goo blog サービス終了のお知らせ 

宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

太陽系外縁天体の極端に偏った軌道は、未知の第9惑星なしでも説明できる

2019年02月06日 | 太陽系・小惑星
○○○

これまで、一部の太陽系外縁天体に見られる極端に偏った軌道を説明するのに、いまだ発見されていない第9惑星の存在を仮定する必要がありました。

でも、その仮定も必要なくなるのかもしれません。
カイパーベルトの質量が従来の想定よりもずっと大きい、っと考えることがポイントのようです。


長楕円の軌道を持つ太陽系外縁天体の発見

海王星の外側には太陽系形成の残骸である、主に氷でできた天体が多数存在する“エッジワース・カイパーベルト”と呼ばれる円盤状の領域が広がっているんですねー

その“エッジワース・カイパーベルト”や、さらに外側に存在する多くの太陽系外縁天体の公転軌道はほぼ円形です。
でも、2003年以降には長楕円の軌道を持つ太陽系外縁天体も見つかるようになっていて、現在約30個発見されています。

これら一風変わった太陽系外縁天体は、向きや傾き方がだいたい同じような形をしていて、その様子は太陽系の既知の惑星からの重力だけでは説明がつきませんでした。

そこで、研究者たちが考えたのが、いまだ発見されていない第9惑星が存在しているという仮説です。
第9惑星の重力によって、一群の太陽系外縁天体の極端に偏った軌道を説明しようとしてきました。

この仮説では、地球の10倍以上の質量を持つ第9惑星が、はるか遠くに存在しているとされています。
○○○
太陽系に第9惑星が存在しているという仮説は魅力的なんですが、まだ発見されていない惑星だけに頼るより、もっと自然な別の可能性も忘れてはいけません。

今回の研究では、シンプルに“エッジワース・カイパーベルト”の重力の影響を考えて新しいモデルを構築し、太陽系外縁天体の極端に偏った軌道が説明できることを示しています。


第9惑星を必要としない説明

これまでにも第9惑星を必要とせず“エッジワース・カイパーベルト”の重力で、太陽系外縁天体の軌道を説明するという研究はありました。

でも、今回の研究で少し違うのは、8つの惑星の質量と重力も考慮されていること。

第9惑星なしで太陽系外縁天体の軌道を再現するにあたって、今回のモデルで想定された“エッジワース・カイパーベルト”の総質量は、地球質量の数倍から10倍の間にあること。

これまで考えられていた“エッジワース・カイパーベルト”の総質量が地球の10分の1程度なので、それよりもかなり大きな質量を想定していることになります。

太陽系の内側から外縁部の円盤全体を一度に観測するのは不可能に近いことです。
でも、第9惑星が存在するという証拠も見つかっていないので、様々な可能性が検討できたわけです。

その過程で興味深かったのは、他の恒星の周りにあるカイパーベルトに似た構造を観測したり、惑星形成のモデルに注目したりすること。

もしかしたら、質量の大きな円盤と第9惑星の両方が存在する可能性もあります。

今後、新しい太陽系外縁天体が発見されるたびに、その軌道を説明するための情報や仮説が増えていきそうですね。


こちらの記事もどうぞ
  太陽系の最果てで発見された小天体“ファーアウト”は、未知の第9惑星発見のカギになるのか?
    

赤外線天文衛星“あかり”が実現した、探査に行かなくても小惑星に水が存在するかを知る方法

2019年01月23日 | 太陽系・小惑星
JAXAの赤外線天文衛星“あかり”による観測で、17個のC型小惑星から水の存在を示す証拠が見つかりました。

これほど多くの小惑星から水を検出した観測結果は世界初。
探査機による直接観測でなく、天文衛星によるスペクトル観測で示した世界初の研究になるようです。


水や有機物を多く含む天体

地球には液体の水が大量に存在しています。

でも、この水が地球の形成初期から存在していたのか?
それとも、後の時代に地球の外から持ち込まれたものなのか?
どちらなのかは、現在もよく分かっていません。

もし、水が地球の外から持ち込まれたものだとしたら、可能性のある天体の1つに小惑星があります。

小惑星は、岩石惑星のように内部が融けて核やマントルに分化していません。
なので、太陽系が出来た当時の状態をそのまま保っている“化石”のような天体だと考えられています。

中でも、C型小惑星と呼ばれる天体は、有機物や水などの揮発性物質を多く含む“炭素質コンドライト”という隕石とスペクトルが似ているので、水や有機物が多く存在する天体だと予想されているんですねー

小惑星探査機“はやぶさ2”が現在探査を行っている“リュウグウ”や、NASAの“オシリス・レックス”が探査している“ベンヌ”もC型小惑星になります。
  C型小惑星は、さらにB型小惑星、F型小惑星、G型小惑星に分類され、
  NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が探査を行う“ベンヌ”は、
  C型の中ではB型小惑星に分類される。


ただ、これまでに小惑星で水を検出した確実な観測例は、探査機が小惑星を直接訪れて観測した数例のみ…
2016年にNASAの小惑星探査機“ドーン”がC型小惑星に分類されている準惑星“ケレス”の表面に水の氷を発見し、今年“オシリス・レックス”が“ベンヌ”で水を検出しています。
  小惑星帯に位置する天体としては最も大きい“ケレス”は、
  C型の中ではG型小惑星に分類される。


“リュウグウ”については、表面の水がほぼ枯渇していることが“はやぶさ2”の観測によって分かっています。


探査に行かなくても水の存在を知る方法

直接探査を行わず小惑星に水があるかどうかを調べることはできるのでしょうか?

それには、小惑星の表面で反射される太陽光のスペクトルを観測する必要があります。

結晶の中にヒドロキシ基(水酸基)や水分子を含んでいる“含水鉱物”が小惑星の表面にあると、波長2.7μメーター付近の赤外線が吸収されます。
なので、反射スペクトル中にこの吸収があれば、水が存在する証拠になります。

ただ、この波長域の赤外線は、地球の大気に含まれる水蒸気や二酸化炭素によってほとんど吸収されてしまいます。
そう、地上の望遠鏡では観測できないんですねー
なので、地球大気の影響を受けない衛星を使った観測が必要になるんですねー


赤外線天文衛星“あかり”を使った観測

神戸大学大学院理学研究科のチームは、2008年から2010年まで、JAXAの赤外線天文衛星“あかり”を使って、水がありそうな小惑星66個の分光観測を行っています。

2006年2月22日にM-Vロケットによって打ち上げられた日本初の赤外線天文衛星“あかり”は、赤外線専用の望遠鏡と2種類の観測装置を搭載。
波長1.7μメートルの近赤外線から180μメートルの遠赤外線まで、幅広い波長域の赤外線を高い感度で観測できる唯一の天文衛星でした。
  “あかり”は目標寿命の3年を超えて運用されていましたが、
  2011年11月24日に停波され運用を終えている。

○○○
赤外線天文衛星“あかり”による小惑星の近赤外線分光観測(イメージ図)。
観測により明らかになったのは、22個のC型小惑星のうち17個で、波長2.7μメートル付近に含水鉱物による吸収が見られること。
このことは、多くのC型小惑星に実際に水が存在することを、スペクトル観測で示した世界初の研究になるんですねー

また、この吸収の強さが小惑星によって異なることや、一部の小惑星では3.1μメートル付近に氷やアンモニア化物による吸収も見られています。
○○○
“あかり”で得られた小惑星の近赤外線反射スペクトルの例。
緑色の矢印で示した谷が、水による2.7μメートル付近の吸収。
青の矢印で示した谷は、氷やアンモニア化物による吸収。
さらに、研究チームが発見したのは、波長2.7μメートルの吸収が強い(含水鉱物が多い)小惑星ほど、吸収のピークの波長が長い方向にズレること。

これは、小惑星ができた後で太陽風や微小隕石の衝突などによって、表面が二次的に加熱されて水が失われた痕跡のようです。


地球にある水の一部は小惑星が運んできたのかも

研究チームは、今回の観測結果からC型小惑星の進化のシナリオを考えています。

太陽系ができたばかりの頃、比較的低温の環境で岩石と氷が集まってC型小惑星が形成された。
その後、氷が解けて液体の水になり、この水が岩石と反応して含水鉱物が作られ、さらに後の時代に二次的な加熱脱水で次第に水が失われていったというもの。

このシナリオにより“ベンヌ”で水が検出された一方で、同じくC型小惑星の“リュウグウ”では、ほとんど水が検出されなかったことも説明できるんですねー
そう、“ベンヌ”に比べて“リュウグウ”は加熱脱水が進んだ段階にあるということです。
○○○
今回の研究結果から推定されるC型小惑星の形成と進化の過程。
さらに、通常は水を含まないと考えられているS型小惑星(岩石質の小惑星)のうち2天体でも、わずかに水による吸収スペクトルが観測されます。

この観測結果について研究チームは、この水はS型小惑星の中にあったものではなく、小惑星の外から持ち込まれたものではないかと考えています。

複数のS型小惑星で小惑星外に由来すると思われる水が検出されたことから、研究チームはある推測をします。
それは、原始の地球でもこれと同じような過程で、地球外から水が持ち込まれたのかもしれないということ。

今回の研究で、少なくとも小惑星に水があることは確実になりました。

地球ができた時代には、現在よりも小惑星の数は多かったはずです。
なので、現在の地球にある水のうち一定の割合は小惑星が運んできたのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ
  小惑星“ベンヌ”の泥の中に水の存在を確認!
  探査機“オシリス・レックス”はサンプル採取場所を探し中。

    

“ニューホライズンズ”が探査史上最も遠い天体“2014 MU69”を撮影! さらに追加ミッションもあるかも

2019年01月16日 | 太陽系・小惑星
2006年に打ち上げられ、冥王星とその衛星カロンの探査を成功させた“ニューホライズンズ”が、新しいミッションの目的地に到着し探査を行ったようです。

新しい目的地は、太陽から65億キロ離れた太陽系外縁天体“2014 MU69”で、世界の果てを意味する“ウルティマ・トゥーレ”の愛称で呼ばれています。

ただ、探査といっても“2014 MU69”の周回軌道には入らないんですねー
探査は通過しながら行われ、探査史上最も遠い天体の姿を撮影したそうです。
○○○


人類初の冥王星と太陽系外縁天体の探査

人類初の冥王星を含む太陽系外縁天体の探査を行うため、2006年1月にアトラスVロケットにより打ち上げられたのがNASAの無人探査機“ニューホライズンズ”です。

2015年7月に冥王星をフライバイ(接近通過)して探査を行い、冥王星の地形や組成、大気、衛星カロンなどに関する膨大な情報をもたらしてくれたんですねー

冥王星の探査を終えた“ニューホライズンズ”は、どんどん地球から遠ざかりながら膨大なデータを少しずつ送信し、新しいミッションの目的地へ向かいます。
その目的地は冥王星軌道から7億キロ外側にある太陽系外縁天体の“2014 MU69”でした。

そして、日本時間の1月2日14時33分ころ、“ニーホライズンズ”は“2014 MU69”から3500キロのところを時速5万キロ以上でフライバイし探査を行っています。

このときの太陽から“2014 MU69”までの距離は65億キロ。
そう、人類が直接探査した天体としては最も遠い記録になるんですねー
ちなみに、“ニューホライズンズ”が2015年7月に冥王星をフライバイしたときの距離は約49億キロでした。
○○○


2つの小天体がくっついてできた“2014 MU69”

今回の探査で最も興味深いのは“2014 MU69”の形状でした。

“2014 MU69”は、直径約19キロほどの球体と約14キロほどの球体がつながった接触連星を成していて、雪だるまやボウリングのピンのような形をしていたんですねー

このような種類の天体が実際に観測されたのは、今回が初めてのこと。
おそらく、太陽系形成の初期段階に、2つの小天体がゆっくりとした速度で衝突して作られたようです。

“2014 MU69”の愛称は“世界の果て”を意味する“ウルティマ・トゥーレ”なんですが、今回の画像を見た研究者たちは、大きい方を“ウルティマ”、小さい方を“トゥーレ”と呼んでいるそうです。
○○○
“ニューホライズンズ”が最接近の30分前に2万8000キロの距離から撮影した“2014 MU69”
現在までに送られているデータによれば、“2014 MU69”には環や衛星は見つかっておらず、大気もありません。
色が冥王星と似ているので、氷を多く含む天体に見られるピンク色の色調をしているのかもしれません。

“ニューホライズンズ”は太陽と同じ方向にいるので、データ送信は一時的に中断していますが、10日には再開しているはず。
ただ、今回の探査データが全て送信されるには20か月もかかるので、これからも新しい発見が出てくるのかもしれません。
○○○
上の画像と、13万7000キロの距離から撮影された色のデータとを合成して作られたカラー画像
“ニューホライズンズ”の運用が続けられるのは少なくとも2021年まで。

“ニュー・ホライズンズ”が向かっている方向と、残された燃料で到達できる新しい目標天体が見つかるかもしれません。
そうなれば、太陽系外縁部に潜む未知の天体の発見とかを期待しちゃいますね。


こちらの記事もどうぞ
  外縁天体の奇妙な軌道は、太陽系に9番目の惑星がある証拠
    

小惑星“ベンヌ”の泥の中に水の存在を確認! 探査機“オシリス・レックス”はサンプル採取場所を探し中。

2019年01月06日 | 太陽系・小惑星
12月4日に目標天体の小惑星“ベンヌ”に到着したNASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”。
2年3か月に及ぶ約20億キロの旅が終わったばかりなのに、さっそく新しい発見をしたんですねー

“ベンヌ”接近中に行った観測から分かったのは、“ベンヌ”の泥の中に水が含まれていることでした。
○○○


見つけたのは岩石質の物質と液体の水との相互作用があった証拠

NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”は、目標天体の小惑星“ベンヌ”への接近段階にあった昨年の8月中旬から12月初めにかけて、3つの観測機器による最初の科学観測を行っています。

その観測で用いられた可視光線・赤外線分光器“OVIRS”と熱放射分光器“OTES”のデータから、酸素と水素の原子が結合したヒドロキシ基(水酸基、OH)の存在が明らかになります。

ヒドロキシ基は水を含む粘土鉱物の中に全球規模で存在していると考えられています。
このことが意味しているのは、ある時点で岩石質の物質と液体の水との相互作用があったことでした。

ヒドロキシ基が“ベンヌ”の表面全体に分布しているということは、ヒドロキシ基が“ベンヌ”に衝突した天体によって表面にばらまかれたのでは無いことになります。
そう、ヒドロキシ基は“ベンヌ”にもともと存在していたことになります。

ただ、幅500キロほどの“ベンヌ”自体は、液体の水をためておけるほど大きくはないんですねー

なので水の発見は、はるかに大きかった“ベンヌ”の母天体である小惑星に、液体の水が存在していた可能性を示唆することになります。

小惑星全体にヒドロキシ基が存在するとなると、始原的な揮発性物質や有機物の組成を調べる“オシリス・レックス”のミッションにとって、太陽系形成の初期段階からの残骸である“ベンヌ”は最高の探査対象物になります。

さらに、そのサンプルが地球に持ち帰られれば、太陽系の進化と歴史に関する新たな情報という宝物を手にすることになります。
  “オシリス・レックス”が地球にサンプルを持ち帰るのは、
  約5年後の2023年になる。


小惑星からのサンプルリターンは、NASAの宇宙探査史上初のものになります。

小惑星にはいくつかのタイプがあり、“ベンヌ”は炭素と有機分子を多く含む始原的なB型の小惑星になります。

B型の小惑星が探査されるのは初めてのこと。
日本の“はやぶさ”が探査したS型小惑星の“イトカワ”、“はやぶさ2”が探査中のC型小惑星“リュウグウ”との類似性や相違点を調べるうえでも非常に興味深いミッションになります。


地球へ持ち帰るサンプルの採取場所探し

“オシリス・レックス”の“OCAMS”カメラで取得されたデータにより、これまでに行われていた地上の望遠鏡での観測結果を裏付けるということもありました。

2013年に研究チームが作成した“ベンヌ”のモデルは、直径や自転速度、傾斜角、全体の形状をほぼ実際に近い形で予測していたんですねー

モデルの精度が高いということは、ミッション全体が“ベンヌ”におけるすべての任務に対して最適なものとして設計・計画されたことを意味します。

ただ、“ベンヌ”の南極付近にある大きな岩塊のサイズについては予想以上に大きく、高さ約50メートル、幅約55メートルあることが分かっています。
">○○○
“オシリス・レックス”が12月2日に約24キロの距離から撮影した小惑星“ベンヌ”。
12枚の画像を合成している。
さらに予想を上回っていたのが、“ベンヌ”の表面に見られる岩塊の量でした。

研究チームでは、地球へ持ち帰るサンプルの採取場所をより的確に判断するため、近距離からさらに観測を進める予定です。

現在、“オシリス・レックス”は“ベンヌ”の質量を決定するため、表面から7キロほどの距離まで近づく予備的なサーベイを実施しています。
質量が分かれば、小惑星の重力の影響を正確に見積もることができ、周回軌道投入の重要なデータになるからです。また、質量は小惑星の構造や組成の理解にも役立ちます。

周回軌道に入った“オシリス・レックス”は2019年の2月中旬まで軌道上にとどまり、小惑星の上空約1.4~2キロの範囲を飛行することになります。

この周回飛行により、“オシリス・レックス”は史上最も惑星状の天体へ接近し周回飛行を行った探査機になるんですねー
あっ、“ベンヌ”はこれまでに探査機が周回飛行を行った最小の天体になるようです。

それと“ベンヌ”は、地球に衝突する潜在的な可能性がある小惑星の1つになるので、こうした天体の探査も初めてのことになります。

どのような原因で小惑星が地球に接近するようになるのか? このことを調べることも、ミッションの重要な目的の1つになるそうです。


こちらの記事もどうぞ
  追加ミッションは地球公転軌道上の小惑星探し
    

太陽系の最果てで発見された小天体“ファーアウト”は、未知の第9惑星発見のカギになるのか?

2019年01月04日 | 太陽系・小惑星
すばる望遠鏡による観測で、太陽から120au(180億キロ)もの彼方に新天体“2018 VG18”が発見されました。100auを超える距離で太陽系外縁天体が発見されたのは今回が初めてのことなんですねー

これまで知られている太陽系外縁天体の多くが、お互いに類似した軌道の性質を持っています。
この類似した軌道は、数百au彼方にある未知の第9惑星の影響だと仮定すれば、うまく説明できるそうです。

それでは、“2018 VG18”の軌道も未知の第9惑星の存在を示しているのでしょうか?

大変遠くにある“2018 VG18”は軌道速度が遅く、太陽の周りを一周するのに1000年はかかるので、軌道を確定するのに今後数年の追跡観測が必要になるようですよ。


太陽から最も離れた場所で見つかった天体

アメリカ・カーネギー研究所の研究チームが、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)”を使った観測から新天体“2018 VG18”を発見しました。

チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡による確認観測で分かったことは、この天体が太陽から120au(太陽から地球までの距離の約120倍=180億キロ)の距離に位置していること。

この距離は、準惑星エリスが発見された96auを大きく上回っていて、新記録になるんですねー
100auを超える距離で太陽系天体が発見されたのも今回が初めてのことでした。
  “2018 VG18”は太陽系の最遠で見つかったので、
  “ファーアウト(Farout=遠く離れた)”という名称が付けられている。

○○○
すばる望遠鏡で観測された新天体“2018 VG18”の発見画像(2018年11月10日に撮影)。
(1時間ごとに撮影された2枚の画像を交互に表示。)
背景の恒星に対して、画像中央にある小さな光点が動いていることが分かる。
“2018 VG18”は、大変遠くにあるので軌道速度が遅く、おそらく太陽の周りを一周するのに1000年はかかるそうです。


太陽系外縁天体は未知の惑星の影響を受けている

明るさから判断した“2018 VG18”の大きさは、直径500キロの球形で準惑星クラスだと考えられています。

また、氷を多く含む天体に見られるピンク色の色調をしていることも分かっています。
○○○
“2018 VG18”(手前)のイメージ図。
太陽もはるか彼方の光点(上)としか見えない。
研究チームでは、理論的に予測されている太陽系の未知の惑星“第9惑星(プラネット・ナイン)”を含む、太陽系外縁部の天体の探査を行ってきました。

そして、2014年に太陽系外縁天体“2012 VP113”を発見し(現在の距離は84au)、2018年10月には、すばる望遠鏡の観測から80au彼方の太陽系外縁天体“2015 TG387”を発見しています。

  やっぱり第9惑星の存在を示している?
  すばる望遠鏡が太陽系の外縁部で発見したのは偏った軌道を持つ天体

    

これら2つの天体の軌道は、海王星や木星といった太陽系の大きな惑星から十分に離れているので、重力的な影響はほとんど受けないはずです。

そこで研究チームは、2つの天体の軌道の性質が未知の第9惑星の存在を示していると考えたわけです。

ただ、今回発見された“2018 VG18”は軌道速度が遅いので、太陽を公転する軌道を確定するのに今後数年の追跡観測が必要になるんですねー
でも、“2012 VP113”や“2015 TG387”に近い方向で見つかっているので、似た軌道を持っている可能性は十分にあります。

これまで知られている遠方にある太陽系外縁天体の多くが、お互いに類似した軌道の性質を持っていました。

この類似した軌道の原因が、数百au彼方にある未知の第9惑星の影響だとすれば、“2018 VG18”の軌道はどうなのでしょうか?

“2018 VG18”を、未知の第9惑星の存在を示唆するこれらの天体に加えるには、まだ少し時間が必要なようです。
今後の観測結果が待ち遠しいですね。


こちらの記事もどうぞ
  外縁天体の奇妙な軌道は、太陽系に9番目の惑星がある証拠