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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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巨大な割れ目と氷火山活動… 衛星カロンには激動の歴史があった。

2015年10月24日 | 冥王星の探査
NASAの探査機“ニューホライズンズ”から、
冥王星の衛星カロンの高解像度カラー画像が届けられました。

この画像には、複雑な地形がとらえられていて、
カロンが激しい歴史を経てきたことが見て取れるんですねー


巨大な割れ目と氷火山活動

探査機“ニューホライズンズ”が訪れるまで、
カロンは単調なクレーターだらけの世界だと考えられてきました。

でも、7月14日に撮影され9月21日に地球へ送られてきた画像は、
研究者たちを驚かせたんですねー

地球の月と同様にカロンは、常に同じ面を冥王星に向けています。

そのカロンの冥王星側の半球をとらえた高解像度画像に写っていたのは、
山々や渓谷、地滑りの跡といった地形、さらに表面の色までも変化に富んだ世界でした。
色を強調したカロンの画像。
赤っぽい北極領域は“モルドール・マキュラ”。
(マキュラは広い斑点状の地形のこと)

とくに目を引くのは、赤道のすぐ北にある帯状に続く割れ目と渓谷。

カロンの表面を横切るように伸びる渓谷の長さは1600キロ以上もあり、
グランドキャニオンと比較すると長さは4倍、深さは場所によって2倍もあるんだとか…

過去にカロンで起こった、
大変動の結果できあがったものとみられています。

一方、渓谷の南の“バルカン平原”は、
北の領域に比べて大きいクレーターが少なく若い地形のようでした。

表面がなだらかなのは氷火山活動が原因なのかもしれません。

この現象の仕組みは、
カロンの内部にあった海が凍ってしまい、体積が膨張して、ひび割れができてしまいます。
その割れ目から氷が噴出するというもの。

今回公開されたものより、
さらに高解像度の画像やカロンの組成に関するデータが、
来年にかけて送信されてくる予定になっています。

それにより、今より驚くべきカロンの歴史に関するストーリーが、
送られてくるかもしれませんね。


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  【冥王星探査】カロンは若く変化に富んだ地形を持つ衛星
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【冥王星探査】“ニューホライズンズ”が最接近のデータを本格送信

2015年09月24日 | 冥王星の探査
7月14日のこと、NASAの探査機“ニューホライズンズ”が、
冥王星を接近通過“フライバイ”しました。

この時、“ニューホライズンズ”が取得したのは膨大な観測データ。
このデータの送信が本格的に始まったんですねー

新たなデータからは冥王星のクローズアップ画像も作られ、
約1か月半ぶりに公開されています。


膨大なデータから分かったこと

これまでに公開された画像などは、
“ニューホライズンズ”が取得した情報のうち、
ほんの一部から作成されたものでした。

なのでデータ送信が始まると、
完了までには約1年半ほどかかるそうです。

約1か月半ぶりに公開された最新画像は、
1ピクセルあたり400mの高解像度。

そこに写っていたのは、砂丘のような地形や、
山岳地帯から平原に向かってじわじわと流れる窒素の氷河、
冥王星の表面を流れる物質によって削り取られて出来たと思われる渓谷、
さらには無秩序に乱立する山々などでした。
7月14日に8万キロの距離からとらえたクトゥルフ領域(右下の暗い領域)と、
その上のスプートニク平原(地名はどちらも非公式)。

冥王星の表面はどこから見ても火星と同様に複雑。

雑然と存在する山々は、
スプートニク平原内の凍った窒素の堆積物中に浮かぶ、
巨大な水の氷塊なのかもしれません。
7月14日に8万キロの距離からとらえられた冥王星の表面。
幅350キロの領域に暗く深くえぐられたような古いクレーターと、
平らな若い地形が見られる。

見えているものが砂丘のようなものだとすると、
完全に誕生当時のままの状態だと考えることができます。

なぜなら、今日の冥王星の大気は非常に薄いので、
砂丘の形成は、今よりも厚い大気を持っていた過去の冥王星で、
行われた可能性が高いからです。

ひょっとすると、
私たちの知らないプロセスが働いてできたのかもしれません。

また、冥王星の大気のもやが、
予想以上に多くの層を持っていることも明らかになりました。

さらに、研究者にとってボーナスといえるデータもありました。

それは、太陽光が直接当たらなかったところも観測できたこと。
もやが冥王星の夜側の地形を、ほのかに照らしてくれたので可能になったそうです。
再接近から約16時間後に、77万キロの距離からとらえられた冥王星のもや。
画像処理を進めた右の画像では、
もやの多層構造や、夜側の冥王星の地形(右上)が見える。

“ニューホライズンズ”は現在、
地球から約50億キロの距離を航行していて、
冥王星からは、すでに7300万キロ以上も遠ざかっています。

探査機の状態は良好で、
システムもすべて正常に稼動しているそうです。


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次の目標天体が決定! “ニューホライズンズ”はカイパーベルト天体“2014 MU69”へ

2015年09月18日 | 冥王星の探査
7月14日に冥王星への接近通過(フライバイ)を果たした、
NASAの探査機“ニューホライズンズ”。

次の探査目標天体は、
冥王星より、さらに約16億キロ外側を公転している、
カイパーベルト天体“2014 MU69”になるようです。
カイパーベルト天体とフライバイする“ニューホライズンズ”(イメージ図)。

“ニューホライズンズ”は当初から、冥王星系だけでなく、
他のカイパーベルト天体も探査するように計画された探査機でした。

なので追加の目標をフライバイするための燃料も残っていて、
電力系統も、あと数年は稼働するように設計されているんですねー


カイパーベルト天体“2014 MU69”

新たな目標として選ばれたカイパーベルト天体“2014 MU69”は、
2014年にハッブル宇宙望遠鏡で発見された天体。

大きさは約45キロと見積もられていて、
典型的な彗星より10倍以上大きく1000倍以上重い天体になります。

一方で冥王星と比べると0.5~1%の大きさで質量は1万分の1しかなく、
冥王星などを作る元になった天体と考えられているんですねー

冥王星探査で分かったように、
地球からの観測では決して得られない多くの情報が、
フライバイ探査で得られると期待されています。

地球から49億キロの距離を飛行中の“ニューホライズンズ”の状態は良好で、
冥王星系に関する膨大な画像やデータの送信を始めたばかり。

予算が無事に通れば、
来年には“2014 MU69”が正式なターゲットとして承認されることになります。

それに先駆けて、今年の10月後半と11月初旬には軌道修正が行われるれ、
2019年1月1日には“2014 MU69”に到着するそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】フライバイ(接近通過)を振り返ってみると

【冥王星探査】フライバイ(接近通過)を振り返ってみると

2015年08月11日 | 冥王星の探査
2006年に打ち上げられたNASAの探査機“ニューホライズンズ”は、
翌年には木星の軌道を通過し、その後は1日160万キロ近いスピードで飛び続けました。

この史上最速の探査機でさえ、
約50億キロ離れた冥王星に達するのに9年半もかかっています。

でも、時速4万8000キロ超の速さで進む“ニューホライズンズ”が、
冥王星のそばを通過するのにかかった時間は、たったの3分…

それでも“ニューホライズンズ”は、
冥王星から遠く離れる前に、何百項目もの調査を行っているんですねー
7月14日午前5時ごろに撮影された冥王星。


スピートを落さずに探査を行った理由

なぜ“ニューホライズンズ”は、
スピードを落とさずに冥王星を通過してしまったのでしょうか?

“ニューホライズンズ”は、
スピードを上げることで、冥王星に早く到達することができました。

でも、その場合、冥王星で速度を落としたり、
周回軌道に入ったりすることは不可能なんですねー

それは冥王星の重力が弱いので、
非常にゆっくりとしたスピードで飛んでいない限り、
周回軌道に引き入れられることがないからです。

“ニューホライズンズ”の速度を、そこまで落とすには、
燃料を積んでいって、それを使ってブレーキをかける必要があります。

ただ、このときに必要な燃料の量は、
“ニューホライズンズ”を最初に打ち上げた時と同程度になります。

探査機自体に加えて、それだけの燃料を打ち上げることは事実上不可能…
スピードを落とさずでなく、落とせなかったんですね。


フライバイ(接近通過)に向けて気をつけたこと

冥王星系を通過中に、チリの粒子がぶつかったら一大事です。

“ニューホライズンズ”は非常に早いスピードで飛んでいるので、
米粒ほどの物体にぶつかるだけでも、大きなダメージを受ける恐れがあります。

“ニューホライズンズ”のルートに、
チリや岩石が入り込む原因がないかどうかをチェックするため、
探査機のチームは、数週間にわたって一帯を集中的に調べています。

幸い、特に心配なものは見つかりませんでした。
冥王星のそばを通過する“ニューホライズンズ”(イメージ図)。


フライバイ後の“ニューホイズンズ”はどうなる?

海王星軌道の外側には、小天体の密集流域“カイパーベルト”が広がっていて、
冥王星もこの中にあります。

冥王星を通過した“ニューホライズンズ”は、
このカイパーベルトをさらに奥に進んで行くことになるんですねー

ただ、この先5年の間に、
近くを通過する別の小天体を観測する計画も検討中です。

そして最終的には、
NASAが1977年に打ち上げた探査機“ボイジャー1号、2号”と同じように、
太陽系を脱出していくことになります。

あと“ワン・アース・メッセージ”と呼ばれる計画もあります。

この計画は、“ニューホライズンズ”に異星人へのメッセージとなる、
デジタル・メッセージをアップロードしようというもの。

これは“ニューホライズンズ”によるデータ収集と、
地球へのデータ送信が終わってからの計画なので、
もしカイパーベルトで別の天体について接近通過と観測を行うことになると、
実施は何年も先になるそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】地表には流れる窒素の氷河、空には星を覆う霧


【冥王星探査】地表には流れる窒素の氷河、空には星を覆う霧

2015年08月08日 | 冥王星の探査
今回公開された冥王星のクローズアップ画像は、
“ハート模様”の西に位置するスプートニク平原。

ここに見られる様々な地形が詳細にとらえられていて、
なかでも興味深いのは、広範囲を覆う窒素の氷河(氷床)の流れた跡です。

地球の氷河と同様に、今も流れているのかもしれないんですねー
スプートニク平原周辺に見られる地形。
多角形の地形、窒素の氷河、クレーターの多い領域が見える。


氷河は今も流れている

スプートニク平原は、
窒素だけでなく一酸化炭素やメタンの氷も豊富なようです。

“ハート模様”の一番南には、古いクレーターの多いクトゥルフ領域があり、
暗いこの領域に新しい氷が押し寄せているように見えています。

中央やや下には、氷で埋められたらしいクレーターもあります。
クトゥルフ領域とスプートニク平原周辺に見られる地形。
スプートニク平原とクトゥルフ領域の間の山々はヒラリー山地と呼ばれている。

色を強調した画像からは、表面のようすや組成の違いも分かってきています。

赤道上に最も暗い地形があり、
中緯度地方は中間色、北極領域は氷が広がっていて明るく見えているんですねー

おそらく、季節の移り変わりと共に、
氷が赤道から極域へと運ばれるためだと考えられます。
冥王星の疑似カラー画像。
“Lorri”による高解像度データと“Ralph”によるカラーデータを合成している。

冥王星の右下に沿うように、北東から南西へと伸びる青白っぽい地形には、
スプートニク領域から氷が運ばれているのかもしれません。


メタンが分解されて霧になる

“ニューホライズンズ”は光が当たる面だけでなく、
暗闇側からの観測でも印象的な画像を届けてくれています。

冥王星最接近から7時間後に“ニューホライズンズ”は、
冥王星を振り返り、周囲の大気を通り抜けた太陽光が作り出したリングを、
とらえました。
冥王星のシルエットと大気のリング

そして画像の初期分析から、大気中の高度約80キロと約50キロに、
2層の“霧(もや)”が存在していることが分かります。

霧は、冥王星を赤っぽく見せている炭化水素化合物を作る上で、
カギになる要素です。

モデル計算からは、
太陽の紫外線がメタンを分解すると、霧が形成されることが示唆されています。

メタンの分解から、
冥王星の大気中に見つかっている、エチレンやアセチレンなどの形成が引き起こされ、
大気中でより低温の層へと落ちていくと霧ができるようです。

紫外線は、さらに霧を赤茶色のソリンに変化させることになり、
これが冥王星の色として見えているんですねー

一方、これまでの計算では、
冥王星の上空30キロ以上は温度が高く、霧は発生しないと考えられてきました。

冥王星で何が起こっているを理解するには、
別の新しい考え方が必要なのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】衛星ニクスとハイドラはサイズは同じでも多くの違いがある