地球の観測
星間物質を模した有機物の加熱実験で、水が大量に生じるという結果が得られました。
このことが示しているのは、地球の水の起源が彗星や炭素質小惑星ではないという可能性。
星間有機物が地球型惑星の水の起源になりうることでした。


地球にある水はどこから来たのか

地球や火星などに存在している水はどこからやってきたのでしょうか?

このことについては、現在もよく分かっていません。

原始惑星系円盤の中では、太陽から約2.5天文単位(火星軌道と木星軌道の間)の距離を境にして、これより内側では水は気体の状態でしか存在できません。
この境界をスノーラインといいます。
原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。


なので、地球型惑星の材料にもともと含まれていた水は、惑星ができる過程で水蒸気になって散逸してしまったと考えられています。

そこで気になるのが、現在地球に存在している水の起源ですよね。
仮説として提唱されているのは、現在の地球型惑星の水が、後の時代に小天体が大量に衝突したことで持ち込まれたというものです。

ただ、2014年にヨーロッパ宇宙機関の探査機“ロゼッタ”が行った、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査により状況が変わってきます。

この探査で得られたデータから示されたのは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に含まれる水は地球の水とは重水素の比率が異なっていること。
そう、地球の水が彗星に由来するとは考えづらいという見方が出てきたんですねー

また、“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウのような、炭素質に富んだ“C型小惑星”にも水が比較的多く含まれています。
このため、スノーラインの外からやってきたC型小惑星の衝突で水がもたらされたという仮説もあります。
でも、このモデルの場合、逆に地球型惑星の水が多くなりすぎるという問題が指摘されているんですねー


地球の水の起源は星間有機物かも

今回、北海道大学と桐蔭横浜大学の研究チームが目を付けたのは、太陽などの恒星の生まれ故郷である星間分子雲でした。
この星間分子雲にたくさん含まれているチリの有機物が、水の起源として重要ではないかと考えたわけです。

星間分子雲のチリには、氷や鉱物と同じくらいの割合で有機物も含まれています。
でも、これまでの惑星形成論では星間有機物の役割はあまり重要視されてこなかったんですねー

星間有機物は、水・一酸化炭素・アンモニアなどの氷に恒星からの紫外線が当たることで作られます。

過去の実験からは、星間有機物にはヒドロキシ酸やアミド、多環芳香族炭化水素、脂肪酸など、多種多様な有機分子が含まれていることが分かっています。

そこで研究チームでは、これらの有機分子を混ぜ合わせた模擬的な星間有機物を作り、これを加熱して変化を観察しています。

すると、模擬星間有機物を200度まで加熱すると2相の有機物に分離し、350度になると水が生成されることが分かります。

さらに、400度まで加熱して生じたのが、有機物が黒くなった石油のような物質でした。
模擬星間有機物を加熱したときの様子を撮影した顕微鏡写真。350度まで加熱すると水が生成され、400度に達すると黒い石油ができる。(Credit: Nakano et al. 2020)
模擬星間有機物を加熱したときの様子を撮影した顕微鏡写真。350度まで加熱すると水が生成され、400度に達すると黒い石油ができる。(Credit: Nakano et al. 2020)
この黒い生成物を分析してみると、地球上で産出する石油によく似た組成であることが確認されます。

また、最初の模擬星間有機物の組成を大きく変えても、加熱によって水と石油が生じるという結果は変わらないことも分かりました。
(a)実験前の模擬星間有機物。(b)模擬星間有機物を400度まで加熱して得られた物質。上層に黒い石油がたまり、下層には水溶性物質が解けた液ができた。(Credit: Nakano et al. 2020)
(a)実験前の模擬星間有機物。(b)模擬星間有機物を400度まで加熱して得られた物質。上層に黒い石油がたまり、下層には水溶性物質が解けた液ができた。(Credit: Nakano et al. 2020)
このような星間有機物は原始惑星系円盤の成分として広く存在しているはず。
しかも、水の氷とは違って、スノーラインより内側でも揮発することなく存在できるんですねー

このことから、研究チームでは、こうした星間有機物が地球型惑星の水の起源になりうると考えています。

今回の成果から、これまで考えられてきたような炭素質の天体がなくても、地球の水の起源を説明できるようになりました。

さらに、現在の小惑星や氷衛星の内部に、星間有機物から生じた石油が大量に存在するという可能性も考えられます。

今年の年末には“はやぶさ2”が、リュウグウの試料を地球に持ち帰る予定です。

研究チームのメンバーは、この試料の分析にも携わることになっています。
地球型惑星や隕石中に存在する水・有機物の起源解明につながることを期待しているようですよ。
惑星の材料物質の分布とそれぞれの天体の形成過程。これまではスノーラインの外側からやってきた大量の彗星や炭素質の小天体が、地球に衝突することで水が持ち込まれたと考えられていた。今回の研究では新たに、スノーラインの内側にある岩石質の小惑星でも星間有機物が加熱されることで水ができ、これが地球に供給されうることが明らかになった(太い青矢印)。(Credit: Nakano et al. 2020)
惑星の材料物質の分布とそれぞれの天体の形成過程。これまではスノーラインの外側からやってきた大量の彗星や炭素質の小天体が、地球に衝突することで水が持ち込まれたと考えられていた。今回の研究では新たに、スノーラインの内側にある岩石質の小惑星でも星間有機物が加熱されることで水ができ、これが地球に供給されうることが明らかになった(太い青矢印)。(Credit: Nakano et al. 2020)


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