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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

土星の1日は、予測よりも短かった

2015年05月04日 | 土星の探査
土星の1日の長さは、10時間32分45分になるという研究成果が発表されました。
土星探査機“カッシーニ”が撮影した分点の土星。

太陽系の内側から6番目、環を持つガス状巨大惑星“土星”には、
まだまだ多くの謎があるんですねー

その1つ土星の自転周期は、長年科学者らの頭を悩ませてきました。

その理由は、土星表面には目印になる物体が存在しないので、
自転速度を容易に計測することが出来ないからでした。

これまでの自転周期はと言うと、
NASAの無人探査機“ボイジャー”搭載の電波測定器を用いた計測で10時間39分22.4秒、
土星探査機“カッシーニ”では10時間47分6秒というものでした。

今回発表された自転周期は、
土星の重力場の測定に基づき、惑星の形状と密度に応じた補正を加えて算出していて、
もっとも正確だと考えられています。

研究チームは、この結果を検証するため、
同じ測定方法で木星の自転周期を算出したんですねー

これは、木星が土星の隣にあるガス状の惑星で、
自転速度の解明がすでに十分進んでいるという理由からでした。

土星の自転周期を正確に求めることは、
土星大気の動態と内部構造の理解に関して重要な意味を持ちます。

内部構造を理解することで、
ガス状巨大惑星の形成過程に関する、重要な情報が得られるんですねー

また、最新の計測結果により、
土星のコアが、これまで考えられていたよりも、小さいことも分かってきました。

今回の手法は将来、他の巨大惑星にも持ちいられるようなので、
自転周期や内部構造などの解明が、さらに進んでいくんでしょうね。

生命を生む熱水環境を土星の衛星エンケラドスに発見!

2015年04月02日 | 土星の探査
地球以外の太陽系の天体に、
現在も、原始的な生命を育むことができる環境があるようです。

その場所は、土星の衛星エンケラドスの地下海。
地球の海底と同じように、
地下海の岩石の割れ目から、熱水を噴出している可能性が高いことが、
今回の研究で分かってきたんですねー
エンケラドスの南極付近の
割れ目から噴出するプリューム。
探査機“カッシーニ”が撮影

生命を育む熱水環境

初期の地球の海底熱水噴出孔は、
生命誕生の場の有力候補になっています。

現在も、そこで得られる熱エネルギーを使って微生物が生息しています。

今回の研究の成果は、生命を育みうるような似た熱水環境が、
現在の太陽系に存在することを、初めて実証したこと。

長い太陽系探査史でも、
画期的な発見といえるんですねー

エンケラドスの内部構造。
地下の海の水が氷の層を通過して、表面に噴出している。


間欠泉が教えてくれる内部の様子

エンケラドスは土星の氷衛星のひとつで、直径500キロほどあります。

厚さ30~40キロの氷層の下に、深さ10キロほどの液体の地下海を持ち、
氷層の割れ目から、海水がプリュームと呼ばれる間欠泉として噴出しています。

NASAが1997年に打ち上げた土星系探査機“カッシーニ”は、
現在も観測中で、エンケラドスのプリュームの中を通過し、
塩分や二酸化炭素、アンモニア、有機物が含まれていることを明らかにしています。

さらに重力データから、南極周辺の地下に広大な地下海が存在し、
岩石からなるコアと接していることも分かりました。

地下海が存在する天体は、
木星の衛星エウロパなど、これまで複数見つかっているのですが、
厚い氷層に阻まれて、地下海を直接調べることは困難でした。

その点、エンケラドスは、海水を宇宙空間に放出するので、
内部の様子を直接調べる機会を与えてくれる特異な天体でした。

“カッシーニ”が2005年に、このプリュームを発見してから、
エンケラドスに関する知見が増えるたびに、生命存在の期待も高まってきたんですねー


生命に必須の3大要素が存在

でも、太陽光が届かない地下海に、生命が利用できるエネルギーは存在するのか?
っという疑問は残り、生命の可能性の議論も空想の域を出ませんでした。

今回の研究では、
“カッシーニ”のデータから、プリュームとして放出される海水中に、
岩石を構成する2酸化ケイ素のナノシリカ粒子が含まれていることを見つけています。

日本のチームは海洋研究開発機構の装置で、
エンケラドス内部の環境を再現する熱水反応実験を実施。

ナノシリカ粒子を生成するためには、岩石からなるコアと地下海の海水が、
現在も90℃を超える高温、pH8~10のアルカリ性で反応していることになります。

そして、探査と実験の結果を総合。

研究グループは、
エンケラドスの海底に、地球の海底熱水噴出孔に似た熱水環境は広範囲に存在し、
それが現在でも活発に活動している。
という内部モデルを提唱したんですねー

今回の研究では、
エンケラドスには、液体の水、有機物、エネルギーという生命に必須の3大要素が、
現在でも存在していることを示しています。

そこには原始的な生物がいるかもしれません…

35億年前の火星表面に、液体の水が存在していたことは確実視されています。

でも、現在の火星は寒冷で乾燥していて、
生命を育みうる環境が存続しているか、はっきりしていません。

なので、地球以外で生命を育みうる環境が、
エンケラドスに現存することが実証されたことは、
地球外生命の発見に向けて大きな飛躍になるんですねー

太陽系での生命探査は、
土星の衛星エンケラドスという新しい候補を得ました。
今後、大きな広がりを見せるてくれることに期待したいですね。

エンケラドス内部で予想される熱水環境の温度条件と、
熱水中に溶けているシリカ濃度の関係。
黒丸は実験結果(pH8.8~9.0)を示していて、
実践が実験結果に基づく理論で予測される値を示している。
破線はエンケラドスの地下海の温度(0℃)でのシリカの溶解度で、
実勢の色の違いはpHの違いを示している。
この図の各pHで、実践が破線を上回る温度のとき、
熱水が0℃まで冷却するとシリカの析出が起きる。
実際、300℃での実験で得られた溶液を0℃に冷却すると、
右下図の電子顕微鏡写真のようにナノシリカ粒子が析出した。

こちらの記事もどうぞ ⇒ 木星最大の衛星ガニメデにも地下海が存在する

高い精度で土星の位置を計測! 宇宙物理に役立つかも…

2015年01月16日 | 土星の探査
NASAの土星探査機“カッシーニ”と電波望遠鏡ネットワークを利用した観測により、
土星や、その衛星の位置が、これまでよりはるかに高い精度で分かってきました。
土星とその衛星

今回の研究では、
10年以上にわたり土星を周回しながら探査している“カッシーニ”からの信号を、
電波干渉計“VLBM”で受信して、その位置を計測しています。

“VLBM”では、アメリカ各地に設置された10基のアンテナを組み合わせて、
1つの巨大な電波望遠鏡のように精密な観測を行うことができます。

“カッシーニ”の位置を正確に知ることで、
“カッシーニ”が探査している土星や、その衛星の重心位置も1~2キロの誤差で求めることができるんですねー  従来の50~100倍の精度になるそうです。

土星系の位置を正確に求めることで、
太陽系の他の天体についても正確な計測が可能になってきます。

なので、このデータは惑星探査機のナビゲートなどに役立つんですねー

さらに、土星が見かけ上接近する遠方天体の光に与える重力的な影響の調査など、
宇宙物理の研究にも貢献が期待されているようです。

衛星タイタンに“魔法の島”が出現

2014年11月19日 | 土星の探査
探査機“カッシーニ”が、土星最大の衛星タイタンに2つの新たな“島”を発見。

2013年の6月にも、
氷に覆われたタイタンの湖に浮かぶ、小島のような物体が観測されていたのですが、
数日後には跡形もなく消える、という不可解な現象が確認されていたんですねー


“カッシーニ”は2004年の土星軌道投入から、
タイタンの凍った地表や無数の海や湖、川をとらえてきました。

そして、今年の夏には2013年に発見された最初の島が、
水面で光ったと思ったら、突然消える魔法のような現象を繰り返していることが分かります。

この“魔法の島”の発見は、憶測を呼んでいて、
「鏡のように滑らかな液体メタンの海に、波しぶきが上がっただけではないのか?」
「いずれにせよ偶然の出来事にすぎない」 と思われました。
着色加工したタイタンのモザイク画像(上)。
北極地域の雲の下に海が見える。
下は“カッシーニ”によるフライバイの軌道。

ところが、8月21日のフライバイ(接近通過)で、不思議な光がさらに2つ確認されることに…

それは、過去のフライバイでは見つかっていなかった“魔法の島”でした。

太陽系の天体で、雨に浸食された地形は、
地球とタイタン以外にはありません。
なので、波立つ湖が存在する可能性は、
継続的な調査を行う、十分な動機になるんですねー

8月21日のフライバイでは、
最大の海、クラーケン海を約960キロ上空から幅200キロにわたって観測。

その結果、深さは200メートルを超える事実が判明し、満たすメタンの量が膨大であることが分かります。


海や湖の存在は、地球とタイタンだけの特徴ですが、
両者の様相はまったく異なります。

タイタンの表面温度は、摂氏マイナス180度ほどで、
湖はメタンやエタンなどの液体のガスで満たされています。

湖の深さを周回軌道から測定する方法は、
去年確立したばかりで、NASAジェット推進研究所が早速応用し、
8月のフライバイが実現したそうです。

一方、分光器による観測で、
“魔法の島”が水面下の氷山、または水上の霧である可能性が排除されています。

クラーケン海が広がる北半球には、間もなく春が訪れるので、
かつて穏やかだった海面をかき乱す、不思議な事象がさらに確認できるかもしれませんね。

タイタン大気の有機分子の分に偏りが…

2014年11月04日 | 土星の探査
アルマ望遠鏡を用いた観測から、
土星の衛星タイタンの有機分子の分布に、
予想外の偏りが見られました。

このことは、生まれて間もないころの地球と似ている、と考えられているタイタンの大気で、
短いタイムスケールで、分子が作られることを示す成果になるんですねー


土星の衛星タイタンは厚い大気と湖、川、海を持ち、
太陽系の中で最も地球に似た天体と言えます。

でも、その極寒の表面にあるのは水ではなく、
メタンやエタンのような有機分子の液体なんですねー

また、タイタンの大気は、
太陽光と土星の磁場のエネルギーによって、
多彩な有機分子が作られる“天然の化学工場”として、
長く研究者の興味を引き付けてきました。

現在のタイタンの大気は、
生まれて間もないころの地球の大気と、
化学的な特徴が似ていると考えられています。

なので、地球の歴史を探る上でも、重要なターゲットなんですねー

今回の研究では、NASAの国際研究チームが、
タイタンの大気におけるシアン化水素(HCN)の異性体HNCと、
シアノアセチレン(HC3N)の分布を調べています。
アルマ望遠鏡がとらえたタイタン大気中の分子の分布。

シアノアセチレンが全体としてタイタンの極域上空に集まっているのは、
探査機“カッシーニ”の観測通りでした。

でも、さらに地表高度ごとの分布調査から、
もっとも上層(地表から300キロ以上)の大気では、
濃集が両極上空から少しズレていることが分かります。

分子の分布の偏りは、
東西方向の強い風(秒速60メートル)が吹く中で、
すぐに均一化されると考えられていたので、
このような偏りは予想外なものでした。

これは、分子の形成がとても短いタイムスケールで起こっていることを、
示しているそうです。

今回の発見は、アルマ望遠鏡にとって、
太陽系主要天体の大気を対象とした初めての観測結果になり、
タイタンをはじめとする太陽系天体の大気を、
よりよく理解するための観測が今後も期待されます。